2006 No.17
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中米日関係の難局を乗り切るには

中米日三カ国は互いに重大な利害関係を持っているため、時代遅れの伝統的思考を転換して三カ国間の戦略対話を行う必要がある。

傅夢孜(中国現代国際関係研究院米国研究所所長、研究員)

日本の小泉首相が2001年の総理大臣就任以来、5年連続して執拗に靖国神社を参拝したことで、東アジア地域における「最も重要な二国間関係」は困難な局面に陥り、それを打開するのは一貫してきわめて難しい状態にある。小泉首相は政治の舞台からの退場を「期待する」との意向を示しており、9月の自民党の総裁選では安倍氏や麻生氏らが有力な後継者に上がっているが、彼らの歴史問題に対する姿勢は小泉氏に勝るとも劣らぬものがあるようである。麻生氏は天皇の靖国神社参拝をしきりに主張しているほどだ。従って、継続的な靖国参拝によって、中日関係は今後もいっそう悪化する可能性があり、今後の関係改善に向けた将来に暗い影が差す、と基本的にはこう予想しないわけにはいかない。

中日関係における政治面の緊張状態が深まる経済関係を後退させ、ひいては日本の国益を損ねるのではないかが、日本国内で関心を呼んでいる。こういった懸念があるからこそ、小泉氏の靖国神社参拝に対する批判は、日本の民衆やマスコミにとどまらず、最近ではこれまで参拝を賛成していたメディアにも広がっているのだ。国際社会では、フィリピンやインドネシアなど東南アジア諸国は、はばからぬ衝動にかられて東アジア協力の基盤を損ねる行為に否定的な態度を示している。この問題に沈黙を守っている米国の主要メディアも態度を変え、小泉氏の行為は無意味な挑発だと指摘している。この変化には、小泉氏が挑発の道を滑り続けるのを放置していれば、第2次世界大戦後の極東国際軍事裁判での審理の正当性を覆すのは必至であり、最終的には原爆に遭った日本の民族的憎しみを煽ることになる、との深層的な懸念がある。

小泉氏の執拗なまでの衝動な行為に対し、米国では議会とメディアが批判の声を上げているにもかかわらず、政府には真にそれを抑制しようとする姿勢は見られない。ここ数年、米日同盟が絶えず強化されてきたのは確かだ。中国が台頭してきたことで、両国はいずれも何ら理由のない挑戦を感じ取り、それゆえに、双方が接近したのにはおのずと口には出したくない共通の戦略的必要性があるのである。

日本の政治勢力は「民主カード」の価値を見て取っているのだ。「中国脅威論」を誇張しているが、その根拠は、中国が民主的国家でないことと直接関連づけたものなのである。民主党の前代表の前原誠司氏が鼓吹した、中国は「現実的な脅威」だとするその背後に指し示されているのもまた、ここにある。これは「刺す」ためのテーマが変化したものだが、意義は全く異なる。「靖国神社参拝」が戦術的な刺激だとするなら、「中国脅威論」または「民主カード」を打ち出すのは策略的で挑発的な衝突的な行為だと言えよう。米国人の目には、小泉氏はすでに「強弩の末」にあることから、一転して民主党支持もあり得ないことではない。小泉氏はこの点を見て取っており、麻生氏ももうである。「靖国参拝」問題での強硬さはあまり収まっていないが。

米国の抑制

米国は世界の支配的地位に立つ超大国として、潜在的かつ現実的な挑戦者の台頭を防止することを、そのグローバル戦略で最も重要な目標としている。東アジア地域のリーダーと自認する日本も同様、この地域での主導的な影響力を失うことに決して甘んじることはない。中国は「超大国としてのあらゆる潜在的要素を持つ」国として台頭し、東アジア地域への影響力はますます拡大しており、この発展の趨勢には、超大国と地域の大国と自負する米国と日本の戦略上の神経を逆なでないわけにはいかない。従って、中国の台頭を抑制することがほぼ米日両国に共通の戦略的な必要性であり、双方がますます近づく直接的な原因ともなっている。

しかし、米国が日本を利用するのは、中国を抑制するという目標のためだけでなく、日本というこの信用せしめない盟友を縛るための考えもある。もちろん、地域の危機や非伝統的な安全への脅威に対応する必要性もある。日本が米国をしっかりと抱え込むのは、共通した必要性もあるが、自らの目論見がある公算はより大きい。つまり、領海や天然ガスなどをめぐる中国との紛争で、米国を後ろ盾にしてさらに隣国を刺激しようと考えていることだ。この様に、日本の行動は米国の戦略的期待と完全には一致しないどころか、米国の戦略的必要性が日本に十分に利用される可能性は大きい。

中米日の戦略的均衡

中米関係が今日の深さと広さを持つほどまで発展してきたのは、歴史的に稀なことであり、相互依存は過去のいかなる時よりにも増して際立っている。経済のみならず、政治や外交面でも然りである。米国の一部同盟国を含むアジア太平洋地域諸国は、米国、中国との間に言うまでもなく重大な利益があるがゆえに、仮想の中米対立や衝突であれ、これでなければあれ、といった戦略的選択に立たされることは望んでいない。しかし、強者に伍することに慣れている日本は、よほどの例外であろう。

米国の対日戦略は理解し難いところがある。米ランド社のある上級研究員は「日本が好戦的な国に変わることを望まないという問題では、米国はアジア諸国と同じ立場を取っている。しかし、日本を『縛る』また放任することで、日本に対しては船を借りて出航し、軍事大国としての役割を果たすよう奮い立たせ、中国に対しては国際システムにおいて責任を担う『ステークホルダー』(利害共有者)になるよう奮い立たせることと、日本を主軸とする米国の戦略との間には、また日本を年下の同盟国と見なすことと、日本の『国連安保理常任理事国入り』を支持してさらに国際社会の権力の中枢にならしめることとの間にも、明らかに矛盾した論理が存在している。日本が中国を刺激していることで、全ての重大な食い違いの『最後の仲裁者』ではないと自ら認めている米国ですら、われ関せずの超然たる態度を取れない状態に置かれている」と指摘する。日本の無意味で強硬な常軌を逸した行為がある臨界点に達するなら、日中間に衝突が起きる可能性は米中間より大きくなり、米国は巻き込まれるのを決して望まぬ中日間の深刻な紛争ひいては衝突に引きずり込まれることもあるため、米国は上述した二つの矛盾の解決が難しくなる立場に置かれる可能性がある、とする見方もあるほどだ。

中米日三カ国の戦略対話

冷戦終結後のグローバル化と相互依存の強化を基礎に形成されてきた平和、発展、協力の傾向に反して、東北アジア地域では冷戦というどんよりとした空はずっと拭いきれないままであり、対立思考が依然として発酵し続けている。その重大で表徴的な表れが、一貫して執拗に強化されてきた米日軍事同盟だ。

冷戦前の軍事同盟では決して、今日の世界が直面する重大かつ切迫した安全への脅威は解決することはできない。テロや海上航路の安全、伝染病のまん延、国際犯罪、大量破壊兵器の拡散、さらに環境悪化が一段と切迫した非伝統的な安全への脅威となっている。世界でも一、二を争う軍事大国の同盟でテロに立ち向かうのは、「大砲で蚊を打つ」ようなものでなければ、「拳で綿花を打つ」ようなものであり、その効果のほどは想像に難くない。ほかの分野もまた然りだ。否定できないのは、米日同盟には目にみえて明らかな冷戦思考がまだ残っており、「周辺事態」をもっていかなる国をも抑制することを目的とすれば、東アジア地域で盛り上がりつつある地域協力を窒息させ、地域の発展に向けた活力の持続的可能性を扼殺し、ひいてはあらゆる国に対して不幸なことを回避するための対抗意識と自国危機意識を触発させることになる。

中米日三カ国には極めて大きな利害関係があるため、いかなる二国間関係の悪化も、他の二国間関係にも同じように回避できない、付随的なインパクトを与えることになる。こうした局面を避けるためには、時代遅れとなった伝統的思考を転換し、三カ国間の戦略対話を行う必要がある。ブッシュ政権の対中戦略はいくらか変化しており、中国が国際システムにおいて責任を担うステークホルダーになることを期待するとともに、中米間の戦略対話も深まっている。両国関係の現在の動向が示すように、中米は衝突の方向に向かうよう運命付けられているのではなく、反対に、平和共存の未来を構築するために、双方は戦略的な相互信頼を強化するとともに協力を深めているのだ。一方、中日両国は東アジア地域の重要な隣国として当然、友好的に付き合い、互いに尊重し、互いに利益を得る方法を模索する必要がある。さもなければ、東アジアとアジア太平洋地域の平和と安定はやはり不確定的なものとなる。歴史的に、中国は日本に対しては何ら申し訳ないことをしたことはなく、中日関係が思わしくない状態にある責任は当然ながら日本側にある。日本の指導者について言えば、戦略にしろ、安全面にしろ、経済貿易面での相互依存関係の強まりを軽視し、政治的確執の拡大を放置するやり方は近視眼的であり、恐らく代価を払わないわけにはいかず、東アジア地域の協力に与える影響は当然、この地域が期待するものではない。東アジア地域は安全に関する一連の問題を抱えており、中日関係が改善されない限り、東アジアとアジア太平洋地域の大国との関係が円滑に連動することへの期待と展望はまぼろしに過ぎず、地域問題を解決する合力は弱まることになろう。中米日三カ国は対話に向けたより良好な政治的雰囲気を醸成し、関係方面で政治的勇気を示し、少なくとも関連問題の協議を先行するなど、政府間の戦略対話を推進する必要がある。

中米日三カ国間の利害関係はアジア太平洋地域の平和と安定を維持する重要な要素である。その関係におけるいかなる二国間の安全に関する関係強化も第三国に対向するものではあってはならず、一方、いかなる二国間関係の悪化も三カ国のそれぞれの二国間関係に同じように避けて通れない付随的なインパクトを与えることになる。米国外交学会の専門家は「米国はこれまで超然とした立場を取ってきたが、現在はせめて内々で中日双方と協議し、両国に緊張関係を緩和するよう要請する必要がある」と指摘する。カーネギー基金の専門家も、中日間の確執は米国の国益にマイナスな影響をもたらすことから、米国は両国の確執が和らぐよう積極的に支援するべきだ、と提言している。三カ国にとって一体、多くの利益をもたらすが簡単には抑制できないどの様な関係が必要なのかは、それぞれともよく分かっているはずだ。対話に向けた良好な政治的雰囲気を醸成するには、関係方面で政治的勇気を示して、三カ国間の戦略対話の進展を推進し、相互信頼の増進に立って、三カ国関係の「方程式」をいかに解くかを検討する必要がある。明らかなように、米日韓、米日豪はすでに戦略対話を行っている。中米日三カ国間の戦略対話については、対話するそれぞれが、相互信頼を急速に増進できるとは限らないものの、どちらかと言えば、問題の解決では、客観的に見て、信頼の増進に役立つ方法だと言えよう。