2006 No.04
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現代人の祭日の過ごしかた

――「洋節」(外国の祭日)に人気が集まっているが、伝統的な祭日も「保護」の声が高まる中、再び活発化する希望が見えてきた。

張志萍

中央省庁に務める女性の朱芳さん。昨年の最後の1カ月、12月に入ると、彼女の気持ちは高ぶり、仕事もせわしくなった。その後の1カ月半の間に数日、彼女が1年で最も好きな祭日が集中しているからだ。

中国人は様々な外来のモノに「洋」を冠しているが、年末年始には、伝統的な祭日・春節のほかにも、ハローウィンやクリスマス、バレンタインといった洋節が目白押しだ。以前は外資系企業の社員や留学経験者など一部の中国人しか送らなかったクリスマス。今では大人や子ども、官僚も庶民も多くの人が楽しむ祭日となっている。クリスマスカードやショートメールを交わしたり、バーで飲んだり、レストランで友人や家族と食事をしたりと多彩だ。

洋節のクリスマスはますます中国人に重要視されてきた。当初は商業界が仕掛け、それが徐々に習慣化され、今は大半の人が自分のスタイルで過ごすようになった。北京の繁華街・西単。祭日ムードを盛りたてようと通りに並べられたクリスマスツリーに、道行く人たちは願いを書きしるした紙を枝に掛けていく。

クリスマスが人気を集める理由について、社会学者は「見た目が素晴らしいことや、赤色を基調にしているところが、中国人が祭日に託す『喜慶祥和』に合っているからだ。クリスマスが来ると、多くの地方でサンタクロースと、中国式の紅い大きな提灯が一緒に出現するが、非常に調和が取れている」と分析する。

勢いの衰えない消費主義のうねりに乗ったところが、クリスマスの流行が示す最も顕著な一面だ。ホテルやデパートなどはほとんど例外なくサンタクロースやクリスマスツリーを派手に飾りつけ、サービス係りや販売担当者もより祭日ムードを全身で表し、様々な販売促進が「メリークリスマス」の歓呼の中、鳴り物入りで行われるようになった。

南方では、クリスマスの数カ月前から多くの自営業者は顔をほころばす。世界各地からクリスマス関連製品の注文が殺到するからだ。米国のホワイトハウスからも来るという。世界の関連製品の70%は中国製。彼らにとっては稼ぎ時の祭日なのだ。

就職後、英国に短期留学した朱芳さんは、ロンドンのある教会で聴いた夕べの歌が忘れられないという。中国の多くの若者と同様、彼女はカトリックを信奉しているわけではないが、教会の純潔で穏やかな雰囲気が好きだそうだ。クリスマスの日、彼女は友人と北京の高級ホテルのバイキングでディナー。夜10時まで楽しんでから、一人で西什庫教会へ。だが、今年はミサの参列に入場券が必要だったために入れず、外でしばらく聴いてから名残惜しげに帰宅した。

この晩、写真関係の仕事をする阿洛さんも友人と西什庫教会で12時近くまで過ごしたという。同教会は130年余の歴史があり、今でも清代の康煕皇帝(17世紀)がしたためた扁額が掛かっている北京で著名な4大カトリック教会の1つ。ミサは午前12時に始まるが、7時ごろから続々と人々が教会を訪れ、11時には人だかりができるほど。信者でない人の多くはサンタクロースの紅い帽子をかぶり、ペアで来ていた。

中国ではキリスト教徒、カトリック教徒はかなりの数にのぼる。国務院新聞弁公室が公表した「中国の宗教信仰自由の状況」によると現在、カトリック教徒は約400万人、キリスト教徒は1000万人余り。しかもこの数字は増加しつつあるという。

クリスマスに次いで、元旦の2日間の祭日が過ぎると、1月末(今年は1月29日)には中国伝統の祭日である春節を迎える。最大の賑わいをみせる一家団欒の祝日だ。家族と食事を共にし、爆竹や花火を上げたり、親戚や友人を訪ねたり……。帰省ラッシュも始まる。関係機関の統計によれば、昨年の春節期間中の移動者数は延べ19億人。今年は同20億人を突破する見通しだ。輸送力は毎年改善されているとはいえ、まだ需要を十分満たすことができないために例年、この時期の輸送力不足はかなり深刻化する。経済的理由から大半の人が列車を利用するので、帰郷する切符を手に入れるのも頭の痛い問題だ。国家発展・改革委員会の馬力強副秘書長は「輸送力不足の状況を解決するには5〜10年かかるだろう。春節期間の逼迫状況はかなりの期間続く」と指摘する。

春節に対する思い入れについて、上海の復旦大学経済学部を卒業し北京の建設部に勤務する林錫さんはこう語る。「嬉しくもあるし、面倒でもある、というのが本音だ。父母と一緒にいられるのはもちろん良いことだが、切符を買うのが大変なので、帰郷するのは容易ではない。また、故郷を離れた地で出世していればまだいいだろうが、たいしたこともしていない、まして不遇にある人にとって、現在の立身出世がもてはやされる風潮の中、そのプレッシャーがどんなものかはよく分かる。それに加え、老人を敬い子どもを愛する、という中国人の伝統的な美徳を春節にはより一層、一番尽くす必要がある。もちろん、口先だけではなく、物質的に具体的に表すのがずっと必要だ。だから、春節は体力を使うだけでなく、気苦労も多い」と。

現在、林さんと同じ考えを持つ人は多い。多くの都市の若者たちは、春節での飲み食いや贈答品のやりとりといった風潮に嫌気を感じているのが現状。一方で、こうした状況を懸念する人もいる。民俗学者の高有鵬氏は「春節を保護する宣言」の中で、「春節は中国の伝統文化を代表するものとして、民族文化の重要な『無形遺産』として、今日のグローバル化された文化的環境の中、その『保護』は重視すべきだ」と強調する。

洋節が活気を呈しつつある一方、伝統的な祭日が日増しに衰退するにつれ、この数年来、こうした憂慮や心配の声がきかれるようになった。春節に比べると、その他の祭日は衰微していると言えるだろう。確かに、大半の中国人はいまも元宵節に元宵(具の入った団子)を食べたり、端午節にちまきを作ったりしているが、食する形式に変化はないものの、祭日が本来もつ意味はますます薄れつつあり、人々の情熱も冷めてきている。

社会学者の呉明氏は「伝統的な祭日が苦境にあるのは確かだ。これは社会の変化と関係がある。都市化で社会構造だけでなく、市民の生活様式、生活のリズムや人間関係も変わった。そのため農業や農村、社会と関連する多くの伝統的な祭日は自然、軽く見られるようになってきた」と分析する。

2005年11月、韓国が登録申請していた「江陵端午祭」がユネスコの世界無形遺産(人類の口承および無形遺産の傑作)に指定されたことから、1年余り続いていた中国と韓国との端午節をめぐる争いに終止符が打たれた。端午節は中国で始まり、2500年余りの歴史があるが、早くに周辺国へと伝わりって“本土化”していった。韓国の江陵端午祭に先を越されたことで再び、中国人はいかに自国の伝統的な文化や祭日を保護するかを考えさせられることになった。中国伝統の祭日を保護するため、多くの専門家が再度、一部の祭日を法定祭日に定めるよう提起している。

政府も伝統的な祭日の保護に乗り始めた。文化部は2005年12月31日、春節や清明節、端午節、七夕節、中秋節、重陽節などを伝統的な祭日とする第1次「無形文化遺産名録推薦リスト」を公表。

もちろん、こうした「保護」論調に反対の意見もある。新聞「現代快報」は署名入りの論評を掲載し、「春節は保護する必要がないのみか、適度に熱を冷ましていくべきだ。先ず、春節を純粋に民間の性格を帯びたものに戻し、政府が春節前後に格式化、形式化された様々な活動を行わないのが最も良い。市民に自由自在に、ゆったりした気持ちで純粋の農暦の新年を過ごさせる。次に、民間の側も古い風俗や習慣を改め、洋節の過ごし方を参考にし、朝から夜まで家で派手に飲み食いしたり、徹夜マージャンをしたりしないことだ」と指摘。

さらに論評は「伝統的な祭日と言えば、専門家は誰もが『保護する、救う』と慌しく叫ぶが、実際、われわれの多くの伝統的な祭日はその味わいを失っている。保護すべきは、本来の味わいであり、失われつつある優れた民俗であるべきであり、すでに味の変わった祭日をひたすら保護することではない。春節は救わなければ、というのなら、それには先ず、純粋の伝統的な祭日に戻すべきだ」と強調する。

参考資料:中国の一部重要な伝統的祭日

◆春節:民間で最も盛大で、最も賑やかな祭日。「過年」とも呼ぶ。現在、唯一の法定の祭日。伝統的な意義から言えば、春節は一般に農暦の?月二十三日から正月十五日まで。この期間、漢族や大多数の少数民族も様々な祝賀活動を繰り広げる。

春節の前日は、大掃除をしたり、食品などを購入したり、親戚や友人を訪ねる際の贈答品などを準備したりする。家の入り口の框には春聯(赤い紙に黄色の字で新年を迎える言葉を記した対聯)が、部屋には寓意や吉祥物が描かれた色彩豊かな年画が張られ、門前には大きな赤い提灯が掛けられ、「福」の字が書かれた紙や財神、門神像なども張られる。福の字は逆さに張られるが、それは発音から「福が来る」を意味するからだ。

「除夕」、大晦日の夜は一家団欒の時。北方ではぎょうざ、南方ではおもちを食べる習慣がある。

「大年初一」、正月最初の日。老若男女ともに盛装して先ず、家の年配者に新年の挨拶をし、長寿を祝い、子どもにお年玉をあげた後、正月用の食事を取る。初二と初三になると、親戚や友人を訪ねて新年の挨拶を交わし、祝福を願う。

一部地方では街で、獅子舞いや紙製の竜の灯籠を掲げての踊りが繰り広げられ、また縁日も開かれる。正月十五日の元宵節で春節は終わる。

◆元宵節:正月十五日。「元」は正月、「宵」は夜を意味し、1年で最初の満月の夜、大地に春が戻る夜でもある。色とりどりの灯籠に火を点して祝う。月を観賞し、爆竹や花火を鳴らし、元宵を食べ、一家団欒を楽しむ。

◆端午節:農暦の五月初五、陽暦で6月前後。すでに2000年を超す歴史がある。端午節にまつわる伝説は数多い。なかでも、紀元前300年前後の愛国の詩人・屈源が国に報いる願いが実現せず汨羅(べきら)に投身した、との話が広く伝わっている。この日には、ペーロン競漕を行い、ちまきを食べて屈源を記念する。

◆清明節:4月4日から6日の間。最も重要な祭祀で、先祖を祭り、墓を掃除する。漢族や一部の少数民族の間にこの習慣がある。

◆中秋節:農暦の八月十五日。中秋の名月と言われるほど、その他の満月より一段と丸く、一段と明るい。月の下で、月餅やすいかの種、りんご、なつめ、すもも、ぶどうなどを祭る。

◆重陽節:農暦の九月九日。『易経』では「六」を陰数、「九」を陽数に定めており、九月九日は二つの九が重なることから、「重陽」または「重九」と呼ばれる。「久久」と発音が同じなので、「いつまでも長寿」の意味がある。金色に染まる景色を観賞したり、山に登って遠景を楽しんだり、菊の花を愛でたりと、この日の活動は多彩でロマン的だ。政府は1989年、この日を老人の日に定めた。