2004 No.12
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自己権益の擁護

李 子

新ホームの購入は本来、嬉しいことだが、内装や家具の購入に当たって面倒や煩わしことも少なくない。

「IKEA」はスウェーデン企業が北京に開設した家具専門のマーケットで、ここを利用する消費者は多い。外国の設計理念に基づく商品はモダンだ。数日前、記者も家具を揃えようとIKEAに行き、本棚とソファー、机を購入したが、面倒なことが起こるとは思いもしなかった。ソファーが届いた後、脚の部分の塗りが剥げ落ちているのに気づき、返品することした。IKEAに電話をすると、包装を開いた場合は70%分しか返金できないが、部品に問題があれば全額返金できると言う。消費者権益保護法は品質に問題がある場合は全額返金しなければならない、と規定しており、品質に問題があるのだから返品できると主張。IKEA担当者の対応は好意的だった。相手にはっきり説明すると、品質が問題で、しかも包装のバーコードがあれば全額返金できるとの回答を得た。そこで、返品して別のソファーを購入。だが、今度は手もたれに問題があるのが分かり、交換させた。机も本棚は同一の商品番号だが、色合いが明らかに違う。友人は「外国企業も中国化しつつある」とジョークを飛ばした。

大連の包氏に比べれば、記者は幸運かも知れない。包氏の体験は人命にかかわるものだったからだ。

『中国消費者報』によると、包氏は2002年11月8日に韓国現代自動車の輸入ジープ「サンタフェV6」(桑塔福)を購入した。価格は31万8000元。

2003年10月12日、友人と瀋陽に行く予定だった包氏はガソリンスダンドで給油しようと、ブレーキを踏んだ。だが、ハンドルが利かず車は左方向に引っ張られ、アクセルを踏むと、やはりハンドルは利かず今度は右方向へと引っ張られてしまった。この車の走行距離は1万8000キロ。包氏は検査のため大連にある現代自動車の特約店に車を走らせた。検査の結果、右前下のサスペンションが折れているのが判明。検査員によると、高速走行すると車が横転する可能性があったという。

「発見が遅れ、高速を走っていて人身事故を起こしていたかと思うと、空恐ろしい」と包氏は振り返る。

現代自動車の品質保証書は「保守修理期間は韓国で船積みした日から換算して13カ月または走行距離2万キロ(いずれか先を優先)」と規定している。包氏の車は保障期間内だった。

10月13日夜、包氏のクレームを受けた現代・起亜上海事務所の鄭代表が大連特約店に訪れた。

包氏は亀裂部を封鎖すると共に返品かまたは交換するよう要求。鄭代表は「肉眼では何が原因で亀裂が生じたか断定できない。修理工場に左右のサスペンションを交換させれば、約1週間後には鑑定結果が出るだろう。包氏が結果を知りたければ、検査のため亀裂部品を当社まで送ってほしい。そうすれば誰の責任かが判明する」と回答。

10月28日、鄭氏から「部品を韓国の関連機関に送付した。20日後に結果が判明するだろう。その時に通知する」とのファクシミリが来た。

だが1カ月後の11月27日になっても、鑑定の報告書は届かない。そこで包氏は鄭氏のオフィスに、約束どおり早急に報告書を送るよう請求。鄭氏からの返事は「報告書は来たが、全文が韓国語であり、一部の専門技術用語が不明なため、中国語の翻訳が必要ならもう少し待ってほしい」。包氏は憤りを覚え、「韓国語の原文を送ってほしい。翻訳は自分で費用を出して依頼する」と述べると共に、鄭氏に中国に翻訳した報告書を早急に大連に送付するよう求めた。

ファクシミリで送られてきた読めない3枚の韓国語の報告書。それを手にしながら包氏は「現代自動車のサービスがこんなものだと知っていれば、現代の車は買わなかった。購入時、付属の品質保証書は韓国語ではなく中国語で書かれていたが、今回の報告書は韓国語で、中国の消費者に対する最低限の尊重さえ欠いたものだ」と不満を隠さない。

包氏が大連市消費者協会に訴えたのは12月9日。翻訳報告書はまだ届いていない。

送付された報告書を包氏は自費で中国語に翻訳。だが、鑑定の結論は受け入れられないものだった。

結論は、「走行中のいつか断定できない時に1次的衝撃(約3トン)で亀裂が生じ、切断された」。

包氏はこの結論に疑義を唱えた。「右前下のサスペンションを交換した後も、ネジバーがなぜか脱落し、途中で運転が利かなくなった。同時に、亀裂部からもオイルが漏れたが、この問題も無視できない」と。

12月10日、包氏は中国で鑑定するため、現代自動車に亀裂部品を送り返すよう求めた。だが、鄭氏の返事は「亀裂した部品は鑑定のために分解され、原品を送り返すことはできない」。この回答で、包氏の報告書に対する疑念は一層深まった。「当初、韓国で鑑定するために分解するとは聞いていない。原品を返せないなら、鑑定の結果は認められない」と、包氏は再度、12月12日までに亀裂部品を翻訳済みの報告書と共に引き渡すよう要求した。

東北財政経済大学法学院の王岩副教授は「品質問題で消費者からクレームがついた場合、品質鑑定報告書が非常に重要となる。それが問題解決の重要な根拠となり、責任の所在を確定する前提だ。従って、その特殊性や重要性から言って、鑑定に当たっては中立である第3者が行うのがふさわしい」と指摘する。中国の法律は、鑑定機構は合法的な資格と同時に、独立した責任を備えていなければならず、提出した報告書に問題があった場合、一定条件の下で連帯責任を負わなければならないと規定しているという。

遼寧省商品検査局法規処の劉処長は「わが国の自動車検査センターの検査レベルは国際的にも認められている。輸入車が問題を起こした場合は、輸入したその国の法律に基づいて処理することになっている」と説明。

消費者のクレーム問題に10年近く取り組んできた大連市消費者協会苦情受理部の陳彩鳳主任は「現代自動車が生産国で鑑定することを消費者と約束したのであれば、自らに誤りのない事を証明する必要がある。消費者に対しては、採用した鑑定方法が科学的に合理的であり、鑑定の過程がいかに公正であるか、鑑定したパーツが原物かどうか、鑑定に当たっての技術基準が企業基準なのか、それとも国の基準なのかなどを説明する必要がある。このように、問題を解決しようとする真しな姿勢を示せば、中国の消費者に信用される」と指摘する。

改革開放、殊に2001年12月の世界貿易機関(WTO)に加盟して以降、外国商品の流入が拡大し続けたことで市民生活がかなり豊かになったのは間違いない。だが、それに伴い問題も出てきた。自動車や化粧品、食品などが難題をもたらしている。

「Made in France」や「Made in Japan」が一部のデパートやスーパーで出回っているが、その多くに中国語の説明が付記されていない。

「これは昼間つけるの、それとも夜に?」。あるデパートの化粧品売場で消費者が店員に尋ねた。商品を見ると、外装にはメーカーや代理店の電話番号は書かれていない。販売員は「商品はいずれも直接輸入されたもので、中国語の説明や外装は国内の代理店が加えたもの。電話番号があるかどうかはこちらの問題ではない」と話している。

ある外資系のスーパー。調味料のような輸入商品が食品棚に置かれている。興味を持った消費者が手に取って見てみた。商品名は棚下にある値段表にあるのを見つけたが、コショウなのか化学調味料なのか? しばらく考え、また瓶を見て考えてみたが分からない。日本語の標示はあったが中国語の説明がないからだ。

『製品品質法』は、製品またはその外装には品質検査合格証明、製品の中国語名、メーカーの名称と住所を標示しなければならないと規定している。一部の輸入商品がこの規定に反しているのは明らかだ。

ベンツは品質に問題がある場合、すぐにリコールすることで世界的に知られているが、中国の消費者は、品質に問題はないとするベンツの一貫した姿勢に憤りを感じている。これまで10回、品質でクレームが出されているがベンツは認めていない。

ネスレは欧州に輸出する商品には遺伝子組み換え成分を使用しないと確約、または包装に遺伝子組み換え成分の不使用を明記しているが、中国向けでは確約も明記もない。衆知のように、遺伝子組み換え食品が人体に有害であることは世界でもまた結論は出ていないが、だからこそ、こうした商品については包装に特に明記する必要がある。

農業部は昨年3月「遺伝子組み換え成分を含む全ての食品については、最小単位の放送にも表記をしなければならない」と規定。だが、欧州市場に対し「遺伝子組み換え原料は使用しない」と確約した世界の食品最大手・ネスレは、中国で販売する商品については遺伝子組み換え成分について何らの説明もしていない。

暫定統計によると、インターネットなど様々な形でネスレに対しクレームを申し出た消費者はこの1年近くで数万人を超えており、なかには返品を要求した消費者も。ネスレに対しては、中国の法律を順守し、誠実に表記して中国の消費者に情報を提供して選択できる権利を与える、または遺伝子組み換え原料の不使用を確約するよう求める声が相次いでいる。

中央財政経済大学法律学部の李軒副主任は「多国籍企業が軽視しているのは中国人ではなく、中国の法律である。製品の品質の規範や関係する賠償問題に関して、外国と同じように消費者に有利になる規定を設けていれば、中国の消費者を軽視することは絶対にできないはずだ」と強調。

更に李副主任は「現有の消費者保護法や製品品質法、民法などの法律は、例えば、ある製品がその権利を侵害した場合でもその製品に対する制裁の度合は弱く、賠償基準も低すぎ、潜在的リスクに対する責任追究のメカニズムも欠けているなど、消費者の権益を保護するには不十分だ」と指摘する。 

毎年3月15日は、国際消費者連盟が1983年に確定した国際消費者権益の日。中国は1987年に同連盟に加盟後、翌年からこの日に大規模なキャンペーンイベントを開催してきた。消費者権益の日が全国に浸透し、消費者の権益は全社会が共に関心を寄せる話題となり、益々多くの市民が法律を学んで自らの権益を擁護するまでになった。

中国消費者協会の常務副会長兼秘書長の滕佳材氏によると、今年は『消費者権益保護法』が施行されて10周年、消費者協会が1984年に国務院の認可を得て設立されて20周年になる。

同協会の武高漢副秘書長は「協会が設立されて20年来、受理した消費者の苦情件数は昨年末までに800万件、回復された消費者の損失金額は50億元に達した。消費者の苦情内容は約80%が品質の問題だ」と話している。

中国消費者協会は2004年の年間テーマを「誠実と信用・権利の擁護」に確定した。滕常務副会長は「誠実と信用は、経営者や仲介機構に対し、市場活動において誠実と信用を根本的な行動の道徳と準則にして、消費者との約定義務を全面的かつ十分に履行すると共に、自身の義務の回避や様々な商業上の詐欺行為に反対し、信用を守ることは栄誉なことであり、信用を失うことは恥じであるという社会的メカニズムの形成を促進するよう求めている。権利の擁護とは、広範な消費者に対し積極的に行動し、消費者権益保護法を根拠に、法律を基準にして積極的に自らの合法的権益を主張し、市場取引における誠実と信用の原則に反する行為を悪までも抑制し、全社会が共に関心を寄せる消費者の権益を更に推し進め、誠実と信用の原則に基づき消費に当たって直面する様々な問題を解決し、全社会が共に消費者の権益を擁護する新たなメカニズムの形成を目指すよう呼びかけている」と強調した。

付属表1:全国苦情状況の一覧

項  目 2002年 2003年 増減幅
受理件数(件) 690,062 695,142 0.7%増

解決件数(件)
649,909 670,344 3.1%増
損失回収金額 (万元) 64,203 116,435 81.4%増
倍増賠償件数(件) 9,308 11,394 22.4%増
倍増賠償金額(万元) 1,220 1,603 31.4%増
起訴支援件数(件) 9,917 8,595 13.3%減
政府による罰金・没収金額(万元) 3,997 29,550 639.3%増
訪問相談(延べ万人) 582 1,017 74.7%増

付属表2:苦情増加幅前11位の商品(件)

商  品 2002年 2003年 増加幅(%)
携帯電話 32,045 51,371 60.3
衛生用品 4,508 6,959 54.4
薬品 8,364 12,820 53.3
自動車 3,919 5,651 44.2
医療補助用品 2,451 3,512 43.3
コンピューター 3,547 5,082 43.3
空調類製品 11,558 15,242 31.9
文化・スポーツ用品 3,079 3,871 25.7
保健用品 4,669 5,771 23.6
内装用建材 14,455 17,499 21.1
住宅 17,172 20,290 18.6