2006 No.12
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危機との闘い

――様々な突発的な危機への対応で、政府はますます熟達し、自信を持つようになってきた。

馮建華

北京市の王岐山市長は先ごろ開かれた会議でこう語った。「われわれ市長は毎日、食堂で食事をする際に、どこで何が起きたか、どんな措置を取るべきかについて話し合っている」。3年前、危急存亡の際に命を惜しむことなく、果敢な態度で新型肺炎の蔓延を抑止したことで人々に注目され、市民から親しみを込めて「消防隊長」と呼ばれたのが、この王市長だ。

しかし、市のトップとして、危機管理経験の豊富な王市長はいささかも油断することはない。ここ数年来、北京では突発的な事件や事故が頻発している。雪や雨が降っても、霧が下りても、この大都市の交通が麻痺する可能性はある。このため、首都という特殊な地位にある北京市政府がこうした危機にいかに対応するかが、国内外から注目を集めるのは間違いない。王市長にとって、都市の公共の安全の問題は“悪夢“のようなものだろう。

王市長の体験は、各地方政府のトップの間でよく知られている。危機に対して、以前のような受動的な対応から、主動的に防止、解決する方向へと徐々に変えようとしているのだ。

東部沿岸部にある山東省威海市では昨年12月3日以降、連日大雪が続き、すぐさま緊急措置を取らなければ、住民の生命と財産が深刻な被害を受ける事態に陥った。こうした中、市政府は直ちに対応策を講じると共に、緊急対策本部を設置。救援活動は円滑に進み、危機は最大限回避された。

「迅速な情報の収集、これが功を奏した」と同市のある幹部は話す。

しかし、認めなければならないのは、庶民に密接な利益に関わる突発的な危機が発生しても、十分な準備作業をしなかったり、はては消極的だったり、特にそれが幹部の腐敗行為に及ぶ場合には、往々にして真相を覆い隠そうとする地方政府が一部にあることだ。例えば、炭坑の大規模な爆発事故が起きているが、最初に考えるのは、情報を公開しないことであり、その後に内部で解決しようとする傾向がある。その結果、同じ炭鉱で類似する事故が連続して起こり、しかも深刻の度合が増している。

また、幾つかの行政区域にまたがる地区で危機が生じた場合に、処理に当たって情報が行き届かないなど地域間の非協調性が、速やかに解決する上で大きな問題となっている。昨年末に東北地方で発生した水質汚染事故はその一例だ。汚染発生地の吉林省が発生直後に情報を公開しなかったことから、汚染は下流にある遼寧省まで拡散し、大きな損失をもたらした。

しかし、今年以降、こうした深刻な事態は次第に減少していくと期待される。国務院が1月8日、「国の突発的で公共的な事件に関する総合緊急対応策」を公表したからだ。これは強制力のある行政法規であり、様々な突発的事件を防止し処置するための規範的文書でもある。

対応策は、省クラスの行政区域をまたがる場合や、事故発生地区の省クラスの人民政府の処理能力を超えた場合、あるいは国務院が処理に責任を負わなければならない特別かつ重大な突発的で公共的な事件の対応に適用される。

同対応策では、突発的で公共的な事件を自然災害、事故による被害、公共衛生に係る事件、社会の安全に係る事件に分類。また早期警戒等級は、事件がもたらす危害の程度、緊急度と進展の度合に応じて4級に分けられている。特に重大はT級、重大はU級、比較的重大はV級、普通はW級で、それぞれ赤とオレンジ、黄、青色で表示される。

各地方政府は突発的事件が発生した直後に簡潔な情報を公開し、その後に初期の確認状況と政府の対応措置、公衆のための防備措置などを公表すると共に、事件の処置状況に即して情報を継続して公表しなければならない。また、T級あるいはU級の事件が発生した場合は、4時間以内に国務院に報告する必要がある。

突発的事件、とりわけ自然災害が生じた場合には、被災者の衣食、医療、住居など基本的な生活を保障しなければならない。

さらに、緊急処置に対しては「責任追及制」を実施。報告の遅れや虚偽の報告、報告漏れ、あるいは緊急対応監理作業での職務怠慢、汚職行為については、法に基づいて関係責任者を行政処分し、犯罪となる場合には、刑事責任を追及する。

特有の地質構造と自然・地理的環境から、中国は自然災害が最も深刻な国の一つだ。また人的流動が頻繁になるに伴い、公共衛生事件が重大な脅威になりつつある。世界で新たに発見された30数種の伝染病のうち、半数は中国で発生したもの。同時に長期にわたって災害が頻発していることから、社会の警戒心は比較的低く、市民の多くが自己救済・保護といった防災意識や能力に欠けている。

2003年春から夏にかけて発生した新型肺炎は中国政府に多大な代価を払わせることになり、政府の上層部は突発的事件の緊急対応体制を確立する重要性と緊急性を痛感した。その後、突発的事件の対応体制の確立が中央政府の重要課題になっていた。国務院は専門の作業グループを設置し、200回以上にわたって検討会を開いて各方面の専門家や関係者から意見を聴取。何度も修正しながら、2年かけて今年初めに「国の突発的で公共的な事件に関する総合緊急対応策」を公表した。

突発的事件が発生した場合には、公民の権利を制限する必要があるため、公民の財産が徴用される可能性もある。こうした状況の中、政府が権力を乱用しないようにするにはどうすべきか。これは総合緊急対応策では完全に解決できないものであり、関係する法律で拘束力を持たせることが必要だ。すでに「緊急事態法」が最高立法機関である全国人民代表大会と国務院の立法計画に盛り込まれている。

◆参考資料

緊急対応管理体制の形成過程について

●2001年初め:上海市は2年かけて「災害・事故の緊急措置に関する総合対応策」を制定。省クラス政府で最も早く制定された災害・事故に関する緊急対応策である。

●2002年5月:広西チワン族自治区の区都南寧市は「緊急対応連係行動システム」を正式に始動。国内で最初の都市緊急対応システムである

●2003年5月:「突発的な公共衛生事件に関する緊急対応条例」を公布。

●2003年7月:政府は突発的で公共的な事件の緊急対応体制の確立を加速するとの重大な課題を提起。国務院弁公庁は緊急対応作業グループを設置した。

●2003年9月:「北京の新型肺炎の予防・治療に関する緊急対応策」を公布。

●2004年5月:国務院弁公庁は「省・自治区・直轄市人民政府の突発的で公共的な事件の総合緊急対応策に関する枠組み指針」を各省・自治区・直轄市の人民政府に伝達。突発的で公共的な事件に関する総合緊急対応策を制定し、2004年9月末までに国務院弁公庁に報告するよう求めた。

●2005年1月:温家宝総理が召集した国務院常務会議で、「国の突発的で公共的な事件に関する総合緊急対応策」と25件の専門緊急対応策、80件の機関別緊急対応策の計106件が原則採択された。

●2005年7月22、23日:国務院は「全国緊急対応管理作業会議」を開催。緊急対応管理は経常化、制度化、法制化されることになった。

●2006年1月8日:国務院は「国の突発的で公共的な事件に関する総合緊急対応策」を公布。国務院の関係機関は国の専門緊急対応策と機関別緊急対応策を策定し、全国各省・自治区・直轄市でも省クラスの緊急対応策が策定された。