2006 No.22
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消費税の調整をめぐって

張志萍

財政部と国家税務総局は3月21日、4月1日より、現行の消費税率を調整し、ゴルフ道具と高級腕時計、高級化粧品、ヨットや大排気量乗用車などの高級消費品、フロアリングと割りばしに対して、新税率を適用、または新規に消費税を徴収すると発表した。

1994年の税制改革以来、消費税の調整としては規模最大であり、全面的な税制改革の第2段階がスタートしたことになる。

消費税には国内消費税と、税関が代理徴収する輸入段階での消費税があり、いずれも中央政府の税収となる。中国では消費税は商品価格に含まれているため、消費者は消費する際に別途に消費税を納める必要はない。こうしたことから、多くの中国人の消費税という概念に対対する認識は実際にはまだ薄い。

消費税が設けられたのは1994年。当時に比べ、今回の調整はかなり大きな反響を呼んだ。これはこの12年来に経済生活で起きた変化と関係がある。経済の急速な発展と生活水準の向上、環境汚染の深刻化やエネルギー不足、深刻さを増す貧富の格差という現実が、「環境保全とエネルギー節減」や「富裕層による貧困層の救済」といった色彩の帯びた今回の消費税調整に幅広い関心を呼び起こしたのだ。

財政部は「今回の政策的調整は二つの重点を際立たせるためだ。一つは環境保全と資源節減を促進すること。もう一つは消費を合理的に誘導し、収入の配分を間接的に調節することだ」と強調する。

政府は税率という手段を用いて、消費と生産の科学的な発展を誘導し、環境保護と資源節減を促進することで、現在直面している経済・社会問題を解決したいと期待している。

動機はよいが、理想的な効果を上げられるかどうか疑問視する人は少なくない。新消費税が実施されてすでに1カ月余り。徴税が市場価格にもたらした打撃は最も顕著で直接的だ。市場は本能的な反応から、すぐさま増税に伴う生産コストを消費者に転嫁させた。

市場は反応して動く

今回の調整で最も関心を集めたのが、自動車の消費税率だ。小排気量を奨励し、大排気量を制限するという考えを具体的に示すものとなった。従来の税率と比較すると、排気量1.0リットル以下の乗用車の税率は変わらない。1.0〜1.5リットルは2ポイント下がった。1.5〜2.0リットルは不変。2.0リットル以上では、排気量が大きければそれだけ税率は高くなり、最高で20%まで引き上げられた。

このニュースが発表されるや、北京と上海では高級輸入車BMWの価格が一晩のうちに115万元から130万元まで暴騰した。値上がり幅は恐らく最大だろう。

4月1日の前夜、全国の大都市では高級腕時計の販売数量が激増。調整後、1万元以上の腕時計については20%の消費税が徴収されるからだ。4月5日、王府井の亨得利や英皇時計店ではタグホイヤー、ラドーがすでに値上げされていた。

4月6日に開幕した「第11回中国国際船舶・ヨット技術設備展覧会」。ある見学者は「新たに増える10%の消費税が、立ち上がったばかりのヨット消費市場に影響を与えるのは否めない」と話す。だが、輸入ヨットはかなりの利益性があるため、外国メーカーは中国市場に自信を示している。

フロアリングも売れ行きが急速だった。新政策では、4月1日から5%の消費税が徴収される。このためフロアリングのコストは約10%上昇することから、1メートル当たりの価格はおよそ10〜20元値上がりする。価格が調整されることで、フロアリングと複合床板との差は大きくなる。

統計によると、床板に使われる木材は年間8500万立方メートル余り、割りばしに用いられる木材は1000万立方メートル。さらに600万立方メートルの木製のはしが輸出されている。業界では「割りばしとフロアリングの利益率は低いため、増税による負担はまず消費者に転嫁されるだろう。今後は複合床板がより多くの消費者に受け入られる可能性がある」と話す。

化粧品世界最大手ロレアルグループは「政策の詳細な変化についてはまだはっきりしておらず、各ブランドの生産と販売ルートの状況もそれぞれ異なるため、具体的な影響について話すのは時期尚早だ」とのコメントを発表。

高級化粧品エスティローダーの責任者は「税引き上げによる負担は小さくないため、価格の引き上げを考えることになる」との姿勢を示した。

所期の効果は達成できるか

政府は1994年から消費税の徴収を開始した。この10数年来、税収は急速に伸びており、1994年は516億元だったが、昨年は1634億元と、3倍強も増えている。

現行消費税の調整について、専門家の多くは「国の産業の方向性を具体的に示すものだ。つまり環境保全・資源節減型産業や、高付加価値産業の発展を奨励している。同時に、粗放型成長方式から持続可能な発展方式へ転換を示すものでもある」と分析する。

国家情報センター発展研究部戦略計画処の高輝清処長は「現在、国は環境保全型経済とエネルギー節減型経済を奨励している。このため政策の方向性は、エネルギーの低消耗産業と低汚染産業を奨励すると同時に、エネルギー消耗と汚染の高い産業を抑制することだ」と指摘。

また専門家は「政府はこの政策を利用して消費を合理的に誘導し、所得と配分を間接的に調節することで、深刻化する貧富の格差を縮小したいと期待している」と強調する。

データが示すように、現在、高級消費品市場の年間売上高はおよそ20億ドル。2008年までに売上高の年間伸び率は20%に達し、その後、2015年には同10%となり、売上高は115億元に達して世界の高級消費品総額の29%を占めると予想される。

経済の急成長に伴い、少数だが新たな富裕層が出現してきた。ゴルフを楽しみ、ヨットや大排気量高級車、高級ブランド腕時計を購入するのが、この層の最も関心の高い消費だ。

しかし、中国には衣食の問題が解決していない農民がまだ3000万人いる。最新の統計データによると、2005年の都市部住民の1人平均可処分所得は1万493元。一方、農民の1人平均純収入は3255元。有名ブランド腕時計1個の価格は農民1人の数十年、一生の収入に相当する計算になる。

国家行政学院の朱国仁教授は「新消費税政はある程度、贅沢な消費を抑制し、社会の公平性をより具体的に示すものとなった。高所得者に対しては、高級消費を享受してもらうと同時に、法律に基づいて相応の消費税を納めるよう求めている」と分析する。

だが、この税制改革が所期の目的を達成できるかどうかに慎重かつ懐疑的な姿勢を抱く人もいる。浙江大学経済学院の趙杭生教授は「新たな徴収手段では、社会の富の二次配分での公平性が具体的に示されてはいる。だが高級品消費市場では、消費能力のあるかなり多くの富裕層は価格に敏感ではない。日々深刻化する貧富の格差を縮小するには、国や政府が多方面から、様々な角度から誘導していく必要がある」と指摘する。

さらに「今回の消費税の調整での唯一の欠点は“小をつかんで大を放す”だ。高級住宅や高級家具、高級娯楽がその範囲に組み込まれていないのは大きな欠陥だ。現在の状況を見れば、高級住宅や高級家具、高級娯楽に使われる費用はゴルフの支出をはるかに上回る。高級住宅や高級家具を調整対象から外したのでは、税徴収機能を発揮させる上でマイナスとなる」と指摘する声もある。

“小をつかんで大を放す”やり方は、割りばしと高級家具の間でより顕著だ。今回の調整では割りばしが対象となり、税率は5%。その目的は、環境保全意識を高め、木材資源を節減するためだ。だが、高級家具に用いる良質の木材に比べれば、割りばしに用いられる130万立方メートルの木材は大したものではない。割りばしよりも高級家具に対して消費税を徴収すれば、人々の節減意識は高まるだろう。