2006 No.44
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調和社会という難題を解決へ

――調和の取れた社会をいかに構築するかが、中国共産党第16期中央委員会第6回全体会議(6中総)で再び中心議題となった。

李 麗

10月8日から11日まで北京で開かれた6中総は「社会主義の調和の取れた社会の構築に関する若干の重要問題についての決定」を採択した。この「決定」は調和の取れた社会の構築に向けた基本的な考え方や目標と任務、順守すべき原則、重要な施策などを詳述している。胡錦涛総書記が11日に行った重要な演説は、政権党が調和の取れた社会の構築という難題を解決する決意をより明確に表明したものだ。

年に1度開かれる共産党の最重要会議で、調和の取れた社会の構築を特別のテーマとして検討する施策が講じられたのは、党の歴史で初めてのことだ。

社会が直面する挑戦

6中総が発表したコミュニケは「現在、わが国の社会は総体的に調和が取れていると言える。だが、社会の調和に影響を及ぼす矛盾と問題も少なからず存在している」と指摘。比較的際立っている問題が、拡大しつつある貧富の格差や腐敗、社会保障体系の欠如などだ。

中国社会科学院が昨年公表した調査結果を見ると、社会の所得配分の不平等さを示すジニ係数では、都市部はすでに国際警戒ラインをはるかに上回る0.47に近づいており、10%を占める最高所得者層の可処分所得では、同率の最低所得者層の8倍以上にもなっている。

都市部と農村部の格差については、新華社の報道によれば、昨年の1人平均収入比は3.22:1だった。東部の最も豊かな省と西部の最も貧しい省の1人平均GDPの格差は10倍以上もある。

現在、解決の差し迫ったその他の社会的矛盾や問題として、不十分な就業の機会、社会保障体系の整備、経済の持続可能な発展、環境保全、科学技術・教育・文化・衛生面の立ち遅れた現状の改善などが挙げられる。

環境汚染は今、経済の長期的発展と国民生活の向上を著しく脅かす問題となっている。国家環境保護総局と国家統計局が9月に共同で発表した「グリーンGDP報告」によると、04年の全国の環境汚染による経済的損失は5118億元と、その年のGDPの3.05%を占めた。衛生部と水利部が共同で行った調査でも、全国の3分の1を占める農民を含む約3億人の飲料水が、汚染が主因で基準に達していないことが明らかになった。

ここ数年進められてきた医療・衛生と教育体制改革は失敗したとされている。それにかかわる費用が、人口の大多数を占める中・下所得者層の支払能力の限界を越えたからだ。

中央党学校の呉忠民教授は「医療・衛生、住宅、教育などの費用は高めに推移している。大卒者の就職が楽観視できない状況では、人々は将来に不安を抱くだろう」と指摘する。

政府の統計によると、04年の教育投資がGDPに占める割合はわずか2.79%。同期の国際平均は4.4%だ。

経済の飛躍的な成長に伴い、エネルギーの需要量が増えつつあるのに対し、自給率は下がる一方だ。このため、エネルギーの節約と効率的な利用が一層求められている。「第11次5カ年計画」(06〜10年)要綱は、10年までに、GDP1万元当たりのエネルギー消費を第10次5カ年計画末期より20%減らす目標を掲げている。

改革の成果を共有

公平で公正な収入配分制度は社会の公正を確保する上で最も肝要な調整メカニズムだ。今回の6中総の精神は、効率重視から公平な配分体制重視への回帰を示唆するものとなった。

現在、社会の人間関係の不調和は主に、所得格差によってもたらされたと見られている。改革開放以降、市場経済に転換するにつれて、既存の配分制度を維持する調節メカニズムにも大きな変化が起きた。

計画経済時代には、賃金水準は国が制御していたため、所得格差は極めて小幅にとどまっていた。ところが、人々の富を創造しようとする意欲はひどくそがれ、経済効率の向上も制約されたことから、改革が必要となった。

80年代初め、改革の提唱者であるケ小平氏は「一部の人をまず豊かにする」ことを提起した。伝統的な体制に対して、市場経済体制下での配分体制によって平均主義の「大釜の飯」(親方五星紅旗)は打破され、経済効率の向上も著しく促された。だが逆に、生産の要素が加わった以上、社会の富の配分が不均衡になるのは避けては通れない。

ケ小平氏が打ち出した理論は、社会が一定の段階にまで発展した時、まず豊かになった人が豊かになっていない人を助けることで、最終的にともに豊かになる社会を実現するというものだった。

孔子は「寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患う」と語っている。中国はすでにこの原則に回帰できる段階にまで発展してきた。呉忠民教授は「社会の公正が調和の取れた社会の基盤となるものであり、本質的な特徴だ。社会の公正を社会主義の本質の高さにまで引き上げたことは、政府の機能が然るべき位置にまで回帰したことを示している」と指摘。

国家発展改革委員会マクロ経済研究院の丁元竹研究員は「世界の経験から見れば、社会の格差拡大が社会の不安定と非安全の主因だと言える。調和の取れた社会を構築するには、貧困者により関心を寄せることが必要だ」と強調する。

弱者群に関心を

中国共産党が初めて社会の調和の問題を取り上げたのは第16回党大会の報告の中であり、「社会の一層の調和を図る」との奮闘目標を明確に打ち出した。03年に開かれた16期3中総の「経済体制改革の更なる深化に関する若干の問題についての決定」は、「調和の取れた社会」という概念を提起。「社会主義の調和の取れた社会」を構築するとの概念が初めて完全な形として提起されたのは、16期4中総の「党の執政能力の強化に関する中国共産党中央の決定」であり、「決定」は執政能力を党が全面的に高めなければならない5つの能力の1つとして正式に盛り込んだ。

胡錦涛総書記は05年2月に開かれた、社会主義の調和の取れた社会を構築する省・部クラスの主要な指導幹部の能力向上について協議する検討会で「我々が建設しようとする社会主義の調和の取れた社会とは、民主的法治と公平と正義を尊び、誠実と信用を守り、友愛に満ち、活力に溢れ、安定して秩序があり、人と自然が調和した共生する社会である」と指摘した。

庶民の不満を買った教育資源の不均等な配分という現状に対処するために、今年9月1日から新義務教育法が施行された。同法は公平な教育の推進を核心と精神に、まず農村部から、次に都市部の順に、すべての学齢児が9年制義務教育を無料で受けられるよう保証することを目指したものだ。また、農村の貧困家庭の子供に対しては、授業料や雑費、本代などすべての費用を免除するほか、一定額の補助金も供与するとしている。

衛生部と国家中国医薬管理局、国家発展改革委員会、財政部は先ごろ「農村の衛生サービス体系の整備と発展計画」を発表した。「計画」によると、10年までに、中西部と東部貧困地区の郷・鎮にある診療所2万2000カ所、県立病院1300カ所、県立中国医学病院400カ所、県立の婦人小児用保健所950カ所の老朽家屋の改築と医療設備の充実などに合計216億8400万元の資金を拠出する。また衛生部は10年までに、ほぼ全国の農民をカバーする新しいタイプの農村協力医療制度を普及させることを明らかにした。

6中総は調和の取れた社会を構築するために(1)人間本位(2)科学的な発展(3)改革と開放(4)民主と法治(5)改革と発展と安定の関係の正確な処理(6)共産党の指導の下での社会全体による共同の建設――の6つの原則を順守することを提起した。当面および今後一定の期間、この6原則の実施と6中総が確定した20年までの目標と主要な任務の実現に取り組むことになる。