2006 No.19
(0501 -0507)
 

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 社 会

「商業上の賄賂」を重点摘発へ

政府は初めて「商業上の賄賂」の取り締まりを反腐敗運動の重要な一環として打ち出し、今年の政府活動の重点として明確に定めた。

封 けい

3月15日、四川省の達州市中級人民法院は、李祖倫被告(元達州市中心医院院長)に対し、122万元の賄賂を受け取ったとして懲役14年の刑に処する一審判決を言い渡した。

李被告は昨年6月に収賄容疑で拘留され、間もなく逮捕された。達州市検察院は、1997年から2005年の春節にかけて、病院が医薬品と医療設備を購入する機会を利用し、11人から計25回、合わせて124万元を受け取ったとして李容疑者を起訴。同市の中級人民法院は昨年12月と今年2月、公開で審理を行った。法院は、李被告は122万元を受け取ったと断定し、懲役14年に処するともに、収賄金はすべて没収し、国庫に納める判決を下した。

上述したのは今年結審した商業上の賄賂事件の1件だ。

ここ数年来、商業上の賄賂は様々な分野で起きている。政府も昨年からこの問題を非常に重視するようになり、今年になって反腐敗運動の一環として政府活動の重点に位置づけた。

南開大学国際法研究院の程宝庫教授は「現在、中国では商業上の賄賂という言葉はまだ厳密な意味では法律用語にはなっていない」と話す。一般的には、商業上の賄賂とは、商業取引の機会を得るのを目的に、取引の場以外で、様々な名目で直接または間接的に現金、品物またはその他の利益を与える、または受け取る不正な競争行為と考えられている。

程教授は「商業上の賄賂は社会に大きな害をもたらしており、今後発展していくなかで潜在的リスクとなっている。取り締まりは一刻の猶予もならないところまできている」と強調する。

経済運営損なう“潜在的ルール”

程教授はここ数年来、商業上の賄賂に関心を寄せ、この問題に取り組んできた。初めて関心を持った原因は、長年にわたり、経済生活では商業上の賄賂は広く知られているようでありながら、実際には法に基づく判決を受けた事件が非常に少ないことに気づいたからだ。

2000年から2005年上半期にかけて、全国各地方の商工業行政機関が摘発した商業上の賄賂事件は1万3606件に上る。賄賂金額は52億8000万元、没収・罰則金は8億1000元。だが、これは氷山の一角に過ぎず、法の執行者にまったく見過ごされているケースはまだまだ多い。

公安部経済犯罪調査局の張忠宇副処長が提供した資料によると、ここ5年間で、公安当局が立件し調査した犯罪件数は年々増加しているが、商業上の賄賂関連の犯罪が同期の経済犯罪に占める比率は低下し続けており、1%にも満たない。この数字は、商業上の賄賂は広く行われている、との市民の判断とは大きくかけ離れるものだ。

商業上の賄賂は社会の中で一体どんな状況にあるのか。経済社会の発展にどんな影響があるのか。この問題について程教授は、昨年4月から調査・研究を行ってきた。

その調査結果は程教授を驚かせるものだった。商業上の賄賂はかなり深刻であり、一部の業界・市場では“潜在的なルール”となっていた。手段は「宣伝費」や「交通費」「労働報酬」など様々な名目を立て、現金を与えたり、品物を提供したり、無料で家屋の内装をしたり、海外・国内観光に招待したりと実にいろいろだが、金品の提供が最も一般的だった。

程教授は「こうした“潜在的ルール”には、企業は往々にして抵抗する能力はなく、競争の激しい市場でチャンスとシェアを失わないためには、屈従するほかない」と分析する。

「われわれはどうして公開された公平な市場競争を望まないのか」。ある民間企業の営業担当者はネット伝言板で、こうしたルールが我々に違法な行為を強いていると訴え、業界の商業上の賄賂の実態を明かした――会社は主にテレビ局に電気通信用の設備を提供しており、販売するには購入する決定権を持つ関係者と良好な人的関係を築く必要がある。その手段が、食事や娯楽への招待、品物の贈呈、海外出張の手配などだ。もし取引が成立すれば、さらに関係者に「情報費」として、多くて数十万元、少なくとも数万元は与えなければならない。たとえそうしても、企業間の競争による圧力が大きいため、もし他社が自分以上の手段を講じれば、すべての「賄賂」は恐らく無駄になるかもしれない。企業から言えば、こうしなければ駄目であり、激しい市場競争の中で企業はこうしてこそ、市場への“入場券”を手にすることができる――。

「政府は商業上の賄賂を取り締まるとしているが、心から支持したい」と販売担当者は話す。この醜悪な現象は社会の風気を汚すだけでなく、商業ルールに大きなダメージを与えることもなる。程教授は「商業上の賄賂が公平な競争と正常な取引秩序を乱せば、企業の生産や技術の進歩、製品の品質向上に影響が出て、経済の健全な発展は妨げられる。市場の資源の合理的配分を乱せば、劣悪品や偽物が大量に出回るようになり、最終的に消費者の合法的な権利と利益は損なわれる。さらに憂慮するのは、商業上の賄賂が汚職、収賄などの経済犯罪を誘発する温床になっていることだ」と指摘。

程教授はさらに「この問題を一日も早く解決しなければ、社会に重大な結果をもたらすことになる。例えば、欧米の一部先進国のように、1人当たりの所得が3000ドルから7000ドルに達するには一般に3年ぐらいしかかからず、最も長くても6〜7年だ。だが、ラテンアメリカの幾つかの国では、3000ドルに達した後も増加するどころか、上下に変動している。こうした状態をもたらす原因がまさに、腐敗した商業気風、権利と金銭を取引する商業上の賄賂という“潜在的ルール”だ」と強調する。

商務部の統計が示すように、全国の薬品業界では、リベートだけ見ても毎年、およそ7億7200万元の国の資産を呑み込んでいる。全国医薬業界の年間納税額の16%を占める額だ。

程教授は「中国経済が持続的に発展できるかどうかのカギは、商業上の賄賂をうまく解決できるかどうかにある」と強調する。

全面的な宣戦布告

今年、政府は反腐敗運動の名で商業上の賄賂に宣戦布告した。2月24日、温家宝総理は「第4回全国廉潔政治会議」を召集し、商業上の賄賂の取り締まりを重点とする今年の政府の廉潔政治活動と反腐敗運動に関する具体策を決めた。これより前の2月15日、温家宝総理は行政監察活動の具体的方針を定める際、商業上の賄賂の取り締まり専門活動を真剣に展開するとともに、公務員の行政権力を利用した収賄行為を重点的に調査し、処分するよう求めている。

また、中国共産党中央規律検査委員会が起草し、中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が公布した「『商業上の賄賂の取り締まり専門活動の展開に関する意見』の通知」(以下「通知」)が2月上旬、各部・委員会(省庁)と省・直轄市・自治区に出された。

昨年7月末、胡錦涛中国共産党中央総書記は商業上の賄賂の取り締まりに関して、関係機関に対しその解決策を提出するよう指示している。同年9月には、国家経済貿易委員会が先頭に立って立法、司法、法律執行など18の機関からなる「商業上の賄賂取り締まり指導グループ」を設立。中国共産党中央政治局は12月に会議を招集し、同グループに参与する機関を18から22に増やした。

「通知」は当面の取り締まりに関する具体策を定めており、各行政・法執行機関に対し(1)当該機関、主管(監督・管理)する業界、分野、事業体・団体での商業上の賄賂に対する取締策を制定する(2)今年第1・四半期から半年ないし1年かけて、当該業界の企業・非営利団体を組織し、不正な取引行為を自己調査し、自己是正する(3)重大事件を重点的に調査して処分し、悪質で情状が重大であり、範囲が広く影響の大きい商業上の賄賂事件に対しては、法に基づいて処罰する――よう求めている。

さらに「通知」は、建設工事や土地の譲渡、財産権の取引、医薬品の売買、政府の購入、資源の開発と代理販売など、六大分野での商業上の賄賂行為を重点取締対象にすると明確に定めている。

この六大分野に関連する政府機関はすでに政府の指示に基づいて行動を開始。交通部や国土資源部などは、所管する分野と関係する商業上の賄賂行為を告発してもらうため、専用電話を設置した。

程教授は「これらすべては最高指導部の腐敗を取り締まり、商業上の賄賂を摘発しようという決意を示すものだ。中央政府の決意は取り締まりに非常に重要な影響を及ぼす」と歓迎している。