中国共産党の指導する多党協力制度と政治協商制度

 

一、中国共産党の指導する多党協力制度と政治協商の制度の基本的な意味

中国共産党の指導する多党協力と政治協商制度は中華人民共和国の基本的政治制度の一つである。

中国共産党の指導する多党協力制度は、中国共産党が中華人民共和国の唯一の政権党であり、八つの民主党派は中国共産党の指導を受ける前提の下で、参政党の地位をもち、中国共産党と協力し、国家権力に参加することである。

政治協商制度は中国共産党の指導の下で、各民主党派、各人民団体、各少数民族、社会各界の代表は、国の大きな方針及び政治、経済、文化、社会生活の中の重要問題に対し、政策決定を行う前に討議し、政策決定を実施する過程での重要問題に対し討論を行う制度である。

政治協商は中国人民政治協商会議を組織形態とする。

政治協商は中国共産党の指導する多党協力の最も主要な政治内容と組織形態である。

政治協商は統一戦線の形態の一つである。

中国共産党の指導する多党協力及び政治協商の制度が存在する政治的基礎は四つの基本原則である。

中国共産党と各民主党派が協力し合う基本的方針は、長期的に共存し、相互に監督しあい、肝胆相照らし、栄辱を共にするというものである。

二、中国の参政党

中国の参政党は中国の民主党派である。

中国の民主党派とは、一九四九年前に成立し、中国でのブルジョア階級共和国の実現に取り組むと同時に、中国共産党が国民党の支配を覆す過程で中国共産党を鮮明に支持し、中国共産党の指導権を認め、国民党に反対し、しかも中華人民共和国の成立後も存在しつづけることのできる政党を指している。

(一)中国国民党革命委員会

民革と略称され、一九四八年一月一日に正式に成立し、国民党内の民主派とその他の愛国民主人士が当時の主要メンバーであった。政治主張は国民党の専制支配を覆し、中国の独立、民主、平和を実現するというものであった。

一九八八年十一月に改正された民革の規約には、現段階の民革の政治綱領は、社会主義初級段階の基本路線の指導の下で、党員全体を導き、祖国の統一を擁護する国内外の愛国者を結束させ、祖国の統一、中華の振興のために奮闘することである、と規定されていた。

現在の民革メンバーは主に次の四つの方面の人たちを含む。中国国民党と関係のある人々、台湾各界と関係のある人々、祖国の統一事業に取り組んでいる人々及びその他の関係の人々、そして重点としてその中の代表性のある人々と中?高級知識人を受け入れている。

1997年末現在、党員数は五万三千人である。

現在の民革中央主席は何魯麗女史。

(二)中国民主同盟

民盟と略称され、一九三九年十一月に成立し、一九四四年九月に中国民主同盟に正式に改称された。当時は中間の道と民主政治を主張したさまざまな党派と政治勢力の政治的連合であった。

一九九七年に採択された「中国民主同盟規約」には、民盟の政治綱領は愛国主義、社会主義の旗印を高くかかげ、社会主義初級段階の基本路線を揺るぎなく貫徹し、社会の安定、各民族の団結の強化のために奉仕し、社会主義の現代化、改革?開放、市場経済体制の確立と完備を推進し、政治体制改革と社会主義精神文明の建設を促進し、生産力を解放し、それを発展させ、愛国統一戦線を強固にし、中国の特色をもつ社会主義の偉大な目標を実現するために奮闘する、と規定されている。

現在、民盟は主として文化教育及び科学技術活動に従事している高?中級知識人からなる。一九九七年十月までの民盟のメンバー総数は十三万千三百人であった。

現在の民盟中央主席は丁石孫氏。

(三)中国民主建国会

民建と略称され、一九四五年十二月十六日に成立した。当時の政治主張は、公民の基本的政治権利と人権を保護し、民族工商業を保護し、発展させ、国民党の専制支配に反対するというものであった。

現在の規約には、鄧小平理論の指導の下で、四つの基本原則を堅持し、経済建設を中心とするという中国共産党の制定した方針を執行し、あくまで中国共産党の指導を受け入れ、自己教育の伝統を主張し、民主集中制の原則を堅持し、中国共産党の路線、方針、政策と民建の実際とを結び付けることを堅持し、中国共産党の指導する多党協力及び政治協商の方針を貫徹し、執行する、と規定されている。現在のメンバーの大多数は経済界及びその他の分野の代表的な人物である。

1997年6月末までのメンバー総数は六万九千四百五十三人であった。

現在の民建中央主席は成思危氏。

(四)中国民主促進会
 
民進と略称され、一九四五年十二月三十日に成立した。当時は主に文化、教育、出版に従事していた人々と上海工商界の愛国民主人士からなり、中国の民主政治を促し、政権を改革し、国民党に政権を人民に帰し、連合政府をつくり、憲政を実行するよう要求するものであった。

一九九八年に採択された「中国民主促進会規約」には、民進は社会主義初級段階の基本路線を導き、社会主義の民主を促進し、完備させ、社会主義の法体制を充実させ、中華民族の資質を高め、社会的生産力を発展させ、中国を富強、文明、民主の社会主義現代化の強国に築き上げるために奮闘することを趣旨とする、と規定されている。
現在、民進の構成メンバーは主として教育、文化、出版及び科学技術などの分野の代表性のある知識人からなっている。

1997年末までのメンバー総数は六万五千人余であった。

現在の民進中央主席は許嘉ロ氏。

(五)中国農工民主党 

略称は農工党、1930年8月に発足。主な政治的主張としては、国民党の独裁支配に反対し、平民政権を樹立するということである。

農工民主党の規約には、中国共産党の指導を確固不動の姿勢で受け入れ、多党間の協力と政治協商制度を堅持し、マルクス?レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論を学び、中国共産党の路線、方針、政策を学び、民主集中制を実行し、党員およびその結びつきのある知識人の権益を守る、と規定されている。

現在の農工民主党の主な構成メンバーは大中都市の医学?薬学?衛生界の知識人である。

1997年の党員数は6万5000人である。

現在の中央委員会主席は蒋正華氏。

(六)中国致公党

中国致公党は華僑の社会団体アメリカ致公総堂が発起し、1925年10月、アメリカのサンフランシスコで発足。

中国致公党の規約には、致公党は帰国華僑とその親族の中?上層の人たちによって構成され、鄧小平理論の下で、中国共産党の指導を受け、中国共産党と政府に協力し、安定団結の政治局面を強化し、党員およびその結びつきのある帰国華僑とその親族の権益を守り、かれらの意見と要求を反映し、マルクス?レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論を学び、民主集中制を実行する、と規定されている。

1997年7月末現在のメンバー数は15461人。

現在の中央委員会主席は羅豪才氏。

(七)九三学社

1946年5月に正式に発足。その時の政治的主張としては、民主と科学の伝統を受け継ぎ、内戦に反対し、民主的政治を実行するということであった。

九三学社の規約には、九三学社の組織構成は大中都市の科学技術界と高等教育、医学?薬学?衛生界の代表的知識人を主とし、鄧小平理論で頭を武装し、活動を導き、中国共産党の指導する多党協力制度と政治協商制度を堅持し、民主集中制を堅持し、メンバーの権益を守る、と規定されている。

1997年6月現在のメンバー数は68440人。

現在の中央委員会主席は呉階平氏。

(八)台湾民主自治同盟

略称は台盟。1947年11月12日に香港で発足。その時の台盟は台湾省以外のところに設けられ、存在し、台湾が国民党の支配を脱却し、民主政治と地方自治を実行することを求める政治的組織であった。1949年3月に、台盟の本部は香港から北京に移された。

台盟の政治的綱領は、鄧小平理論の指導の下で中国共産党の社会主義の初級階段における基本的路線を確固としてゆるぎなく貫徹実行し、愛国主義、社会主義の旗じるしを高く掲げ、多数のメンバーとその結びつきのある台湾同胞を獲得し、改革開放と社会主義現代化をめざす建設を速め、安定団結の政治局面を保ち、社会主義の民主と法制を健全化させ、「一国二制度」、祖国の平和的統一を実現させるため、努力奮闘するということである。

現在のメンバー構成は主として中国大陸の大中都市に定住している社会の中?上層の一定の代表性のある台湾省籍の人たちである。

1994年10月現在のメンバー数は1441人。

現在の中央委員会主席は張克輝氏。

三、多党協力の主な形態

(一)政治への参与と政治の討議
 
即ち中国共産党の指導の下で、民主諸党派のメンバーは国の重要な方針、政策、法律、法規の制定と実行に参与し、国の重大な政治問題、政府機関の指導者の人選についての協議に参与し、国の事務の管理に参与することである。
具体的な事柄に関する中国共産党と民主諸党派との協議は次のようないくつかの形態がとられる。

(1)民主協商会。中国共産党中央の指導者が民主諸党派の指導者、無党派民主人士を招いて開催する。席上で、中国共産党中央の指導者は、提出されることになっている重要施策、方針について民主党派の人たちと話しあい、その意見を聴取する。協商会は普通毎年1回開かれる。

(2)ハイレベルの意見交換会。中国共産党中央の指導者が必要に応じて、不定期的に民主諸党派の主要指導者と無党派民主人士を招いて小さな範囲で意見交換会を開き、共に関心を持つ問題について意見と考え方を交換する。

(3)座談会。中国共産党中央委員会が主催し、民主諸党派、無党派人士が参加し、内容としては、重要事項の通達や意見交換、重要な決定の下達、民主諸党派、無党派人士の政策的提言の聴取や特定テーマの討議をおこなう。普通は2カ月ごとに1回開かれるが、重大な事項は随時通達する。

(4)民主諸党派の指導者と無党派人士は、いつでも国の施政方針および重大な事項について、中国共産党中央委員会に書面による提言をおこなうか、あるいは党中央委員会の指導者と意見交換を行うことができる。

(二)民主的監督

民主的監督は多党協力と政治協商という枠組みの下で、中国共産党およびその指導下にある国家機関の活動に対する民主党派の監督である。

監督の主な形態としては、政治協商会議で中国共産党中央委員会に対し意見、提言、批判を提出すること、民主諸党派が調査研究をふまえて、国の政治、経済、社会など重大な問題について提言、批判を提出すること、民主党派の身分を有する全人代代表、政治協商会議委員が議案、提案、検査を通じて監督を実行すること、民主党派のメンバーが招きに応じて政府の特約オブザーバー、検査員、審査員、教育監督員を担当することによって監督を実行すること、などがある。

(三)民主党派のメンバーが推薦によって各級政府と司法機関の職務を担当する

民主諸党派からは一般にはいずれも少数のメンバーが中国共産党の推薦で各級政府と司法機関の責任者の職務についているものがいる。

四、中国人民政治協商会議

中国人民政治協商会議には全国委員会と地方委員会が設けられている。

(一)中国人民政治協商会議の性格

中国人民政治協商会議は中国人民の愛国統一戦線の組織であり、中国共産党が指導する、多党協力と政治協商の重要な機構であり、中国共産党と各民主党派、無党派民主人士、各人民団体、各民族および各界の代表、台湾同胞、香港?澳門同胞および帰国華僑の代表によって構成される。

(二)中国人民政治協商会議の職能

中国人民政治協商会議の主な職能は、政治協商と民主監督をおこなうことであり、政治協商会議に参加する各党派、団体および各民族と各界の人士を組織して政治への参与?政治の討議をさせることである。

1、政治協商の主要な内容と形態

主要な内容としては、国家の社会主義物質文明の建設、社会主義精神文明の建設、社会主義法制の建設および改革開放の重要方針、重要施策、政府活動報告、国家の財政予算、経済?社会発展計画、国の政治に関する重大事項、国の重要な法案、中国共産党中央委員会の提出した指導者人選、国家の省クラス行政区画の変動、外交に関する重要方針政策、人びとの日常生活の重要問題、各党派の間の共通の事務、政治協商会議内部の重要事務および愛国統一戦線と関連のあるその他の重要問題などがある。

主要な形態としては、政治協商会議全国委員会の全体会議、常務委員会議、主席会議、常務委員会特別座談会、各専門委員会会議、必要に応じ開かれる各党派、無党派民主人士、人民団体、少数民族人士と各界愛国人士の代表が参加する協議会、地方各クラス人民政治協商会議など、さまざまな活動がある。

2、民主監督の主要な内容と形態

主要な内容としては、国の憲法と法律、法規の実施状況、党中央委員会と政府が制定した重要な方針政策の貫徹実行状況、国民経済?社会発展計画、財政予算の実行状況、国家機関および公務員の責務履行、法規遵守、廉潔施政の実状、政治協商会議に参加する各部門、個人の政治協商会議規則の遵守および政治協商会議決議の履行状況、などがある。政権機関としての性格を備えてはいないが、中国の政治制度を構成する重要な一部分である。

主要な形態としては、政治協商全国委員会全体会議、常務委員会議あるいは主席会議が党中央委員会、国務院に提案を提出する、各専門委員会が提言および関連報告を提出する、委員による視察、委員による提案、委員による監督報告とその他の形で意見と提言を提出する、中国共産党中央委員会および国務院の組織した調査検査活動、地方各クラス人民政治協商会議の活動に参加する、などがある。

3、政治への参与と政治の討議の主要な内容

人民大衆が関心をもち、党?政府部門が重視し、政治協商会議でやれる課題に関し調査と研究を行う、積極的に、すすんで党?政府指導機関に対し建設的意見を提出する、多種多様な形を通じて、委員の長所と役割を発揮させ、改革開放と社会主義現代化の建設のため提言させる、などがある。

(三)中国人民政治協商会議の組織原則

中国人民政治協商会議の規則に賛成する党派と団体は、中国人民政治協商会議全国委員会あるいは地方委員会の常務委員会の認可を経て、全国委員会あるいは地方委員会に参加することができる。

個人は、中国人民政治協商会議全国委員会あるいは地方委員会の常務委員会の討議と招きで、全国委員会あるいは地方委員会に参加することができる。

全国委員会の地方委員会に対する関係および上級委員会の下級委員会に対する関係は指導的関係である。

地方委員会は全国委員会の全国的決議に対し、下級の地方委員会は上級の地方委員会の全地域的決議に対し、遵守?履行の義務を持っている。

中国人民政治協商会議に参加する部門と個人は、いずれも、政治協商会議の各会議、組織、活動を通じて政治協商、民主監督、政治への参与と政治の討議に参加する権利をもっている。

全国委員会と地方委員会の全体会議、常務委員会の決議案は、委員あるいは常務委員の過半数によって採決されるべきである。

各参加部門と個人は会議の決議案に対し、遵守?履行する義務があり、異議があったとしても、断固として実行した上で意見を留保することができる。

各参加部門と個人が、政治協商会議の規則あるいは全体会議と常務委員会の決議に違反した場合、全国委員会あるいは地方委員会の常務委員会で情状によって戒告処分を与えるかあるいはその政治協商会議の参加資格を取り消すことになる。

(四)全国委員会

全国委員会の参加部門、委員定数と人選は前期の全国委員会常務委員会が協議して決める。

毎期の任期内に、参加部門、委員の定数増加、変更、人選の決定は、当期の常務委員会が協議して決める。

現任の全国委員会は次の34の組織からなる。即ち、中国共産党、中国国民党革命委員会、中国民主同盟、中国民主建国会、中国民主促進会、中国農工民主党、中国致公党、九三学社、台湾民主自治同盟、無党派民主人士、中国共産主義青年団、中華全国総工会、中華全国婦女連合会、中華全国青年連合会、中華全国工商業連合会、中国科学技術協会、中華全国台湾同胞聯誼会、中華全国帰国華僑連合会、文化芸術界、科学技術界、社会科学界、経済界、農業界、教育界、スポーツ界、マスコミ出版界、医薬衛生界、対外友好界、社会福祉界、少数民族界、宗教界、特約香港人士、特約澳門人士、特別招請人士である。委員は2196人、常務委員は290人である。

全国委員会は毎期の任期が5年で、一年ごとに全体会議を一回開く。

全国委員会には主席一人、副主席若干人、秘書長一人を置き、日常事務を処理するため、常務委員会を設ける。

常務委員会は全国委員会主席、副主席、秘書長と常務委員からなり、その候補者は政治協商会議全国委員会に参加した各党派、団体、各民族および各界人士が協議して指名し、全国委員会全体会議で選出する。全国委員会主席は常務委員会の活動を責任をもって処理し、副主席、秘書長は主席に協力して仕事をする。

(五)地方委員会

省、自治区、直轄市、自治州、区がある市、県、自治県、区がない市と市が管轄する区、条件のあるところでは、みな中国人民政治協商会議の組織を設立することになる。

現在、各級地方委員会は3000余り、委員は50万人余りである。

中国人民政治協商会議各級地方委員会の毎期の任期は5年である。

各級地方委員会およびその常務委員会の構成、選出方法、責務、主要機関の設置などは全国委員会と同じである。