2006 No.37
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早急に解決すべき難題――水危機

――中国は水不足の大国であり、水資源は豊かではない。にもかかわらず水は驚くほど浪費されており、需給問題はますます深刻さを増している。給水の安全を保障し、水環境を改善し、水資源の循環利用を促進することが、中国人が直面している喫緊の使命だ。

唐元ト

「水資源不足と水汚染の深刻化が現在、中国の持続可能な発展に影響を及ぼす主因の一つだ」。北京で9月10日に第5回世界水フォーラムが開幕する前、大会組織委員会の執行主席で、建設部の仇保興副部長はこう強調した。

中国人はかなり長期にわたり、水は「取っても尽きず、使っても枯れることはない」と見てきた。今ではこう見る中国人は少なくなりつつあるが、すでに水危機は静かに訪れているのだ。

中国の淡水資源総量はブラジル、ロシア、カナダ、米国、インドネシアより少なく、世界6位。だが、絶対量は豊かでも、人口が膨大であるため、1人平均占有量は世界の平均水準を大幅に下回って89位、約2200立方メートルに過ぎない。しかも、人口急増と経済の高度成長が続いていることから、この数字は年々逓減しつつある。

水利部の汪恕誠部長は先ごろ、「現在の正常な需要に照らしても、また基準を超えずに地下水を汲み上げたとしても、正常な年で不足量は全国で400億立方メートル近くになるだろう。農村では3億2000万人が安全な飲料水が確保できず、給水不足となる都市は400余り、深刻な水不足に陥る都市は110に達する」との見通しを示した。

さらに専門家は「現在の水不足は“黄信号”であり、より大きな危機はその後方にある」と警告。水利部も01年11月に「2030年に人口が16億のピークに達すると、1人平均占有量はわずか1700立方メートルと、世界的に公認される『水不足警戒ライン』に近づくだろう」との“赤信号”を発している。

中国の基本的状況

人は多く水は少なく、水資源の分布は不均衡。これが中国の水をめぐる基本的状況だ。

季節風の影響で、降水はほぼ夏と秋に多く、冬と春は少ない。総体的に見ると、降水量の少ない地区ほど年間降水集中度が高いことから、春に干ばつ、夏に洪水が発生しやすい。しかも水資源量の約3分の2が地表を流れる雨水であるため、河川は増水期には氾濫し、非増水期には渇水状態となる。

水資源の分布も非常に不均衡であり、土地と鉱物資源や生産力の分布とバランスが取れていない。水資源は南方が多く、北方は少なく、東部は多いが、西部は少なく、山間部は多くても、平原地区では少ない。年間降水量は、東南部の3000ミリ超から、西北部に向かうにつれ少なくとも50ミリずつ逓減していく。有史以来、洪水や干ばつなどの災害が頻繁に発生してきた。北方のある地区では、1人平均水資源は世界で最も干ばつの深刻な国に相当する。水の豊富な南方では、逆に常に季節的な干ばつが発生しており、灌漑に依存する主要農作物の水稲や一部工芸作物は水の使用が厳しい状況にある。世界的な気候変動の影響から、この20年近くの間、南方では河川に流れ込む雨水量と水資源総量はやや増加したものの、北方では水資源量は著しく減少。また一部流域の水不足は、周期的から絶対的な状態に陥っている。

こうしたことから、政府は市民生活と経済社会の発展に必要な水を基本的に保障するため、一連の措置を講じてきた。50数年来、全国8万500カ所にダムが建設されたことで、総貯水能力は約5000億立方メートルに。また約100万件の引水プロジェクトや40万カ所で揚水プロジェクトを実施したほか、水門を約3万カ所に建設したことから、給水能力は5800億立方メートル余に達した。政府は近年、古代に建設された世界最長の運河、北京を起点に、天津や河北省、山東省、江蘇省、浙江省などを経て、海河と黄河、淮河、長江、銭塘江の5大水系を貫通する全長1794キロの大運河の修復にも着手。同時に、数十億元をかけて新たな運河の建設にも乗り出した。「南水北調」と呼ばれ、南方の長江支流の水を北方に送るプロジェクトだ。

浪費と過度の開発

中国は長年にわたり水不足が深刻でありながら、水資源の利用方法や効率は悪く、水は驚くほど浪費されてきた。

農業用水の効率を見ると、平均灌漑水による穀物生産量は約1キロ。世界先進水準の国(例えばイスラエル)では同2.5〜3.0キロだ。節水型灌漑面積が有効灌漑面積に占める割合は35%。一部先進国では80%を超えている。

工業用水の効率、とくに水の重複利用と再生利用率も低い。04年を見ると、1万元GDP(国内総生産)比の用水量は399立方メートルで、世界平均の約4倍、米国の8倍だ。1万元工業増価値比では、用水量は196立方メートルで、重複利用率は約60〜65%。一方、西側先進国はそれぞれ50立方メートル以下、80〜85%。

日常生活でも、水は常に無意識的に浪費されている。洗車や芝生の維持、理美容など……。廃水の回収・処理がなされまま、大量の水が1回使用されただけで流されている。暫定統計によると、都市部では水道管の著しい劣化で水道水の20%が漏出している。この比率は西側先進都市の2倍強に相当する。

浪費以外にも、過度の開発でより多くの問題が生じている。北方の一部地区では、生態や環境用水を犠牲にして経済社会の水需要を維持しているのが実情だ。都市部や農村部の井戸灌漑地区を中心に、基準を超えて地下水を汲み上げている地区は、80年代初期の56カ所から約160カ所、面積は8万7000平方キロから18万平方キロに増大。その結果、地盤沈下や水の硬質化など重大な生態環境問題が起きている。

「節水型社会」を建設

前途は楽観できないが、一部都市は水の使用量削減に乗り出した。

建設部の汪部長は「水危機の問題を根本的に解決するには、節水を大々的に提唱し、水資源利用の効率と効果を高めて、『節水型社会』を建設しなければならない。経済社会の持続的可能な発展にとっては、これが必然的な選択だ」と強調。

汪部長によれば、「節水型社会」と通常言われる「節水」には相互に関連性があると同時に、大きな違いもある。水資源利用の効率と効果を高めるのが共通点だ。相違点は、いわゆる伝統的な節水とは、節水のためのプロジェクトや施設、機器、技術などに重きを置き、行政手段を通じて推進する。一方、節水型社会の節水とは主に、制度を整備し、生産関係の変革を重視することで、経済手段を主体とした節水メカニズムを構築するというものだ。

汪部長は、節水型社会の建設という目標を実現するための手順をいくつか示している。先ず、中国では、水の所有権が国に属していることから、水の使用権を各地区や部門、事業体に付与するには、中央政府が法定手順に基づいて、水資源の使用権を明確にする必要がある。次に、水資源のマクロ総量とミクロ定量に関する指標体系を確立することだ。マクロ総量指標によって各地区や業界、事業体や企業、灌漑地区の使用権を明確にし、ミクロ定量指標によって製品またはサービスごとの使用量を規定する。

さらに関係方面が法律、経済、行政、科学技術などの関連措置を総合的に採用し、水使用の制限指標を着実に実現することだ。汪部長は「経済手段の運用をとくに重視しなければならない。最も重要なのは、使用量超過の場合は加算する、節約すれば優遇する、有償で使用権を譲渡するなど、科学的かつ合理的な水道料金に関する政策を制定し、価格そのものに節水を促すテコとしての役割を十分に発揮させることだ」と強調する。

これを受けて、関係方面は節水と水処理コストの削減を奨励するため、水道料金を段階的に引き上げることにしている。新たな価格政策は年末か来年初めに実施される予定。

さらに汪部長は「水使用権の取引市場を確立する必要がある。市場で使用権の有償譲渡を行えば、売買する双方が節水を考えるようになり、社会の節水に対する積極性を引き出すこともでき、水資源はより効率的、より効果的に使用されるだろう」と強調。

そのうえで「節水型社会を建設するには、水量の分配や管理・監督、水道料金の設定など、受益者が政策の制定や実施の過程に参与できるようにすることが肝要だ」とも指摘する。

節水型社会の建設、という構想は多くの関心を集め評価されている。北京での世界水フォーラムに参加した多くの代表は「水危機を解決しようとする中国の計画や方法は、自国の多くの問題を解決してくれるだろう。今後の数十年間、中国は汚水や給水、再生水処理やその運営で大市場に成長し、世界の業界には未曾有のビジネスチャンスとなる」と話す。世界自然保護基金(WWF)北京事務所の淡水プロジェクト主任の李利鋒氏は「中国は外国の経験や教訓を学んだうえで、伝統的な、プロジェクトを主体とした水資源管理と利用モデルを根本的に改め、クリーンな生産と節水型社会の建設を着実に実施するとともに、生態体系による水源涵養や水質浄化、大水の調節・貯水などを十分活用することで水問題を解決することが大切だ。水資源の問題は、人類は自然保護を重視すべきだとの警告を発している。大自然こそ水の源泉だからだ」と強調する。

「今後15年が、節水型社会の建設を左右する時期となる」。そして汪部長は、2010年までに水資源利用の効率と効果は著しく向上すると強調したうえで、具体的に、1万元GDP比の用水量は年平均6%以上低下し、農業灌漑用水はほぼゼロ増加となり、1万元工業増価値比の用水量は173立方メートルから120立方メートルに減少し、サービス業用水の効率は同期の国際先進水準に近づく、との見通しを示している。