2006 No.39
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「超級女声」の人気、依然衰えず

――昨年、爆発的な人気を集めたテレビ番組「超級女声」が今年も高い視聴率を上げている。だが、その文化的影響は流星のごとく瞬時に消え去ってしまうのだろうか。

劉雲雲

「超級女声」とは、湖南衛星テレビが一昨年から放送を始めたいわば「スター誕生」番組だ。スターは視聴者の携帯電話による人気投票で決まる。昨年の視聴者は全国で延べ4億人に達し、一時は中央テレビの番組を上回る最高視聴率を記録。昨年の「三強決戦」では、李宇春さんが352万8308票を集めてグランプリに輝いた。彼女は今や若者の間でアイドル的存在だ。雑誌「フォーブス」の2005年中国著名人ランキングでも4位に。舞台で活躍する彼女は今、数多くの雑誌の表紙を飾っている。

今年で3年目を迎える「超級女声」は再び全国を席巻。テレビやラジオ、雑誌、新聞などが出場者の横顔を連日のように紹介しているほどだ。

ただ、問題もある。番組の人気は単に時代の流行の追求、一風変わったものを憧れる若者の一時的な衝動ではないか、あるいは人気そのものを超えてしまうのではないかといった心配だ。言い換えれば、若い女性の意識の変化、将来有名になるためのチャンスの変革を意味しているのではないか、ということだ。

湖南衛星テレビが「超級女声」を放送した後、全国ネットの中央テレビの大衆向け番組「中国夢想」など、その他のテレビ局も次々と同様の番組を放送するようになった。

番組の成功を経営学課程に取り入れた中欧商学院の孫俊氏は「『超級女声』は娯楽番組だが、それ自体が高い市場経済学的価値を有している。テレビ史や経営学史に残る番組になるだろう」と強調する。

単なる舞台ではない

多くの出場者にとって、番組は単なる歌を愛する女の子が夢を実現する場ではなく、また単なる有名になるためのステップでもない。より深層的に言えば、番組は、参加者が自分の最大の潜在力を引き出す手助けをすることができるのだ。

広州予選でトップになった劉力楊さんは「競い合うことで、歌唱力を磨くことができただけでなく、舞台を通じて多くの素晴らしい友だちに出会うことができた」と話す。オベラを歌って全国十強の一人になった唐笑さんは番組について「舞台に立つことで私は成熟し、自信が持てるようになり、また互いに尊重し合うことも学んだ」と強調する。

昨年グランプリを獲得した李宇春さんは、四川省の流行音楽学院の卒業。大学終了後は北京でアルバイトをするつもりだったが、今では生活の心配はない。22歳の誕生日、今年3月10日に限定版として誕生日記念アルバムを出した。CD4曲入りだが、定価はやや高く48元(1元は約14.5円)。8万4310部はわずか数日で完売した。

視聴者と密接に連動

中国文化報副総編集長の徐世丕氏は「超級女声」の社会・文化的役割について、「中国の文化産業にある程度、突破口を開いたと言えるだろう。実際に、テレビを媒体にして流行音楽を売り出すことができたからだ。販売のための一種の手段となった」と指摘。

さらに徐氏は「視聴者がこの番組に熱中するのは、自分の好きな出場者を直接選ぶことができ、審査に対して自分の影響力を感じることができるからだ」と分析する。

番組「超級女声」を制作する天娯伝媒有限公司社長の王鵬氏は、解放日報の取材に対し「これほど多くの支持者がいる、あるいはいるようなのは何故なのか、あなた方も話し合ってみたらどうだろう。私は庶民の意識の一時的な爆発だと考えている。出場者と彼女たちのファンは成功を渇望しており、ファンは実際、自分の渇望を支持する出場者に託しているのだ。私は、こうした現象は非常に健全で向上的なものだと評価している。このような参加したいという熱い気持ちを規制しようとするのは非常に愚かだ。『超級女声』は通俗的な番組だが、絶対に低俗ではない」と強調する。

政府機関の文化に対する監視・管理について、徐世丕氏は「政府の職責の一つは、流行文化が健全に発展するよう指導するとともに、時機を逸することなく大衆の要望に合った芸術表現形式を打ち出すことだ」と強調。

その上で「『超級女声』はもちろん新鮮味のあるものである。文化発展の意義から言えば、番組が成功したのは実際、庶民が自分の文化的権利を体験したことで、受動的から主動的な姿勢で番組に参加するようになったからだ」と指摘する。

音楽に貢献する?

今年の予選が始まると、数万人の女子学生が一斉に学校をさぼるようなった、と多くのメディアが報じた。単に予選に参加するためだ。また、子どもの夢を実現させようと、大金を惜しみなく使う親も少なくない。さらにはこのために破産した人もいるという。

だが、数十万人もいる出場者のなかから、幸運にも全国大会に進む、あるいは予選地区で上位に入れるのは、ごく数人だ。ましてや将来、音楽界で長く影響力を持ち、しかも独自の道を切り開ける人材はきわめて得難い。

著名な音楽家の王童氏は「『超級女声』がこれまで力のある新人歌手をどれだけ歌謡界に送り出したかは明確ではないが、多くのスターは育成したと言えるのではないか。街で彼らの大きな広告を見れば、これがスターだとは分かるからだ。だが、彼らがアルバムを出しても、その作品を覚えている人はむしろ一人もいない」と指摘する。

「超級女声」に相対する番組である中央テレビの「全国青年歌手テレビ大賞」。放送を始めてすでに12年になる。全国規模の真面目な、プロの歌唱コンクールだ。新人歌手の総体的レベルを知ることのできる番組だったが、この数年は明らかに「超級女声」に取って代わられてしまった。

無作為に北京の中高生9人を選んで取材したところ、ほとんどが「超級女声」は知っていても、青年テレビ大賞を知る生徒は一人もいなかった。

同大賞審査委員を務めるバリトン歌手の寥昌永氏は「『超級女声』は娯楽番組であり、芸術性とはまったく無縁だ。だが、大賞は青年歌手全体の資質を向上させるのに大いに役立っている」と強調する。

番組による影響は?

一部の心理学者は、「超級女声」の爆発的人気は80、90年代に生まれた女の子の独立したい、自我を実現したいという心理や自我意識が強まっていることを反映したものだ、と見ている。また、「この種の番組は庶民に深く支えられている。多くの若者は自分を見せる舞台を持ちたいと願っているからだ」と分析する心理学者もいる。

だが、前文化部長の劉忠徳氏は「視聴者は捻じ曲げられた心理、不健全な気持ちで番組を観ている」と反対する姿勢を依然として崩さない。「この種の娯楽の背後には青少年を害するものがひそんでいる。番組に関心を寄せる若者たち、その彼らの思想は何か、彼らが憧憬するものは何かを見れば、視聴者がどんな心理で番組を観ているかに目を向ければ、知らず知らずのうちに毒されていることが分かる」と批判する。

前部長の発言は、天娯伝媒有限公司や湖南衛星テレビの責任者の強い関心を呼んだ。両社はそれぞれ発言を尊重するとして、番組の制作方法を変更して、政府関係機関の大衆娯楽は前向きで健全でなければならないとの要求により合ったものに改める、との姿勢を示している。

だが、北京大学哲学学部の陳少峰教授は「娯楽は主流となる価値観を示す必要性はなく、教化する機能を持つ必要性もない。主流となる価値観とぶつかりさえすれば、それでいいのだ」と反論する。