2006 No.48
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新メディア時代を担うのは

――電子書籍、ブログ、RSS(HP情報を配信するテキスト)の閲覧……。新興の科学技術を媒体とする新たなメディアが今、伝統的な情報受信方式に取って代わりつつある。

譚偉

「新メディアとは、デジタルテレビ技術やネットワーク技術を利用し、インターネットやブロードバンド、移動通信ネット、衛星などを経由し、コンピューターや携帯電話、デジタルテレビなどの端末を通じて、ユーザーに情報や娯楽を提供する伝達方式だ」。上海文広新聞伝媒集団(上海メディアグループ)の総裁補佐・張大鐘氏は新メディアについてこう定義する。

中国オリンピック委員会公式サイトの副主任・何恵嫻女史は新メディアの実際的な利用例を挙げ、「オリンピックでサッカー試合を中継する場合、9台のカメラが異なる角度から撮影する。視聴者は、異なる場所のカメラを随意にクリックできるほか、選手の個人情報を随時検索して、メディアの評価を閲覧することもでき、またネット仲間とオンラインで討論したり、試合結果を予測したりすることもできる」と説明する。

デジタル技術とIP(インターネットプロトコル)技術を基礎とする新メディアによって、消費者は固定番組表でテレビを観るという制約を超えて、いつでもテレビ、インターネットあるいは移動通信端末から好きな番組を視聴できるようになる。この機能はいかなる既存のメディアも単独では実現できず、インターネットや移動通信業界がデジタル業務で全面的に協力を展開することが必要だ。それは企業自身にもより多くの収入をもたらすことになる。

モーガン・スタンレーが先ごろ発表した報告書によると、昨年の中国広告業界の総収入は、日本に次いでGDP(国内総生産)の1%近くを占める約160ドルに達した。06〜08年は新メディアの急速な台頭と08年五輪開催が近づくことから、17〜18%の成長率を維持すると予測している。現在、新メディアが広告総収入に占める比率は約18%だ。

伝統メディアは淘汰されるか

8月の炎暑の中、全国各地の新聞グループ大手や主要紙から約100名の社長、編集長が参加して、北京で国家新聞出版署主催の「第3回新聞競争力年次総会」が開かれた。

天気以上にこれらトップを悩ませているのが、伝統的なメディアが遭遇している苦境だ。

ホームページや携帯電話、ビル広告テレビなど新メディアの台頭に、中国を含め世界のメディアは大きな衝撃を受けており、新聞発行量や広告収入は低下し続けている。05年上半期以降、国内の幾つかつ新聞グループ大手の実質広告収入は10〜30%低下しており、減少幅は平均すると15%を超え、通年で業界全体はゼロ成長あるいはマイナス成長となった。

それに比べ、新メディアは好調だ。06年第2四半期までの決算を見ると、新浪や網易、捜狐の3大ポータルサイトの広告収入はいずれも大幅に増えている。新浪の第2四半期の広告収入は2950万ドルで、前年同期比で45%の増。網易の同年第1四半期の収入は、同36%増の770万ドル。捜狐の第2四半期の収入はまだ監査を受けていないが、2280万ドルで同35%の伸びとなった。

京華時報の社長・呉海民氏は「ネットワークを主力とし、移動テレビやビル広告、都市経営のラジオ局、エレベーター広告などを媒体とした新メディアが急速に台頭し、伝統メディのシェアを占有、浸食しつつある。同時にネットワークを代表とする新メディアは多くの若者を引きつけ、また多くの質の高い、消費能力のある読者を奪っており、伝統メディには大きな打撃だ」と指摘する。

中国人民大学世論研究所々長・喩国明氏は「新メディアによって広告とユーザーの二分化が進んだ。若い世代は情報の取得ではますますインターネットなど新興メディアに重きを置くようになっており、伝統メディのユーザーは老齢化の傾向が顕著になってきた。時間の推移とともに、今日の新メディアのユーザーが将来、主流となるだろう」と分析する。

中国インターネット情報センターが7月19日に公表した「第18回インターネット発展状況に関する統計報告」によると、6月30日現在、ネット利用者総数は1億2300万人で、去年同時期に比べ19.4%、2000万人増加した。主流を成しているのは若者で、18〜24歳の占める割合が最高で35.1%。次いで25〜30歳が19.3%、18歳以下が16.6%で続く。30歳以上の占める割合は比較的低く、30〜35歳は11.6%、36〜40歳は7.1%、41〜50歳は6.5%、50歳以上は3.5%となっている。

財政時報のEメディアコンテンツ・運営主管の董長虹女史は「いつか伝統メディが博物館入りする日が来るだろう。消費者の多元化した需要が、媒体するメディアのより進化した、より多様化した変革を促している。豊富な情報ルートによって消費者の選択はより広がっており、近い将来、ネットワークメディアは伝統的な紙メディア、伝統的なネットワーク、放送、テレビ、携帯電話などと一体となって資源を取得する架け橋となり、私たちの閲覧、生活や仕事の方法もそれに伴って変わっていくだろう」と指摘する。

コンテンツが永遠の“王”

「新メディアが与えてくれる最大のメリットは自由」。新メディア派のAさんはこう強調する。「例えば、テレビを観るのは好きだが、放送時間と仕事の時間がかち合う時には、暇な時にネットで観ることにしている。ネットワークのカバー率がアップしたため、番組を観る時でも今まで以上に場所や時間に制約されなくなった」と話す。

上海メディアグループの張氏は「デジタルやIP技術によって新メディアの特徴である連動性が拡充されたことで、ユーザーの時間的、空間的な自由度はずっと高まった」と強調。ただ、新メディアが伝統メディアの終焉を告げるとは考えていないと言う。「伝統メディアの優位性が、その情報内容(コンテンツ)や編集の水準にあることは間違いない。新聞は権威ある分析や、透徹した言論に長じていれば、コンテンツ面で強みがある。ウォールストリートジャーナルが新メディアの衝撃を受けていない代表例だが、理由はまさに文章の質の高さ、非代替性にある」

さらに張氏は「イメージ的に見れば、新技術はインターネットや移動ネットワークといった新たな伝達キャリアを生み出した。また、伝統メディアとの広告市場の競争に直接参与したことで、広告の手法はさらに多様化した。根本的に言えば、新技術が読者の消費習慣を変えたということだ」と強調。そして、素晴らしいメディアの出現はコンテンツを重視しているからだ、と指摘。「コンテンツを“王”とするのが、伝統メディの根本だが、それは同様に新メディアの根本でもある」

財政時報の董女史も張氏の見方に同意する。「仮に伝統メディが新技術を利用して現有の情報と伝達の価値を最適化して、新たなコンテンツと伝達の価値を生み出すことができれば、間違いなく発展に向けた潜在力があると言える。反対に、HPあるいはSPがただ『新メディア』という殻をかぶっただけで、読者の要求に適した新価値のモデルを構築できなければ、淘汰される運命にさらされるのは必至だ」と強調。

実際、中国では一部実力のある伝統メディはすでに新メディアと融合して発展を図る試みをしている。

4月16日、解放日報新聞グループは世界規模で初めて電子版の発行を試験的に実施。南方新聞メディアグループも「南方新聞データハーバー」を構築した。

傘下に南方日報や南方週末、21世紀経済報道、南方都市報、新京報などのメディアを有する南方日報新聞グループは昨年7月18日に社名を「南方新聞メディアグループ」に変更。同グループ共産党委員会書記の范以錦氏は、社名変更について「新メディアの挑戦を受ける中、新聞を発行するだけでは不十分であり、新聞発行という伝統と、メディア運営の方法を、新メディアと融合させる必要がある」と強調。

また今後の発展構想について「先ず例えば、インターネットや電子版、携帯電話へのニュース配信に主体的に進出する。さらに発展するために、単に新聞を作るだけでなく、新聞や雑誌などの紙メディア、ネットワークメディア、移動メディア(携帯へのニュース配信)、文化出版、会議・展覧会事業、文化と関連する事業や公益活動などの文化経営に全面的に参与する。わが社は新聞発行という単一的なグループからメディアグループへの転換を実現した。次は、文化メディアグループとして発展し、将来は国際文化メディアグループに成長させるつもりだ」と説明する。

同時に、国家新聞出版総署が今後5年間に推進する14項目の行動計画の1つとして、「デジタル新聞実験室計画」を8月5日にスタートさせた。同計画は、新聞出版事業者に対し、デジタル化され、ネットワーク化された様々なコンテンツの制作、伝達手段や端末を積極的に利用して、ネットワーク新聞や携帯電話へのニュース配信、電子版など様々なデジタル出版方式や経営モデルを模索するよう奨励するために作成された。

計画の核心となる内容は、電子版を主要な実験の方向性に据え、それを新しいタイプのコンテンツ表示媒体の主要な突破口にして、ブロードバンドなどのマルチメディアを主要な伝達技術にするとともに、互換性のある情報をコンテンツ制作と伝達の基準にすることで、デジタル化され、ネットワーク化され、一体化された新しいタイプの新聞出版方式と運営環境を構築するというものだ。

中国のインターネット?メディアを研究するモーガン・スタンレーのアナリスト・李衛東氏は「2010年までには、各メディアが管理のデジタル化を全面的に実現することで、最終的に新旧メディアは融合されるだろう」と予想する。