2006 No.50
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金融業の完全自由化

――中国は世界貿易機関(WTO)加盟時の公約をすでに履行しており、中国金融市場は今後、グローバル化に向けて発展していくことになる。

蘭辛珍

2006年12月11日は中国の金融業にとって、画期的な日となった。01年のWTOに加盟した際の公約に基づき、外国銀行はこの日から完全に市場に参入できるようになり、人民元の販売業務の開設も認可された。中国の金融業が完全に自由化されたことを示すものだ。

銀行業と保険業、証券業が金融業の3大基幹業種。保険業は2年前にすでに自由化され、証券業もWTO加盟時の公約をもとに自由化が進んだ。

対外経済貿易大学の劉富祥教授は「銀行業の自由化で、中国の金融業の競争は完全にグローバル化された」と強調する。

進展状況は公約を上回る

劉教授は、中国の金融業の自由化に向けた進展状況は、WTO加盟時の公約を完全に履行しているのみならず、公約をはるかに上回っていると話す。

銀行業に関する公約に基づき、01年12月11日から、外国銀行による全ての顧客に対する外貨業務は地域制限なしに認可された。人民元業務はまず上海と深セン、天津、大連で認可され、加盟1年目に広州と珠海、青島、南京、武漢、2年以内に済南と福州、成都、重慶、3年以内に昆明と北京、アモイ、4年以内に汕頭と寧波、瀋陽、西安で認可された後、12月11日からは地域制限がなくなった。

外資系銀行による中国企業向け人民元業務は03年12月に認可。同時に、個別の外銀による国内銀行への資本参加比率を15%から20%まで引き上げたほか、外銀支店の運営資金量に対する規制を緩和し、外銀による金融派生商品の取り扱いと保険会社の外貨の海外委託管理業務を認可するなど、一部で公約の範囲を超える自由化政策を講じてきた。05年12月現在、人民元業務が認可された地域は25都市までに拡大。そのうち西安や瀋陽、ハルビン、長春、蘭州、銀川、南寧では実施期限より前倒しで認可された。人民元業務の対象も外資系企業や外国人、香港・台湾・マカオ同胞から中国資本企業にまで拡大したほか、外資系銀行25行が国内銀行20行に資本参加している。

保険業では、法定保険業務と生命保険を扱う企業への外資出資比率は50%を超えてはならないとの規制があるのを除き、外資系保険会社が中国に進出する際のその他の規制はなく、ほぼ自由化された。

証券業については、政府はもともと慎重な姿勢を取り、WTO加盟時に公約する自由化の程度に制限を設けた。外資証券機関は中国側の仲介を経なければB株(国内・海外投資家向けの株式)の直接取引は認可しない◆中国との合弁によるファンド設立の認可については、加盟1年目は、外資の持ち株を33.33%とし、3年後に49%まで高めることで、国内ファンドと同等の待遇を享受できる◆外国証券会社による中国との合弁証券会社の設立の認可については、外資の持ち株比率を最高で33.33%とする◆合弁証券会社はA株(国内投資家向けの株式)とB株、H株(香港市場に上場した大陸企業の株式)、政府債券、外貨建て有価証券の引き受けを行うことができ、加盟3年後にはA株市場で直接取引ができる――などだ。

証券業の実質的な自由化の進展状況を見ると、02年末に適格外国機関投資家(QFII)制度を正式にスタートさせ、外資が国内株式市場に直接参加できる機会を提供した。06年10月27日現在、QFII資格を取得した海外機関は計51社、総額はすでに126億ドルに上る。中国証券監督管理委員会が認可した合弁ファンドは50数社。その数は急増し、合弁がファンド全体の半数近くを占めており、外資の持ち株比率は最高で33%だが、管理権はほぼ外資が掌握している。合弁証券会社は現在7社。

WTO加盟交渉に参加した全国人民代表大会財政委員会の周正慶副主任は「加盟後、サービス・貿易分野はかつてないほど自由化された。金融を含む様々な重要なサービス部門で、中国は公約を厳格に履行し、幅広い市場参入の機会を提供している」と強調する。

どれほどの影響があるのか

「中国の資本流動に変化が生じるだろう」。劉教授は、自由化後の金融企業間の競争に2つの新たな注目すべき点が見られるだろうと話す。1つは、中小企業の融資難がやや緩和されることだ。

現在、国内銀行は9兆元超の余剰流動資金を抱え、加えて外貨準備高は1兆元余りに達しているが、有効利用されていない遊休資金規模は金融資産全体の46%近くを占める。「金融資源の浪費はかなり重大だ」と劉教授は指摘する。

だが、こうした状況と非常に対照的なのが、多くの中小企業が銀行からより多くの資金を調達できないでいることだ。国内銀行による中小企業への融資が非常に少ない原因は、表面的には、企業収益の悪化に対する懸念や回収不能が大多数だが、実際的には、国内銀行の企業化に向けた運営体制が成熟していないからである。数年前までいずれも国有の非営利事業団体だった。

劉教授は「外銀が人民元の販売業務に従事することで、中小企業にとっては、融資のルートが増える」と指摘する。

いま1つは、中国人の投資機会がさらに増加することだ。住宅担保ローンや医療保険、自動車・教育ローン、養老保険などの金融商品はまだ十分に発達していないため、人々は現在ある収入に照らしてどれだけ消費するかを決めている。

金融業が完全に自由化された後、国外の投資・資産運用会社が中国に進出すれば、国外の投資に対する考え方の影響を受け、ますます多くの中国人が単なる預貯金者から投資家へと変わっていくと思われる。

中国人民銀行の蘇寧副行長は「金融業の完全自由化は、より多くの金融企業に影響を与えることから、国内金融の革新が加速するだろう。先進的な金融技術やサービス方式、金融商品の設計理念がもたらされる」と話す。

現在、保険や信託、リース、証券などの金融市場はある程度の規模に達しているが、金融サービス業の核心となる競争力はまだ完全には持っていない。そのため、金融業の自由化により、国内金融機関は国際的な先進ノウハウを十分に参考にし、自社の金融組織システムを革新、改善すれば、競争力をつけることはできる。

首都経済貿易大学の徐洪才教授は「外国金融機関が中国にもたらすのはメリットやチャンスばかりでなく、そのマイナスの作用や影響も無視できない」と指摘する。

香港上海銀行(HSBC)アジア太平洋地域の王冬勝執行役員は、毎年千人規模で行員を募集しているが、今年と来年は大陸部で2000人増やすことを明らかにした。実現すると、HSBCの雇用総数は4000人を超える。同時に、恒生銀行やスタンダード・チャータード銀行、東亜銀行なども相次いで組織拡充を加速させているところだ。

徐教授は「外資は中国進出に当たり、従業員を必ず現地化しなければならず、大量の金融業の人材が銀行など外国金融機関に流入していくだろう。中国の金融業が真の挑戦を受けるのは今後数年以内だ」と予想する。

国務院発展研究センターの王召研究員は、中国の金融業の自由化でもたらされるいま1つの大きな影響として、外資の金融機関の進出で国内金融機関の管理がより難しくなるとの見通しを示したうえで、「まず通貨政策の協調が一段と困難になる」と指摘する。「外国の金融機関が増えて、外資の領域が拡大するため、国際市場の需給の変化や価格の変動、国際金融の混乱が商品や通貨、資本、為替の4大市場のバランスに直接影響を及ぼすようになることから、中国の通貨政策は一段と高度な協調が求められる」

未来に目を向けるのが必要

上海社会科学院世界経済研究所の徐明棋副所長は、中国金融システムに生じる第1の変化として、金融機関の競争で国内銀行の経営モデルが変わると強調。「短期間には、外資金融機関は数量やシェアで国内金融機関と同列には論じられないが、国内待遇を受けた後の業務の全面的展開によってもたらされる競争の雰囲気と枠組みから見て、すでに始まっている相互の競争は一段と激化するだろう」と予想する。

さらに、無視できない重要な要素として、「外国金融機関は混合業務で強みがあり、これが国内金融業務の競争にももたらされる」と指摘する。

北京大学光華管理楽員の黄燕芬副教授は「中国の金融業は長年にわたり分割経営を実施してきた。つまり、銀行業と証券業、保険業を分割して管理してきたが、これは金融リスクを制御するにはプラスとなるが、WTOに加盟した後の外国金融機関を見ると、いずれも世界範囲での経営はほとんど混合業務だ。こうした不都合を解決しなければ、中国の金融機関は激しい競争の中で不利な環境に直面するだろう。そのため、分割業務経営という現行の枠組みを打開することが金融構造調整の最優先課題となっている」と話す。

さらに黄副教授は「金融業が分割業務経営から混合業務経営に向かうのが時代の流れだ」と強調したうえで、「金融業の競争の結果としてあるのは、国内金融市場のグローバル化への変化だ。金融市場が規制を打破することは、外国金融機関の中国進出にプラスになるだけでなく、国内金融機関がグローバル化された競争の中で規模を拡大するのにもプラスとなる。一方、外資の参入については、国内金融機関との待遇上の一体化だけでなく、管理に関する法規を統一したり、法による監視管理システムを完備させたりすることも必要だ」と指摘する。