2006 No.52
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07年の中国経済を展望する

――2007年の中国経済は安定成長を維持すると同時に、依然として過去に存在した多くの問題をめぐる困難に直面しているだろう。

蘭辛珍

「06年より上向くのは確かだ」。07年の予想を聞かれ、王志宏氏は楽観的な姿勢を示した。王氏は北京南部で最大の靴卸売市場「大康靴城」のマネージャー。「07年の目標は、売上高2倍」と率直に話す。

王氏の業務範囲は北方地区。市場の1日の卸売量は数万足に上る。07年が06年より良くなる理由について、「消費が伸びるからだ」

07年の経済発展を楽観視するのは王氏のようなビジネス関係者だけではない。政府も同じように楽観的だ。06年12月7日に閉幕した中央経済活動会議を見ても分かるように、政府はこの会議で、07年経済の良好かつ急速で健全な発展を確保する方針を明確に打ち出した。

多くの経済学者も07年の経済動向については前向きに予想し、「06年下半期からの安定かつ均衡の取れた発展傾向を維持する」との考えを示している。

安定成長こそ基本

「07年、経済は安定的に緩やかに発展していくと予想される」。国家情報センターが12月に公表したマクロ経済分析報告はこう述べ、国家発展・改革委員会の馬凱主任も了承した。

12月9日の全国発展改革活動会議で馬主任は、07年の経済活動について「経済の安定運営を維持し、大きな変動の発生を回避する」と強調した。

経済の安定的かつ健全な発展は政府の要求、期待でもある。この目的を前面に押し出すため、政府は12月の中央経済活動会議で、長年来の「急速かつ良好な」発展を、「良好かつ急速な」発展に改めた。

毎年年末に開く中央経済活動会議で、政府は過去1年の経済活動を総括し、翌年の経済活動計画を策定する。「急速かつ良好な」から「良好かつ急速な」は、2文字を前後入れ換えただけの違いに過ぎないが、この転換は、07年は成長速度より経済の質を重視するとの政府の姿勢を反映したものだ。

投資や貿易、消費などの経済に影響を及ぼす3大要素の中で、政府は国際収支の均衡、すなわち貿易の均衡を07年経済活動の優先課題とした。

中央経済活動会議の計画に沿って、中国は輸出と外資利用の合理的な増大を維持すると同時に、積極的に輸入の拡大を図り、積極的で秩序ある海外投資と協力を拡大することにしている。

06年下半期から、中国は国際収支の均衡を促進し、貿易の拡大方法を調整し、外資利用の質的向上を図る一連の政策を制定してきたが、こうした政策が07年にさらに着実に実施されることで、貿易への影響は徐々に顕在化していくだろう。

国家情報センターの予想では、07年に貿易規模は拡大を続け、輸入と輸出総額の増加速度の差は縮小し、黒字はやや拡大するものの、黒字の拡大速度は06年に比べ一定程度緩やかになる。

投資の抑制は07年の重点目標の1つだ。中央経済活動会議は、投資の増大を合理的に抑え、投資構造の最適化に努める方針を打ち出した。また住民の消費の増加、とくに農民の消費を重点に、国民の収入分配の枠組みの調整を加速し、農民と都市部の低所得者の収入水準と消費能力の向上に努めるとしている。

国家情報センターは、固定資産投資は政策誘導で安定的に減少すると期待される◆06年に制定した過度の固定資産投資を抑制する政策措置は、07年に一段と政策効果を発揮する◆07年に新規プロジェクトの過度の増大傾向は著しく抑制され、一部の条件に合致しない実施プロジェクトが全面的に見直し、または停止されることは、固定資産投資の減少にプラスとなり、投資の伸びは20%前後になる――と分析する。

07年は、比較的速い消費の需要増の維持にプラスとなる要因が多い。この数年来、政府は消費の力強さが経済発展に果たす推進的役割を内需拡大という戦略方針を堅持するための重点に据え、収入の分配関係の調整、中低所得者の収入の増加、企業退職者の基本養老年金基準の適度な引き上げ、公務員の給与制度改革など、消費拡大にプラスとなる一連の政策を実施してきた。同時に、社会保障システムの完備を加速し、教育や医療衛生、住宅などの分野での深刻な問題を解決することで、消費が増加した後の住民の不安を軽減させた。こうした政策措置はすでに効果を上げ、消費者心理は著しく増強され、06年の消費者物価指数(CPI)は1.4%上昇した。政府は07年も消費拡大の政策方向を堅持していく方針だ。

「これらの政策は人々の消費促進に積極的な役割を果たす」。王氏こう話す。「都市・農村部住民の収入は急速に伸び続けており、消費品市場の活気旺盛な傾向は07年も続くと予想される」

経済協力開発機構(OECD)は、中国の07年GDP成長率は10.3%に達し、依然2ケタの伸びを維持する可能性があると見ている。

将来直面する問題

国務院発展研究センターマクロ経済研究部の張立群主任は「外貨準備の規模の過大と過度の増加、通貨量の過大と過度な増加など、経済発展と資源環境との間の矛盾が比較的突出しているが、07年の経済活動でもこうした問題に直面するだろう」と指摘する。

張主任によると、外貨準備高は1兆元を超え、中国は世界最多の国となった。外貨準備の持続的な急増は、国際収支の不均衡という矛盾の深刻さを反映しており、為替レートの安定だけでなく、貿易の安定と外資利用の環境にもマイナスとなる。外貨準備の増加は主に、2つの要因が推進している。第1は、貿易黒字が拡大している、第2は、外国の対中投資が中国の対外投資を上回っていることだ。将来的に見れば、こうした推進作用はやはり一定期間続くだろう。

「国際収支が不均衡である状況で、通貨供給量を安定させるのはかなり難しい」と張主任。「通貨供給量の伸びが速すぎる問題は、07年も依然として存在するだろう」

張主任は「07年も経済発展と資源環境との間の矛盾は拡大し続ける」と指摘する。張主任によると、06年上半期、1GDP当たりのエネルギー消費は前年同期比で0.8%増加し、化学的酸素消費量(COD)の排出総量は689万6000トンで、同3.7%の増、二酸化窒素排出総量は1274万6000トンで、同4.2%増えた。中国は現在、また将来の長い期間、重化学工業が主導する工業化時代にあるため、発展水準と資金力の制約から、工業化の加速は程度の差こそあれ、エネルギー消費と汚染排出の増大をもたらすことになる。

中国経済体制改革研究会公共政策研究センターの高輝清理事は、07年経済の発展過程に潜在する問題点を幾つか挙げている。まず第1は、地方政府に内在する投資への衝動を根本的に取り除くのは難しいが、持続的なマクロ調整の下で、投資行動は著しく抑制されるが、官僚が地方収入を増やそうとするため、投資衝動はやはり強く、こうした状況の中、中央経済活動会議が策定した投資規模抑制の目標が実現できるかは、判断しにくい。

第2は、就業機会の創出圧力が依然大きいことだ。就業問題は当面の経済運営で突出した問題であり、今後のかなり長期にわたり経済発展に向けて回避できない主要な矛盾でもある。この数年来、経済は成長加速傾向にあるが、就業計数は下降状態を続けている。成長率1ポイントでけん引できる就業増は、10年前は94万人だったが、5年前は80万人まで減少し、05年はわずか65万人だ。労働力の供給では、国有企業と集団企業の一時帰休者はおよそ700万人、都市部の登録失業者数は800万人強を数え、さらに毎年新たに約900万人の労働力が増えている。都市部の求職者数は2400万人余りに上り、農村部では1億2000万〜1億5000万人の余剰労働力を非農業分野に移転させる必要がある。労働力の需給では、07年の経済成長率が10%前後の水準に達したとしても、弾性計数0,10で計算すると、新規の就業者規模は700万〜800万人に過ぎない。

第3は、生産能力が依然として過剰であることだ。この問題は経済運営に影響する最も重要な要因の1つであり、以前にもマクロ調整の重点となった。06年の経済の実質運営状況から見ると、生産過剰問題は総体的にはやや好転しているが、抜本的には解決していない。銑鉄や粗鋼、セメントなど過剰業種による投資の伸び率は依然20%を超えている。個別業種を見ても、例えば、電解アルミの過剰状態は年初より一段と深刻だ。06年下半期から、固定資産投資の伸びはほぼ下降傾向にあり、少なくとも来年上半期までは持続するだろう。高理事は「これがもたらす現象は、投資の需要が相対的に減少する一方で、新規プロジェクトが大量に実施され、さらに来年は輸出が減速する可能性があるため、生産能力過剰の問題が再び経済発展の足かせになる」と指摘する。

中国経済について言えば、07年は世界貿易機関(WTO)加盟後の過度期最後の年であり、各業界の競争は一段と激化し、とくに金融、石油など経済の重点業種では外資が与える打撃はますます大きくなる。経済の監督管理体制がまだ整っていない中国にとって、外資がもたらす打撃はどれほど大きいのか。マイナスの影響はあるのか。国際経済の不確定要素は中国経済に波乱を呼ぶのか。こうした問題は今後1年間の中国経済にとっても、やはり不確定要素である。