2006 No.31
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世界の印刷大国に

5月に「第2回国際文化産業博覧交易会」が深センで開かれた。印刷業に関する国際フォーラムで、国家新聞出版署の龍新民署長は「中国は世界の印刷大国に仲間入りした」と強調した。

現在、印刷関連企業は約18万社、従業員は340万人。生産高は3326億7000万元で、国内総生産(GDP)の約2%を占めている。

昨年出版された図書は22万4800種、総印刷部数は64億200万冊。雑誌は9423種で、同27億5100冊。新聞は1939種で、同404億200万枚。出版物の増加と共に出版業界は発展を続けてきた。

商業印刷の分野では、経済の高度成長と生活レベルの向上、生産と貿易の急速な発展に伴い、包装紙の印刷が巨大な市場となっている。

この数年来、中国は印刷技術で大きな発展を遂げてきた。活版印刷は姿を消し、高速で高品質のデジタル化、オートメ化が進んでいる。

龍署長は「今後5年間に、印刷業の成長率は年8%前後に達し、2010年にはGDPの2.5%を占めるだろう。産業として集中的に発展させて、世界の重要な印刷拠点の1つにする」との考えを強調した

国内3大拠点

深センの徳信美印刷公司。数年前までは名も知れぬ小企業だった。だが、今では高品質の印刷で有名な企業にまで成長。第2回文化産業博の平面デザインコンクールで金賞を獲得した。

20年前の深セン。印刷工場はわずか3社、しかも小規模な作業場風のものだった。だが、この26年の間に印刷業は急速に発展した。企業数は1800社を超え、従業員は13万人。昨年の生産高は275億元で、全市の文化産業に占める割合は36%。印刷業界ベスト百社に19社が名を連ねるとともに、トップ3位を独占した。輸出額が域内総生産高の50%を占めるなど、国内で主要な輸出型印刷業の中心であり、珠江デルタを国際的な印刷拠点にする上で重要な役割を担っている。生産高は2010年に600億元に達すると見込まれている。高級書籍・雑誌では65%以上、電話帳で同85%以上、オークション用カタログで90%以上を印刷している。世界の包装印刷・デザイン界で過去15回、最高の賞に輝いている。

現在、印刷業界では珠江デルタ地帯、長江デルタ地帯、環渤海地区が3大拠点だ。この地域には業界大手が集中しており、産業の牽引役を担っている。

外資の参入

十数年前、印刷業界は国有資本が主体だったが、現在では投資の主体は多元化の傾向にある。昨年のベスト百社では、「三資企業」(合弁・技術資本提携・現地法人)が62社、国有企業18社、民間企業2社、株式企業が18社を占めた。

2002年に国務院の組織改編が始まったが、最初に改編に取り組んだのが国家新聞出版総署だ。建国50数年にわたり同署に属していた出版社、新華書店、印刷工場を切り離し、それぞれ中国出版集団と中国印刷集団公司に改組し、中央宣伝部と国有資産管理委員会が主管することになった。その後、各省・自治区・直轄市の新聞出版局も改編に着手。これによって政府機関と企業は分離され、同時に出版・発行と印刷も分社化され、印刷業の高度な市場化が実現した。

国際資本による印刷業界への参入は、2001年12月の世界貿易機関(WHO)への加盟後に一段と加速した。暫定統計によると、三資企業は現在約200社。この数年、年間百社近くの三資企業が設立の認可を得ており、投資総額は数十億ドルに達している。

中国印刷・設備器材工業協会の高級顧問、譚氏は「印刷業が今日のような規模、レベルに達したのはある程度、外資の参入のおかげだ。当時に、外資も中国経済の高度成長の成果を分かち合っている」と指摘。さらに譚氏は「広東省を例にすれば、外資は先進的な技術や設備、管理ノウハウをもたらしてくれた。これによって印刷レベルは向上し、シナジー(相乗効果)も生まれ、民間の印刷業も振興したことで、“広東ブランド”が定着した。一方、外資も参入後に急速な発展を遂げている。とくに香港企業は、工場拠点の規模を拡大させており、コストの大幅削減が実現したことで、競争力上、さまざま負担を抱える国有企業に比べて明らかに優位にあり、収益性の高い企業が多い」と強調した。

世界の著名な印刷企業大手もすでに中国に進出し、投資あるいは印刷機器の販売で高い収益を上げている。

国内企業の統合も進んでいる。成都軍区印刷工場と、四川省新聞出版局所属の四川新華カラー印刷工場、民間の九興包装印刷公司は、相互補完性の強みを生かして資源を特化し、四川省最大の企業グループを設立した。

国際資本と国内資本の協力も注目を集めている。北人印刷機械株式有限公司は、三菱重工業紙印刷機械事業部と合弁会社を設立すると発表。新設した北京三菱重工北人印刷機械有限公司は、中国と全世界の市場に四つ切り四色のオフセット印刷機を販売するほか、印刷関連の技術サービスを提供する方針だ。

専門家は「印刷業界は今後5年以内に本格的な、大規模なM&A(合併・買収)時代を迎えるだろう」と予測する。

将来に期待

将来の印刷産業発展の方向性、外資の投資の見通しについて、譚氏は「今後は商品の包装紙や、装飾の印刷が最大の伸びを見せるだろう。4兆元を超える小売商品と、約5000億ドルに上る輸出商品では、包装紙の印刷が必要だ。様々な高級包装紙のほか、証票や証明書、有価証券、クレジットカード、ラベル、広告などの印刷需要も拡大し続ける」との考えを示した。

世界の印刷大手も中国の将来に大きな期待を寄せている。

米コダックは「中国では印刷業が大きな成長を遂げ、今は転換の時期にある。2010年に世界第2の印刷市場になるのは有望だ」と強調。

富士ゼロックスも「中国の印刷業は15%の伸びで成長しており、3大印刷拠点もある。同時に先進的な技術と廉価な労働力を持ち、世界第2の関連機器の輸入国でもある」と指摘する。

将来の発展を見込み、一部の有力合弁企業はこの数年来、生産規模を拡大しているところだ。

青島海爾豊彩公司は昨年に次いで約120万元を投資し、世界の最先端にあるドイツ企業からオフセット印刷機と製版機を導入。同社総合部の于新学部長は「我々は今後、ボーダレスな発展を目指していく」との考えを強調した。

業界から「金鉱」と目されているのが、デジタル印刷だ。

サッカーのワールドカップ(W杯)ドイツ大会の期間中、当地の新聞「Corriere dello Sport」が開催地から遠く離れた中国人の前に出現した。方正集団がデジタル印刷技術を駆使して発行したものだ。デジタル印刷とインターネット印刷が次第に人々の生活、仕事の方法を変えると実感させるものとなった。

中国市場では、デジタル印刷の成長率は業界全体の15%を下回っている。だが、市場の潜在力のほか、2008年の北京オリンピックや2010年の上海万国博覧会などを巨大なビジネスチャンスとして捉え、世界の映像業界大手はすでに中国市場での経営戦略を進めている。

コニカミノルタは「2008年の北京五輪、2010年の上海万博を睨んで、今後さらに市場規模を拡大していく」と方針を示した。

革新の追求

出版総署の龍署長は「中国はすでに印刷大国にはなっているが、まだ印刷強国ではない」と指摘した。

約900年前、北宋時代に発明された活版印刷はまさに中国人の誇りだ。近い将来、中国は印刷分野で再び世界にさらに大きな貢献ができるのか。現在の中国は、印刷強国からどれほどかけ離れているのか。

龍署長は、印刷業界が世界に照らして直面している主要な問題について(1)1人平均印刷物の消費量が先進国の10分の1と、かなり低い(2)産業構造が非合理であり、それに伴う問題が多い(3)研究開発の基盤が弱いため、技術革新が目だって遅れており、印刷市場の秩序の整備が待たれる(4)企業の技術と設備、従業員の資質、経営管理水準、収益面でなお改善が必要である――の4点を挙げた。

なかでも最も関心を呼んだのが、革新能力だ。

今年初めに亡くなった著名な科学者、王選氏は、中国の印刷史で多大な貢献をした人物である。80年代に王氏が発明した漢字レーザー写植システムは、ニュースや出版の全過程のコンピューター化への基礎となり、中国の印刷業界に「鉛と火と決別し、光と電気へと進む」技術革新の引き金となった。仮に当時、多くの専門家が提唱したように、外国からシステムを導入することで印刷業の発展を促進する道を歩んでいたなら、どれほどの外貨が流出していただろうか。

6月、新華社は「中国人技術者は、十数年にわたり開発を続けてきた結果、これまで数社の多国籍企業によって独占されていた、コピューターから直接製版できるデジタル技術について、新世代の技術を開発した」と報じた。

「我々の技術レベルは外国にひけを取らない。コストは低く、将来的に幅広く応用できるだろう」。中国科学院理化技術研究所の陳萍研究員はこう指摘。さらに「この技術の普及と産業化を加速させて、印刷業界全体をレベルアップさせていく」との考えを強調した。