2004 No.13
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深刻化する北京の水危機

―――節水型の都市を建設し、持続的な発展が可能な水使用に努める、これが北京市の水危機を解決する根本である。

蘭辛珍

2004年1月13日午後、北京市内の菜戸営街に住む康麗琴さんが洗濯をしていると、半分終えたところで水が止まった。「断水は今年で2度目になる」と康さん。

北京市水道公司豊台支社の職員、張秀枝さんは「断水は公司が供給する水が不足しているからで、北京の水資源不足問題は深刻化している」と説明する。

現在、北京市の1人平均水使用量は300立方メートル不足した状態にある。この数字は全国平均の8分の1、国際的に公認されている1人平均水不足の下限である1000万立方メートルの3分の1にも達していない。張さんは「各業界の需要、1300万の市民の生活用水を満たそうとすれば、水資源の需給はますます深刻化していく」と指摘する。

北京市の水危機は数年前から顕在化してきた。蜜雲ダムと官庁ダムは市民の生活と環境用水の主要な水源で、全市の地表水供給総量の3分の2を占める。蜜雲ダムは北京市区の半分以上の日常用水の供給を担っており、2つのダムの給水量は1950年代に約30億立方メートルに達していたが、90年代には僅か12億立方メートルまで減少。2000年から2003年にかけては、4年連続の干ばつで億立方メートルまで激減した。北京市の現在の年平均水使用量は4億1200万立方メートル。北京市は2003年10月、水不足に対処するため山西省から5000万立方メートルを緊急調達せざるを得なかった。

国家環境保護総局の潘岳副局長は「不足量は2005年までに7億9400万立方メートル、2008年には10億立方メートルを超えるだろう。水不足問題は経済発展を制約する重要な要素だ」と指摘する。

水不足は北京だけに限ったものではない。全国に600余りある都市のうち約400都市がこうした問題に直面している。なかでも比較的深刻な都市は110を数え、不足量は全国で60億立方メートル。

水不足の原因

中華環境保護基金会の曲格平理事長は、北京市の水資源不足の原因について4点を指摘する。

第1は、人口の急増と経済規模の拡大。この20年近くの間、人口は800万から1400万近くまで増加し、GDP(国内総生産)は300億元から約3000億元まで増大した。これにより使用量が大幅に増大した。

第2は、地下水の過度の汲み上げ。60年代から地下水を大量に汲み上げるようになり、現在の平原地帯の地下水は深さ13.65メートルと、2002年に比べ2メートル、1980年初期と比較すると7.2メートルも低下している。地下水の貯水量は同36万8600立方メートルも減少した。

第3は、調整可能な地表水の有限性。市民生活と環境用水の主要源である蜜雲と官庁ダムの現在の貯水量は10カ月分しかない。

第4は、水道管の深刻な劣化。年間漏水量は1億立方メートルと、率にすると約17%。日本や米国など先進国の8%〜10%に比べ漏水率は大きい。

曲格平理事長は「この4点は人的原因だ」と強調する。

中国科学院会員で、北京大学気象学部の趙柏林教授は、浪費と汚染が水不足をもたらした原因だと考えている。現在、北京の用水では農業用が87%、工業用が12%と、農業が依然として大きな比重を占めている。「水源を浪費し、汚水を排出し、さらに良質の水源を汚染する」農業や工業生産の例は、北京周辺の随所で見られる。例えば、ピュアウォーターを生産する業界では、企業の大多数が先端的な技術や設備を持たない小企業であり、生産率は低く、1トン生産するのに3〜4トンの原水を消耗している。高級サウナや美容室、街角の洗車、草地の維持などに用いる水はいずれも水道水。浪費は甚だしく、しかも廃水回収処理設備は整っておらず、1回使用すれば再生はできない。趙柏林教授は「こうした問題が解決されなければ、北京市の生活用水の重大さは緩和できない」と強調する。

現在、処理できない工業廃水と生活汚水は年間10億立方メートル。官庁ダムは上流から大量の汚水が入り込んだため、1997年から飲料水として給水されていない。

水不足問題の解決へ

北京市の水不足問題を重視した政府は2003年12月30日、「南水北調」(南方の水を北方に送る)プロジェクトの中部ラインと、北京・河北省区間の工事に同時着工した。政府が問題解決のため下した重要な政策決定である。

水利部の汪恕誠部長は「このプロジェクトはハード面から問題を解決するに過ぎず、北京市で水危機が再発しないとは保証できない。解決するにはプロジェクトを着実に実施すると同時に、北京市が節水型の都市になることだ」と強調する。

更に汪恕誠部長は「北京市の現在の節水は、水資源の厳しい状況にマッチしたものではない。行政が節水の推進を指導する従来型のやり方では今の状況にそぐわない。節水型の社会を建設することが、水不足問題を解決する根本的な活路だ」と指摘する。

2004年1月10日、「節水型都市の建設」をテーマに北京で高級フォーラムが開かれた。水問題専門家で国土資源省の張宏仁・元副部長も、汪恕誠部長と同様の考えを示している。「極端に不足している北京の水不足の厳しい状況を改善するには、新たな水資源の模索を重点にしていてはだめであり、実際、資源はいくらも開発されていない。問題解決には、今ある水資源の活用に立脚することが肝要だ。第1に貯水の調節、第2に全市民による節水だ。この面で北京はまだまだ努力をする必要がある」と指摘した。

北京市は70年代末に節水を政府の課題として取り上げた。1987年に市政府は『再生水利用施設建設管理試行運用法』を公布。行政区域内に建築面積2万平方メートル超のホテルやマンション、同3万平方メートルのオフィスビルや科学研究機関、大学の校舎、文化・スポーツ施設の新規建設、法適用の住宅団地や集中建築地区はいずれも廃水処理再生設備を備えなければならないと規定した。

だが実際、この規定は着実には実施されてこなかった。水道料金が低いため、市民を含め多くの企業の間では節水意識が低く、廃水再生施設の建設も重視されていない。

北京市水利局の焦志忠局長は「水危機に対処するには、水使用の市場化が問題解決の根本となる。現在も水道料金は払っているが、料金は決して市場を反映した真の価格ではない。これでは市民は水を大切にしないだろう。こうしたことから今年、水道料金を引き上げる」と話している。

焦局長によると、「南水北調」(南方の水を北方に送る)プロジェクトが完成した後、北京市の水道料金は現在の1トン3.5元から同6元に引き上げられる。

さらに焦局長は「料金を上げると同時に、都市部と農村部、北京と周辺地区との間に生態補償メカニズムを構築することにしており、制度面から水資源の節約・利用を確保していく」との方針を示している。

国家環境保護総局の潘岳副局長は「水危機を解決するには節水だけでなく、持続的な発展が可能な水使用に努める必要があり、また水資源の保護と利用、開発を円滑に行わなければならない」と指摘する。

中国工程院の会員で、清華大学環境科学・工程学部の銭易教授もこの考えに賛同している。「水資源需給の問題は、水供給の拡大だけで解決できるものではない。仮に給水量が需要を満たさず、絶えず水資源を拡大していけば、使用量だけが増え続けるのみで、悪性循環となる。需要に合わせて供給量を定めるのではなく、水の需要を抑制することを優先すべきだ。こうすれば、再生水は有効活用されるだろう」。

北京市は2001年6月、『21世紀初期の首都水資源の持続可能な利用計画』採択した。『計画』は、2005年までに54億5000万元を拠出して、周囲の水系である北環、清河、?河、凉水河など総延長200キロの20本の河川を整備すると同時に、現在計画中の30の汚水処理場のほか、新たに14の汚水深度処理場を建設し、2010年までに全市の再生水使用量を6億4500万立方メートルまで増やすと規定している。

銭易教授は「この計画によれば、この2年のうちに恩恵が受けられるようになる。仮に官庁ダムの汚染整備が終われば、北京市の飲料水不足が緩和されるのは間違いない」と強調する。