2004 No.13
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科学的な発展観は中国の新しい発展戦略

柴 米

さる2月21日午前、中国共産党中央主催の省と部の主要責任者が参加する「科学的な発展観を樹立し、実行に移す」特別研究クラスが終業式を行った。温家宝総理は終業式で「認識を高め、思想を統一して、科学的な発展観をしっかりと樹立し、真剣に実行に移そう」と題する長編の報告を行った。学習期間6日間の同研究クラスには、31省(自治区、直轄市)の最高指導者および党中央機関、国家機関、軍隊の主要な責任者が参加した。そのため、これは中国共産党の高級指導部が科学的な発展観を全面的に実施するため、省・部クラスの主要責任者を集めて行った重要な「宣誓動員」活動であると論評する海外メディアもある。

その後の1カ月余りの間、「科学的な発展観」は中国のメディアに最も多く報道され、最も注目を集める名詞となった。

事実上、早くも昨年10月に中国共産党第16期中央委員会第3回総会で可決された「社会主義市場経済体制整備の若干問題に関する中国共産党中央の規定」は、すでに「あくまで人を本として、全面的な、協調する、持続可能な発展観を樹立し、経済・社会と人の全面的な発展を促進する」ことを打ち出すとともに、「都市と農村の発展の全般的配慮、区域発展の全般的配慮、経済と社会の発展の全般的配慮、人と自然の調和のとれた発展の全般的配慮、国内の発展と対外開放の要求の全般的配慮」という五つの全般的配慮を堅持することを打ち出している。胡錦涛中国共産党中央総書記はこのような発展観を「科学的な発展観」と称している。今年2月に行われたこの終業式で、温家宝総理がはじめて科学的な発展観を詳しく解明した。

有名な国情研究専門家、清華大学国情研究センター主任の胡鞍鋼氏は新華社記者のインタービューに応じた際、科学的な発展観は新中国の50余年にわたる発展の経験と教訓をしめくくったもので、中国の国情と全世界の発展のすう勢に合致しており、中国の二代目の発展戦略ということができると語った。氏によると、「一代目の発展戦略」は1978年の中国共産党11期3中総の後にケ小平氏が初めて打ち出したもので、この戦略は発展加速とアンバランスな発展をテーマとし、「一部の人が先に裕福になる」ことを提唱し、生産力の解放と発展を改革の目的とするものであるが、「二代目の発展戦略」としての科学的な発展観は発展の全面性、協調性、持続可能性をいっそう強調し、共に発展し、分ち合う「共同裕福論」を提唱し、五大協調発展戦略を実施し、とくに「人を本とする」ことを突出させ、こうして「発展の目的はなにか」という問題を解決した。

過去の25年間に、中国は国内総生産(GDP)の年平均成長率が8%以上という世界の奇跡をつくった。昨年の中国のGDP成長率は9.1%に達したが、これはアジア金融危機後の最大の増幅である。25年来、中国の経済実力と国民の生活に巨大な変化が生じた。

黒竜江省全国人民代表大会代表の馬淑潔氏は「新しい世代の指導者は終始冷静さを保ち、盲目的に楽観せず、存在する問題をなおさあ過小評価していない。これは喜ばしいことだ」と語った。

中国は経済が急速に発展すると同時に、社会、環境など多くの面で大きな代価を払った。これは事実である。

中国人民政治協商会議全国委員会委員、有名な経済学者である呉敬l氏は「前の一時期はGDPの成長を重く見すぎ、ひいては発展を成長と同等視し、回避できず、解決しなければならない多くの経済、社会、政治の問題を後に残した。これらの問題は都市と農村間および地区間の発展の格差、貧富の格差が大きくなり、経済の発展と社会の発展がアンバランスとなり、資源環境が発展と調和しないなどを含んでいる」と語った。

ある資料は次のことを顕示している。1980年代から1990年代末期にかけて、中国の毎年砂漠化する土地の面積は1000余平方キロから2460平方キロに増加し、1980年の中国の一人あたり耕地は0.13ヘクタールだったが、2003年には0.095ヘクタールに減少し、最近数年は勢い盛んな「土地を区画する」高まりの中で全国の耕地面積が667万ヘクタール減少した。また中国の当面の廃水排出量は439.5億トンで、環境容量の82%を超え、七大河川水系の劣質5類の水質が40.9%を占め、75%の湖沼に程度の異なる富栄養化が現れた。

資源の浪費が大きく、環境の破壊がひどいなどの問題は今日では際立って現れ、人と自然の矛盾が今日ほど激化することはこれまでになかった。中央党学校研究室の趙傑博士は「資源をもって成長と取り替え、生態環境を犠牲にして経済発展を維持する構想やパターンはすでに袋小路に入り、生態悪化と資源枯渇が中国の持続可能な発展にとって危険な要素となっている」と語った。

このほか、中国経済の高度成長は大多数の人に相応の実益をもたらすはずであるのに、実状は理想的ではない。

中国社会科学院「中国社会形勢分析と予測課題グループ」の2004年版「社会青書」に次のようなデータがある。中国都市部の登録失業率は年ごとに上昇している。都市と農村の一人あたり収入の格差が持続的に大きくなっており、1995年は2.72対1であったものが、2003年には3.2対1に拡大された。2000年の中国人口の教育を受ける年数は平均8年足らずであり、中国には読み書きのできない成人がいまでも成人総数の9%を占めている。

このデータから、経済が発展したにもかかわらず、発展の成果を十分に享受していない人、とくに農民がまだ少なくなく、経済発展と社会進歩が調和せず、教育、科学技術、文化、医療衛生、労働就職などの社会事業の発展が経済発展よりずっと遅れていることをはっきり見てとれる。

2003年の春に中国で発生したSARSにより、公共衛生システムの脆弱さがあますところなく暴露された。SARS危機の急な出現は、科学的な発展観の出現を促す要因となった。

中国科学院持続可能な発展戦略研究グループ組長の牛文元氏は、「科学的な発展観の出現はまったく時宜にかなったことであり、非常に強い目的性と緊迫性がある」と語った。

専門家によれば、中国はいま発展にとってカギとなる時期にあり、中国の一人あたりGDPは2003年に初めて1000ドルを突破した。国際経験が示すように、一国の一人当たりGDPが1000ドルに達すれば、経済と社会の発展が新たなカギとなる段階に入ったことを意味する。この段階では、都市と農村の間、区域と区域の間、産業と産業の間および異なる資源を占有する人の群れの間の収入の格差がさらに拡大され、収入増加と格差拡大につれて、各種の利益関係が日ましに複雑になる。経済体制転換と構造最適化を順調に実現できるなら、経済発展は新たな段階に躍り上がるが、さもなければ、停滞して前進せず、ひいては社会の不安定を引き起こす可能性がある。

そのため、いま中国人は分かれ道にさしかかっている。一本の道は中国共産党第16回全国代表大会の確立したいくらかゆとりのある社会を全面的に建設するという麗しい情景に向う道であり、もう一本の道は「悪の市場経済」または貴顕資本主義に通じる道であると見る人がいる。

国務院発展研究センター主任の王夢奎氏はこう見る。科学的な発展観の基本的内包は全面的な、協調する、持続可能な発展である。いわゆる全面的発展とは、経済、社会、政治、文化、生態など各方面の発展に着目することであり、いわゆる協調とは、各方面の発展が互いにつなぎ合い、互いに促進し合い、良性に影響し合うことであり、いわゆる持続可能とは、当面の発展の需要を考慮して、当代の人の基本的需要を満たす必要もあれば、将来の発展の需要を考慮し、子孫のことを念頭におく必要もあることである。

中央党学校副校長の李君如氏は、「科学的な発展観の第一の重要な意義は発展である。これはなんら疑いのないことである。中国がすべての問題を解決するカギは自身の発展に頼ることである。発展について語るなら、発展とはなにかをはっきりさせる必要がある。どうして発展しなければならないのか、どのように発展するのか、これらの問題は発展観が回答すべき問題である」と語った。

李氏はさらに次のように語った。科学的な発展観はここ二、三十年来世界で討論されたホットな問題の一つである。在来の発展観は発展を経済の発展としか見ず、ひいては経済の成長としか見ない。長年来、多くの国はこのような発展観が社会発展の中の現実的問題を解決できないと普遍的に感じていた。そこで、ある人は人を中心として発展を考慮することを提出し、ある人は持続可能な発展も考慮することを提出し、またある人は人類発展の概念を提出した。この問題の探究を純学術の探究と見てはならず、それは実際には現代化の法則に対する人類の認識が徐々に深化していることを表している。

李氏はさらに言葉を続けた。この新しい発展観は時代発展の流れにも合致すれば、現代の中国の国情にも合致し、また鮮明な時代的特徴も体現していれば、深い人文精神も含んでおり、さらには中国共産党という世界最大の政党、中国という世界で人口の最も多い大国の全世界と人類に対する責任を負う態度も体現している。この発展観を実行に移すならば、中国の改革と発展に大きくかつ深遠な影響を及ぼし、全人類の持続可能な発展に大きく貢献するだろう。この発展観を明確に表現することは、中国共産党の新世紀に向けての全面的な発展観がすでに形成されていることを示している。