2006 No.04
(0116 -0122)
 

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 国際評論

2006年の中米関係は新現実主義に

金燦栄
(中国人民大学国際関係学院副院長)

国際関係における中国の重要性は2005年に一段と際立った。中国と外部の世界との関係については、それまでは外部の世界が中国内部の発展に影響を及ぼす一面が顕著だったが、2005年においては中国と外部の世界が相互に影響する一面がより注視されるようになった。中米関係について言及すれば、その状況は、それまでかなり米国の対中政策に左右されていたとすれば、今日においては、両国政府の政策が及ぼす作用は対等なものになりつつある、と言えるだろう。

2005年の中米関係は、当時の世界において最も重要な二国間関係であったことから、21世紀における国際関係の基本的な性格が協力、あるいは対立を主体にしたものになるかを決定する、との見方が多い。同時に、中米関係の複雑さがかつてないものであることも認識するようになった。

中米両国には二国間、地域、グローバルの各次元において共通の利益があるほか、共通性もある。(1)中米は共にグローバル化時代に置かれており、グローバル化によって各国間の相互依存は一段と深まり、その一方で、一部の対抗的な政策は制限されるようになった(2)中米は共に核兵器時代に置かれており、核兵器の破壊性によって「戦争は政治の延長である」との伝統的な思考形態は機能を果たさなくなり、大国の戦略的対抗性に限界が見えてきた(3)これまで経験したことのなかった安全への脅威(特にテロリズム、自然災害など)が強まったことによって、両国政府の共通認識が高まった(4)中国は国際規範とリンクする方向で改革を進めてきたが、27年間にわたる改革・開放政策によって、主流となる価値観が国際的に主流となる価値観に近づいたことで、両国の行動基準の格差は縮小された(5)両国の社会には多くの共通点がある。社会的規模はいずれも巨大であり、内部的な相違点は顕著であり、利益は多元化し、構造は複雑であり、経済は活発化しているといった特徴があることから、中国と米国社会との相似性は日本と米国のそれよりも大きいと言える(6)中米両国は文化面においても、例えば、実用主義を重んじる、広く認識された価値観に依存して社会を動員する、文化に対する自信を基礎にした文化的な寛容性がある、といった多くの共通点がある――の6点が挙げられるだろう。

米国の対中政策における新現実主義が示されたのは、ゼーリック国務副長官の2005年9月21日に開かれた米中関係全国委員会での演説だ。この中でゼーリック氏は、過去7期の米大統領が一貫して求めてきた政策目標は、中国を国際社会に溶け込ませることだったが、現在、この目標は実現されており、中国はすでに国際社会の正式の一員となった、と述べた上で、新たな要求、つまり、中国が「責任を負う利害関係者」として、大国としての責任を負い、米国と共に行動するよう求めた。

米国の対中政策における新現実主義とは◆中国の台頭は事実であることを認める◆中国は旧ソ連とは違い、封じ込めることで中国に対処することはできない◆中国社会の複雑さと中米関係の複雑さ、つまり、中米関係に発展に向けたさまざまな可能性があることを認める◆中国を「責任を負う利害関係者」と定義づけ、中国に対し大国としての責任を負い、米国と共に行動するよう求めることで、将来の中国の性格と行動モデルを形づくり、中米関係から米国の期待する方向性を推し量る――というのが具体的な内容だ。

中国の国際問題研究者によるこの演説の基調に対する評価は非常に肯定的だ。中国政府も肯定的な反応を示しており、国務院新聞弁公室は2005年12月22日、中国外交の平和的な哲学理念に関して全面的に説明した白書「中国の平和と発展の道」を発表している。

米国の対中政策における新現実主義は、米当局が将来の中米関係に向けた新たな枠組みを模索していることを映したものだ。中国側が積極的な反応を示していることで、協力的な新たな枠組みは実現される可能性がある。現在、中米関係は長期的な安定を維持する機会に恵まれている。2006年は重要な年となり、両国政府がこの機会を逃すことなく長期的枠組みを構築できるかどうかは、かなりの程度、今年の中米関係の発展いかんにかかっていると言える。

現在に目を向ければ、今年の中米関係における朗報は、胡錦涛国家主席が上半期に訪米することだろう。双方の戦略的交流と相互信頼が強化され、関係全体の安定性も増していくと期待される。また、中米の戦略対話も継続される予定だ。中米は2005年の8月と12月の2回、対話を行っており、その結果は非常に前進的なものだった。こうした対話メカニズムが制度化されたことで、今後、中米関係はより確実に安定して発展していくだろう。中米の戦略対話には重要な戦略的価値がある。

当然のことながら、米国の対中政策には従来から二面性がある。意識的には、米国は依然として中国に対しては戦略面で疑念を抱いている。外交的には、米国はいまだ「防御的な交流政策」を推進している。長期的に見た場合、米国の対中政策の二面性は中米関係にとって最大の障害となるだろう。

中米両国は今年、少なくとも以下の問題に直面すると思われる。

まず、双方が東アジアの協力問題をめぐって異なる立場を取ることだ。東アジアの隣国との全面的な協力拡大は中国外交の既定方針だが、一方の米国は中国の東アジアにおける影響力の拡大を警戒している。第1回東アジアサミットが2005年12月14日にクアランプールで開催されたが、この会議に対する米国の反応は極めて消極的だった。その根源は、中国の地域協力政策に対する不信にある。

次に、日本の中米関係に対する影響力が増すことだ。米国の既定方針は、日本のアジア太平洋地域における政治・安全面での役割を高めることである。2005年の2月と10月に開かれた米日の外交・国防担当閣僚による「2+2」では、日米同盟の範囲が拡大された。問題は、日本が米国の戦略的サポートに依存して自らの戦略的意図を実現し、主動的に中国を挑発することにあり、これが中日関係の緊迫化した根本的な原因となった。しかし、中日関係が緊迫し続けることが長期的利益に合致しないことから、米国はこれに関心を示し始めた。

第3は、朝鮮とイランの核問題が一段と突出することだ。米国はこの二つの問題において、中国により多くの責任を求めてくるだろう。

第4は、エネルギー問題において、中米の指導者は協力の意向を表明しているが、米国内には依然、エネルギー問題を傘に中国威脅論を喧伝する強大な政治勢力があることだ。

第5は、台湾当局の指導者が新年に行った対抗的な論理に満ちた演説が、両岸関係には今年も危機が潜在するとの意味を有していることだ。

第6は、貿易問題が一段と複雑になるのが確実なことだ。米国側の統計によると、2005年の輸入超過は2000億ドルに達しており、米国による貿易問題の政治化が激化するのは間違いない。

第7は、今年行われる米議会中間選挙の展開次第では、中米関係への米国内の政治的関与が強まる可能性があることだ。

米国の対中政策には二面性があり、中米関係には問題が山積している。それでも2006年の中米関係の基調は安定し、前進的なものになるとの予想はできるのではないか。最も重要な事実は、中国が力を増しつつあることだ。それと同時に、中国は平和的な外交哲学を堅持すると共に、中米関係において協力を模索している。

外部の世界、特に米国にとって、中国からの朗報となるのは、中国は今日の国際秩序に基本的に満足している、中国の民衆の米国に対する姿勢は総体的に友好的である、ということである。