2006 No.51
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06年の世界経済を振り返る

梅新育
(商務部国際貿易経済協力研究院副研究員)

仮に2004年、05年の世界経済は「生花錦をまとい、烈火油をあおる」光景を呈したとするなら、06年の世界経済は繁栄が失われた底にいささかの冷気が現れてきたと言えるだろう。今回の世界経済の好景気はすでにピークを越えた。

米国経済は高成長から低成長へと変わった。第1〜第3四半期の国内総生産(GDP)の成長率(季節調整済み)は年率換算でそれぞれ5.6%、2.6%、1.6%、第3四半期は1.2%を記録した03年第1四半期以来の最低水準となり、不動産など市場の先行き不安は、米国経済が一段と冷え込む可能性のあることを一段と示している。米国経済の減速傾向は第4四半期から来年まで続くと予想される。国際通貨基金(IMF)は9月の「世界経済の展望」で今年の米国経済の年間成長率を3.4%、来年は2.9%と予想しているが、今年はこの目標を必ずしも達成できるとは限らないようだ。

今世紀に入り、ユーロ圏と欧州連合(EU)の経済成長は一貫して力強さに欠け、ドイツというこの過去のEU経済のけん引車は日本とともに「新たな衰退国家」と呼ばれるまでになり、新興国家とは対照的である。昨年、ユーロ圏の経済成長率はわずか1.4%、EU25カ国では1.7%だった。今年の年初、欧州経済の成長力は著しく強かった。第1四半期のGDPは前期比で0.6%の増、昨年同期比で1.9%増加し、第2四半期は、同0.9%、同2.6%の増だったが、第3四半期になってユーロ圏経済は成長が緩やかとなり、成長率は前期比でわずか0.5%と、経済学者の当初予想(0.7%)を下回った。

日本では、しばらく前に発表された今年第3四半期のGDPの実質成長率は前期比で0.5%、年率換算で2%増加して、当初予想を上回った。だが、工業生産の持続的な増大傾向は弱まり、9月の工業生産は前月比で0.7%低下、設備受注も大幅に減少した。第3四半期の船舶、電力を除く民間需要の機械受注(季節調整済み)が前期比で11.1%も激減し、87年4月以来最大の落ち込みとなったのは、企業予想が良くなかったか、少なくとも見極められなかったことを示している。まさにこうしたことから、日本銀行はゼロ金利政策を解除したが、追加利上げにはいまだ慎重だ。

先進国が依然として世界経済による生産の絶対部分を占めているため、上述した様々な現象は、世界経済の今回の周期が極めて好調な状態から低迷に向かうことを示していると言える。

もちろん、発展途上国の経済成長は依然として非常に力強い。05年に新興市場の総生産量が世界に占める比率は半分を超え、GDPは全体で1兆6000億ドル増えたが、先進経済体は1兆4000億ドルに過ぎない。総輸出量が世界に占める比率は70年の20%から現在では42%に達しており、過去5年で輸出増は世界の半分を超えた。05年の新興市場と発展途上国の経済成長率は7.4%だったが、IMFの「世界経済の展望」は、今年の経済成長率を7.3%と予想している。先進国の予想成長率(3.1%)の2倍以上だ。IMFは今後5年間の新興経済体の経済成長率は6%をやや下回ると予想しているが、それでも先進経済体の2倍である。仮にこの相対的な成長傾向を維持できるとすれば、20年後の新興経済体の生産は世界総額の3分の2を占めることになる。

発展途上国の中で、経済成長が最も力強いのが中国とインドの2カ国であり、上半期のGDP成長率はそれぞれ10.9%、9.3%だった。通年で中国経済は10%前後、インドは7.6%、アジア全体では約6.5%、そのうち東南アジア諸国連合(ASEAN)は5.5%の成長が予想されている。ラテンアメリカは06年、東アジア(とくに中国)の一次産品需要の高まり、米国の製造業製品需要の恩恵を受けて比較的著しい成長を遂げ、アジア諸国のように力強くはないものの、以前と比べれば、業績はやはりかなりのものだと言える。

新興市場では、一筆に値するのがロシアだ。原油価格の高騰から、ロシアの近年の経済成長は非常に急速であり、財政収入や外貨準備高は年々膨れ上がり、今年にパリクラブの全債務を前倒しで返済した。だが、巨額の石油収入は同時に、ロシアに「オランダ病」を味あわさせることになった。この病の症状の一つが、自国通貨の為替レートの上昇である。今年に入り、ルーブルの全外貨に対する平均レートは6.7%上昇しており、上半期の対ドルレートは9.7%、対ユーロレートは4.7%上昇した。こうした傾向がロシア経済のドル化現象を大いに解消したのはもちろんだが、国内の非エネルギー部門の製造業は当時、エネルギー部門による投資と人材を奪い合う競争に直面し、現在は再び為替レート変動によるコスト上昇、廉価な輸入商品という二重の打撃を受けている。同時に、ロシアの国内経済がほぼ改善された状況の中、ルーブルの為替レート上昇が不動産投機家の当初予想した利益率を高めていることから、大量の外資が不動産市場になだれ込んだ。今年上半期だけでもロシアに流入した外資規模は前年同期比で50%近く増えて234億ドルに達しており、そのうちどれほどが不動産市場に流れ込んだかは定かではないが、市場バブルはそれに伴って一段と悪化している。

06年と07年の国際貿易は依然として高い増加スピードを維持するだろう。05年は7.4%増加し、06年は8%を超えるはずであり、07年はドーハラウンドの中止などの要因で緩やかになることはあっても、増加率はやはり7%以上か、8%近くになるだろう。

06年の国際貿易最大の特徴は、一次産品の上がり相場が転機を迎えたことだ。この数年、全世界の一次産品市場はまれに見る大規模な上がり相場を経験しており、原油価格は一時、1バレル80ドル近くに達し、金は1オンス700ドル超と過去最高を記録したほか、主要金属やソフト商品価格も相次いで01年以来の最高に達し、値上がり幅は数倍に上った。一次産品市場への投資家は一時、過去最大の威光を冠した。しかし、いかなる事にも始めがあれば終わりがあり、威光があれば没落がある。原油価格は7月14日に1バレル78.40ドルの過去最高を記録した後、9月26日までに、北海ブレント原油、ドバイ原油、WTI軽質油の単価はそれぞれ57.92ドル、55.90ドル、61.18ドルとなり、下落幅は20%を超えた。その他の主要一次産品市場も先行き不安感があり、「砂糖市場は苦くなるばかりだ」と嘆息する声もあるほどだ。今回の一次産品の大規模な上がり相場が相当長い間続いたことから、グロバール経済の成長率の低下で需要の増大スピードが緩やかとなり、供給が日増しに増大し、代替製品や在庫が増えるに伴い、上述した動向は恐らく一次産品の上がり相場が転機を迎えたことを示すものだと言えるだろう。

04〜05年、世界の外国直接投資(FDI)額は2年連続して大幅に増加した。国連貿易開発会議(UNCTAD)の「06年の世界投資報告」によれば、05年は9160億ドルに達し、04年に比べて29%増えた。先進国への流入額は37%伸びて5420億ドルに達した。発展途上国への流入額は05年にも22%増加し、過去最高の3340億ドルに達した。百分率で算定すると、先進国への流入はFDI全体の59%、発展途上国は36%、東・南欧州と独立共同体は4%だ。しかも、一部の発展途上国と転換期にある経済体はすでに重要な投資源となっている。90〜05年までの間に、これら経済体でFDI額が50億ドルを超える国・地域は6から25まで増えている。昨年、発展途上国と経済体の多国籍企業によるFDIは1200億ドルに達し、過去最高を記録したが、これには主要なオフショアマーケットからの投資は含まれていない。なかでも、アジアからの投資が70%を占める。05年の発展途上経済体最大の投資国・地域は順に、香港特別行政区、ロシア連邦、シンガポール、台湾省、ブラジル、中国である。

過去数年にわたる国境を越えた投資の高い伸びが持続的にけん引する中、FDIは今年も一定の増加を維持し、とくに企業の合併・買収(M&A)市場はかなり活発だった。「06年の世界投資報告」は、05年にFDIを増加させたけん引要素は国境を越えたM&Aであり、企業利益が増加し、株式市場が活気を取り戻した後に多国籍企業が講じた戦略的選択を反映している、としている。英ディーロジック社が今年行った調査統計によると、1〜9月期の世界のM&A総額は前年同期比で54%増の1兆1000億ドルに達した。そのうち国境を越えたM&Aが全体の34%を占め、これまででM&A活動が最も活発な9カ月となった。トムソン・フィナンシャル・グループが行った統計では金額はさらに多く、今年第3四半期までの総額は前年同期比で32%増の2兆5000億ドルとなっている。

しかし、FDIのこうした“繁栄”は必ずしも長く続くものではない。投資は市場の将来予想を受けてけん引されるのであり、05年にFDIがこれほど高い伸びを見せた原因は、当時の世界経済成長予想が楽観的だったことにある。実際、今年の米国経済成長は依然として良好で、EUや日本経済も成長に向けて状況は著しく改善され、中国も高成長を維持しており、とくに際立つのが企業利益の高い伸びだった。また、当時の国際金融市場では金利水準がまだ高くなかったため、対外投資の資金コストは比較的低かった。世界経済が冷え込みつつあることから、投資利益予想が悪化しているのに加え、世界的に利上げの動きが広がっており、とくに日本がゼロ金利政策を解除したことで、投資資金コストは上昇している。

多くの国で外資による一部の負の作用が比較的突出してきたことから、その国の政府や社会との間で矛盾が多少なりとも増えてきた。FDIは恐らく減少する、というのが今後の傾向だが、たとえ従来の投資プロジェクトの後続投資が相次ぐために投資流入額は減少しないとしても、少なくともあれほど大幅に増えることはないだろう。