2006 No.26
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>> 国際評論

SCOは「軍事集団」ではない

王海運
(中国上海協力機構研究センター高級顧問・中国ロシア東欧中央アジア学会常務理事)

上海協力機構(SCO)外相会議が5月15日に開かれ、次いで6月15日から、SCO創設5周年を記念する加盟国首脳会談が上海で始まった。この5年来、SCOは国際社会で幅広い注目を集めてきたが、同時に、発展の過程で少なからぬ問題も出てきた。なかでも最も際立つのが、機構の基礎的理論が系統的でないということだ。特に機構の性質、機能と地域の位置づけが明確でないため、機構内部の安定と発展方向に影響を及ぼす可能性がある。SCOは今回、新たな理念を柱に、安全と経済協力を旨とする効果ある「地域協力機構」に位置づけることを宣言した、と筆者は考える。

「上海精神」を体現

SCOの新たな理念とは、「相互信頼、互恵、平等、対話、多様な文明の尊重、共同の発展の模索」という「上海精神」を体現したものだ。この理念は冷戦時代の思考を放棄し、共同の安全を堅持し、同盟を締結せず、対抗せず、第3国に対峙しない、という新たな安全観と、各加盟国は完全なる平等、相互信頼、相互尊重の下で、様々な問題は対話を通じて解決する、という新たな国家間の準則を提唱している。また、相互利益、共同の発展、共同の繁栄、という新たな地域協力モデルも提唱した。この理念は時代の流れを代表するものであり、多民族が共に暮らし、多種な文明が共存する中央アジア地域にとっては極めて重要なものだ。加盟国間の「精神的接着剤」になるだけではなく、その発展に必要となる国際および周辺環境の構築にも有意義である。SCOを新たな国際関係の理念を体現する場にすることは、責任を担う大国というイメージを確立したいとする中国の必要性に合致するだけではなく、公正かつ合理的な新たな国際秩序の構築にもプラスとなる。中国がSCOの創設に当たって求めたのは、主として「善隣、発展、安定」であり、地域の主導権を握ろうとの意図は決してなかった。

SCOは、安全と経済協力を趣旨とすべきだ。安全問題は各加盟国にとって、政権の安定のみならず、経済発展にもかかわるものである。SCOは軍事上の安全を協議することから生まれたため、当初は安全面での機能が突出していた。現実的な必要性から見れば、安全に関する機能は弱めてはならず、強化するしかない。現段階では、安全面での協力は「3つの勢力」への対応、即ち、突発的な災難と麻薬、武器の密輸といった、これまでになかった分野での安全に重点を置くべきである。SCOと集団安全条約機構との関係をうまく処理することが、安全協力を強化するカギとなる。ここで強調したいのは、安全協力の強化は決してSCOの「軍事集団」化を意味するのではないということだ。「軍事集団」になれば、新たな「両極の対抗」を引き起こすかも知れず、地域の安全にとって害あって益なしである。

加盟各国は経済が相対的に遅れていることから、経済発展が根本的な課題だ。経済協力を強化し、経済発展を促進することが、外部勢力が混乱を引き起こし、「革命」を画策するのを防止する根本的な方法となる。経済協力分野では先ず、石油・天然ガス資源と物流の大動脈、という2つのメリットを生かすことが必要だ。カスピ海地域は、豊かな石油・天然ガス資源に恵まれている。SCOには重要な石油・天然ガス生産国のロシアとカザフスタン、その輸入国の中国が加盟しており、オブザーバーであるイランとインドを加えれば、生産と輸送、市場が一体化されたエネルギー共同体を形成できるのは確かだ。

重大問題に影響力を

SCOは成果を上げなければならず、効率の低い第二の独立国家共同体になってはならない。そのためには、加盟国間の政治面での相互信頼をより深め、加盟国の理念と意志の統一に努めると同時に、各分野で協力メカニズムの構築を強化しなければならない。「3つの勢力」に立ち向かうには大きな力が必要であり、「カラー革命」(独立国家共同体の穏やかな革命)による動乱を鎮めるには断固たる姿勢が必要であり、経済を発展させるには早急な実効性が必要である。SCOの周辺地域で起きた重大な事態、例えば、イランの核問題では、統一した立場に立って、積極的に影響を与えることが必要だ。

加盟国拡大はマイナス

SCOの周辺地域は戦略的に非常に重要であるため、外部の勢力は競って進入してくるだろう。機構の健全な発展を確保するには、「地域的機構」としての位置づけを堅持する必要があり、カギとなるのは、当該地域外の国へと拡大させないことだ。域外の国は、例えば、SCOと関係を発展させたいと期待する近隣国をオブザーバーにしたり、本機構の活動に関心を持つ地理的に遠い国を対話国、または連携国として受け入れたりするなど、様々な形の協力パートナーシップを樹立することが可能だ。

SCOを域外にまで拡大しようとすれば、様々な問題がもたらされるだろう。例えば、加盟受け入れを巡り内部で意見が対立し、機構の安定と団結に影響する、外部の不安定要素が内部に持ち込まれ、機構の行動力が弱まる、世界の地域的枠組みが激しくぶつかり合い、その他の大国や国際組織の反発を招くことなどが考えられる。たとえ域内の国であっても、一定の基準を満たさなければ加盟は受け入れない、そうすべきである。