2006 No.43
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活力あふれる協力

――中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が対話の関係を構築して15年来、双方の間には確固とした全面的かつ互恵の関係が形成された。今後、双方の戦略的パートナーシップはより強固なものとなり、この種の関係はアジア太平洋地域の繁栄と安定および世界の平和を促進していくだろう。

陸建人
(中国社会科学院APEC・東アジア協力研究センター副主任)

06年は中国とASEANが対話の関係を構築して15周年にあたり、また中国とASEANの友好協力年でもある。05年にマレーシアのクアラルンプールで開かれた第9回首脳会談での共通の認識に基づき、双方は一連の記念活動を共同で行うことを決定。なかでも最も重要な活動が、10月30日に広西チワン族自治区の区都・南寧市で開かれる記念サミットで、温家宝総理やASEAN加盟10カ国の首脳が出席する。同時に、同市で第3回中国・ASEAN博覧会とビジネス・投資サミットも開かれる。中国とASEANはその関係史で特別な1カ月を迎えることになり、友好協力年は最高潮に達する。

1997年以来、中国と10カ国の首脳会談(10+1)は毎年1回開かれてきた。しかし、これまでは年に1度のASEANと中日韓(10+3)の首脳会談期間中に行われており、しかもいずれもASEAN諸国で開催。ASEANは議長国であるため、中国は招待客として会議に参加してきたが、今回の記念サミットでは、ASEAN10カ国は初めて中国で中国の首脳と会談することになった。中国は議長国となり、10カ国の首脳は温家宝総理が招待する賓客として会議に出席する。こうした調整は初めてのことだ。この会議が中国とASEANの関係史上、一里塚となる意義を持つ盛会になるのは間違いない。双方の首脳は友好関係の発展の過程と成功した経験を振り返り、戦略的パートナーシップのための青写真を描き、その方向性を明示する方針だ。

15年来の主要な成果

対話の関係を構築して15年来、双方は段階的に意思疎通と主導的な協力を行うための一連のメカニズムと枠組みを構築してきた。その最高層が首脳の年次サミットであり、第2層が外相会議、第3層が高官協議だ。その他の協力メカニズムは現在、28を数える。双方はこの15年来、政治や安全、経済などの各分野の協力で顕著な成果を収めた。

1.政治分野:わずか10年余りで戦略的パートナーシップを確立し、対話関係の長期的な発展に向けた基礎が整った。中国は「東南アジア友好協力条約」に加盟し、政治面の相互信頼が増進されたことで、本地域の平和と安全がより保障されることになった。また、中国は早い時期に「東南アジア非核地帯条約」の調印を望んでいる。

中国は「友好的で、安全で、豊かな隣国」という外国政策を打ち出し、ASEANの中国外交における地位は一層際立つものとなった。ハイレベルの相互訪問は頻繁となり、国際・地域の数多くの問題で共通の見解を有している。

2.安全分野:対話を通じた相互信頼の増進を積極的に実践し、交渉を通じて紛争を平和的に解決し、協力を通じて地域の安全の理念を実現した。南中国海問題では、02年に「南中国海における関係国行動宣言」に調印。その後、後続行動に責任を担う共同作業グループが設立された。また04年には「南中国海における関係国行動宣言を着実に実施するための職責の範囲」が採択され、作業グループは数度にわたり会議を開催した。指摘にするに値するのは、05年にフィリピンとベトナムとの間で「南中国海の協定地域における三カ国共同海洋地震作業に関する合意」に達したことだ。これは中国とASEANが「南中国海における関係国行動宣言」を着実に実施するために重要な一歩を踏み出したことを示すものである。

さらに双方は、02年に「非伝統的な安全分野における協力に関する共同声明」に調印。04年には「非伝統的な安全分野における協力に関する覚書」に調印し、「04年度計画」を策定するとともに、麻薬や国境を越えた犯罪の取り締まりで実効性のある協力を展開し、この計画で定めた全活動を成功裏に終了した。

3.経済分野:貿易や投資、経済協力は急速に進展した。特に03年に自由貿易協定が発効して以降、「計画の早期達成」と「貨物貿易協定」の実施に伴い、貿易は急速に増大し、05年に1991年の16.4倍にあたる1300億ドルに達した。中国とASEANはともに4番目の貿易パートナーとなった。05年現在、ASEANの対中投資は3万件近くに達しており、実際利用ベースで385億ドルに上る。一方、中国企業のASEANへの投資総額は同約11億ドル、労務契約による営業額は232億ドルに上る。

04年から年に1度開かれるようになった中国・ASEAN博覧会は経済貿易関係を促進する新たな場となった。また、「チェンマイ協定」の下で通貨相互交換ネットワークを構築し、有効的な金融協力も行われている。

4.その他の協力分野:1994年と97年に、双方がそれぞれ具体的な分野で協力を行うための総合的な協調機構として、中国・ASEAN経済貿易協力共同委員会と中国・ASEAN共同協力委員会(ACJCC)を設立。01年に農業、情報通信、人的資源開発、相互投資、メコン川流域開発の5大分野が協力の重点とされ、05年に中国はさらに交通、エネルギー、文化、観光、公共衛生の5分野を協力の重点に加えるよう提言した。今日まで、中国とASEANは情報産業、交通、文化、大メコン川次地域協力に関する覚書や協力計画に調印するとともに、外交や経済、交通、税関担当閣僚の協力体制を基礎に、検察庁長官や青年問題担当閣僚の間でも協力体制が整った。このほかにも科学技術や教育、環境、品質管理、検疫、民間交流などの分野でも協力を展開。さらに双方は地震や津波、トリインフルエンザなど自然災害や重大な突発的事件などでも有効な協力を行い、危機対応体制が整備された。現在、04年に提起された今後5年間の戦略的パートナーシップを推進するための「中国・ASEAN行動計画」を進めているところだ。

5.国際・地域問題の協力:双方は10+3やASEAN地域フォーラム、アジア協力対話、アジア太平洋経済協力機構(APEC)、アジア・欧州会議、東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラムなど、地域および地域を越える協力メカニズムの健全な発展を共同で推進しているところである。国連や世界貿易機関(WTO)などの国際組織でも、相互理解と支持の下で協力を展開している。

関係の急速な発展

この15年来、双方の関係は急速かつ円滑に発展している。その成功の原因は以下の4点にある。

1.「平等に接し、相互に尊重する」原則の実施を堅持している。国の大小にかかわらず、一律平等である。領土の主権と保全、それぞれが選択した発展の道を相互に尊重し、互いに内政に干渉しない。この原則が双方の政治的関係が円滑に発展してきた重要な原因である。

2.「小異を残して大同につき、相互の信頼を増進する」方法で意見の相違や係争中の問題を処理する。双方の関係において出現した問題や摩擦は、率直で誠意ある話し合いを通じて、時機を逸することなく交渉する平和的な方法で適切に解決する。交渉過程では、小異を残して大同につき、信頼を深めて猜疑心をなくし、双方に配慮する。

3.「メカニズムを確立し、順次かつ段階的に進める」というのが、双方の協力が円滑に行われるようになった重要な原因である。各クラスの対話メカニズムと定期首脳会談のメカニズムが確立され、その場で双方が各分野で行う計画の協力の内容や方向性に関する政策が決定されるようになったことで、重要な保障が得られるようになった。先ずできるものから始めて難しいものは後に回し、順次かつ段階的に進めるという規律に基づき、浅く深く協力を進めることで著しい成功を収めてきた。

将来の関係の展望

15年の発展を経て、中国とASEANの間には確固とした全面的かつ互恵の関係が形成された。客観的に見れば、これはASEANとそのすべての対話パートナーにおいて最も実質的な内容を備えた最も活力にあふれる関係である。これにより今後15年さらにはより長い期間、双方の関係の発展に向けて堅実な基礎が築かれていくだろう。中国とASEANの今後10〜15年の発展目標は非常に似ている。中国はややゆとりのある社会に向けて邁進し、ASEANは10カ国共同体に向けて邁進しており、双方の利益の方向性は比較的一致している。こうしたことから、戦略的パートナーシップの将来は明るいと言えるだろう。

一方で、戦略的パートナーシップをより強固なものにするためには、存在する一部の問題の解決に努力を払う必要がある。

1.いかに政治面の相互信頼を深めるか。双方は相互の戦略的パートナーシップの方向性を理解した上で、依然として差がある場合、その差を埋めていかなければならない。中国の平和の発展戦略に依然として懐疑的な姿勢を持つ人がいれば、「中国脅威論」を東南アジア地域で根絶するにはまだ時間がかかるだろう。このほか、南中国海での紛争も依然として敏感な問題だ。

2.現在、協力の深さと幅の広さと、戦略的パートナーシップの位置づけとの間には依然として差がある。協力を新たな高さまで引き上げ、パートナーシップの強化を目指した重要なプロジェクトを優先的に実行しなければならない。協調と共同参与の意識を培い、相互連動を強化し、重点分野の協力計画を早急に着実に進める必要がある。

3.国際・地域問題ではやはり、さらに多くの努力を払って協力を推進することで、共同の利益を促進していかなければならない。

双方が決心しさえすれば、こうした問題は必ず次々と解決されていくだろう。

今後15年は、双方がそれぞれの奮闘目標を実現する上で極めて重要となる。中国とASEANはさらに戦略的パートナーシップを強化することで、それぞれの目標の実現を保障・促進することができる。そのためには、各分野の協力をより円滑に行って、より多くの果実を実らせなければならない。中国は急速に発展する大国として、今後15年、「友好的で、安全で、豊かな隣国」という外国方針を継続していく。ASEAN諸国に対しては、政治面ではより大きな誠意を示し、経済面ではより多くの援助と協力プロジェクトを担うことで、中国の発展からより多くのチャンスと実益を得てもらう方針である。

将来の15年を展望すると、中国とASEANの自由貿易地域ができたことで、双方の経済貿易関係はより緊密となり、経済はより強大になるだろう。戦略的パートナーシップは一段と強固なもとのとなり、この種の関係はアジア太平洋地域の繁栄と安定および世界の平和を促進していくだろう。

◆1991年に対話の関係を構築して以来、この15年に中国とASEANは以下のような段階を経てきた。

1.91年以前:対抗と懐疑から対話と協力の関係に。

2.91〜96年:全面的な対話の枠組みの構築。

3.97〜02年:善隣・相互信頼のパートナーシップの確立に努力。

4.02〜06年:戦略的パートナーシップの確立と強化。