2006 No.15
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>> 国際評論

中国の「ソフトパワー」は文明間の
摩擦をもたらすか

沈進建
(中国社会科学院研究室研究員)

このところ、世界のメディア界では中国の「ソフトパワー」をめぐる議論が活発化し、注目を集めている。

中国の「ハードパワー」の発展が世界の政治構造を水面下で変えつつある一方、「ソフトパワー」という優れた文化が世界の文化に融合するようになった。人類文明史の発展プロセスに、「ワシントン・コンセンサス」とは異なる「中国の平和的発展の道」というもう一つの選択枝が現れたのである。

中国の平和的発展は国際社会に実に様々な反響を引き起こしている。一つは、中国の「ソフトパワー」の成長は東西に「文明」間の摩擦をもたらすというものだ。冷戦後に「西側文化は儒教とイスラム文明の厳しい挑戦を受けている」、との見解をハンティング.ジョン元米国務長官補佐は示している。

もう一つは、中国の「ソフトパワー」の成長は世界の東西に「ソフトパワー」間の競争を引き起こすという見方だ。ジョセフ元米国防長官補佐は先ごろ発表した論評で、「中国の文化、経済、政治、外交は世界に影響を及ぼしており、これは米国への警告だ」と指摘し、中国の「ソフトパワー」に警戒するよう促した。両者の観点は、西側諸国が中国の文化に対して当惑と猜疑心を抱えていることを示すものであり、世界の不安定要素は中国に起因するものだと誤って理解し、21世紀における中国と西側の文明間の摩擦を理由もなく中国の「ソフトパワー」の成長に帰するというものである。

歴史的に見れば、西側大国の台頭は残酷な原始的蓄積と植民地に対する血生臭い略奪により蓄積された富に依存したものであった。西側の現実主義的政治家であるミアシェイマー氏は大国の台頭の歴史を総括し、「すべての大国は無情な権利追求者であった」と指摘している。大国の台頭が経済、軍事と文化面での摩擦をもたらし、それによって世界が不安と混乱に陥るのは避けて通れない。そのため、西側の大国が輸出した「ソフトパワー」は、殖民地の略奪と「他国の内政の操縦」とか「人心の征服」といったものを明らかに備えたものであり、また文化帝国としての「覇気」を有するものでもあり、一貫して世界の賛同と容認を得ることはできなかった。

中国の平和的発展は、国際的な平和な環境をめざすことを前提に、国内改革と外資の導入という二重の原動力をテコにして、独立自主を進め、外国に支援を求め、侵略と拡張をせずに得てきたものである。平和な国際環境がなければ、中国の発展の実現は不可能であった。それ故に、中国はより平和を大切にし、ようやく手にした平和な環境を熱愛するのである。

中国は5000年の悠久の歴史と燦然と輝く文化を擁する文明の古い国であり、盛衰と復興、台頭という変遷の道を辿ってきた。この長い過程において、中国は浮かび上がった文化的残滓を絶えず淘汰し、新たな文化的要素を融合させてきたが、現代の数多くの価値観と優れた伝統的観念は終始ともに受け継がれてきた。改革・開放後、中国は「古きものを今に利用し、外国のものを中国に利用し、中国と外国のものを併用し、ともに融合させる」方針を一貫して堅持している。中国人は「中国式」の価値観を崇拝するとともに伝統的な特色のある生活方式をより好むようになっており、その一方で、中国の豊かな文化に引きつけられる外国人も増えてきた。

改革・開放30年来、中国は経済の対外拡張と軍事的な植民略奪に依存することなく、また米国の価値観と制度を体現する「ワシントン・コンセンサス」に従って発展してきたわけでもない。国内改革と対外開放に依存し、先進国の経験を吸収・参考することによって、中国の特色ある政治制度と経済制度を構築するとともに、国情に合った発展戦略と政策を模索して、世界の4分の1の人口の衣食の問題を解決し、改革の成果を共有できる調和の取れた社会発展の道を歩いてきたのである。

中国の「ソフトパワー」には顕著な時代的特徴がある。平和・協力・調和をより大切にし、独特な「和合」(平和・協力)文化の魅力を有していることだ。

改革・開放以来、中国は対内的には公平で公正、かつ持続性のある協調的に発展する調和の取れた社会の構築を堅持している。同時に対外的には、平和で共存する、友好協力の善隣関係を模索し、世界の多元化、平等互恵、共存、双方の利益を主張している。即ち、他国の内政は操縦せず、世界の「覇権」を謀らないというものだ。

「和」を核心とする中国の全面外交は、かなりの親和力を有しており、世界の大多数の国から尊重と賛同を得たことで、中国と世界各国との距離は縮小した。

中国は経済的にきわめて困難な環境の中で大胆に改革・開放政策を打ち出し、外国の資金や先進技術、管理ノウハウ、文化・生活方式を導入し、30年かけて外資の導入・利用により最速の発展をとげた国となった。また海外への留学生が最多の国の一つでもある。

現在の中国はより開放されており、人的交流が急増している。昨年1〜10月の海外からの観光客数は延べ5975万5400人に上り、世界の観光大国となった。インターネットは中国人が世界と交流する主要な通信手段であり、16〜24才の若年層では利用率は87.80%に達している。

中国の「ソフトパワー」には向上心に満ちた、勤勉で勇敢な民族精神が凝集されている。中国は、面積は広大だが資源に乏しく、しかも世界の4分の1の人口を有する国だ。それでありながら、海外に向けて拡張に乗り出さず、他国の資源を略奪せず、海外に大量の移民を送ることもせず、13億人の衣食の問題を解決する負担を他国に転嫁することもしなかった。独立自主と自力更生の精神に依存し、中国特有の廉価な労働力という強みと、世界で最も低い労働コストと最も価格の安い商品の生産に依存することで、中国人の勤勉さや血と汗によって原始的蓄積を手にし、発展のチャンスをつかみ取ったのである。

21世紀における東西文明の相互摩擦、相互尊重、相互融合のプロセスにおいて、中国の「ソフトパワー」の成長が誠意をもって世界に向けられることで、東西各民族の相互理解、相互学習、友好的な共存、共同の発展が促されることであろう。中国の古い文明は世界に対し、より麗しい望まれる平和な光景をもたらすに違いない。