2006 No.11
(0306 -0312)
 

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 重要文章

都市環境保全の重点はゴミ処理

――環境保全は中国政府にとって重要な事業の一つである。政府の科学発展観に対する認識が向上し、住民の生活環境改善への期待が高まるにつれて、都市の廃棄物処理対策も水質汚染や工業汚染の対策強化とともに、ますます重要な課題となってきた。年初、政府は初めてゴミ処理を環境保全事業の重点に位置づけ、無害化処理という目標を提起した。しかし、技術的にかなり遅れているため、無害化処理率は依然として低く、今後の都市環境保全の一大重点となるだろう。

蘭辛珍

中国では今、都市廃棄物の処理が各地方政府にとって重要かつ差し迫った課題となりつつある。国務院は2月に「科学発展観の実施と環境保全の強化に関する決定」を発表し、ゴミ処理が環境保全事業の8大重点の1つとして盛り込まれた。

政府の提唱により、各地方政府は1980年代から環境衛生都市づくりを展開、20数年にわたり環境保全に取り組んできた。都市環境の状況のいかんが、地元政府の業績を考査する基準の一つとされている。

しかし、大量のゴミをいかに迅速に処理するかは各地方政府、特に環境保全事業の担当者にとっては厄介な問題だ。各地に生活環境などに関する苦情受付ホットラインが開設されており、ゴミ問題に関する苦情が数多く寄せられている。

都市化の急速な進展に伴う人口急増や、建築物の高層・大規模化、工業やサービス業の急速な発展などから、ゴミ排出量もますます多くなってきた。政府は毎年、多額の資金を投入してゴミ処理にあたっており、各都市もゴミ処理場の建設を進めているものの、政府の努力が都市化の進展に追いつかないのが現状だ。

資料によれば、ゴミの年間排出量は世界全体で4億9000万トンであるのに対し、中国は同約1億5000万トン。また排出量の年平均増加率は世界が8.42%であるのに対し、中国は同10%以上。現在、中国の都市部では未処理の生活ゴミは70億トンに達している。

処理方法

中国環境保全産業協会都市生活ゴミ処理委員会の資料によれば、都市でゴミ処理が本格的に行われるようになったのは1980年代以降。それまでは屋外に積み上げていた。ゴミ処理率は1990年以前は2%弱だが、それ以降ようやく上昇するようになった。1999年時点で、行政市である全国668都市に建設されたゴミ処理場は696カ所。うち無害化処理場は200カ所にも至っていない。ゴミ処理率は63.4%だが、無害化処理率はわずか20.3%だった。現在、無害化処理場は700数カ所にのぼり、無害化処理率は52%に達している。

北京市市政管理処の梁広生氏は「現在、都市ゴミの無害化とリサイクル関連技術の研究開発を進めているが、一部の技術で成功したため、リサイクルはまったく問題はない。今は分別収集が最大の問題だ」と説明した。

中国では都市ゴミは◆資源ゴミ(ガラス、磁性金属、非磁性金属、紙類、ゴム、プラスチック)◆有機ゴミ(生ゴミ、生物ゴミ)◆無機ゴミ(灰、レンガ、陶磁器など)◆有毒・有害ゴミ(乾電池、蛍光灯、殺虫剤容器、期限切れ薬品、医療廃棄物、テレビ、電話、パソコンなどの家電製品)の4種に分別される。

ゴミの分別収集・処理は政府が2002年に提唱したが、現在の普及率は16%に過ぎない。ほとんどの都市では3種類の方法が採用されている。

第1は、清掃作業員が毎日、住宅団地や道路の両側、公共の場所に置かれた収集容器から集める。第2は、住宅団地に設けられたゴミ収集所から集める。第3は、高層建築物ではダストシュートを利用して集める。これまでは第3の方法が広く採用されてきたが、2003年の新型肺炎(SARS)発生後、細菌の伝染源になるとして多くの都市で禁止されるようになった。北京や広州、上海などの都市は新築マンションでのダストシュート設置を禁止する規定を設けている。

収集されたゴミは密閉式の収集車で中継センターに運ばれた後、分別機で有機物と無機物、再生可能物と再生不可能物に分類される。粗大ゴミは圧縮処理を行う。ゴミは減量化と無害化を目的に、埋立処分、堆肥処理、焼却処分される。埋立処分の場合、化学・浄化処理を経て生成された水は洗車、緑化への再利用が可能だ。堆肥処理すれば、植物の肥料に利用できる。

ゴミ焼却熱を電力に変換する「ゴミ発電」も導入されている。ゴミ1トンの焼却で300キロワットの発電が可能で、余熱も熱供給に利用できる。現在、全国で稼動中または建設中、申請審査中のゴミ焼却発電施設は計140カ所を数える。国内最大の天津双港ゴミ発電所では、ゴミ処理能力は日間1200トン、年間発電量は1億2000万キロワット時。5万世帯に年間を通じて電力が供給でき、標準炭で4万8000トン節約できるという。

焼却処分方法は資金不足からまだ普及していない。また、焼却時にダイオキシンが発生するため、多くの都市では医療廃棄物を除き、主に埋立処分方法が採用されている。

政府は、都市ゴミの農業への使用規制やふん便の無害化、ゴミ焼却排出ガスなどに関する基準を相次いで制定。中国環境保全産業協会都市生活ゴミ処理委員会の資料によれば、現在、埋立処分が70%、堆肥処理20%、焼却処理5%、屋外での堆積やリサイクルなどが5%となっている。

処理の市場化

これまでは都市ゴミの処理企業は政府が管理し、資金を拠出して運営してきたため、市場化は進まなかった。政府がゴミ処理に支出する資金は年間約300億元にのぼるが、民間資本は総費用の2%を占めるに過ぎない。

政府は1992年、民間資本と外資系企業の公共事業への参与を認可した。また、建設部は先ごろ「都市・農村部の環境衛生体系の整備」を発表。環境衛生作業とゴミ処理を管理する主体を、政府から近代化された企業へ移行させることが、2010年までに実現する目標の一つとして提起された。

多くの都市は今、現行の政府と企業が一体化されたゴミ管理体制から、環境保全部門が監督し、衛生環境部門が管理し、専門会社が社会サービスを提供する管理モデルへの転換を積極的に進めているところだ。ゴミの収集と搬出、処理を専門にする企業が設立され、ゴミ処理の有料化制度の導入が徐々に進むなど、ゴミ処理の産業化と市場化が加速している。広州市ではここ5年間に4カ所に大型ゴミ処理場が建設され、投入資金は24億元にのぼったが、うち13億元は民間資本によるものだ。

その一方、環境保全関連の外国企業が中国に進出してきた。

2月10日、世界ベスト500社の1つである仏スエズ社は、アジア太平洋地域本部を上海に設置すると発表。さらに「中国の環境保全産業は巨額の投資が見込まれ、今後二年間で倍増する」として、上海のほか北京、青島、重慶及び南部の珠江流域を重点投資地域にするとの方針を明らかにした。

同社は、上海国際化学工業区と水務、汚水処理、廃棄物処理施設の建設に関する投資、設計、管理面で50年にわたって協力することで合意。また上海化学工業区と、工業ゴミ焼却場の共同建設、運営でも30年間の契約を取り交わした。

処理の問題点

中国環境保全産業協会は、ゴミ処理はまだ完全には産業化されておらず、さらに多くの問題点があると指摘し、解決すべき問題として以下の3点を挙げている。

第1は、都市でゴミの分別収集がまだ普及していないことだ。分別収集は2002年に提唱され、町や住宅団地にそのための施設が設けられてはいるが、期待した効果は上がっておらず、ほとんどの都市で従来の収集方法が続いている。住民の環境意識が低い、分別収集と搬出用施設が整備されていない、ゴミの仕分け方・出し方の指導が徹底されていないなどが原因だと分析している。

第2は、ゴミの収集や搬出、処理技術が遅れていることだ。経済が発達した北京、上海、深センなどの都市を除くと、ほとんどの地方都市ではゴミ処理施設の密閉化が進んでおらず、また作業着やマスクなどを装着せずに作業することがかなり多く、ゴミが発生する有害物質が作業員の健康を損ねているのが現状だ。

第3は、政府は2002年にゴミ処理の有料化政策を打ち出したが、その実施が難しいことだ。具体的には、生活ゴミについては一世帯の年収の0.3%、医療廃棄物は1トンにつき3000元、工業廃棄物は同1000元徴収するとしている。しかし、有料化はまだまだ徹底されておらず、支払いを遅延したり、拒否したりする企業も一部ある。北京市市政管理処によると、北京市が昨年収集した料金は徴収すべき金額の40%に過ぎない。

使用済みの電池やパソコンなど、電子ゴミのリサイクルも問題の一つだ。技術が遅れているため、処分地に野積みにするか、埋立処分、焼却処分しかできず、浸透防止層の厚さを厚くすることしかできないのが現状だ。

梁広生氏は「政府はこうした問題を注視している。各地政府も方策を考えて政策面から支援すると同時に、科学研究機関に対し、新技術を開発して技術水準を向上させるよう奨励しているところだ」と話している。