2006 No.51
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華々しい多国間外交

――2006年、中国の多国間外交はその規模の大きさ、層の高さ、密度の濃さで未曾有とも言え、中国外交史で一里塚となる記念碑的意義を持つのは確かだ。

孫晋忠
(中国国際問題研究所研究員)

今年の中国外交は華々しく、多種多様で盛観を極めた。指導者がアジア欧州会議(ASEM)、主要国首脳会議(G8)と発展途上国指導者の会合、アジア太平洋会議(APEC)に出席し、また朝鮮やイラン問題の解決に積極的に参与し、さらには上海協力機構(SCO)や中国・アフリカ協力フォーラム、中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)記念サミットを主催したことは、まさに中国が多国間外交に積極的に尽力したことを示すものであり、それ以上に多国間外交の舞台での手腕の熟練さを表すものでもある。周知のように、二国関係は一貫して中国が外国問題を処理する主要な手段であり、中国外交の主要なモデルでもあった。1990年代中期から中国は多国間外交を展開し始めたが、今年はその規模の大きさ、層の高さ、密度の濃さで未曾有とも言える。06年の多国間外交が中国外交史で一里塚となる記念すべき意義を持つのは確かだ。

今年、中国がより積極的に多国間外交を展開した根本的理由は、総合力の向上が必要だったことにある。30年前の経済改革を始めたばかりの時に比べ、総合力はかなり高まり、現在は世界第4位の経済体であり、外貨準備高は1兆元を突破し、国際問題で重要な影響力を有している。こうした状況の中、外部世界との相互依存はさらに深まりつつあり、相互関係も重大な変化が生じた。国際的地位が絶えず上昇するに伴い、中国自身の利益も絶えず地球的範囲内で外部へと延伸している。中国外交は新たな機会に直面すると同時に、複雑な新たな挑戦にも直面している。グローバル化を背景に、人口の膨張、資源・エネルギー不足、テロのまん延、地球の温暖化、拡大する貧富の格差など人類の生存と発展にかかわる問題は、二国間外交で解決できる範囲をはるかに超えてしまった。局部・地域的な関心の高い問題も往々にして「髪を触れれば全身を動かす」ことになり、全局的かつ世界的な影響をもたらす。同時に、一つの国家自身の問題、また二国間問題はいずれも反応を起こしてさらに多国的な問題となる可能性がある。急速に台頭する発展途上の大国として、中国の国家利益と世界の利益は緊密に関連していることを中国は明確に意識している。人類の調和の取れた進歩に目を向けても、国家の持続的な発展の視点からも、中国はグローバルな問題を解決する国際協力により幅広く、より深く参与し、国際政治や経済の新たなゲームルールの制定により積極的、より主動的に参与していく必要がある。こうしてこそ、中国はグローバルな問題の解決のために方策を講じることができ、同時に自身の利益をより円滑に維持、実現できるのである。従って、多国間外交は中国が複雑な情勢に対応し、国家利益を維持するための当然の選択になりつつあり、中国経済の持続的な発展、周辺及び国際環境の安定を促進していく中でますます重要となる役割を発揮するには避けて通れない道でもある。

今年、中国の多国間外交が最も活発になったのも、政府が調和の取れた世界の構築という新たな模索を推進したからだ。新中国建国後、早くに多国間外交活動に参与しながら、長期にわたり多国間外交に対する認識に限界があったために、中国の多国間外交は非常に有限的なものだった。改革開放後、とくに冷戦終結後、その認識に変化が生じた。自らの発展に有利となる戦略態勢を確立して、国の総合力を増強し、戦略的空間の拡大に着眼して、多国間外交を大々的に展開するようになったのである。「協力、対話、対立の回避」という外交原則の下、中国は国際社会により全面的に融合し、多国間外交は活発化していった。中国共産党第16回大会は報告で「われわれは引き続き多国間外交活動に積極的に参与し、国連やその他の国際・地域組織で役割を発揮する」と明確に打ち出した。中国は様々な形の多国間外交活動に積極的に参与し、嘱目されるほど大きな成果を収めた。中国国内と国際環境の変化に伴い、政府は調和の取れた世界の構築という外交目標を提起した。具体的に言えば、「多国間主義を堅持して、共同の安全を実現する。相互協力を堅持して、共同の繁栄を実現する。包容の精神を堅持して、調和の取れた世界を構築する」というものだ。今年の中央政府の外交活動会議ではさらに、平和と発展、協力の旗を高く掲げ、独立自主の平和外交政策を堅持し、平和と発展の道を揺るぐことなく歩み、外交活動を全方位で展開して、恒久の平和と共同の発展、調和のある世界の構築推進のために貢献することが強調された。これはさらに、中国の多国間外交の展開にとって指導性のある戦略的意義を有している。

今年の多国間外交活動において、中国が主催国として開催した3回のサミットは、現代国際関係史で時代を画する積極的な意義を持つ。今回の中国・アフリカ協力フォーラムサミットはこれまでの人類史で唯一の、一つの大国と別の大陸の全ての国交のある国の元首と政府首脳による最高峰の対話との場なった。これは現代の国際関係の発展にとって極めて注目すべき大きな出来事であり、人類史で未曾有の出来事でもある。世界最大の発展途上国の中国と、発展途上国が最も集中するアフリカが、調和の取れた友好協力関係を発展させたことで、調和の取れた世界の構築という理論と実践は内容の豊かなものとなり、調和の取れた社会を構築する上で大きな貢献を果たした。10月30日、ASEAN10カ国の指導者は広西チワン族自治区・南寧で一堂に会し、中国・ASEAN対話関係構築15周年を祝った。指導者らが署名した「記念サミット共同声明」は、「中国とASEANの平和と繁栄に向けた戦略的パートナー関係は、それぞれの発展を力強く促したばかりでなく、双方の人民に実利をもたらし、この地域ないし全世界の平和、安定と繁栄を促すために重要な貢献も果たした」と強調している。現在、中国とASEAN、アフリカとの関係においては、互恵と相互利益の経済関係が主軸であり、これにより南南(発展途上国間)協力に新たな局面が切り開かれ、世界範囲の南南協力にとっても有益な経験となった。今年のSCOサミットでは開催期間中に「5周年宣言」と各合意文書に署名するとともに、共同コミュニケを発表した。これらは「SCOはこの5年来、急変する国際情勢による試練を経て、地域と世界の平和と安定を維持し、国際関係の民主化を推進し、調和の取れた地域と世界の構築を促進する重要な力となってきた。相互信頼、互恵、平等、協議、多様な文明の尊重、共同の発展を図るとの『上海精神』は、現代の国際関係理論と実践を内容豊かなものにし、国際関係の民主化の実現という国際社会の普遍的な要望を具体的に示しており、しかも国際社会が新しいタイプの国家関係の構築を模索するうえで参考にすべき重大な価値を有している」ことを表明した。こうした中国が主催した多国間外交活動は、未来の国際関係の枠組みの構築にとって現実的な影響を有するだけでなく、調和の取れた世界という理論により充実した内容を持たせることになった。

今年の中国の多国間外交について組織形態から言えば、1つは、わが国が主催したSCO、中国・ASEAN及び中国・アフリカフォーラムのサミットだ。いま1つは、積極的に参与したG8との会合、イランや朝鮮の核問題及びAPECといった多国間形態だ。参加国・地域について言えば、地域的また地域を越えた並列開催で、欧米諸国もあれば、アジア・アフリカ諸国もある。参加国の発展程度や国家規模の大小について言えば、先進国そして発展途上国いずれもあり、国家の大小には拘泥しない。概括すれば、中国の多国間外交は一般とは異なる全方位外交なのである。ただ、複数の国家の代表が集まる外交活動であれ、複数の国家が同一の問題を解決するために行う複数組の二国間から多国間の活動であれ、いずれも平和と発展、協力、開放、非同盟などを基調にしたものだ。SCOであれ、中国とASEANの関係であれ、結盟政治を放棄する、集団的対峙をしない、いかなるその他の国または組織にも対さない、開放的かつ建設的だが閉鎖あるいは排斥しない姿勢を取り、域内外の国家または国際組織を通じて平等、互恵、友好協力を展開することで、最終的にそれぞれが共に関心を寄せる問題を解決して、共同の安全、発展と繁栄を実現することに立脚しているのである。これは完全に、緊密だが同盟を結ばないパートナー関係であり、中国外交が伝統的な二国関係から新たな多国間外交というモデルに発展したことを示すものだ。

中国の今年の様々な多国間外交においては、安全と経済の2つが重要なテーマとなった。例えば、朝鮮やイランの核問題においては安全問題が際立った。中国は一貫して朝鮮の核問題に積極的に参与し、多国間外交の努力を通じて朝鮮半島の非核化を確保するには、中国が現在発揮している指導的な役割は欠かせない。朝鮮が核実験を実施した後、国連安全保障理事会は06年10月14日に朝鮮の核問題に関する1718号決議を採択し、朝鮮の核・ミサイルなど大量破壊兵器の関係分野について制裁措置を講じることを決定した。中国などが努力したことで、この制裁決議は「有力」と「適度」の原則を一定程度、具体的に示すものとなった。その後、中国が再びたゆまぬ努力を重ね、シャトル外交を行ったことから、最終的に6カ国協議の再開に期待が出てきた。イランの核問題に関しては、中国は関係方面が冷静さと忍耐を維持し、引き続きイランと接触と対話を行い、有効な解決方法を模索するために努力し、交渉再開に向けた条件が整うことを期待している。

3回のサミットも同様、こうした特徴がある。SCOサミットが発表した「5周年宣言」は、「テロ、分裂主義、極端主義及び麻薬の違法な販売・輸送の摘発を全面的に推進することが、SCOが優先する方向だ」と強調している。同時に、「国際情報の安全に関する加盟国元首の声明」に署名した。経済貿易協力分野では加盟国は「実業家委員会決議」と「地域経済協力の支援に関するSCO銀行連合体加盟行の行動要綱」のほか、総額20億ドルにのぼる大・中型協力プロジェクトの契約と融資協定に署名した。中国・アフリカフォーラムサミットは「友好、平和、協力、発展」をテーマに、「北京サミット宣言」と「北京行動計画(07〜09年)」に署名し、「政治面での平等と相互信頼、経済面での協力と双方の利益、文化面での交流による相互参考」の「中国とアフリカの新たなタイプの戦略的パートナー関係」を確立、発展させていくと表明した。安全と協力に積極的に参与し、地域の平和と安定を維持し、経済貿易往来の推進に尽力し、地域経済の繁栄を促進することが一貫して中国とASEANのテーマである。双方が署名した「記念サミット共同声明」は「相互信頼と理解をさらに増進し、協力の深さと広さを双方の戦略的パートナー関係の目標に適応したものにすることで、この地域の平和、発展と繁栄をさらに推進することに同意し、このために政治と安全協力、社会文化協力、経済協力及び地域と国際協力を強化することを決心した」としている。

周辺の多国間外交の舞台であれ、グローバルな多国間外交の舞台であれ、中国は今年、非常に積極的で建設性に富んだ役柄を演じた。こうした多国間外交は様々な分野であれ満足のいく結果を得ており、中国の外交イメージの向上、周辺環境の安定と「中国脅威論」の解消にプラスの作用を果たし、中国が平和的に台頭するうえで良好な外部環境が整い、中国とこれらの国家との未来の発展に良好な基礎が築かれた。SCOの成功と発展は、ユーラシア大陸の異なる文明と、全世界の半数近い人口を持つ国家はまさに「上海精神」の旗の下に団結し、二国間と多国間の互恵平等の協力を強化し、地域の安定と繁栄を維持するとともに、共同の発展を積極的に図るという願いを示すものだ。香港シティ大学の中国とASEAN問題の専門家は、今回の中国・ASEANサミットについて「より幅広い角度から言えば、中国はすでにASEANにある中国脅威論の見方を緩和させるのに成功した」と評価する。対話のパートナー関係を確立して15年来、双方の関係は急速に発展し、各分野における積極的な協力で双方に自信と信頼は増強され、このサミットによって、中国とASEANの間でより確固とした、全面的かつ互恵な関係が促されるのは間違いない。中国・アフリカフォーラムの開催が成功したことで、中国のソフトな実力が及ぼす範囲は大幅に広がり、中国は世界でより多くの、より信頼のできる友人を得るだろう。中国は自らの実際的な行動をもって、中国とアフリカの関係は相互理解と支持、互恵、協力と双方の利益を基礎に築かれたものであることを証明した。これによって、いわゆる中国はアフリカに脅威となるとの論調は自然消滅した。モロッコの「モーニングポスト」は10月27付け紙面で「中国はアフリカに脅威となるとの非難は根拠がない」と題する論説を掲載し、「アフリカと中国の関係は平等、友好そして相互支援・援助の関係であり、中国のアフリカとの交流とアフリカに提供した援助はいかなる政治的条件も付帯されておらず、中国はアフリカに脅威となると非難する言い方にはいささかの事実的根拠もない」と指摘した。

総じて言えば、今年の中国の多国間外交は、調和の取れた世界を構築するという中国の新たな模索、と見なすことができるだろう。こうした多国間外交の成功は、調和の取れた世界が、国際関係の民主化を推進し、恒久の平和と共同の繁栄の世界を構築する実現可能性が非常に大きいことを検証、証明している。