2006 No.18
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電子行政の一段の普及と発展を

譚偉

――この十数年近くの間に、インターネット技術の急速な発展に伴い、電子行政は中国でも徐々に行われるようになったが、全体的な水準や普及度では一段の向上が待たれる。

「以前、納税申告の際には常に、関係書類が不備だとか、手続きの順序がはっきりしないため頻繁に関係する政府機関に足を運んでいたが、今はオフィスに座って税の申告ができるようになった」。民間企業の周暁玲社長は、これが電子行政の功績だと強調する。

北京市地方税務局。全市の法人税や個人所得税、不動産税など十数種の申告業務を担っている。北京市にある30数万社の企業はこれまで毎月、申告のために同税務局に赴くか郵送で申告していたが、現在ではインターネットで気軽に手続きが行えるようになった。

「電子行政によって時間や手間が省けるようになったし、政府機関の仕事をより透明にし、公開させることで、一部の公務員による権限乱用を防げるようになった」と周社長は歓迎する。以前は申告する場合、担当者が申告者と面談していたため、一部の担当者が「情実」で申告者を区別して扱うことがあった。これについて周社長は「現在はインターネットでみな平等に同じ電子行政のプラットホームを分かち合えるので、こうしたことは少なくなってきた」と話す。

現在、北京の電子行政は税務や教育、民事、財政など多方面にわたっており、こうしたプラットホームを通じて、外出することなく、関係する政府機関の至便で迅速なサービスを受けることができる。

政府の電子化は1999年から始まり、すでに政府のホームページは1万以上にのぼる。だが、政府機関の杜鋼建氏は「開設してかなりの時間がたつが、利用する人はまだ少ない」ともらす。昨年のインターネット調査報告によると、「常時使用するネットサービス」の項目では、電子行政は2.0%に過ぎなかった。杜氏は「公共の参与、公共の権限を十分に保障する、公共サービスを実現する、公共政策を効果的に制定し実行する、公共事務の管理を実現する、というのが電子行政の最終的に目指す目的だ」と強調する。2.0%とういう数字と、その「目的」との間に大きな開きがあるのは明らかだ。何が住民への普及を妨げているのか。

「経済参考報」の報道によると、検索エンジンを通して4万以上の政府のホームページが見つかり、うち幾つかを任意に抽出したところ、その90%以上でトップページは最新のニュース情報を表示していた。だが、多くのデータや情報はかなり古く、ひどいケースでは数年も更新されておらず、信頼できるのはトップページだけ、というホームページが多かったという。これら政府のホームページを整備するには、平均数十万元の費用がかかる。

「ホームページ? とっくに担当する人はいませんよ。何か状況を知りたければ直接、役所に聞きに来ればいいでしょう」。河南省?城穀物局の職員はこう話す。同局のホームページには小麦やトウモロコシ、大豆など作物の需給情報が掲載されていたが、2000年7月時点のものだった。

「浪費が効果を上回っている」。杜氏は現在の電子行政の状況をこう見ている。「コストと効果は比例しておらず、しかも重複したものが多い。多くの地方では、電子行政の整備は政府の業績のため、イメージづくりのため、として見られているに過ぎない」と指摘する。

こうした“イメージづくり”式の電子行政について、北京大学電子政務研究院の楊鳳春・常務副院長は「電子行政の核となるのは電子ではなく、行政である。電子は行政をサポートし、それに寄与するだけのものだ」と強調する。経済の発達した地区の一部地方政府の電子行政は全国でもトップクラスにある。だが、ネックもある。電子行政と政府の現有体制との間の摩擦だ。

電子行政で最も基本となるのは情報の透明性だが、それを実現するのは容易ではない。北京大学経済学院の呉敬l教授はこう強調する。「西側先進国の電子行政は、1970年代からの行政事務の公開や情報の公開といった政府改革の下で進められたことから、スムーズに推進するのが比較的容易だった。一方、わが国の大多数の政府機関はまだ、内部規定で公共事務を処理する慣習があるため、ネット技術や電子手段を運用して公衆にサービスすることがなかなかできず、必要とする情報化整備の条件は完全には整っていない。こうした状況のなか、情報化や行政事務の公開が焦眉の急となっている」

情報の閉塞状況は近い将来、やや改善すると期待される。『中華人民共和国の政府情報の公開条例』草案の起草作業がすでに終わり、国務院の2006年立法化計画に盛り込まれたからだ。草案は、政府の情報公開については公開を原則とし、不公開は例外とする、と明確に規定。つまり、「レッドヘッド」(公式文書の政府名は赤字で記載されている)文書については、国務院の情報であれ、省政府の情報であれ、国家機密に係らないまたは第3者の利益を損なわなければ、その情報を取得する権利を有する、ということだ。しかも、政府の情報については、インターネット上の政府のホームページを通じて主動的に公開しなければならない、とされている。

インターネットの普及度も電子行政が大半の住民の間に普及しない1つの要因だ。インターネット情報センターによると、ネット利用者は2005年に1億2000万人に達したが、総人口に占める割合は10%弱。しかも地位や年齢、経済状況などの面でネット利用者の構造はかなり不均一であり、これも公開された公平で公正な電子業務の推進を阻む大きな要因となっている。周社長は友人にネットでの申告を勧めたことがあるが、多くの友人はコンピューターを使用せず、やはり地方税務局に行って従来の方法で申告しているという。

国家情報センターの胡小明副主任は「電子行政の目標は利用者のサービス改善だ。サービスが目標であり、技術は手段であって、技術にこだわり過ぎるがために、一部の利用者を特別扱いすることがあってはならない。設計に当たっては、ネットを利用しない人たちに配慮すべきだ。中国では情報ネットの普及度がまだ低いため、電子行政についてはネット利用者に配慮するだけではよくない。その他の方法、例えば、電話方式や書簡方式などを合わせて利用できるようにすることで、ネットを利用していない人も電子行政の恩恵を支障なく受けられるよう考えてもいいのではないか」と提言する。

付属図 電子行政の理解度

聞いたことがない  11.0%

聞いたが分からない  36.2%

少し分かる  38.7%

よく分かる  14.1%

資料:中国インターネット情報センターの2005年報告