2006 No.06
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創造・革新型国家に向けてまい進

向こう15年間の科学技術の発展目標は、2020年までに、創造・革新型国家を築き上げ、科学技術を経済・社会の発展を促進する強力な支柱に据えることだ。

張志萍

2006年に入り、国の経済発展パターンは大きく転換し、独創性の時代が始まった。1月9日に開幕した全国科学技術大会は、独創力を高めて、創造・革新型国家の建設をめざす決起大会となった。

科学技術面での革新能力の増強と、創造・革新型国家の建設を国の戦略として、現代化建設の各方面で貫徹するよう初めて提起したのは、昨年末に可決された「第11次5カ年計画」(2006〜2010年)と中央工作会議だ。

今回の全国科学技術大会は、独創性を強化し、創造・革新型国家を建設し、経済・社会の発展のために科学技術を強力な支柱にする、というのが中心議題となり、21世紀に入って最初の大会となった。

胡錦涛国家主席は卓越した貢献をした科学者に「最高科学技術賞」を授与し、開幕式で「傑出した科学者や科学技術界の人材は、科学技術の発展を決定づける要素だ」と指摘。科学技術部副部長・科学院アカデミー・国家奨励委員会の程津培秘書長はこれより前、「政府が奨励活動を大々的に推進する趣旨は、科学技術の革新を推し進め、科学を崇め尊び、人材を尊敬する優れた社会的気風を作り出すことにある」と語った。

創造・革新型国家の建設は必然的な選択

今大会で打ち出された『国の中長期科学技術発展に関する計画要綱(2006〜2020年)』(以下「要綱」と略)は、2000余人の専門家や学者が2年かけて作成したものであり、独創力を増強して、創造・革新型国家を建設するという壮大な青写真を描いたものだ。

この要綱に定められた向こう15年間の科学技術の発展目標は、2020年までに創造・革新型国家を築き上げ、科学技術を経済・社会の発展を促進する強力な支柱に据えることだ。

胡主席は演説の中で「創造・革新型国家」の意義づけについて「科学技術で経済・社会の発展を促進し、国の安全を保障する能力が著しく強まり、基礎科学や先端技術に関する研究の総合力が一段と高まり、しかも世界にも重要な影響を与える科学技術成果が数多く上げられる国だ」と強調した。

『要綱』は、政府は情報化で工業化を推進し、情報技術(IT)を発展させ、戦略的エネルギーや海洋など国の持続可能な発展にかかわる分野やバイオ、材料、ナノなどのハイテク分野を、国際競争力を持つ新たな成長分野に育成し、また産業の競争力や国の安全にかかわる宇宙航空、レーザーなどの戦略的ハイテク分野で技術革新能力の形成を加速させるとしている。中国科学院の路甬祥院長は「われわれは相対的に優位にある戦略的ハイテクを一つの方向性として選択し、重要なプロジェクトに力を集中して突破口を開いていく」と語る。路院長の言う戦略的ハイテク分野とは、情報やバイオ、重要な材料、宇宙航空、原子力、レーザー、ミクロ・ナノテク、戦略的エネルギーなどだ。

中国は古代、火薬と製紙、印刷術、羅針盤の4大発明で世界に輝かしい歴史を残しているが、現在は革新能力は低く、苦境に立たされている。スイス・ローザンヌにある国際管理学院が発表した2004年の『国際競争力に関する年次報告』によると、革新能力については、世界の国内総生産(GDP)の総額の92%を占める49カ国の中、中国は24位にすぎない。

中国科学院アカデミー、土地資源・土壌地理学者の孫鴻烈氏は「中国は過去20数年間に年平均9%という高い経済成長率を遂げてきたが、こうした成長は主に労働集約型産業が牽引したものであり、薄利だけでなく、資源の消耗も激しく、環境破壊も深刻であるため、持続させるのは難しい」と指摘する。

現在、世界の研究開発投資の86%、発明特許の90%以上は、先進国によるものであり、中国の科学技術による経済成長への貢献度はわずか39%であることが統計で明らかになった。商務部の薄煕来部長は「中国はボーイング1機を購入するには、8億枚のシャツを売らなければならない」と感慨深げに語ったことがある。

科学技術部の徐冠華部長は「総合国力の競争が日増しに激化している中、革新能力の欠如は経済・社会の発展、国の安全を著しく制約することになる」と指摘。

現在、科学技術の革新は米国や日本、フィンランド、欧州連合(EU)が国の戦略として資金投入を大幅に増やしつつある。研究開発投資が大規模であり、技術進歩による経済成長への貢献度が70%前後にも達している、というのがこれら「創造・革新型国家」に共通する特徴だ。

データが示すように、新中国建国後、GDPに占める科学技術開発への投入比率が最も高かったのは1960年の2.32%だが、2004年は1.23%にまで下がり、関連法規の定めた1.5%と比較しても差がある。

『要綱』は、2020年までに、科学技術の進歩による経済成長への貢献度を60%前後に、GDPに占める研究開発への投入の比率を2.5%にまで高めるとしている。

孫鴻烈氏は「経済成長は長年にわたって資源や資本、労働力などの要素を投じることで駆動してきた。だが、経済規模が絶えず拡大するに伴い、エネルギーや資源、生態環境が重視されるようになって、経済成長は次第に制約されつつある。従来の成長方式を踏襲していけば、資源の需要は増大し、その一方で環境にも影響が及ぶことになり、これは受け入れることはできない。だからこそ、革新能力を向上させ、経済成長方式の転換を真に実現させることが、経済を発展させるためにできるだけ早く選択すべき重要な政策だ」と強調する。

科学技術発展への新たな一里塚

新中国建国後、科学技術に関する大会は今年以前に3回開催されている。1956年の知識分子会議、1978年の全国科学大会、1995年の全国科学技術大会だ。いずれの大会でも計画または政策が制定されたほか、科学技術を大々的に発展させる機運が盛り上がり、経済・社会に深い影響を与えてきた。

1956年の知識分子会議は、「科学に向けてまい進しよう」とのアピールを発した。その後の数年間に、科学研究機関は381カ所から1962年には1296カ所に増え、大半の分野をカバーするようになった。研究者は6万人から20数万人に増え、油田発見、原爆の開発など諸分野で画期的な成果を上げた。

1978年3月の全国科学大会では、「科学技術は生産力である」、「常規を打破して傑出した人材を発見、抜てき、育成しなければならない」との方針をを明確に打ち出した。大会後、数多くの国家重点科学技術難関突破計画や「火花計画」「たいまつ計画」「863計画」(注釈参照)など、科学技術を発展させる一連の計画が次々と策定。長征シリーズ運搬ロケット、交雑水稲、高性能コンピューターなどの科学技術成果は、ハイテク産業の急速な台頭を促進して、社会全体の科学技術レベルは著しく向上した。

1995年5月の全国科学技術大会では、「科学技術こそが第1の生産力である」という考え方を全面的かつ着実に貫徹し、科学教育による国家振興の戦略を揺るぐことなく実施することを打ち出した。その後、ナノテクなどの分野で独創的な成果を上げ、基盤ソフトを持つようになり、有人宇宙飛行や「中国チップ」、遺伝子組み換え研究などでも進展を見せ、経済・社会の発展や国民生活の改善を大きく促進したことで、総合国力と国際競争力が著しく向上した。

今年の科学技術大会では、胡錦涛主席は「2020年までに、独創力を著しく増強させて、創造・革新型国家の行列に仲間入りし、ややゆとりのある社会を全面的に築き上げるために強力な支柱にしよう」と提言した。

『要綱』が真しに実施されれば、経済・社会は必ず新たな発展を遂げ、今大会も科学技術の発展史で新たな一里塚となるだろう。

独創的な成果への奨励賞を増枠

今大会で、胡錦涛主席は2005年の国家最高科学技術賞受賞者――気象学者の葉篤正アカデミーと肝臓外科学者の呉孟超アカデミーにそれぞれ500万元の奨励金を授与した(同賞が2000年に設けられて以来、これまで計9人が受賞)。同時に、314件の科学技術成果がそれぞれ「国家自然科学賞」「国家技術発明賞」「国家科学技術進歩賞」を受賞した。

国家科学技術奨励工作弁公室の陳伝宏主任は「独創性を科学技術活動の前面に押し出すために、独創的な成果への奨励賞の枠を広げた」と説明。

独創性が顕著で、知的財産権を持ち、技術レベルが高く、国際競争力の強い数多くの成果が国家科学技術奨励賞に輝いた。科学技術における独創力を顕彰する国家自然科学賞や国家技術発明賞の受賞件数はそれぞれ38件、40件に達し、合わせて前年より40%近く増えた。また、国家科学技術進歩賞に輝いたプロジェクトは、重要技術やシステム集積の面で顕著な革新を遂げ、大きな経済・社会的効果を生み出した。

受賞したプロジェクトの大半は国の需要をその方向性にしており、経済・社会の発展、国の安全にかかわる注目分野や難題、重要問題を解決したものだ。例えば、国家科学技術進歩賞一等賞を受賞した「H5亜型鳥インフルエンザの不活性化ワクチンの開発と応用」プロジェクトは、鳥インフルエンザによる感染病を有効かつ急速に抑制するために極めて重要な役割を果たしている。また、国家自然科学賞と科学技術進歩賞を獲得した「心房蠕動分子遺伝学・細胞電気生理学の研究」「鼻咽がんの分子遺伝学の研究」などの成果は、人間の健康を脅かす重大な疾病を治療する上で重要な科学的基礎となるものだ。

国家科学技術賞の評価・審査に当たってはその基準として知的財産権が重視されるようになってきた。今回受賞したプロジェクトのうち、国家技術発明賞と科学技術進歩賞ではその27.8%が発明特許を取得している。例えば、国家技術発明一等賞を受賞した「非結晶態合金触媒と磁気安定器反応工程技術」は、41件の国内特許出願のうち26件で取得し、同時に外国の特許を4件取得した。

国家科学技術進歩賞を受賞したプロジェクトでは、企業が独自に引き受けたか、または参与して完成させたプロジェクトが52.3%を占めている。陳伝宏氏は「これは企業の技術革新と開発能力が絶えず強まり、革新の中心としての地位も上昇し、企業の独創性を誘導、激励する科学技術奨励賞の役割がさらに発揮されるようになった表れだ」と見ている。とりわけ注目に値するのは、ここ数年、民営企業が参与し完成させたプロジェクトが増えていることだ。今回の国家科学技術進歩賞では17%も占めていた。民間の科学技術関連の中小型企業が次第に技術革新で重要な力になりつつある。

注釈

▼ 863計画――ハイテク研究開発計画

▼ 火花計画――科学技術を駆使して農村経済の発展促進を目指した国内初の計画

▼ タイマツ計画――ハイテク産業を発展させるための指導的な計画であり、技術成果の商品化、産業化、国際化の実現が目標