2006 No.30
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G8へ近寄りつつある中国

胡錦涛国家主席が7月にロシアのサンクト・ペテルブルクで開かれた主要国首脳会議(G8サミット)の「G8・途上国対話会」に出席したことで、中国と世界で最も豊かなグループとの関係はいちだんと緊密になるだろう。

江 涌
(中国現代国際関係研究院経済安全研究センター主任)

胡錦涛主席は昨年7月に英国グレンイーグルズで開催されたG8・途上国対話会に出席したのに次いで、この7月中旬に、サンクトペテルブルク会議に出席したことは、G8との連携がより広がり、相互の影響もより強まることを示唆している。

主要国間の経済協力は、1975年にフランスの提案で、米英仏独伊日の6カ国がパリ郊外で首脳会議を開き、「ランブイエ宣言」を発表したことで基礎が築かれた。翌年のプエルトリコの首都サン・ファンでの第2回会議からカナダが参加し、年に1回開かれるG7サミットが誕生した。当時のG7はGDPで世界の約3分の2、貿易額で約半分、開発援助額で4分の3近くを占め、名実ともに「金持ちクラブ」だった。1997年にロシアの加盟を受け入れてG8となったものの、ロシアは経済以外の議題にしか参加できなかったため、滑稽にも「G7+1」とも呼ばれることになった。G8サミットは一種の国際機構として異なる層から構成される。首脳会議はその意志を総体的に示すものであり、世界経済や財政金融に関する政策は、財政相・中央銀行総裁会議が議論し決定するのである。現在、G8は世界経済とグローバルな発展戦略を率いる大国のフォーラムの方向へと発展しており、世界の経済活動をルール化、制度化しようとしているのだ。

世界経済に対する中国の意義

G8は世界を「管理する」面ですでに力が及ばなくなりつつある。フランスが提案した当初の意図は「暖炉を囲む会談」に過ぎなかった。儀式や日程を設けず、テーマは経済分野に限るというものだ。その後、日程は密度を増し、テーマは多岐にわたっていく。例えば、貿易や債務、健康、教育、環境保全、テロ対策など、経済から政治へと、地域から世界へと広がったことで、G8サミットは毎年開催する度に「政治ショー」と化していった。開会中は何かとかまびすしいが、閉会すればすっかり鳴りをひそめ、まさに竜頭蛇尾である。現在、世界経済の不均衡は深刻であり、インフレ傾向が顕在化し、石油・金価格は大幅に上昇している上に、持続可能な発展や新たな安全保障、軍備抑制などの問題が続出していることで、G8は、世界経済の協調に対してますますその力を及ぼすことができなくなってきた。

その一方、G8内部の“遠心力”は強まりつつある。中核をなす米国の指導力は弱まってきている。経済力の低下、膨大な「双子の赤字」とドル安が国際金融の混乱と世界経済のリスクを誘発する要因となっている。確実な理由もなくイラク戦争を起こし、やたら捕虜を虐待し、無辜の市民をむやみに殺すなどの醜聞で、米国は道徳的高所から急速に地に落とされた。イラクとアフガン戦争の泥沼にはまり込んで自力では抜け出せず、いわゆる「ならず者国家」のイランと朝鮮には対処するすべがなく、政治力と外交力が大きく落ち込んだ。G7サミットの冷戦時代における重要な使命の一つは、世界の政治経済秩序を破壊する国、ソ連に対処することだった。現在「邪悪な帝国」は表面的には帰順の姿勢を示しているようだが、ロシアの独断専行にG7、とくに米国は不満を募らせている。西側の多くの政治評論家は「ロシアは経済規模を除けば、価値観や政治的権利、腐敗認識指数(CPI)、財産権保護、司法の独立など多くの面で世界の主要先進国との違いは非常に大きい。過去の『破壊者』が外部から内部に潜り込んだため、G8サミットの体制はやがて機能喪失の状態に陥り、非常に不安定な黄昏時期を迎え、最終的に解体する運命から逃れられない」と指摘する。

中国は経済の急速な発展で、G8の加盟国を順次追い越すほどの経済力を持つまでになった。昨年のGDPは2兆3億ドルと、イギリスとフランス、イタリア、カナダを上回った。負の意義について言えば、世界の一般商品と主要原材料の供給と価格の安定にすでにマイナスの影響を及ぼしている。2004年のGDPは世界の4.4%を占めるが、原油や石炭、鉄鉱石、セメントの消費量はそれぞれ世界の7.4%、31%、30%、40%を占める。

正の意義から言えば、世界経済の成長に対する貢献度は増大しつつあり、世界のGDP新規増加では米国の21%に次ぐ14%を占める。国連貿易開発会議(UNCTAD)や国際通貨基金(IMF)、世界銀行はともに中国を「新しい時代の世界経済成長のエンジン」と称している。でありながら、この急速に台頭する巨大な経済体がG8から排除されたままであることに、国際世論の批判は増す一方だ。西側メディアは「中国の参加がなければ、経済について建設的な議論を行なうことができなくなってきた」「中国を排除して世界経済を論議するのは現実的ではない」「中国の関与がなければ、重要な世界の工場と市場を欠くことに等しく、マクロ経済計画や政策がどんなにりっぱでも、完全なものとは言えない」と報じている。インドの「ヒンドスタン・タイムズ」紙は「13億の人口を抱える世界第4の経済体である中国は、G8の新加盟国として唯一無二の選択だ」と指摘している。

相互に持つ吸引力

中国とG8の「歴史的」な接触は――。中国は1945年に国連安保理の常任理事国となった。特殊な歴史的原因と国際的な背景の下、中華人民共和国は樹立後の長い時期にわたり経済分野では世に知られる存在ではなかった。1987年のG7ベェネチア・サミットに至って、会議後に発表されたコミュニケは初めて中国について言及し、中国が実施している経済改革を特に注視すべきだとの考えを示したのである。G7との関係は1989以降に1度冷え込んだが、中国の経済力の急速な増強につれて、双方の接触は絶えず拡大し、「対話」も頻繁に行なわれるようになった。その一里塚となる意義を持つのが、2004年10月の財政相会議に初めて財政部長と中国人民銀行行長がオブザーバーとして出席したことだ。当時のテーラー米財務長官はこれを「歴史的な出来事だ」と強調した。G8はすでに中国を視野に入れていたものの、中国の加盟を受け入れるかについては、G8加盟国はそれぞれに思惑があるため、いまだ合意はなされていない。

とは言え、ドイツやフランス、ロシア、イタリア、イギリス、カナダは積極的な姿勢を示している。2003年6月の第29回エイビアン・パリ会議で、議長国フランスの招請で、中国やインド、ブラジルなどが首脳会談の前に開かれた南北指導者による非公式対話に参加した。胡錦涛主席も出席し、「全面的な協力を推進し、共同の発展を促進する」を題として講演した。中国とG8の交流はこれをきっかけに始まったのである。2004年6月の第30回G8サミットは米グルジア州のシーアイランドで開かれ、加盟国の構造調整の問題が議論された。ドイツとフランス、ロシアは中国の加盟に賛同する姿勢を明確に表明し、イギリスとカナダも相対的に積極的な姿勢を示したほか、イタリアは、中国とインドという世界の舞台における主役がいなければ、経済の将来について議論しても大きな意義はないと特に強調した。

2005年7月の第31回グレンイーグルズ会議で、イギリスは「G8各国が構造調整を行うのは難しい」との考えを示したが、米国と日本は曖昧な態度をとった。日本は中国の加盟を受け入れるかについては自ら、ジレンマに陥った。中国との連携強化を望む一方で、G8におけるアジア唯一の代弁者としての地位を失うことに甘んずることもできないため、現段階ではせいぜい中国をオブザーバーまたはパートナーシップとして非加盟国にすることに期待するしかなかった。米国は、国内に中国には資格がないとする声が多数を占めていたため、中国のG8加盟は阻まれてしまった。米国務省は最近「多くの組織と個人がG8の拡大、中国を加盟させるよう提案しているのは承知しているが、G8は今のところ拡大させるつもりはない。我々は積極的に中国との往来を展開しており、適切で多角的な場においても緊密な交流を行っている。我々は今、この非常に建設な協力を拡大するために努力しているところだ」と強調した。

中国は思考的にはすでにG8を受け入れている。世界のウォッチャーはG8サミットに対する中国の姿の変化に留意している。――これまで中国はG8サミットを「金持ちグラブ」と見なし、自らは最大の発展途上国だと胸を張って主張し、2003年のエイビアン会議に出席した時に至っても、G8加盟に対し慎重な姿勢を保持していた。だが、2005年のグレンイーグルズ会議においては、G8がますます重要な役割を果たしていることを認め、G8との関係を非常に重視するようになった。G8との長期的な協力関係を強化するのは双方の利益に合致するとして、平等互恵を踏まえて対話と協力を展開することに期待を示すようになった。

中国は経済のグローバル化の受益者であり、ある程度現行の国際秩序の受益者でもある。中国が公平、公正、合理的な新たな国際経済秩序の構築を提唱するのは、より大きな利益を得るためだが、新秩序の構築は西側先進国との協調を切り離しては考えられない。そのため、経済運営体制の面でG8との融合を段階的に進め、タイミングを逃がすことなくG8の活動への参加を選択肢とし、中国の実際的な地位と利益にかなった国際的な義務を担うことは、国際的地位とイメージを向上させ、先進国と平等な協力を展開し、合理的でより多くの利益を擁護することに有利であり、これがG8と関係を発展させる基本的な出発点である、と中国の世論は見ているのだ。

だが、現在の状況から見れば、近いうちにG8に加盟する可能性は高くはない。その主因として(1)G8加盟国はほとんどが工業先進国であり、同一の価値観(民主制度など)を持っている。一方、中国が堅持しているのは、多元化された世界の発展を認めることであり、各国人民は自らの発展の道を選ぶ権利を持っていると認めることである(2)G8加盟国はいずれも成熟した市場経済国である。一方、中国は市場経済の国としての地位を証明するために努力を重ねているが、短期間に根本的な進展を遂げることはできない――の2点が挙げられる。

米国の姿勢がカギ

中国とG8の交流は頻繁だが、双方の関係が実質的な進展を遂げるには、やはり中国がG8に加盟しなければならない。加盟できるかどうかのカギは米国にある。米国は現在は拒否する姿勢を示していても、中米関係の長期的な発展と米国の国際戦略から見て、いずれは中国の加盟を受け入れるだろう。それに中国経済の急速な発展や影響力の拡大につれて、国際的にも米国国内にも変化が起きれば、米国が同意して中国の加盟が速まることも予想される。

中国をグローバル化プロセスに組み入れることが米国の戦略的利益に合致するからだ。米国との国交樹立、とくに改革・開放を実行して以降、中国は近代化を進め、国際社会に融け込み、国際市場に進出しているが、これらはほぼ米国が予期していたことだ。中国の輸出入製品の60%は外資企業によるものであり、経済の開放度は一部の西側の国よりも高い。また、製造能力や充足した労働力、西側の先進技術と管理方法などにより、稀少な資源はより合理的に分配されており、そのためにより一層米国や西側の市場、資金、技術、管理に依頼することになる。このような分業構造は米国の国家利益と長期戦略に有利なのである。

米国は中国に対し大国としての責任を負うよう求めている。米国は今後、中国を「ステークホルダー」(責任ある利害関係者)とし、これを基準に中国に国際問題の解決に関与させ、米国とともに共通の政策を推進させて、共通の利益を実現していくだろう。また米国は、中国が富裕で強大な国になった時に、国際政治や経済、安全保障のルールを遵守して、「戦略的責任」を担うことを期待しているのである。戦略的責任とは、米国に挑むことなく米国と共に米国に有利な国際秩序を構築することだ。また、「外交的責任」を負わなければならない。米国が手を焼く問題、たとえば朝鮮やイランの核問題の処理に協力することだ。「経済的責任」、つまり、自ら発展するとともに、対米貿易の不均衡を実質的に改善しなければならない。さらに、軍事の透明度を大幅に高める「軍事的責任」を負わなければならない。そして「政治的責任」、宗教の自由を含む政治体制改革を加速しなければならない。

米国は上海協力組織(SCO)との対峙するリスクを解消しようとしている。SCOは「いかなる形であれ同盟は結ばない、あるいはその他の加盟国の主権と領土保全を脅かす国際組織になることはない」「文明の対話を展開するモデルである」と宣言し、「非対抗的な国際関係を確立する」ことを提起している。にもかかわらず、西側の学術界や世論は、中国とロシアはSCOを正式の軍事グループ――「東洋の北大西洋条約機構(NATO)」、反米および7カ国グループに圧力をかける組織に発展させようとしている、と考えている。米国を苛立たせているのは、SCOにカザフスタンやキルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタンなど中央アジアの重要なエネルギー生産国が参加しているほか、インドやパキスタン、イラン、モンゴルなども引き付けようとしており、その影響力を軽視できなくなってきたことだ。そのため、米国はSCOの脅威を排除することに力を入れる必要がある。中国をG8に受け入れれば、その利益をもって中国を誘い込むことができるだけでなく、中国を直接的に監視し、制約を与えることもでき、まさに一石二鳥だ。

米国は国際批判を緩和して、G8のメカニズムをより実効性のあるものにしようとしている。欧米の4人の国際問題専門家は2004年9月初めにレポートを発表し、「G7サミットであれ、その他の重要な国際経済機構の会議であれ、中国の参加がなければ、多くの問題は解決され難い。G7は世界経済を主導する役割を失いつつあり、その合法性と代表性も下がりつつあり、国際経済問題の議題を設定する能力も大きく低下している」と指摘し、このような局面を変えるには、G7の代わりに、米国とユーロ圏、日本、中国からなる「G4」を創設する必要がある、との大胆な提言をした。ヨーロッパと日本の世論もG7に対し、為替レートや世界エネルギー価格など核心的な議題について中国と対話を展開することで、「中国の要素」が世界経済に与える衝撃に効果的に対応するよう呼びかけた。世界のリーダー、G8の大国としての米国は高まってきた国際世論を無視したまま放置しておくことはできないだろう。

米国はエネルギー安全の問題を解決しようとしている。力は衰退しつつありながらも一人覇を唱えようとする雄心から、米国はG8を偏重しなければならないのだが、G8のメカニズムを十分活用しようとすれば、中国やインド、ブラジルなど発展途上の大国から離れることができなくなってきているのである。