2004 No.10
(0301 -0305)

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今後十年の中国経済の発展を制約する要素

王 建 

今後十年の中国経済の発展を制約する要素について言うならば、まず2015年までの中国経済の成長段階に対して判断を下す必要がある。

ドイツの著名な学者であるホフマン氏は、「ホフマン法則」という有名な理論を打ち出したことがある。つまり、工業全体に占める重工業の割合が50%に達すると、工業化の中期段階に入り、3分の2以上に達すると、国としての工業化はほぼ完成するという理論である。重工業と軽工業の比率関係から見れば、半分は1、3分の2は2となり、これは著名な「ホフマン係数」ともいわれている。

中国では1978年の改革開放の前に、鉄鋼などの重工業を優先的に発展させるという特殊な発展戦略が取られていたため、「ホフマン係数」は3に達したこともあるが、正常な工業化発展ではなかった。改革開放以後、中国が経済発展戦略の調整を行ったため、1980年代に軽工業の過度の成長が現われるにつれて重工業の割合は下がった。1990年代以来、重工業の割合は再度上昇し、現在の「ホフマン係数」はおよそ1.25となり、すでに工業化の中期段階に入っている。日本と「アジアニーズ」の経験では、2015年までに「ホフマン係数」は2を上回り、工業化の課題も後期段階に入り、一人当たりGDPは3500ドルに達することになる。

世界の経験から見れば、工業化の中後期段階は都市化のピーク期でもある。中国では工業化における優先的発展戦略が取られていたため、都市化率と工業化のレベルにはかなりズレがあったが、今後十年における中国の都市化の高まりはさらに大きなものとなるだろう。

将来の工業化や都市化及び現代化建設の中で、中国は多くの新たな矛盾や問題に直面するため、転ばぬ先の杖と言われるように、正しい発展戦略と政策を制定する必要がある。もちろん、これらのマイナスの要素と比べると、さらに多くのプラスの国際、国内の要素があり、中国がこれらのプラス要素を生かしさえすれば、マイナス要素をプラス要素に転換させ、中国経済のさらなるテークオフを実現することができる。

都市化と工業化はいずれも生産要素の農業以外の分野へのシフトの過程であり、農家が農業以外の仕事に従事するだけでなく、資金や土地などの生産要素も都市と工業に移転することになる。この過程では、資金には問題はないが、深刻な土地不足が主な足かせとなっている。中国は国土が広いが、平野部は国土面積の12%しか占めていない。工場や都市、道路の多くは平野部に建設されているが、平野は中国にとって最も貴重な農業資源である。中国の耕地面積は1億3000万ヘクタール近くあるが、その中の傾斜度8度以下の利用可能な耕地はわずか6000万ヘクタールしかなく、主に平野部に集中し、耕作条件も最もよく、食糧生産量はその他の耕地の2倍以上である。

中国の人口は2015年までに14億を超えるものと見込まれているが、一人当たりの食糧消費量は年間500キロで計算すれば、総量は6億トンとなる。1998年は中国の食糧生産量のピーク期で、5億1000万トンに達したが、その年以来工業化と都市化のスピードが加速し、それに耕地を森林に戻すことなどの原因で、耕地は424万ヘクタール減少し、年平均67万ヘクタールの減少となった。そのため、耕地保護と都市化発展の土地資源をめぐっての矛盾は中国の経済発展を制約する最も主要な要素となっている。

工業化が重工業主導型の段階に入る最も顕著な特徴はエネルギー資源、鉱物資源の消耗が大量に増加することである。衣食などの生産を主とする軽工業は地表以上の農産物資源を消耗するが、住、交通の生産を主とする重工業は地表以下の金属とエネルギー資源を消耗するものであり、資源指向も地表以上から地表以下へと変わっている。

中国の人口は世界人口の5分の1以上を占めているにもかかわらず、重工業発展に必要な石油や天然ガス、鉄鉱石、ボーキサイトなど主なエネルギー資源と鉱物資源の埋蔵量はいずれも世界の5%弱であり、一人当たりの埋蔵量は世界で80位以後にある。そのためエネルギー資源の不足が深刻になっていると言えよう。

鉄鋼を例にあげれば、2002年の中国の鉄鋼生産量はアメリカと日本の鉄鋼生産量の合計に等しく、昨年の消費総量は2億5000万トンを上回ったが、今年は2億8000万トンに達するものと見られている。先進国の工業化の経験から見れば、一人当たりの鉄鋼消費量はいずれも1トンであるが、中国はそれより高いかもしれない。これには二つの原因があげられる。一つ、中国が世界の製造業のシフトの受け皿となっているため、消耗した鉄鋼はその他の国のニーズを満たす内容もある。二、中国の一人当たりの平野面積はあまりにも少なく、都市化と農業の土地資源での矛盾を軽減しようとすれば、都市化を発展させなければならないため、中国の都市の「容積率」水準は他の国よりずっと高いものとなる。容積率が高くなると高層ビルも多くなるが、高層ビルの一平方メートルごとに使われる鋼材は普通の建築物より3分の1多いものとなる。

石油と比べて、鉄鋼の不足はそれほど深刻とは言えない。現在では、世界の石油年間平均貿易量はわずか16億トンしかなく、しかも増産は困難な状況にあり、予備資源も多くない。中国は1993年以後石油輸入国に転じることになり、今年の石油輸入量は昨年より1000万トン増の8000万トンに達するものと見込まれている。

世界の石油資源の不足のため、石油は先進国にとって経済問題だけではなく、国際政治と軍事問題となっている。しかし、中国の一人当たり石油消費量が上昇しなければ現代化も不可能である。現在、中国の自家用車の保有台数はわずか400万台にすぎず、家庭保有率はわずか0.3%であるのに対し、先進国は70%以上に達している。そのため、資源需要と供給不足という矛盾は中国の今後の経済発展にとっていまひとつの制約要素となっている。

環境もかなり大きな制約要素である。中国では石油不足のため、今後の経済発展に必要なエネルギー供給をかなりの度合において石炭に依存することになるが、石炭の燃焼による有害ガスの大量排出で大気が汚染される。また、建設占用耕地をできるだけ減少するために、中国の今後の工業化と都市化の建設が平野全体の90%を占め、沿海地区に集中している平野で進められることも、有害ガスや液体・気体の排出物の集中をもたらしかねない。そのほか、西高東低が中国の地形の特徴となっている。モンスーンの影響を受けて、台風が毎年海から内陸部に襲来するため、大気の浄化が困難となる。

そのほかに就職問題もある。軽工業の特徴は労働集約型であるが、重工業は資本・技術集約型を特徴としているため、重工業主導型の成長段階に入ると、経済成長と就業の関係に変化が生じることになる。1990年代に入って以来、中国は重工業主導型の成長段階に入り、産業発展の労働力吸収の能力が明らかに衰えるようになった。1980年代に中国の経済成長率が7%以上まで達しさえすれば、その年の新規増加労働力の就業は大体解決できたが、ここ数年間は、経済成長率が8%以上にとどまっているのに、失業率の上昇が続いている。

中国では、改革・開放前の特殊な工業化発展が工業生産額の先取りした伸び、農村労働力の移転の遅れという都市と農村の格差の誘因となり、農業生産に従事する労働力は現在依然として3億7000万人に達するが、実際は1億5000万人ぐらいで十分であり、余剰労働力を農業以外の産業に移転させる必要がある。しかし、1990年代中期以来、重工業化の進展によって農村労働力の移転が停滞し、「三農(農村、農業、農民)問題」が現われることになった。農村人口の都市化問題が効果的に解決できず、2015年までに農村人口が依然として9億、ひいては10億であれば、たとえ一人当たりGDPが3500ドルに達したとしても、ややゆとりのある社会という中国の戦略目標の全面的な実現は難しくなろう。

(筆者は中国マクロ経済学会常務副秘書長、研究員)