2006 No.08
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消え行くか、自転車王国

----かつて自転車は中国人の主な足として利用されていて、おびただしい数の自転車の流れが都市独特の一大景観をなし、それゆえに中国は自転車王国だとよく言われていた。しかし、一部の大中都市ではいま、自動車の急増や自動車専用道路の拡張とともに、自転車道はますます狭くなって、ひどいところでは歩道を走らなければならなくなり、また交通渋滞の原因にもなり、交通事情をさらに悪化させている。どうやら都市部では自転車離れの傾向にあるようだ。

張志萍

1978年の改革開放以来、中国では都市化とモータリゼーション化が急速に進んだ。統計によると、現在の都市化率は改革前の19%弱から30%以上に上昇しており、2010年には50%近くに達すると予測されている。また全国の自動車保有台数は6000万台に達し、しかも年間10%のペースで増え続けており、2010年には1億3000万台に達するものと見込まれている。

北京市だけでも1日の新車販売台数は数千台に上るが、逆に自転車の台数はますます減ってきている。中国自転車協会の統計によると、2000年代に入って、都市部住民100世帯あたりの自転車保有台数は1998年の180台から140台へと減少。北京市では自転車通勤者の比率は10年前の60%から20%へと低下した。

一部の専門家は「これは都市化の進展により、マイカーなど交通手段の選択が多様化した結果だ」と分析。また、今のペースで車が急増していけば、ペダルはいずれエンジンに取って替えられ、自転車王国は消え去るだろう」と予測している。

しかし、交通手段の多様化は自転車が中国人に見捨てられることを意味するものではない、との見方もある。つまり、環境保全や健康づくりへの意識が向上するにつれて、自転車は騒音や大気汚染をもたらさない、しかも健康維持にも役立つ交通手段として再び人々に利用されるようになり、またスポーツとしての作用や独特な魅力がますます多くの若者たちを引きつけて、より自転車に親近感を持つようになる、というものだ。

代替できない交通手段

中国社会科学院工業経済研究所の研究報告によると、日増しに深刻化する大都市の交通問題は世界各国が直面する共通の難題となっている。特に発展途上国の中国では、自動車の普及率はまだ高くはないが、都市規模の急速な拡大や人口や産業の中心部への集中、公共交通機関の立ち遅れ、交通管理の不整備、自動車の急増などが原因の交通渋滞や環境汚染といった問題は先進国に劣らず深刻だ。

現在、北京だけでなく、上海、武漢、西安、広州などの大都市でも交通渋滞は日増しに深刻さを増しており、都市の経済発展を阻害する主因となっている。自動車の平均スピードは超大都市の市街地では1980年代の20キロから12キロに、一部都市の中心部では10キロから8キロまで減速した。交通渋滞や輸送効率の低下による経済損失は年間数百億元に上るという。

自動車の排気ガスによる大気汚染も深刻化している。広州市では、一酸化炭素と二酸化窒素の排出量は総排出量の87%と67%を占めている。世界保健機構(WHO)が1998年に公表した調査報告によると、世界で最も大気汚染の深刻な10都市のうち、太原、北京、ウルムチ、蘭州、重慶、済南、石家荘など7都市が占めた。

経済発展に向けた環境から見て、大都市ではモーターリゼーションが本格化する前に、すでに人口密度の高い都市構造が形成されていた。しかも、改革開放後、完全に成熟した現代化された自動車関連の多国籍企業が進出したことで、都市部住民は先行してハイテクがもたらす物質的な成果を享受することになった。従って、中国の都市部はロンドンやニューヨーク、ボストンなどと違って、都市交通システムと自動車工業技術が相互に適応して、進化していく緩慢なプロセスも、さらにはロサンゼルスと異なり、車社会のために設計された都市が出現することもないだろう。

近年、一部の大都市では再開発を行う過程で、計画規制を無視して公園や緑地、広場をつぶしていることも、建築物や人口を過度に集中させ、交通渋滞や環境汚染をいっそう悪化させている。

投資政策の面では、ここ数年来、政府は高速道路の発展を非常に重視しているが、その一方で都市部の道路整備への投資は不足している。道路不足が深刻さを増し、道路網の密度が低いことも大都市の交通渋滞の重要な原因の一つだ。

中国工程院アカデミー会員の李京文氏は「資源と環境面から考えれば、マイカーが主要な交通手段になってはならない」と指摘し、次のように分析している。

米国のあるコンサルタント会社は、米国では1.3人あたり1台自動車を保有していると推算しているが、これをもとに計算すれば、中国の保有台数は9億台を上回り、石油消費量は50億トンを超える。つまり、自動車保有台数は世界全体の40%以上、石油消費量は同20%を上回ることになるが、中国にはこのようなエネルギーを供給する能力はない。次に、米国の大都市では、土地の3分の1が道路や駐車場の建設に用いられているのに対し、中国では人口が多く、利用できる土地が非常に不足していることから、その余裕はない。第3に、外国の調査によれば、汚染の少ない都市に住む人の平均寿命はそうでない地域より26%も伸びているという。この点から考えても、環境上、マイカーの普及は許されない。

欧州連合(EU)が2001年から毎年行っている「ノーカー・デー」運動はヨーロッパ各地に広がり、800以上の都市が参加している。ドイツではどの都市にも、道路の両側に鮮やかなカラー舗装が施された自転車専用レーンが設けられるなど、まさに自転車天国だ。

華東師範大学の包暁?博士は「中国の都市交通の外国とは異なる重要な特徴は、自転車が多いことだ。多くの都市で利用比率は50%ないし60%に達している。自転車はローコストで、しかも手軽で環境にやさしい交通手段であり、代替できない役割を担っている」と指摘している。

自転車時代に戻れるか

人々が自転車の利用を改めて認識するようになれば、自転車はこれまでとは異なった形で利用されるようになるだろう。

北京航輪自転車クラブ。サイクリングや、マウンテンバイクによるヒルクライムやダウンヒルなどを中心に活動する自転車愛好家の集まりだ。責任者の張栄秦氏によると、クラブには数十人で構成されるサブ会員チームが200もあり、自転車生活をエンジョイしているという。また、天津やアモイ、成都など地方都市にもサイクリングクラブがある。

昨年9月15日、上海にエポキシ樹脂技術を初めて採用した軽車両専用道が開通した。同市の楊浦区が500万元を投資して建設したもので、カラー舗装が施された専用道路は幅が2.2〜2.4メートル、全長約2キロ。塗装面が薄く、滑り防止と耐汚染性能があり、交通事故の発生を効果的に防ぐことができるといわれる。

4年間にわたる論争の末、北京市公安局は今年初め、2002年から実施してきた電動補助付き自転車の道路走行の禁止を1月4日から廃止すると発表。この決定は政府が「自動車優先政策」を見直したものと見られている。

北京市計画委員会は先頃、交通専門家や関係機関の代表を集めて都市の発展における交通問題について検討し、北京の旧い市街地の交通問題を解決する戦略を打ち出した。この研究報告は自転車を、環境にやさしい交通手段であるため、都市交通の主要手段に位置づけるべきだと提起している。