2006 No.15
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>> 国際評論

大国間関係のモデルとも言える中ロ関係

兪 邃(中国国際戦略学会高級顧問)

●世界情勢の変化により、大国は国益を起点とし、競争と協力をプロセスとし、双方の利益を結果とする新しいタイプの関係を構築することが求められている。

●中ロは相互信頼を基礎に妨害を排除するがゆえに、時としてある種の利害対立が生じることはあっても、国家関係はぎくしゃくしていない。

冷戦終結後、世界情勢の変化は、大国に対し、新しいタイプの国家関係を構築するよう呼びかけている。こうした新しいタイプの関係には起点、過程、結果三つの部分が含まれる。起点とは、自らの国益を擁護すると同時に、相手国の国益を尊重することであり、どちらも欠かせないものだ。プロセスとは、競争と協力が併存し、摩擦と妥協が共存することである。つまり、ルールを順守する競争、相互信頼に基づく協力、対抗までに至らない摩擦、適当な妥協、というものでなければならない。結果とは互恵と双方の利益であって、どちらか一方が利益を獲得することではない。当面の中ロ関係はまさに、この新しいタイプの大国関係のモデルと言っても過言ではない。

新しいタイプの特徴

中ロ関係が「新しいタイプ」と呼ばれるのは、以下のような四つの特徴が見られるからだ。

第一は、確固とした基礎に関係が構築されているということだ。両国はいずれも国の振興に力を入れており、ある意味においては同じ転換型の国であり、改革の重点を、国際社会との関係発展をその方向とし、経済収益と科学技術水準の向上に努めるとともに、これを基礎に生産力の発展や総合国力の増強、人民の生活水準の向上に取り組むことに置いている。近隣として、両国は相互信頼、相互理解、相互支持を維持し、平和共存五原則を踏まえて同盟を結ばず、対抗せず、第三国にも対向せず、平等で信頼関係のある良好な隣国、良好な友人、良好なパートナーになる決意をしている。両国はいずれも発展の道を自ら選択することを尊重し、イデオロギーが国家関係の正常な発展に影響を及ぼさないようにしている。言えば、「世々代々にわたり友好的に付き合い、永遠に敵としない」ということだ。

第二は、相互補完を基礎に協力を強化しているということだ。両国の相互補完性とは主に、経済の相互補完性、あるいは強みの相互補完性を指す。これは両国の指導者が担った歴史的使命と、両国が備える優れた物質的条件にかかっている。両国は4200キロにわたる国境を有し、経済面においてそれぞれ強みを持ち、市場は巨大であり、協力の潜在力も極めて大きい。

第三は、共通認識を基礎に世界に対応しているということだ。両国の国際情勢に対する見方や、世界の平和と安定を擁護するための対策には共通点が数多くある。時代的な特徴や世界の枠組み、注目を浴びる地域問題に対する認識や、伝統的な安全への脅威と非伝統的な安全への脅威に対する対応、新しい安全観の提起、新しい国際秩序の確立の推進、国際関係の民主化の促進に関する主張などだ。

第四は、相互信頼を基礎に妨害を排除しているということだ。中ロ関係が安定を維持しているのは、政治上の相互信頼に重きが置かれているからだ。「中国威脅論」は現在でもロシア国内ではある程度聞かれる。極東地域には150万もの中国人が住んでいるため、「近い将来極東のシベリア地域は中国に併呑されるだろう」といったうわさがそうである。ロシアの新聞『トルード』は年初、極東地域の中国人はわずか3万5000人であり、一時居住者を加えても、せいぜい20万人程度足らずだとの事実を明らかにした上で、もし中国人がいなければ、この地域の振興はきわめて困難だとも論評した。中国側にもロシア対する信頼という問題がある。2年前、ロシア側が東シベリア・アンガルスクと中国の大慶を結ぶパイプライン建設計画を変更したことから、一部でロシアの設備や科学技術などの分野での強みに対して懸念や不安の声が上がった。幸いなことに、両国の指導者が全体の利益を考慮して措置を講じてきたため、さまざまなマイナス要因による友好協力関係への影響は防止、回避された。

「モデル」と評価されるのは

中ロ関係の特色について以下に列挙する。同盟を結ばずに戦略的な協力を進めている。関係は緊密化しているが、互いに依存しない。自らの尊厳と利益を擁護し、しかも相手国を覆す意図を持たない。二重基準を採用せずに、理非曲直に基づいて国際問題を処理している。超大国である米国との関係発展を重視するが、一国主義には反対している。利益の対立があっても話し合いで解決している。世界の多極化を推進するが、覇権は求めない。まさにロシア外務省のスポークスマンが指摘するように、ロ中関係は安定かつ強力な勢いで発展する道を歩むようになり、すでに相互関係にとって最良のモデルが見出されているのである。両国はこうしたモデルを踏まえてそれぞれの国益を最大限に考慮し、「世々代々にわたり友好的に付き合い、永遠に敵としない」図式に基づいて両国関係の将来を自信をもって展望できるから、「モデル」と評価されるのである。

大国間関係と言っても、そのタイプは実にさまざまだ。同盟関係もあれば、非同盟であっても緊密な関係もある。しかし、「同盟」であれ、「緊密」であれ、いずれも「モデル」とは言えない。例えば、米英関係、日米関係は非常に緊密であり、それらはユーラシアの東西の端において互いにその重要性に依存している。また、英日はグローバル戦略において対米追随外交を行ってきており、米国が主導し英日が従属する主従関係にある。こうした関係は「モデル」とはまったく言えない。そのほか、ロ独やロ仏も良好な関係のように見えて実は北大西洋条約(NATO)の東欧への拡張やコソボ紛争などで見解に相違がある。独仏は人権問題やチェチェン問題をめぐる政策でロシアの利益を損ねているだけでなく、プーチン大統領の「統制可能な民主主義」政策に不満を示しているため、それぞれに対ロ関係はあまり安定していない。

戦略的協力に向けた経験

中ロ関係は大国間の関係を健全に発展させる上で貴重な経験を積んできた。主に次の三点が挙げられる。その第一は、長期的な発展方向を明確にし、便宜的手段を取ることなく、より長い目で将来を見通さなければならないということだ。第二は、確固とした政治的基礎を築く、つまり、共同声明と関連文書を介して、両国関係における相互尊重、平等と信頼、互恵協力、共同の発展という原則を厳守すると確約する必要があることだ。両国の国民の利益と願望にかなうだけでなく、地域や世界の平和と安定にも有益だからである。第三は、効果的なメカニズムがしっかりと確立されていることだ。これによって中ロには元首、首相、外相間の定期会談が制度化され、民間組織である中ロ友好平和発展委員会も発足したことで、両国の友好協力関係に向けた社会的基礎が強化されたのである。