2006 No.08
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至難の授業――性教育

――性教育は中国では一貫して口に出しにくい敏感な話題であり、「性」についてどのように子供に語るかが、父母や教師にとって最も具合の悪い、また頭の痛い問題でもある。

2005年の12月5日、13歳のA君は民家に侵入し、住人の25歳になる女性を暴行しようとした。幸い彼女の助け声を聞きつけた保安係がすぐに彼を制止。少年は女性に謝り、「今後、こんなことはしない」と約束した。

中国では青春期にある人口はかなり多い。青少年は内分泌の調整で、心身に大きな変化が生じる。生殖器官が急速に発育し、第2性徴が現われ、性に関する心理が多様に変化することに多くの青少年は焦り、悩んでおり、問題の解決や指導、支援を求めているのだ。

1980年代以前の中国では、性はタブー視されていた。青少年は正式なかつ系統的な性教育を受けることはできず、性に関する知識は乏しく、性教育に対する考え方も時代遅れのものだった。1978年の改革開放以降、経済が発展し、情報が大量に流入するに伴って、人々の考え方は次第に変化していく。この20数年来、政府が支援する中、青春期の性教育は生理衛生科目として次第に学校で行われるようになった。

2002年1月、国内初の青春期の性教育に関する一連の教材が世論の関心と論争の中、正式に出版された。教材は中学や高校、大学など年代の異なる青少年を対象に、内容は青春期の性の発育、性に関する心理的特徴と障害、性の健全性と自身の保護、性に関する倫理学、恋愛・結婚期の性教育、性生活と避妊、性機能の障害、一般疾病の感染とエイズの予防など多岐にわたる。こうした教材の出版により、性教育は校で制度化し始め、性に関する教材が学校で生徒や学生に公開されるようになった。

だが、教育システムにおいては青少年の性教育はいまだ軽視されている面があり、加えて経済や社会、文化的環境の違いから、地域間、都市部と農村部の間で性教育の発展に不均衡が見られる。一部の高年齢で、文化的素養の低い人は依然、性に関する話題をタブー視している。近年、婚前交渉が増え、性病やエイズの低年齢化傾向が進み、少女の妊娠が増えるといった問題が生じている中、青少年の性教育は厳しい局面を迎えている。

性知識はどこから

中国性心理専業委員会の副主任で、浙江省性学会の許毅秘書長は「30年前に比べ、現代の青少年の性知識は豊かだとも、貧しいとも言える。性知識の出所やルートは、ポルノ雑誌やテレビ、インターネット、ディスクあるいは一部の画報など実に複雑だ。中学・高校生の性知識の80%はこれらに由来する。彼らは生理の知識面で非常に大きな問題は抱えていない。だが、こうした情報では、彼らが得る性知識は科学的、正確なものではなく、とくに性心理学や倫理学の面での知識に欠けている」と指摘する。

実際、こうしたルートから得た情報は不完全のみならず、多くが歪曲されたものであり、青少年の多くがポルノビデオやポルノサイトに接触しても、真の性知識に対してはやはり無知だと言える。上海市計画出産部門の関係者は「不正常なルートを通じて得た性に関する知識は、例えば性病の感染や治療など、多くが誤ったものだ」と指摘。こうした現実がもたらす結果は重大であり、性知識がないことから、妊娠する少女が年々増え続けている。

最初の授業は家庭で

性教育については、現代の青少年が受ける性教育の場は学校であるべきで、学校は系統的な性教育課程を設置すべきだ、と考える人が多い。だが、ある社会調査で、性の問題に直面した時に父母に解決してもらいたい、と答えた生徒・学生が9割近くに達していることが分かった。彼らは性教育の主要な責任は家庭にあると考えており、父母から性に関する知識を得たいと思っているのだ。好奇心を満たしたいという理由のほかにも、7割以上が性教育を受けるのは青少年の権利だと答えている。

それでも、家庭で性教育を初めて行うというのは容易なことではない。北京市婦女連合会が東城、海淀など5区の1500世帯を対象に行った調査によると、74%の父母が子供とは性について話さないと回答。うち母親が70.2%を占める。父母が性教育を行う方法に大きな問題があるようだ。また、適当な時期に子供に性教育を行うべきだと意識している父母は25%。性の問題を聞かれた場合、大人になれば分かると子供に話すと答えたのは50%に上る。きちんと説明するは3%に過ぎなかった。

2005年11月22日、国際的に著名な性学者、シェリー・ハイト氏が北京大学医学部で性教育について講演した。この中でハイト氏は「家族が一緒に性について語ってもいいのではないか。例えば、女の子であれば、初めて月経を迎えた時が、父母が娘に性教育を行う絶好の機会だ。米国には、子どもが性の問題に関心を持つようになると、父母が本を渡すことがある。本は子どもに性に関する様々な知識を教えてくれるからだ」と説明。だが、こうしたやり方に反対する姿勢を示した。「本を渡すのは、対話を終わらせるための方法に過ぎない。そうすれば、以後、子どもは類似する問題にぶつかっても、父母に聞こうとしなくなるだろう。そうしていくうちに、子どもに問題が生じるのは確かだ。解決する方法は、父母がより自由に、自然に子どもと性について語ることであり、その重要な前提となるのは、父母が落ち着いて自分自身を表現することだ」と強調した。

学校の性教育は

「北京青年報」が2005年に発表した調査結果から、北京市では、中学生の大多数が学校の性教育について、「すごく保守的」だとして不満を感じていることが分かった。また41.8%の生徒が「学校の性教育は国語や数学と同様に重要だ」と答えている。

現在、大半の学校で性教育が行われているが、その程度や能力、水準は社会的制約を受け、内容も生理に関する常識、生殖や解剖の段階にとどまっており、複雑で現実的な要望を満たすまでには至っていない。経済が発達していない地域にある学校では、性教育はまだ空白だ。

「教師と資金不足が最大の難題だ」。甘粛省蘭州市第九中学(中学・高校)政教処の魏海燕主任は、やるかたない表情で語る。「現在、健康課の授業は元校医が担任している。経験豊かで、授業も非常に活発だが、性教育という専門性から見るとまだ格差がある」と強調。

同省エイズ性病予防相談所の荘厳則主任は「性教育に従事している人は性の生理学しか理解しておらず、性についても正確な知識を持っていない。性教育の面では教師や資金が全国的に不足しており、人材の養成も十分重視されているとは言い難い」と指摘する。

「中国婦女報」雲南支部の梁苹支部長は2003年末から、雲南出産健康研究会が農村部の4校の小学校で行った性教育養成プロジェクトに参加。梁支部長は「実際、農村部の子どもたちは都市部の子どもと同様、授業で性知識を学びたいと希望している。ただ農村部で性を語る難しさの原因は、教師の心的障害にある」と明かす。

このプロジェクトは当初、教師たちの抵抗に遭った。「小学校に性教育を行う任務はない。小学校でこうした授業をやれば、父兄ひいては全村からわれわれが非難される」と教師たちは訴えた。

努力を続けた結果、20名余の教師が第1期養成を受けた。だが、講義に対する視線や姿勢から、教師たちが気まずさを感じ、また受動的であるのが分かったという。

梁支部長は「教師の心理的な障害を取り除き、ふさわしい教育方法を再選択しなければ、性の健康に関する知識を伝えていくことはできない」と指摘する。

中国社会科学院婦女研究センターの陳教授は「性教育は青春期が来る以前、つまり小学校の段階から始めるべきだ」と強調している。