2006 No.27
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中国サッカーの「8キーワード」

――90年代以降、中国サッカーは改革が進むなか、プロ化に向けて今もなお陣痛の苦しみを味わっている。

独シーメンス社がスポンサー企業から下り、中央テレビがスーパーリーグ(以下、リーグ)の中継を取り止め、北京現代チームが試合をボイコットするなど、中国サッカーにリーグ創設以来の暗く混乱した影が漂い始めた。全世界がサッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会に燃え上がっている今、中国サッカーは喝采するファンもないまま、陰で落ち込んだ状態にある。13年かけてプロ化を進めてきた中国サッカー。これを捨て去るには忍びなく、また後味も悪いことだろう。

◆キーワード1:プロ化

中国サッカーはかつて計画経済の産物だった。選手は国の各体育学校から選抜され、国が資金を出してトレーニングを実施。他の階層と大差ない給料が支給され、素質と技術に優れた選手はレベルが上のチームに段階的に推薦され、最終的にはナショナルチームのメンバーとなった。だがこの時代、プロリーグはない。

1993年10月、中国サッカー協会(以下、協会)は、1994年から「C1」(チャイナ1次リーグ)を対象に、サッカーの市場経済化の推進と段階的な国際化、即ち、クラブの創設や、コーチ・選手の登録制、選手の移籍、選手の体力・資質検査、クラブへのチケット配分など、プロ化の促進を目的にした試験的改革を始めることを決定。協会の規定にもとづき、同年12月31日までに、サッカーの盛んな11都市がプロのサッカークラブを設立した。その数はC1とC2合わせて24チーム。

2004年、協会はC1をスーパーリーグに昇格させた。参加するのは12チーム。だが、リーグは名称の上では昇格したとはいえ、質的に向上したわけではなかった。

◆キーワード2:財産権

プロ連盟の誕生後、変革すべき最大の課題は、リーグの知的財産権や、財務の監督権、スポンサーの開拓などビジネスに関する交渉を含む経営権などを、協会から無理にでも取り戻し、市場運営に慣れない協会の制約から脱することだった。

長年にわたり各クラスのサッカーリーグの所有権を有してきたのが、協会だ。リーグに実際に資金を出している各クラブは、運営システムの中では脇役に過ぎない。財産権をめぐる混乱や、不公正な収益配分などに、リーグを構成する有力なクラブは不満を抱き始めた。2004年10月、試合のボイコットが相次いだことから、12クラブの出資者は協会に対し、リーグに関する一切の権限を出資者に帰属させるよう公式に求めた。

中国サッカー管理センターの謝亜竜主任は「中国サッカーを改革するには、近代的な財産権制度を確立しなければならない。同時に、権限や政策決定、監督、経営管理の均衡を図る体制を確立することで、リーグを健全かつ持続的に発展させていくことが肝要だ」と指摘する。

◆キーワード3:疑惑

「いいプレーをして、喜びを感じようとは思わず、いかにカネを稼ぐか、また違法な手段で勝つことしか考えない。それは選手のすべきことではない」。かつて遼寧チームで活躍した外国人選手は、中国サッカーリーグの“黒幕”に不満を漏らす。

C1が終盤を迎えた1999年12月5日、瀋陽チームは相手側グランドで地元の重慶チームと対戦。この試合は、瀋陽がリーグに残れるかどうかが決まる試合だった。前半、重慶が1点リード。だが、後半は違った。瀋陽はまず66分、外国人選手が1点取り返した。最も「演技的なシーン」は、93分に起きた。同選手の威力のないシュートが何と、キーパーによってネット内に「手のひらで入った」のだ。瀋陽は3点あげて、リーグに残った。翌日、メディアはこの試合を大きく報道。両チームの背後で取引があったのでは、と仔細に伝えたメディアも。ファンの強い批判に、協会は調査の実施を発表せざるを得なくなった。協会は翌年の3月にようやく、確固とした証拠は得られなかったが、「試合に消極的」だったとして、両クラブに40万元の罰則を科す、とする最終調査報告を発表。中国リーグに「疑惑」という言葉がつきまとうようになったのは、それ以降のことだ。

◆キーワード4:スポンサー

2005年初め、独シーメンス社副総裁は、市場戦略を理由に、スーパーリーグのスポンサーを下りると表明。関係筋によると、直接的な原因は、スポンサーになっても、所期の収益が達成できなかったからだ。

だが、球界では、リーグ創設以来の管理をめぐる混乱、魅力の欠如、試合ボイコット、疑惑などで、シーメンス社はスポンサーを継続しても、中国での知名度や影響力の向上には役立たないと判断した、との声が少なくない。

◆キーワード5:中継

2003年、上海文広グループは協会と、それまで10年にわたり協力関係を結んでいた中央テレビに代わって、リーグの放映権を取得。これにより、国大で最大の影響力を誇る中央テレビは、イングランドやヨーロッパリーグを除くすべてのサッカー試合の放映権を持っていても、自国のリーグとは無縁となった。この異常とも言える事態に陥った根本的な原因は、リーグの「真の市場価値」をめぐって、中央テレビと協会との間に大きな認識のズレがあったことだ。中央テレビの内情に詳しい関係者はこう話す。「リーグの1回の放映権料は現在、約3万ドル。これは決して正常な市場価値ではない。中央テレビが購入する放映権料でさえ、それを上回るのは、オリンピックやW杯の決勝戦だけだ」。リーグの放映権料に対する中央テレビの「心理的価値」が、そこに窺える。

◆キーワード6:風格

一国のサッカーが、人々の心にある最も大切なものを示してくれるのが、その風格だ。20年前、アジアで二流の地位にあった日本は、ブラジル路線を歩むことを宣言。その後、急速にレベルは向上し、数年のうちにアジアを制覇し、欧米の強豪と拮抗するまでに成長した。

だが、中国サッカーは長年にわたり自らの風格を形成できなかった。2004年のアジアカップの際、イランの監督はこう言い切った。「特徴がない、それが中国チーム最大の特徴だ」。世界の強豪を真似ようとしたが、持続できなかった。時には体力と能力が至上、時には技術が優先と唱え、またブラジルに学んだり、ドイツや英国に学んだりと、「学習」を繰り返しながらも、何が中国サッカーの風格なのか、は次第にぼけていってしまった。風格に欠ける中国サッカー、頭角を現す日は永遠にないだろう。

◆キーワード7:個性

戦績の振わないナショナルチーム。それに比べ、23以下のチーム、はては少年チームの方が成績は優秀だ。だが、こうした若い選手は将来、オリンピックチームやナショナルチームの主力になっても、次第に凡庸になってしまう。関係者は「世界サッカーの発展を見ると、若い時に個人技と基本的な技を身につけている。最高のレベルに達するには、これが非常に重要だ。だが中国では、チームワークが重視され、選手個人の能力や技術は二の次。特色のない選手で組まれたチームが、個人の能力が傑出し、しかもチームワークにも優れたチームと対戦したなら、良い成績など上げられるはずはない」と分析する。

雲南師範大学体育学部教研室の周衛民主任は、こう指摘する。「選手の特色というのは、その個性を伸ばすことで出てくるものだ。若い選手に対してチームワークを過度に強いれば、本来あった特色は消え失せてしまうだろう」。その上で周主任は、若い選手を育てるには、その特徴と個性を伸ばすことが最も大切だと強調した。

◆キーワード8:海外移籍

90年代、楊晨や孫継海選手らがヨーロッパリーグのクラブに移籍し、海外移籍ブームが起きた。だが、移籍は順調だったわけではない。主力選手にはなれず、また慣れない環境に故障、実力などで大きなプレッシャーを感じ、途中で帰国せざるを得ない選手も多かった。外国のクラブも、中国選手の受け入れにはかなり慎重だった。ある仲介者は、その理由について、第1に、大半が英語を理解できない、第2に、欧州連合(EU)の選手ではない、第3に、中国のクラブは破格の移籍費用を賄えないと指摘し、第4に、これが最も重要であるとして、中国サッカーの層の低さを強調している。

中国選手の海外移籍について、ヨーロッパのサッカー関係者は「今すぐに、五大リーグに参加したいと思うのは非現実的だ。中国サッカーは試練を重ね、徐々にハイレベルのリーグを育てていくべきだ」と強調した。