2006 No.38
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北京五輪テロ防止・安全網を確立

――五輪の安全警備作業は現在、計画どおり順調に進んでおり、北京市は安全な五輪開催への自信を深めている。

唐元ト

08年8月8日開幕の北京五輪まで2年近くとなったが、すでにテロ防止・安全網はほぼ確立された。現在はその強化に取り組んでいるところだ。

北京が第29回五輪招致に成功した01年7月13日から2カ月足らずの9月11日、米国で同時多発テロ事件が起きた。それを受けて、北京の関係方面はすぐさま五輪の安全警備態勢を強化することにし、関連予算を五輪全体の5分の1を占める3億ドルに増額した。

北京はアジア競技大会やユニバーシアード、さらに毎年数百回に上る大型イベントを開催してきたが、これまで事件や事故は起きていない。それでも「世界の大規模競技大会での安全警備の経験を学ぶとともに、情報など多角的な国際協力を展開する必要がある」と、北京オリンピック組委会の蒋効愚執行副主席は強調する。

多方面から安全を保障

五輪の安全警備面での訓練ともなる初の国際試合、女子ソフトボールの第11回世界選手権が8月27日に北京の豊台ソフトボール場で開幕した。

北京五輪安全保障指揮センターは今回の試合のために宿泊先や競技場、交通、出入国管理などで安全警備を担当する7つの指揮部を設置。

出入り口でのチェックや施設の警備、警報網、テレビ監視システムなどの安全警備対策を講じた。入場者の全手荷物のX線検査や、携帯する電話や金属品の手作業による検査、ボディーチェックなどを実施したほか、証明書を持つ記者やボランティア、作業要員も検査対象とした。

これまでの試合では、競技場の入り口で先ず入場券をチェックし、その後に安全検査を行っていた。今回は競技場の外に安全確保のためにロープを張り、そこでボディーチェックをした後に入場券をチェックすることにした。こうすれば不審物が競技場に持ち込まれることはなく、爆破事件を未然に防ぐことができるほか、警備員や安全検査用器材の数を少なくできると同時に、入場者が殺到するのを防止することも可能だ。

車両の検査はとくに厳格に実施された。特別通行証を持つ車両とVIP用を除くすべての車両は、例外なくボンネットやハッチ・バック、ドアを開け、運転者と同乗者を下ろして安全検査を行った。車台についても初めてスキャンシステムを導入。道路にカメラとライトを設置し、車台の画像は通過と同時にコンピューターシステムに伝送され、ナンバーも自動的に識別されるため、事後調査に役立てることができる。

今回のソフトボール選手権では、制服警官と私服警官のほか、「安検」(安全検査)の字が印刷された制服を着た保安要員やTシャツ姿のボランティアが配置された。安全責任者の劉江氏は「制服の警官ばかりだと、観衆に何か起こったのではないかと心配させてしまう。制服を着用していなければ、警官がいくら多くとも、緊張感から観戦に影響が出ることはない」と説明する。

また開幕前には、スタンドで火事が発生、競技場内で不審物を発見、という2つのケースを想定にした訓練を行っている。

今回の試合の安全度は「B」に指定された。第29回北京五輪では、安全度は関心の高さ、対抗性、入場者数、リスク指数に基づいてABCDの4ランクに分類される。例えば、試合が行われていない競技場は「C」、トレーニング施設は「D」となる。ただ、試合がなくともすべての競技施設で保安要員とボランティアのほか、警官が24時間態勢で警備にあたる計画だ。

北京五輪の安全警備作業は、01年12月13日のオリンピック組織委員会の発足ともに始動。「平安な五輪」開催という戦略的目標は、(1)準備段階(01年12月から04年末まで)、(2)全面的な整備段階(05年から07年末まで)、(3)各対策の訓練・調整・完備の段階(08年1月〜6月まで)、(4)実施段階(08年7月から五輪閉幕まで)の4段階を経て実現される。

北京はこの数年来、発生可能な問題をめぐって綿密で周到な検討を重ね、「北京五輪行動計画・安全警備専門計画」や「五輪の安全警備の総合計画」「五輪競技場周辺の治安管理対策」「五輪の安全キャンペーン」など重要プランを策定してきた。

03年12月28日、北京市党委員会の強衛副書記を座長とし、公安部と解放軍参謀総部、武装警察総部、外交部、税関総署など15の政府機関と関係機関からなる北京五輪安全警備作業協調グループが正式に発足。その下に指揮センターと情報センターが設けられ、各業界の専門家数十人が顧問に就任した。

控えめの推算だが、北京は五輪期間中に警官4万人、武装警察2万7000人、保安要員1万人、ボランティア5000人を含む9万2500人を警備にあてる予定。訓練はすでに今年4月に全面的にスタートした。内容は、安全検査の方法やテロ対策、突発事件の処理、緊急支援、入場者の安全への誘導、外国語、国際的マナー、宗教常識、安全運転技術など46項目に及ぶ。警察犬も動員される。

五輪安全警備部門は、安全関連施設と競技施設について計画と設計、施工、検査、使用を同時に進める理念を提起した。また、北京にある30の競技場とオリンピック村、プレスセンター、国際放送テレビセンターの安全警備関連システム設計に関する要綱と、「五輪競技場の安全警備システムの整備に関する入札書」を策定。国際オリンピック委員会の安全担当委員は「これは北京の創造的な試みだ」と評価する。

特殊部隊の訓練

五輪の安全警備に向けて北京特殊警察総隊が編成された。隊員数は約800人、平均年齢は26歳。北京市公安局の刑事捜査部門と巡回警備部門に所属する特殊警察、暴動防止鎮圧警察からなる精鋭部隊だ。国家公安部の指揮下で、省・自治区・直轄市にまたがる暴動やテロ、重大な突発的事件などの処理にあたってきた。

また、北京市のテロ対策の枠組みとして、特殊警察総隊は「大規模テロ襲撃事件の処理案」や「人質誘拐事件の処理案」「反テロ活動協調グループの緊急指揮に関する暫定規定」などを策定した。

暴動や誘拐事件に対応するため編成された「特殊部隊」は、すでに実戦訓練を開始したといわれる。また五輪開催中、「特殊狙撃手」30人が市内に配置され隠密裡に行動するという。

特殊警察総隊は編成後、これまでに約2000回にわたり重要なイベントや祝祭日の警備、突発的事件の処理に隊員延べ7万人、車両同6000台を出動させてきた。また、海外の警察当局とも反テロや暴動鎮圧などで数度にわたり合同演習を実施。2003年からは数百名の隊員を数回に分けて英国、ドイツ、オーストラリア、カナダなどに訓練のため派遣している。現在、空中特殊警察部隊と女子特殊警察部隊も編成中。

北京市は約5億元を投じて特殊警察部隊に先進的装備を配備することにしている。