2006 No.10
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自動車市場に期待寄せる外資

――世界の大手投資銀行による予測は決して、多国籍自動車グループが中国市場を引き続き開拓する決意を妨げるものではない。単に冒険的精神に富んだ長期戦略の目から見ているだけでなく、そこには様々なやむ得なさも滲み出ている。

馮建華

「減速させるつもりはない」。2月初め、ゼネラル・モーターズ(GM)中国のケビン・ウェール総裁は2006年の中国市場についてこう明言した。

GMに比して、フォード・モーターは減速させるどころか、「中国業務の開拓を全面的に加速させる」つもりだ。昨年に中国市場で最大の利益を上げた日本の自動車メーカーではそうした姿勢はより強く、中国市場の開拓に引き続き力を入れていく方針を示している。独フォルクスワーゲンの総裁はドイツ国有テレビのインタビューで、今後も中国市場とともに成長していくとの自信を示した。

この2カ月前、米モルガン・スタンレーは、生産過剰が一段と進むため、熾烈な市場競争によって自動車価格、利益率と投資の回収は低下し、2006年に中国の自動車業界は利益を計上できない可能性があり、2007年にはその状況はさらに悪化する、と予測する報告書を発表。

世界的な影響力を持つ投資銀行であるモルガン・スタンレーの予測が、熱気に包まれる自動車業界に“冷水”を浴びせかけたのは言うまでもない。しかし、GMやフォードなどの多国籍グループの戦略に、この“冷水”は予想された作用をもたらすことはなかった。

では、これら多国籍グループの自信はどこに由来するのか。

生産・販売台数から見ると、昨年は乗用車が依然として増加の勢いを維持し、いずれも2ケタの伸びを見せた。生産台数は571万台、新車の販売台数は592万台。年間を通じて、高級車の月間販売台数は前年比で9%減少するなど、やや低迷したものの、中低価格車は同57%増加した。

しかし、生産・販売台数は増加してはいるが、利益はむしろ減少傾向にある。商務部の最新データによると、昨年1〜11月の全国自動車関連製品の販売収入は前年同期比で約9%伸びたが、利益は30%の減。完成車メーカーでは約40%も減少している。

中国自動車工業協会が昨年10月に発表した統計では、同年上半期の業界全体の販売利益率は最低ラインの4.1%に過ぎなかった。

利益率が低下する中、生産能力は急伸している。国家発展改革委員会の統計によると、生産能力はすでに800万台に達し、需要量を200万台上回っている。さらに準備中や計画中の220万台を含めれば、1000万台に達することになる。国家発展改革委員会工業司の陳斌副司長は「2010年末までに、生産能力は2000万台前後に達し、実需の倍以上になる」と予測。

2001年以降、中国の自動車業界は生産能力過剰の中で揺れ動いてきた。昨年は利益が大幅に減少しながらも、生産能力が急速に増強される可能性があったことから、国家発展改革委員会は業界に“赤信号”を発した。同委員会が最初に講じた措置は、2006年1月下旬以降、全国124社の企業を対象に自動車生産を永久に停止するか、または生産資格を取り消けすというものだ。

自動車は生産能力の過剰から過熱状態に陥ると見られるため、政府の関係機関は一連の抑制措置を相次いで打ち出す方針だ。なかでも、生産能力拡大の抑制が最重点となる。そのため今年は、国のマクロ調整による統廃合が業界の焦点になるのではないか。

しかし、生産能力過剰論に対しては一部専門家が疑問を呈している。中国自動車工業協会の首席アナリストの賈新光氏は「一面、すべての企業は生産計画に当然ながら、一定の余裕を持たせており、発展に向けた余地は残されている。従って、現在の生産と販売の格差200万台は自動車業界にとっては正常な数字だ」と指摘している。

さらに重要なのは、国家発展改革委員会が行った生産能力に関する統計も、各メーカーが自ら報告したデータをもとに出した結論だということだ。しかし、企業が全く根拠のない生産能力目標で名声を得ようとしたり、地方政府が誇張した計画で政治業績を顕示するために「虚偽の生産能力」を発表したりすることが業界内では広く見られる。そのため、これらの統計データが水増しされている可能性もある。

これについて、賈新光氏は「無効な生産能力の過剰、有効な生産能力の不足」、という相対的に過剰状態にあるのが業界の実情だと指摘。つまり、一部のブランドを確立していない小規模メーカーについて言えば、生産能力がいくら低くとも過剰に見えることがある。一方、多くの国内主要メーカーについて言えば、いかに生産能力不足という危機に対応するか、真の問題となっている。例えば、知名度の高い民族企業である奇瑞自動車では、生産能力が20万台に限られているために、月間注文台数のうち約1000台が生産できない状態にある。

19世紀に初のガソリン車が欧州に誕生。20世紀には自動車生産の中心は米大陸に移った。21世紀に入り、欧米の自動車メーカーは相次いで販売不振に陥り、米国メーカーの経営状況はとりわけ厳しい。

世界自動車販売台数ランキングで、GMは2004年も808万台で第1位を維持したが、2001年に比べると22万台の減少。フォードはわずか643万台で、同57万台も減少し、トヨタに抜かれて世界第2位のメーカーから3位に後退した。

欧州の自動車業界の状況は米国に比べるとやや好調だが、成長が緩慢という問題に直面している。欧州最大のメーカーであるフォルクスワーゲンの2004年の販売台数は507万台と、3年前に比べ3万台しか伸びていない。

同時に、ブラジルやロシア、インド、中国(BRICs)を代表とする新興市場で需要が高まるに伴って、自動車業界の勢力図は激変しつつある。米KPMGが発表した最新の世界自動車業界年度調査報告によると、「消費者の嗜好は北米・欧州車からアジア車へと移っており、それに伴ってアジアのブランド車が世界市場に占める比率は増大する」と見ているメーカーは88%にも達した。

一部のアナリストは「GMとフォードという2大巨頭の経営危機がさらに悪化すれば今年、全世界の自動車業界は再びブランド競争に直面するだろう」と予想している。

米日やドイツなど世界の自動車大国の販売台数がほぼ伸び悩みの状態にある中、それに伴って急変する市場で足場を固めるには、安定しかつ巨大な新興市場を探し求めるか、または育成する必要があるだろう。

ここ数年来、中国の自動車市場は急速に発展しており、年間販売台数は2ケタの伸びを見せている。中国は2003年、ドイツを抜いて世界第3位の自動車消費市場となった。中国自動車工業協会では、今年の販売台数は約12%伸びて640万台に達し、新車販売台数では日本を追い越して世界第2位になると予測している。

所得水準の向上に伴い、多くの大中都市では車が急増し、交通渋滞が深刻さを増しているが、まだマイカーを購入する意欲をそぐまでには至っていない。昨年の民間保有台数は3000万台に過ぎないと推計されており、千人当たり約24台の水準だ。世界平均は同120台、米国は同700台余に達している。この面から見ても、中国の自動車消費市場には大きな潜在力がまだある。これも外国自動車メーカーが期待を寄せる要因だ。とくに中国の大多数の消費者のニーズに合った良質で廉価な中低価格車市場には、さらに大きな開拓の余地があると言えるだろう。

現在、中国市場では依然として外資・合弁ブランド車が主体だ。また市場構造が大きく変わりつつあるため、再び統廃合が行われる可能性も高い。これが外資ブランドの拡大に絶好のチャンスとなるのは間違いない。

しかし、認めざるを得ないのは、幾つかの客観的な要因から、自動車市場に一定のリスクと障害が存在していることだ。例えば、自動車ローン政策と関連法律がいまだ整備されていないため、返済を滞納するケースが頻発している。また外資が得意とする中古車市場では、法律の規定が煩雑で、しかも税制面から中古車価格は新車と同様に高く設定されている。こうした状況が外資の膨大な利益獲得を阻んでいるのは明らかだ。

そのため、様々な要因を考慮した上で、外資が中国に進出するには、生産と販売ルートに依存する単一的な利益計上モデルを転換しなければならない。一段のコスト削減を図るほか、アフターサービスなど産業チェーンの下端にある空白な市場を掘り起こして、企業のリスク対応能力を高めることが必要だ。