2007 No.02
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加速する高齢化にどう対応するか

唐元ト

中国には「子どもを養育して老化を防ぐ」という伝統があるが、近代化が進む中、こうした考え方は薄れつつある。経済発展と生活水準の向上、健康の増進に伴って、世界のその他の国と同じように長寿と低出生率の傾向が現れてきた。人々はますます長生きするようになったが、産まれる子どもの数はますます減ってきた。20年前に始まった「良い子を一人だけ産む」計画出産政策で、現在の多くの世帯(とくに70年代生まれ)では典型的な「4-2-1構造」にある。子供が一人しかいない家庭は、夫婦が双方の両親の面倒を見ながら、次の世代を育てるという重責を担い、夫婦は老いれば一人しかいない子どもの世話にならなければならない。

ただ、こうした背景に、静かに潜んでいるもの、むしろ軽視できない巨大な障害が中国人の前に横たわっていることを多く人はまだ意識していない。それが高齢化だ。

30年から深刻に

高齢化は今、ますます多くの国や地域に影響を及ぼしつつある。国務院新聞弁公室が先ごろ発表した白書「中国の老齢事業の発展」によると、20世紀末に60歳以上の老人が総人口に占める比率は10%を超え、国際基準に照らせば、すでに高齢化の段階に入った。21世紀以降も高齢化は加速しており、05年末に11%と、高齢者人口は1億4400万人に達した。

膨大な数の高齢者が世話を受けるにはより多くの人力、物力が必要になるのは間違いない。老人ホームも絶えずベッド数を増やさなければならないが、とくに、これについては不可能なのが現実だ。高齢化は社会のほぼ全ての分野にかかわっている。どの家庭にもますます大きなプレッシャーをもたらし、さらには人々を不安にさせる経済的な難題や社会問題を引き起こすこともあり、経済発展に必要な労働力の供給や年金体系、家庭や社会の倫理観にも大きな影響が出てくるだろう。

「現在、中国の高齢化への対応は、考え方や施設など多くの面で備えや対策に欠ける」。ある著名な学者はこう指摘する一方で、高齢化が及ぼす極めて大きな影響に政府幹部や学者はすでに注視しており、危機の拡大を座視することはないと強調する。

関係方面が今、解決策を模索するために行動を起こしているのは確かだ。だが、そう簡単に実施できる解決法はなく、難題は多い、と考える人がほとんどだ。専門家はこの状況を「襟を合わせれば肘が出る」との言葉で形容する。例えば、退職年齢の間隔が極めて長いことだ。一般に50〜60歳の間で退職できるが、退職年齢を徐々に引き上げ、現在の女性55歳、男性60歳を30年までに65歳にするよう提言している。だが、退職年齢を引き上げれば、年金体系の問題は緩和できても、若年層の職探しが難しくなり、しかも高年齢者から不満が起きることもありうる。その大多数は経済が繁栄した良き時代を体験できなかったからだ。また一部専門家は、出産政策を緩和するよう提言しているが、他の専門家はすぐさま「何の効果もない」と反論。内陸部の貧困地区では子どもを多く産むようになるが、都市部ではそうする人はますます少なくなる、というのが理由だ。上海復旦大学社会発展・公共政策学院人口研究所の任遠教授によれば、多出産は社会全体の人口構造を変えて、高齢化の進展を遅らせるだけであり、高齢者の絶対数の増加には何の影響も及ぼさない。

より大きなマイナス要因は、中国は依然として豊かでない発展途上国であり、高齢化が近代化よりかなり前に訪れ、高齢化問題を解決する経済力と手段が非常に限られていることかも知れない。「大多数の国が同じように高齢化時代に達した際、1人平均収入は中国の現在の3倍以上だった」。労働・社会保障部傘下の労働保障研究所の何平所長はこう指摘する。

06年2月23日、国務院全国老齢工作委員会弁公室が発表した「01年から100年までの中国の老齢化進展傾向に関する予測研究報告」(「報告」)は、30年から50年にかけて高齢化状況は最も深刻になると分析している。

「30年になるまでに人口の高齢化に対応するのがベストだ」。中国老齢協会の李本公会長はこう強調する。「中国はわずか18年で人口の年齢構造が『成年型』から『老年型』に変わったが、先進国は数十年から百年以上もかかった」。李会長によると、高齢者が総人口に占める比率は、82年は5%で成年型に属していたが、99年に10%に達して老年型へと変化した。こうしたことから関係者は、高齢化は51年に最も深刻となり、高齢者数は4億3700万人に達すると予測。だが、30年から状況は厳しさを増すため、「この時期を逸すると、後悔しても後の祭りだ」と李会長は警告する。

老人は自宅で扶養

「報告」プロジェクトチームの責任者で、天津南開大学人口・発展研究所の原新教授ら専門家は「中国人の経済水準や倫理観などを考慮すれば、自宅で老人を扶養するのが中国人に最も適した方法だ」と強調する。

高齢者の数が増えたことで、新たな老後の送り方についての模索が始まった。社会保障負担が重い状況のなか、完全に政府に依存して老人の扶養問題を解決するのは非現実的であり、様々な社会の力を借りる必要がある。

北京などでは、老人に食事や娯楽、休息などのサービスを提供する施設が増えている。だが問題は、数の面で拡大しつつある需要に応じきれないことだ。

老人ホームの数に限りがあるのは確かだ。公共はおよそ4万近く、民間は約1700で、ベッド数は合わせて150万前後。民政部社会福利・社会事務司の賈暁九処長は「例えば、都市やその近郊の老人ホームはベッドが不足し、遠方の郊外では空きベッドがあるなど、構造は不合理で、発展は不均衡、機能が不備といった問題がある。老人ホームは本来、介護を必要とする老人を受け入れるべきだが、現実には健康な老人が入っている。その原因は、医療サービス機能に欠けているからだ」と指摘する。

施設不足の問題を解決しようと、北京などの一部のコミュニティーは日本などの経験に習って「タイムセービング」計画を展開中だ。退職した年齢の比較的若い老人がボランティアとして、高年齢または病気の老人の世話をし、その時間を記録しておいて、本人が他人の世話が必要になった時に、貯めた時間に相当する世話を無償で受けるというものだ。

最近、独居老人世帯が増えつつある大都市では「老人用マンション」が生まれており、従来の伝統的な福祉と違い、民間の開発業者が建設し、運営管理に当たっている。

保障体系を改善へ

中国人民銀行の周小川行長は「今が養老・医療保障制度改革を実施する好機だ」と強調する。

市場経済が定着するに伴い、中国は統一資金と個人口座を組み合わせた養老保険制度を徐々に確立してきた。国は保険加入者のために口座を開設し、一定額を振り込んでおく。それ以前は、「統一資金労働基金」と呼ばれ、国が財政面から資金を割り当て、事業体が責任をもって実施するというものだった。労働者にはいかなる負担もなく、退職年齢に達した国有企業の労働者は退職年金を受給する資格を有する。仮に個人口座がなければ、それに相応する資金は蓄積されない。まさに資金の蓄積がなかったがために、現在、個人口座に振り込まれた資金の大多数がすでに退職した労働者への年金に流用されているのだ。旧制度がもたらした“ブラックホール”を穴埋めしているのだ。その額はすでに8000億元に上っており、しかも毎年1000億元の規模で急増している。

中国人民大学で社会保障問題を専門にする鄭功成教授は「8000億元という穴埋めは大きな問題だが、庶民が心配する問題ではない。口座が空なのは、政府の責任でもあり、政府にも補足する能力はある。実際、庶民に心配させる必要はない」と指摘する。

現在進めている養老保険制度改革でカギとなるのは、若年労働者のための個人口座の残高で退職者の年金を支払わないようにすることだ。新制度では年金不足額の拡大傾向を抑え、若年層の老後に向けて負担を軽くすることを目指しているが、これまでの年金不足分をいかに補てんするか、改革の過程で異なる層の人々の利益をどう保証するかが今後、改革を進める上で直面せざるを得ない問題となる。

この数年来、政府は農村・都市部の各企業の労働者、自営業者やパートなどを対象に統一された企業労働者基本養老保険制度の確立に尽力してきた。白書「中国老齢事業の発展」によると、国が基本年金の正常な調整メカニズムを確立するに当たっては、賃金の上昇と物価の変動の状況に照らして企業退職者の基本年金水準を調整し、同様に、国家機関と非営利事業団体職員の退職制度を確立し、財政からまたは団体が国の規定水準に基づいて退職金を支給するとしている。

様々な方法で基本養老保険基金の資金を調達し、高齢化に対応するための資金準備を増やす努力をすることで、企業退職者の基本年金を期日どおり満額支給するとともに、基本養老基金の徴収を強化していく。また中央政府は財政補助を拡大する方針だ。政府は補充型養老保険の発展にも取り組んでおり、条件の整った企業に対し、企業と職員がともに保険料を納める企業年金を設けるよう指導、支援している。また、個人に対しては様々な面から老後の生活保障を強化するよう、貯蓄型養老保険の加入も奨励しているところだ。