2007 No.05
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内外資本企業の所得税を統一へ

――企業所得税法案は内外資本企業の所得税率を25%に統一するとしている。法案が成立すれば、20数年来続いてきた税率の異なる時代は幕を閉じる。

譚偉

外国資本を導入し、経済を発展させるため、中国は80年代の改革・開放以来、外資に対し税制面で国内資本企業とは異なる優遇政策を講じてきた。中央財経大学税務学部の楊芸清教授によると、現行の内資企業と外資企業の名目税率は33%だが、一部特別な地域の外資企業に対しては24%か15%の優遇税率を実施している。国内資本では利益の薄い企業のみが24%、あるいは15%の特別税率を受けられる。一般的には、内資企業の実質税負担は外資の2倍近くかそれに達している。

だが市場経済の発展、とくに世界貿易機関(WTO)加盟後の準備期間が終了するに伴い、異なる税政策を継続することが、適正化された公平な競争の市場環境の整備に影響を及ぼすのは間違いない。

「現行の企業所得税上の優遇政策には比較的大きな抜け穴があり、企業の経営行為をゆがめ、国税を流出させている」。楊教授はこう指摘する。

実際、企業が税待遇の統一、公平な競争を呼びかける声は一貫して高かった。04年の第10期全国人民代表大会(全人代)第2回会議以来、合わせて541名の代表が内外資本企業の所得税を統一する企業所得税法の制定を求める議案を提出したが、その数は16件にのぼる。

06年12月29日、第10期全人代常務委員会第25回会議は、賛成155票、棄権1票の大差で、企業所得税法案を今年3月開催の全人代第5回会議で審議することを決定し閉幕した。

財政部の金人慶部長はこの会議で法案について説明し、「企業所得税制度を改革する立法の時期はすでに熟しており、税を早急に統一するのが必然の流れだ」と強調した。

25%の統一税率

税の統一で各界が最も注目したのは、税率だ。法案によると、統一後の内外資本企業の所得税率は25%となり、同時に小企業の発展を支援し、就業を促進するため、国際慣行に照らして、規定の条件に合致する小規模の利益の薄い企業に対しては20%の特別税率を実施する。その具体的基準は、国務院が実施条例で規定するとしている。

統一後の税率を25%に確定したのはなぜか。金部長は「主に、内資企業の税負担を軽減し、外資企業に対してもできる限り税負担が増えることのないよう配慮した。同時に、財政収入減を受け入れられる範囲内に抑えるようにし、また国際的、とりわけ周辺諸国・地域の税率水準を考慮した」と説明した。

財政部がまとめた159カ国の企業所得税率の統計では、平均税率は28.64%。金部長は「法案が規定する25%の税率は、国際的に見て中の下の水準にあり、わが国の税制面での競争力を引き続き維持し、外国企業の投資をさらに誘致するのにプラスだ」と指摘した。

法定税率が従来の33%から8ポイント下がるとすると、総体的に見れば、内資企業の実質税負担は低下することになる。このため、新税法が実施されれば、税収が減少するのは必至だ。

金部長は「現在、わが国は高度経済成長時代にあり、企業の全体的収益はこの数年来大幅に伸び、税収は増大傾向を維持している。こうした状況のなか、企業所得税の改革を実行しても、国家財政と企業の受け入れ能力は比較的高いため、改革の時期としては有利だ」と強調した。

税引き前控除政策

この法案はまた、税引き前の控除政策を統一するとしている。楊教授は「コストや費用など税引き前控除では内資と外資の差が大きく、こうした差のある待遇が内資企業の負担を増やしている」と指摘。

なかでも注目されるのが、賃金支出だ。差を失くし、内資企業は外資企業と同様、実際に賃金をいくら支給したかによって、税引き前に控除できるようになる。

現在、内資企業に対しては税計算基準額控除を、外資企業の場合は賃金支出に対して全額実質控除を実施。内資企業では、賃金の実質支給額が税計算賃金基準を上回ると、超えた部分も重複課税される問題が生じる。

財政部財科所の賈康所長は「新税法で税引き前控除基準が拡大され、税基準も縮小されるため、実施されれば、企業の実質的な税負担は明らかに25%の名目税率より少なくなる」と強調した。

産業優遇を主体に

この法案の1つの柱となるのは、現行の企業所得税の地域優遇を主体とした枠組みを、産業優遇を主体とし、地域優遇を補助とし、社会の進歩に合わせて考慮する新しい税優遇の枠組みに転換することだ。

金部長は「法案は優遇の重点を地域主体から産業主体に移すと同時に、西部地区に必要な国が奨励する産業に対しては今後も所得税の優遇政策を実施する」と強調。具体的に(1)国が重点的に支援するハイテク企業に対し15%の優遇税率を実施し、企業の環境保護、エネルギー・水の節約、安全生産などへの投資に対しては税優遇を拡大する(2)農林牧漁業やインフラ整備投資に対して税制面の優遇政策を残す(3)労働サービス企業や福祉関連企業、資源総合利用企業への税の減免政策を優遇政策に代える(4)外資製造企業への税の定期減免優遇政策、外資製品輸出企業への税の半減優遇政策を取り消す――の4点を挙げた。

「居住者・非居住者」概念を導入

現在の納税は、内資企業については独立採算の経営単位を納税者として地元で納税し、外資企業については本部が一括して納税する方式を採用。法案では国際慣行に照らし、初めて「居住者・非居住者」の概念を導入し納税者を区分するとしている。

居住者企業は内外の全ての所得税納付に基づき、全面的な納税義務を担い、非居住者企業は限定的な納税義務を担う。一般に国内の所得税納付のみに基づく。

法案によれば、居住者企業とは、中国の法律や法規に基づいて国内に設立、あるいは実質的な管理機構が国内にある企業を指す。非居住者企業とは、外国(地域)の法律や法規に基づいて設立し、しかも実質的な管理機構は国内にないが、国内に機構を設立、あるいは国内に機構を設立していないが、国内の所得に基づく企業を指す。

5年の移行期間

新税法が実施されれば、外資企業を含む多くの企業が享受してきた税の各優遇政策はどうなるのか。これは新税法の立法で最も敏感な問題だ。

新税法による一部古い企業への税負担増の影響を緩和するため、法案は、新税法の公布前にすでに設立が認可されている場合、当時の税制に関する法律や行政法規の規定に基づき、低税率と定期減免の税優遇を享受している古い企業については、移行期間を設けて配慮する、と規定している。

具体的には、現行税法の規定に基づき15%と24%などの低税率優遇を享受している古い企業については、新税法実施後の5年以内は移行期間の配慮として低税率を享受できる。減税法の規定に基づき税の定期減免優遇を享受している古い企業については、新税法の実施後、享受し終えていない優遇を引き続き享受できるが、新税法による税の優遇は重複して享受できない。

外国企業の投資に影響はない

新税法が実施されれば、企業の法定税率は大幅に下がり、控除基準も統一、適正化され、税の優遇政策は整合性を実現する。また、内資企業の所得税負担は改革前の水準より明らかに軽減され、市場競争力を高めるのにプラスだ。ただ、外資企業の競争力に影響が出て、外国企業の投資に影響を及ぼすことはないのか。

金部長は「外資企業について言えば、企業によっては負担が増えたり減ったりするが、全体的には負担はやや増えるだろう。だが法案は、外資企業を含む全企業が新税法の規定による新しい税の優遇政策を享受できるなど、一連の措置を講じている。例えば、ハイテク企業の優遇や、小規模の利益の薄い企業への低税率の配慮などだ。とくに古い外資企業については移行期間の配慮として優遇を受けられるため、新税法の実施が外資企業の生産や経営に大きな影響を及ぼすことはない」と指摘する。

長期的に見れば、この法案の主要目的は実際には、適正化された、透明で公平な競争のある税の環境を確立することであり、外国企業の投資を誘致するのによりプラスとなる。世界銀行によると、安定した政治状況、発展した良好な経済情勢、広大な市場、豊富な労働力、絶えず完備される商業関連施設、政府のサービスなどが外資を呼び込む最大の要素だという。税の優遇という要素を考慮する投資家は少なく、透明で非差別的な政策などの要素がより重要である。