2007 No.01
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07年の消費の伸びは

――中国の消費市場では依然、中産階級と高所得者が主力だ。その一方、サービス消費の伸びが加速するに伴い、消費環境に対する消費者の要望が一段と高まっている。

蘭辛珍

旧正月の春節までまだ一月余りもあるが、張亮さんは春節の休みを利用して観光に行く準備をすでに開始。

帰省して春節を過ごすのを心待ちにする多くの地方出身者と異なり、北京生まれの張さんはこの2年間、シンガポールとタイで春節を送った。彼は春節といっても普段とほとんど変わらないと言う。以前は祭日の熱気に包まれていた春節も、今ではそんな雰囲気は薄れていくばかりだ。

幼いころに味わったお祝い気分にひたろうと、今年は農村を目的地に選んだ。

北京では、張さんのように春節を利用して海外旅行に出かける人が多い。2006年の春節にはおよそ数百万人が北京を離れたといわれ、平日は人でごった返す大都会の街は静けさを取り戻した。

消費も祭日を利用した人の流動で急速に伸びる。5月のメーデー、10月の国慶節(建国記念日)、春節はいずれも連続7日休みとなる“ゴールデンウイーク”だ。

国内総生産(GDP)に占める消費比率はいまだ低く、そうした現状から関係機関は祭日がけん引する消費拡大に比較的満足している。長期休暇を増やすべきだとの声もあるほどだ。

政策で消費を促進

中国人民大学財政金融学院の趙錫軍副院長は、07年の消費の伸びに最もプラスとなる情報として、中央経済活動会議の決定を挙げる。06年12月7日に閉幕した活動会議は、07年に国内消費需要を拡大させることを強調。消費を増やすために実質的な行動をどう講じるかを検討するという。

趙副院長は「この数年の中国経済では内需の不振が深層的な問題となっていた。それがもたらすマイナス影響が際立っているため、消費をけん引する必要がある」と強調する。

今後は従来の経済成長方式を改めることになり、それを考慮して活動会議は「投資と消費、内需と外需の関係を適切に処理しなければならない。最も根本となるのは消費需要の拡大だ」と指摘。会議で胡錦涛主席は「07年は消費、とくに農民の消費の拡大を重点に、農民と都市部の低所得者の収入水準と消費能力を高めることに努めていく」と明言した。

趙副院長は「消費を拡大し、経済成長に果たす消費のけん引的役割を高めることで、国民経済の急速かつ質の高い成長を維持するという政策方向は、07年に一段と強化され、これが消費拡大を促進する最も基本的な原則となるだろう」と話す。

国家発展・改革委員会(発展改革委)の卒井泉副主任は「まず07年は、価格の総体的水準をほぼ安定させることに努めなければならない」と強調。卒副主任は各地方政府の価格主管機関の作業の重点として、価格調整作業をさらに強化・改善する◆価格監視と価格情勢の分析を強化する◆穀物や石油、鋼材など重要商品の内外市場での価格変動に注視する◆価格調整の予見性を高める――などを挙げた。

政府は社会保障への財政支援を充実させることで、住民の消費を活発にすると明言している。

発展改革委マクロ研究院の馬暁河副院長は「国有企業の利益の国への納付によって、都市・農村部の弱者救済のための財政支出を増やせば、弱者層の収入は増えて消費は拡大する」と指摘する。

その他の保障措置も今、実施されているところだ。建設部は各地方政府に対して、年末までに低価格賃貸住宅計画を策定すると同時に、土地譲渡による収入を公共交通の整備や料金引き下げに充てるよう求めている。不足分は財政面から補助する。こうした民生にかかわる措置が、低所得者の収入増に非常にプラスとなるのは明らかだ。

商務部情報センターは、07年の国内環境について(1)政府は安定したマクロ経済政策を引き続き実施する(2)国民経済は安定かつ比較的速い発展を引き続き維持する(3)経済発展に向けた潜在需要が強く、商品市場の安定した発展にプラスとなる(4)農村部での基盤施設への資金投入が大幅に増大するため、消費施設や消費環境の改善や農村市場の開拓にプラスとなる――の4点を強調している。政府が収入調整に関する一連の政策を相次いで打ち出していることも、住民の消費能力を引き上げ、消費への期待を高めるのにプラスとなる。

中産階級が主導

低所得者を支援する政策はあるものの、消費市場について言えば、真の主力は張さんのような中産階級だ。

05年初め、国家統計局は調査結果を公表し、「6万〜50万元を都市部の中産階級に属する世帯収入(1世帯平均3人で計算)基準とする」と表明した。

北京大学社会学部の馬戎教授によると、この基準に照らすと、20%の世帯が中産階級となる。ざっと見ると、中産階級は60〜70年代の生まれで、年齢は30〜45歳、大卒が主体。07年に中産階級はさらに増える見通しだ。

馬教授は「金融商品による資産運用、自動車購入、不動産購入と投資、ブランド商品や贅沢品の消費、医療、教育、通信、娯楽など、中産階級と高所得者を主体とする高級志向型の消費需要は急速に増え、伸び率は消費全体を上回っている」と指摘する。

中国人民銀行の統計によると、06年11月末現在の預貯金残高は13兆6000億元。

07年には外国金融機関による人民元業務が完全自由化されることから、中産階級と高所得者の資産運用手段は一段と広がり、消費拡大も促されるだろう。

サービス消費が急増

国家統計局によると、06年はサービス消費の伸びが比較的速かった一方で、商品消費は減速。こうした特徴は都市部で目立った。

国家統計局が都市部世帯を無作為抽出して調査した結果、06年第3四半期までの1人平均消費支出は6480元と、前年同期比で8.9%増加したことが分かった。そのうち食品は5.0%、家庭用品11.9%、交通17.9%、通信9.6%、教育・文化・娯楽10.8%、その他のサービス支出は13.2%の増。大まかに計算すると、サービス消費は平均12.7%伸びたことになる。

馬教授は「現在の状況から見れば、サービス消費の伸びが商品消費を上回る傾向は、07年も衰えることはなく続くだろう」と指摘する。

ただ、商品消費が下向くというのではなく、市場では商品、とくに贅沢品の消費は増えこそすれ減ることはないということだ。

興業証券の06年下半期の投資戦略報告は「金装飾品など贅沢品小売業は03年から高成長時代に突入した」と指摘している。

ダイヤモンド業界の代表的機関ダイヤモンド・ハイ・カウンセル(HRD)の報告では、06年の宝石年間消費で中国は1400億元、米国に次いで世界2位の消費国となった。

プラチナでも中国は世界最大の消費国。年間販売量は140万〜150万オンスと、世界の44%を占めた。

宝石の総消費量と金額はかなりの規模に達しているが、1人平均消費は依然として低い。金はわずか0.16グラムで、0.7グラムの世界平均をかなり下回っており、宝石小売業界にはかなり高い成長が期待できる余地があると言える。

興業証券アナリストの鄒国英氏は「07年も消費の高級化が主導するという長期的なプラス要因から、金装飾品小売業は好景気を維持するだろう。ブランドと販売ルートの規模で強みがあり、収益はやはり高い伸びを維持すると見込まれる。同時に、贅沢品関連のサービス業も上向いていくだろう」と分析する。

消費者の要望は

中国ではまだ中低所得者が大多数を占めている。都市部と農村部との収入格差も、都市部住民の間でも高所得者と中低所得者との収入格差が拡大。しかも医療や教育、住宅などの出費が中低所得者のその他の消費を圧迫している。

「一番の関心は、最低保障を引き上げてくれることと、物価が上がらないこと」。政府から毎月600元(1元は約15円)の最低生活保障を受けている67歳の王栄さんはこう話す。

「収入が増えて、物価が上がらない」。これが低所得者の最低限の要望だ。政府は07年の重点政策の1つとして、低所得者の消費能力を高めることを掲げている。発展改革委は「庶民にとって最も関心のある、最も身近で、最も現実的な物価などの問題の解決に尽力することを決めた。卒副主任は「来年も引き続き、学費が高い、診察料が高い、住宅が高いといった問題をいくらかでも解決できるよう努力していきたい」と語っている。

低所得者たちに比べ、消費の主力である中産階級と高所得者がより期待するのは、消費をめぐる社会環境だ。

張さんはこう話す。「まず、製品の質であれ、提供するサービスの質であれ、いずれも保障されていなければならない。次に、消費が至便なことだ」