2006 No.46
(1106 -1112)
 

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伝統工芸の集大成、北京の「百工坊」

「百工」という言葉は最初に春秋戦国時代の「考工記」に現れたものである。この本の中で、さまざまな技芸に秀でた達人たちのことを「百工」と名づけた。史料によると、明・清の頃には、全国の名匠たちを集める皇室専用の工場があり、民間では、これらの工場のことを「百工坊」と呼んでいた。

現在の北京でも、100人余りの国家クラス・省クラスの工芸美術界の大家や民間の工芸の名匠たちが集まっている工芸品の工場「百工坊」というものがある。

「百工坊」に入ると、まるで昔の北京の町並みに足を踏み入れたように感じる。古風の一つ一つの部屋には、琺瑯(エナメルのうわ薬をつかって絵を描いたもの)、堆朱、玉石細工、泥人形など、かつて一世を風靡した伝統工芸品が陳列されている。見学者たちは扉を開けるたびに、その中の華麗な芸術品の品々に驚嘆するにちがいない。

玉石細工、景泰藍(七宝焼き)、象牙細工、堆朱、金漆象嵌、シルク嵌めこみ、宮毯、宮繍(皇室専用の技法で作る絨毯と刺繍)は、「燕京八絶」(北京の八つの絶品)とも呼ばれてきた。「百工坊」では、これらの工芸に精通する名匠たちが数多くいる。66歳の姚富瑛さんは、すでに48年間も京繍の世界に没頭してきた人で、京繍の名家となっている。姚さんによると、「平、光、斉、韻、和、順、細、密」は京繍の秘訣であり、刺繍用の糸は、自分で作る、髪の毛よりも細いものでなければならない。姚さんは記者に対し、自分の作品の一つ、「竜袍」(清の皇帝の正装)について紹介した。「竜袍」は襟から裾まで、ほとんどすべてのところに刺繍が施されており、一揃いの「竜袍」を造るためには、名匠でも少なくとも2年はかかるという。

全国工芸美術金賞に何回も輝いた堆朱工芸の大家・文乾剛氏は、堆朱の工芸について次のように語った。たとえば高さが30センチの花瓶をつくる場合、まず80回も繰返し漆を塗り、漆の厚さを5ミリにしなければならない。そして文様と図案を彫刻して、文様は均等感が重要で、図案は魂があるような感じが重要である。このような花瓶を作りあげるには、数万回の彫刻が必要となるのである。

百工坊の張新超副館長は、「現在、手工芸で生計を立てている人はおそらく数人しかいないかもしれない。科学技術はすでに伝統的な手工業に取って代わっている。現在の百工坊は実は、すでに「宮廷の工芸美術」の代名詞となっており、われわれが大切にしているのは、伝承が途絶えるおそれのある伝統文化である」語った。

百工坊は現在、中国唯一の内外の見学者たちに向けて、工芸美術の歴史、品種、技術を全面的に紹介する場所となっており、中国の工芸品の集中的展示と販売を同時に行っている中国唯一の博物館ともなっている。