2006 No.25
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遅れていた文化遺産の保護

――文化財の保護と建設工事との関係をいかに円滑に処理するか、これが一貫して難題となっていた。だが喜ぶべきは、各地方政府や社会各界がこの問題をますます重視するようになったことだ。

2006年3月31日、湖北省丹江口市に世界文化遺産に登録された武当山の「九宮」の第1の宮殿、浄楽宮が復元された。浄楽宮は武当道教が祭る最高の尊神、真武大帝の出生地である古均州城内にあった。明代の永楽十六年(1418)の建立。1958年、「南水北調」(南方の水を北方に送る)プロジェクトの1期工事で丹江口ダムが建設された際、浄楽宮と古均州は水底に沈んでしまった。だが、宮殿内にあった世界に現存する最大の2つの贔屓(びき・伝説中の竜の息子、カメの形をしている)の碑と、8000点余りの精緻な石製の作品は保護された。

政府と社会各界が努力を重ねたことで、浄楽宮は48年の歳月を経て再び当時の壮大な姿を現した。復元は武当山の世界文化遺産である古代建築物の完ぺき性と統一性とを維持し、道教文化を継承する上で非常に重要な意義を持つ。

復元に至るまでの48年の道のり

1966年以降、保護措置が十分でなかったため、浄楽宮の貴重な文化財は散逸してしまい、重大な損失を被った。それ以後、人民日報や新華社などのメディアは文化財を早急に保護するよう訴えて続けてきた。文化関係者はあらゆる努力を払い、荒れ地や豚小屋などから合わせて数百点の石刻を発見し、洗浄して番号を付けるなどの整理作業を行った。

2001年3月、丹江口市は先ず櫺星門(れいせいもん・俗称は大石牌坊)の復元工事を実施。2005年までに総建築面積6万3000平方メートルの浄楽宮の主体工事が完成した。

湖北省文物局の祝建華研究員によると、浄楽宮は大部分が当時の設計図に基づいて復元され、櫺星門や贔屓などの文化財も残されている。

文化財救済のチャンスはまだある

丹江口ダムの1期工事で埋没したのは当地で歴史上、人類の活動が最も頻繁な区域であり、その中には大量の貴重な古代建築物も含まれていた。だが、当時の歴史的理由から、文化財保護と考古学発掘が終わらないまま、浄楽宮は水底に沈んでしまった。このほか、著名な迎恩宮や周府庵など173の古代建築物や1万基を超える古墓も犠牲になった。

2005年末、南水北調プロジェクト中部ラインの2期工事が始まった。ダムが高くなるに伴い、水位も1期工事当時の157メートルから172メートルまで上昇することになる。同市文物局の殷進介局長は「2期工事に関連する文化財も保護作業の対象とする。1期工事では歴史的原因から、当時の文化財保護作業は遺憾なところが数多くあった。この数年、文物・考古部門の作業では、1期工事のダム地区にあった文化財の救済を重点としている。ダムの水位は157メートルだが、渇水期には最低で146メートルまで下がる。これを利用して保護と発掘を進めていくつもりだ」と話している。

文物保護法によれば、工事部門は工事に伴う文化財保護経費の解決に責任を負わなければならない。だが、丹江口ダムの1期工事は50年代に行われたため、経費の問題はいまだに解決されていない。これについて、国の関係機関は「新たに埋没する地区にある文化財を全力を挙げて保護するだけでなく、歴史的に残された“借金”も段階的に償還していかなければならない」と指摘する。

長江設計院の院長で、文物・考古チームの鈕新強副隊長は「現在、文化財保護に対する意識はずっと強くなっており、保護手段もより多様化し、より先進的であり、1期工事での遺憾なところはこの機会を利用して補うことができるだろう」と強調。また同設計院ダム地区担当専門家は「文化財の保護と建設工事との関係を適切に処理することが、南水北調プロジェクト中部ライン工事での文化財保護作業でカギとなる点であり、また難題でもある」と指摘する。

さらに鈕新強氏は「南水北調の計画ラインを決定する過程では、沿線にある国家クラスや省クラスの文化財、文化関係者が重要だと考える文化財のある地点はできるだけ避ける。もし工事中に重要な文化財が出土した場合は、できるだけ計画を修正する」との考えを明らかにしている。

文化遺跡保護は全国民が参与すべき

2006年に国務院が公布した「文化遺産保護作業の強化に関する通知」は、文化遺産の保護を一段と強化するよう求めているほか、2006年から毎年、6月の第2土曜日を「文化遺産の日」にすると定めている。

国家文物局の単霽翔局長は「文化遺産の日の設置により、国民経済と社会の発展における文化遺産保護事業の重要な地位と役割はより際立つだろう。この数年、政府は文化遺産保護への資金投入を段階的に増やしており、庶民の文化財保護に対する意識も一段と向上したが、それでも文化遺産を破壊したり損壊したりする行為が今もしばしば起きている。文化遺産の日の設置は、文化遺産保護に対する全社会の意識を高め、庶民に幅広く文化遺産保護作業に参与させ、国の保護を主体とし社会が共同参与する文化遺産保護の新たな体制の確立を促進する上で重要な意義がある」と強調。

さらに単霽翔局長は「関連する各保護機関は実情に即して、文化遺産の日の活動に合わせて学術シンポジウムや交流会、専門テーマ別講座、知識コンクールなど、庶民とくに幅広い青少年向けに宣伝・教育活動を行う必要がある。同時に、庶民が文化遺産に親しみ、保護作業に参与できるような環境を整備することが肝要だ」と指摘している。