2006 No.16
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技術の自主開発に至る道のりは

中国の科学技術関連企業は世界の加工企業にすぎないのか。中国はいったい本当の意味でのハイテクを持っているのか。技術の自主開発までにどれほどの時間がかかるのか。新鮮味を失ったかの感があるこれらの問題が、『国の中長期にわたる科学技術発展計画要綱(2006〜2020年)』(以下『要綱』と略)」の発表で、数年前に提起されたのに続き今、再び新たは論議を呼んでいる。

2月初め発表された『要綱』は「国民経済の命脈と国の安全保障にかかわる肝要な分野において、真に中核となる技術は買い入れることはできない」としている。そのため、今後の国際競争で主導権を握ろうとすれば、自主開発能力を高め、いくつかの重要分野である程度の中核技術を掌握し、国際競争力を持つ企業を数多く育成しなければならない。「自主開発の主体は企業である」と『要綱』も指摘しているほどだ。

1990年代初め、新技術革命の挑戦を迎え入れるため、中国政府はハイテク産業の発展を速めるとの戦略的政策決定を掲げ、その時運に合わせるように次々とハイテク産業開発区が生まれた。開発区は集約された知力と開放された環境の中で、国内の技術力と経済力に依存し、国外の先進的な技術や資金、管理ノウハウを導入するとともに、優遇政策と様々な改革措置を講じ、ソフト環境を最適化することで最大限、科学技術の成果を生産力に転換させるため設立された。

それ以来すでに15年が過ぎ去ったが、この間ハイテク産業はいかに発展してきたのか。データを見てみよう。昨年末現在、ハイテク産業開発区の統計対象企業数は4万5000社。そのうち認可された企業は3万社、営業収入1億元超の企業は3000社、外資系企業(香港・澳門・台湾企業を含む)は8000社、従業員数は480万人に達している。全国に53ある開発区は主要経済指標でいずれも大幅な伸びを見せた。

昨年、革新能力を持つハイテク企業は急成長を遂げ、自主知的財産権と自社ブランドを持つハイテク製品の輸出は200億元を突破した。

これについて、経済学者の郎咸平氏は「単なる数量だけではハイテク産業開発区の業績は証明できない。中国のハイテクに対する思考方式は中華レストランようなもので、プロセスも規律も重んじようとしない。規律を守らないようなチームがマイクロソフト社になるのはまったく不可能だ。中国には根本的に本当の意味でのハイテクがないから、本当の意味でのハイテク企業もないのだ」と分析する。技術の自主開発までにはまだ長い時間がかかる、と郎氏の見方に賛同する者はこう指摘。一方、非賛同者は、産業政策や産業計画、産業支援、産業ブランド、産業PRなど、ハイテクを発展させるためのシステムはすでに構築されていると見ている。

ハイテクは幻像にすぎず

経済学者・郎咸平氏:そう、中国には本当の意味でのハイテクはないから、本当の意味でのハイテク企業もないのだ。清華紫光や方正、中関村(実際は不動産業者)、それに大唐グループなどは国内屈指のハイテク企業と言われているが、いずれも“反面教師”的なケースであり、その名に値するのは唯一、中興通信という企業1社だけではないか。

データを分析すると、PC国内最大手の聯想グループ(レノボ)は初期、買収や投資で資産を増やしたが、新たな業務の発展に向けた具体的な青写真を描けなかったために、資産総額は増えたものの、投資回収率は2001年の19%から2003年には12%と、年々低下していることが分かる。インターネット業務の経営も苦しく、贏時通(イエストック)との協力は1年後に失敗、損失額は2億香港ドルを超えた。その後のAOL社との協力も、それぞれの内部問題から合弁会社は2年もの間、何ら実際に運営されないまま赤字解散となってしまった。

聯想の見通しの無さはIT(情報技術)サービス業務によく表れている。欠損は続いたが、業務量は増大し、市場規模の増大をはるかに上回るほどだ。例えば、2003年の全国ITサービス業の伸びは31.5%だったが、聯想は198%にも達した。また、コンサルティング・サービスで聯想は抜きん出ている。2003年には初めて国内ITコンサルティング市場でベストスリーに名を連ねた。シェア3.5%はIBMの11%、HPの8%に次ぐものだ。しかし、なんと聯想はこの時ガ然立ち止って、進撃を停止。2004年7月、傘下のITサービスを3億元で亜信科技公司の株式の15%と交換する形で譲渡してしまった。ITサービス業から撤退した原因は、突きつめれば、当初予定した収益目標が達成できなかったからだろう。目標を達成するまでに十分な時間をかけることなく短兵急に撤退してしまったのは見通しの無さによるものだと考える。

また、聯想は開発を軽視していると思う。2000年から技術を副次的な地位に据えた「貿易・生産・技術」戦略を実施してきたが、2004年にようやく方針を転換、研究開発を重視するようになった。だが、その年の投入資金はわずか2億元。年間売上高の1.2%足らずであり、華為技術有限公司や海爾グループ(ハイアール)に比べケタが違う。華為は毎年、売上高の10%、海爾も5%以上の開発資金を割り当てているのを見れば、聯想が遅れを取っているのは明らかだ。

私の事例研究は公開されたデータに基づくものなので、データのない華為公司については分析するのは無理だ。中興通信を例に取って見ても、華為も優良企業であるはずだ。それでも、これほど広い中国でありながら、ハイテク企業が数社だけというのでは絶対に少ない。

スイス・ローザンヌの経営開発国際研究所発表した2002〜2003年『国際競争力に関する分析報告』では、中国2002年の技術的インフラと科学的インフラでそれぞれ42位、24位にランクされるほど非常に低い。総体的な競争力(マクロ経済や政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラ整備の四大指標)は、1998年の21位から2002年に31位まで下がっている。

このランキング結果は「マクロ経済」に負うところがかなり大きい。ここ数年、中国経済は高成長を続けてきたが、政府の効率性とビジネスの効率性、インフラ整備でずっと30〜40位あたりを徘徊しているからだ。一般的に言えば、経済が長期的に高成長を続けるのは難しい。「マクロ経済」がなければ、ランキングはもっと低くなっているだろう。

また、技術開発の効率が低いことが周知の事実となった。研究者の数では世界2位であっても、研究成果は世界の最下位だ。

フリーライター・方家平氏:郎教授の話は確かにたいへん耳の痛いものだが、まさに「良薬は口に苦し」だ。企業は弁解してもかまわないが、絶対に郎教授の批判を軽率に否定したり、無視したりしてはならない。たとえ言い過ぎるところがあっても、理性的な気持ちになって耳を傾け、反省すべきだ。

郎教授の批判はかなり手厳しいので、有名企業の不満を買うのは間違いない。これらの企業は自社がハイテク企業であることを立証しようと、特許がどれほどあるか、いかに研究開発を重視しているかを、データを並べ上げて見せるかも知れない。仮にそうすれば、ハイテク企業の発展を促進しようとする郎教授の辛苦は実際には誤って理解されてしまう。批判に照らし合わせて自身を反省し、さらにハイテクの発展に力を入れる、というのがあるべき姿勢だろう。郎教授の批判は決していわれのないものではなく、ただ、我々は科学技術という幻像の中に身を置いているから、その内部が見えないだけなのだ。つい最近、新華社は「わが国で知的財産権のある中核技術を擁する企業は1万社あたり3社にすぎず、99%の企業は特許を出願したことがない。2004年の我が国の発明特許出願件数は13万件、そのうち半数を多国籍企業が占めた。国内の発明特許出願がわずか18%であるのに対し、外国は86%だった」と報道した。こうした現実は、郎教授の批判の正しさを裏付けるものではないのか。たとえ聯想といった著名なハイテク企業であっても、世界をリードする知財を持つ先端技術をどれほど擁しているのか。技術の立ち遅れが原因で企業の発展が妨げられた事例はまだ沢山ある。

「中国には本当の意味でのハイテク企業はない」という言葉は偏りに失するものの、現在のハイテク企業の発展のもろさを突いているのではないだろうか。郎教授は中関村などのハイテク産業開発区を調査に行ったことはないが、それでも彼の言葉は深く考える価値はある。筆者は開発区をいくつか調査して、いわゆるハイテク企業と言われる企業の多くが他社の製品をただ組み立てているだけで、それも技術価値は少しもないのに、ハイテク企業の看板を掲げて優遇政策を受けていることが分かった。こうした現象が幻像というものだ。

誰だって褒め言葉を聞きたがるものだし、企業も同様だ。ハイテクが大きな発展をとげたと思い込んでその中に浸って、異なる声に耳を貸さないでいたなら、ハイテク企業自身ひいては国のハイテク産業全体の発展に悪い影響を及ぼすことになる。当面、技術の自主開発が国家戦略とされている中、郎教授の言葉は一服の刺激剤となり、ハイテク産業に見られる幻像を発展という現実へと、その転換を推し進めてくれるだろう。

フリーライター・小海氏:国内でハイテク製品といわれるものの多くは名ばかりのものだ。我々が誇りとするブランドやその製品を見ると、その重要技術と中核部品は中国が自主開発・製造したものではない。

中国は確かにハイテクを生み出す環境もハイテク製品も有しているが、十数億もの国民の日常生活で使われているものはどれほどあるだろうか、これが非常に重要だ。ごく少数の人だけに使われていたり、ただ実験室のサンプルに過ぎないものであれば、「国産のハイテク」と呼ぶに堪え得るだろうか。たとえ将来を目指すと言っても、いったいどれほど先の将来なのか。全市場が独占されてしまっていたら、何ら誇りとなるものなど生み出せないだろう。

素人としては、それほど多くを知る必要もないが、ただ手にするものや目にするもの、耳にするものを思ってみれば、国内のハイテク市場やその製品はいったい「中国」という姓なのか、それとも「外国」という姓なのかはすぐ分かるはずだ。

世界のハイテク企業の「労働者」、という中国のいまある地位を否定する人はいないだろう。少なくとも短期間にこの“役”を変えることは難しい。だが、この短期間とはいったいどれほどの時間なのか。外国の中核技術やその特許に囲まれ、外国製品の全方位市場戦略に蚕食され、圧力をかけられながら、それをまったく感じとっていない状態では、中国のいわゆるハイテクなる現状は幻像になるだけだ。

ハイテクの自主開発に至る道のりはまだ長い。ただこの過程で、他者はどれほどの猶予時間をくれるのだろうか、競争相手はチャンスを与えてくれるのだろうか。

ハイテクは急速成長の道へ

ネットワーク評論家・金心異:郎咸平氏が非難したような「幻像」は一部「ハイテク」企業に見られるが、急成長している企業の方が多いのが現実だ。より多くの「ハイテク」企業は急速に発展していることも現実だ。

中国には本当のハイテク企業はないかも知れないが、「高新技術企業」はやはりあるだろう。この企業をいかに定義づけるかがカギだ。

大半の省や多くの都市は「高新技術産業」を発展させることを宣言し、北京や深?、上海はいずれも「高新技術産業」の生産額は工業生産総額の3分の1か、それ以上を占めたと発表している(上海は40%強、深センは50%弱)。

それに中央から地方まで、科学技術主管部門は「高新技術企業」の資格審査機構を置き、さらに「高新技術弁公室」を設置した都市も少なくない。全国には百に上る「高新技術産業開発区」があるほどだ。それは言うまでもない。

わが国では上から下まで「高新技術産業」という言葉は使っていても、「ハイテク産業」とは言っていない。後者は本当に世界をリードする技術や製品を指しており、前者はそれよりもっと幅広く、一般的に言えば、世界でも国内でも先端に立ち、国内で先端にあって従来より改善されたものを指している。

たとえハイテク企業と言わなくてはならないとしても、中国には本当に1社もないのだろうか。本当の意味でのハイテク企業は多くはないかも知れないし、郎教授の言及した現象も痛いところを突いてはいるが、それでもやはり数社はあるのではないか。

我々は中国のハイテクが立ち遅れている事実を認めざるを得ないが、研究者数で世界2位にあることと、技術的遅れとは矛盾するものではない。実際、中国はこの100年もの間ずっと外国を「追いかける国」だった。「追いかける国」に「追いかける戦略」はいくつもある。第1は、他者の先端技術では、開示されていなければ、こちらはあらんかぎりの力を尽くしてそれを掌握する。先行者より遅れているといっても、後発者よりは進んでいる。

第2は、他者が技術を発明した場合、我々はその前人の肩に乗ったままでいるか、さらに進んで、この技術によって作られた製品に技術的なまたは機能的な改良を加えて新製品を作り出す。日本がその例ではないか。

第3に、技術も商品だから、相手が技術を開発しても、譲り渡したいと思い、こちらも購入したいと思えば、こちらがこの技術を取得したのと同じことになる。中国がこの20年間に実施してきた「市場での技術交換」とは恐らくこのことだろう。「自主知的財産権」「自社ブランド」を追求し始めたことは、このやり方を捨てようとするものではないか。

第4に、技術の完全な世代交換、技術革命のカギを握る時に、定位戦略の実施を選択し、キーポイントをしっかりと把握することでトップに立つことだ。韓国のサムスンがそうだろう。中国の自動車産業もこの戦略を実行するよう提案されたことがある。伝統的な自動車ではどんなに懸命にやっても外国を追い越すことはできないが、電動自動車の開発では先進国と同じスタートラインに立っているので、これから先端技術を持つ国になる可能性もないわけではない。

フリーライター・李才氏:郎教授の講演を聴いたことがある。その日、郎教授は「中国の上場企業のいわゆるハイテク株を見ると、核心的な競争力を持つ企業は数社もなく、ほとんどは外国の先端を行く製品を導入してそれを生産し、それで国内では大企業となる。しかし、この大企業は外国に付き従わなければならず、せんじ詰めれば“傀儡政府”のようなものだ。一旦外国側が協力を停止したり、何か事情が生じたりした場合、こうした企業は市場競争力を確保できなくなってしまう」と指摘した。もちろん、郎教授の話は理に合うものだと言わざるを得ない。我々は発展途上国であり、もともと外国から先進技術を導入する必要性があるからだ。しかしこの一点で中国のハイテクレベルについてうんぬんすることはできない。我々が危機感を抱いていないとでも言うのだろうか。我々は外国に学んで追い越そうとしているのだ。

中国にまだ多くのノーベル賞受賞者が出ていないことは認めるが、成功を収めるには時間がかかり、研究も過程を踏まなければならない。資本主義は我々より少なくとも数十年ないし数百年も早く発展してきたが、世界を見渡しても、わが国のように着実な成長を続けられる国はない。これは中国が積極的に学んでいる国であることを裏付けるものだ。ハイテクの開発には、このような望ましい雰囲気が必要ではないのか。たとえ現在はまだハイテクを持っていなくとも、持てるのはそう遠くはないだろう。まして我々はすでに宇宙船技術や原子力技術を掌握しているのだから、楽観的な姿勢で我々の企業を見る必要がある。中国はまだ経済強国ではないが、中国を無視できる経済強国も一つもない。技術を持っていなかったなら、現在の地位を得ることができただろうか。

ハイテク産業開発区・ハイテク産業理論研究者・盖城氏:中国には本当の意味でのハイテクがないから、本当の意味でのハイテク企業もない、と郎教授が言うわけは、中関村に行ったことがないからだ。私の知るところでは、聯想グループは今年、開発資金25億元を投入する計画だ。2004年末にIBMのPC業務を買収して、世界3番目のコンピューター企業に躍進し、IBMの特許1500件も聯想に帰属することになった。最も重要なのは、聯想はこれを踏まえて技術革新を継続して行っていくことで、今後は毎年、営業収入の2%を製品開発と技術革新に投入することにしている。

中関村はユニークな革新的文化を有しており、郎教授も行けば感じ取ることができるだろう。

北京中関村V815民族ブランド連盟:郎教授の話には事実に合わないところがあると思う。5年前に個別のハイテク企業について否定的な報道がなされたが、それでもって現在のハイテク産業全体の状況を語るのは、明らかに偏りに失する。

中国のハイテク産業は決して「幻像」ではない。北京華旗資訊のデジカメや北京信威通訊の携帯電話、中星威電子のチップ、中関村科学技術ソフト公司の中間ソフト、曙光コンピューター、海信グループ(ハイセンス)のテレビチップなど、知的財産権を持つ製品はすでに世界的に認められている。これらの企業はどれもハイテク企業ではないのだろうか。どの製品もハイテク製品ではないのだろうか。華旗資訊のデジカメ(アイゴ)はブレア英首相に高く評価されているし、国際特許も取得している。世界で初めて重症急性呼吸症候群(SARS)用ワクチンを開発したのは中関村の企業だ。宇宙船「神舟6号」にも中関村の100社に上るハイテク企業の製品が装備されている。

中国はハイテクを発展させるための産業政策や産業計画、産業支援、産業ブランド、産業PRなど包括的なシステムをすでに構築した。ハイテク産業を発展させるには、経済学者の理解やより多くのプラスとなる論評が必要だ。

参考資料

2005年、全国のハイテク産業開発区の主要な経済指標は大幅に上昇した。売上総額は3兆3812億8200万元に達し、前年比6346億5500万元と23.11%の増。工業総生産額は2兆8397億9200万元に達し、前年比で25.44%増えた。税収は1467億3200万元で前年比で18.37%の増となった。

商務部の最新統計によると、ハイテク製品の年間輸出額で1億ドルを超えた企業は279社。合計で1728億2000万ドルに達し、全体の79.2%を占めた。平均輸出額は6億2000万ドルで、2004年より7000万ドルの増加。輸出最多の企業は105億4000万ドルに達し、同61%、40億ドル増加した。

革新能力を持つハイテク企業は急成長を遂げ、自主知的財産権や自社ブランドを持つハイテク製品の輸出は200億ドルを上回った。

製造業以外にも、この数年、開発区は技術サービス企業の発展に力を入れており、その比率は40%以上を占めるまでになった。