2004 No.13
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科学的な発展観は影響力のある新しい概念

柴 米

科学的な発展観の提出は、新世紀における中国の発展に深遠な影響を及ぼすだろう。これはほぼ北京のオブザーバーの共通認識となっている。

清華大学国情研究センター主任の胡鞍鋼氏は次のように指摘した。科学的な発展観の理念は中国社会で確立されたあと、一連の現実的な問題の解決を指導する。たとえば、就職促進と農民増収といたった民生問題に関する指標が発展の中で優先的な地位におかれるとか、役人の政績観も再設定され、抜てきしてもらうため、ない知恵を振りしぼってGDPを水増しする現象が抑制されるなどは、そのいくつかの例である。

事実上、この種の影響は明らかに現れ始めている。

GDPをもう一度よく見る

中国東部の経済のわりに発達した浙江省長興県では、県政府は今年2月に、政府役人に対する成績考課項目からGDP指標を取り消すことを決定した。

同県県長の労紅武氏は「長興にあった小型のセメント工場や電池工場は確かにもうかっていたが、しかし環境が残らず破壊されてしまった。このような状況はこれ以上続けて存在させることができない。われわれは『生態県』を建設しなければならない」と語った。

中国の多くの地方はいま、長興県と同じように、GDPに対する迷信から抜け出している。

中国社会科学院社会学研究所の専門家李培林氏は、中国の一人当たり水資源量は2500立方メートルで、世界の一人あたりの量の四分の一しかなく、単位あたり生産額の鉱物資源とエネルギー消耗は世界平均値の3倍であり、単位面積あたりの汚水負荷量は世界平均数の16倍以上であり、中国労働者の労働生産性は先進国の三十五分の一であると語った。

データが顕示しているように、1985年から2000年までの15年は中国経済の高度成長期で、GDPの年間成長率は8.7%であったが、損失コストや生態赤字、つまり自然部分の虚数と人文部分の虚数を差し引くと、この期間の中国の「真の国民の富」は名義上の富の78.2%しかない。これは、過去15年の中国のGDPの実際年間成長率が6.5%しかないことを意味する。

中国科学院持続可能な発展戦略研究グループ組長、首席科学者の牛文元氏は、中国の一人あたり資源は多くなく、生態環境は先天的に脆弱であり、中国GDPの数字のかなりの部分は子孫を犠牲にして獲得したものだと語った。

有名な環境経済学者、中国人民大学環境学院常務副院長の馬中氏はこう語る。GDPは経済発展のすう勢を示す最も重要な指標であり、中国のGDPが25年連続して高度成長をとげたことにより、人民の物質的生活がこの上なく大きく改善され、豊かになり、国の国際競争力と吸引力が増強された。しかし、GDPは最終産品と労務しか計算しておらず、資源コストと環境コストを算入していない。中国では、GDPの成長を盲目的に追求したため、資源と環境の形勢は非常に厳しいものになった。今後も長期にわたりこのように続けていくと、発展するのが難しくなるだろう。

馬中氏はさらに言葉を続けた。このような背景の下で、グリーンGDPを実行することが非常に重要かつさし迫ったものになってきた。グリーンGDPとはつまり現行のGDP総量から環境・資源コストと環境・資源の保護・サービス費用を差し引いた残りの部分である。資源コストと環境コストを国民経済計算体系に組み入れると、粗放型の成長パターンが低消耗、高利用、低排出の集約型パターンに転換するのを促すだろう。

伝えられるところによると、国家統計局、国家発展と改革委員会、国家林業局、国家環境保全総局などの部門はいま、経済発展の過程で払われる資源と環境の代価をはかるため、中国の国情に合ったグリーンGDP計算システムの研究を急いでいる。中国はまずエネルギー、土地、鉱物など天然資源の「実物量」の増減状況を統計し、条件が熟するのを待って、グリーンGDP総値を計算するようになるだろう。

国家統計局が今年2月26日に発表した2003年統計公報を読んで、人々はGDPのデータを発表すると同時に、環境、資源、生態などを単独に書き並べ、同時に科学技術、公共衛生など分野の社会発展状況を適当に増加しているという新しい変化をはっきりと感じた。

国家環境保全総局副局長の潘岳久氏は最近、党中央組織部は国家環境保全総局と共同で、環境面の指標を幹部考課システムに組み入れることを中国の一部の省で試行するが、これにより経済指標だけを重視し、環境効果を無視した過去の政府業績評価方法が改められ、政府役人に対する考課がいっそう科学的、全面的になるだろうと語った。この改革は目下四川、河北、山東などの各省で試行中である。

このほど閉幕した第10回全国人民代表大会第2回会議で、中国政府は今年のGDP予期成長率を7%に引き下げた。国家発展と改革委員会主任の馬凱氏は最近、中国は科学的な態度で社会進歩をはかることにいっそう努力するだろうと語った。全人代代表の秦池江氏は「これは適切な数字で、中国がいまGDPを一方的に追求するやり方を改め、全面的な、協調する、持続可能な発展の実現に努めていることを示している」と語った。

全人代に先立って中国各地で陸続と開かれた「二つの会議」(人民代表大会、政治協商会議)も次々とGDPの存在を薄めた。昨年のGDP成長率が8年来の最高で、新しい快速成長周期に入った広東省は、今年のGDPの成長指標を昨年の13.6%という実際成長率より低い9%に決めた。

オブザーバーは、これは中国が1980年代中期からGDP指標を採用し始めて以来、人々がはじめてGDPの成長を盲目的に迷信しなくなったことを示していると指摘した。清華大学国情研究センター主任の胡鞍鋼氏によれば、これは中国が成長を優先とする「ダーク発展」を全面的にバランスのとれた「グリーン発展」にできるだけ速く転換し始めたことを示している。

オブザーバーによれば、科学的な発展観が打ち出されてから、GDPを一方的に追求する発展のパターンが中国で全面的に影を薄めるだろう。

共に分ち合う

大慶油田の清掃労働者王暁梅さんは「私はいま一日働いて8元5角の賃金をもらっているが、これだけの金で生活し、子供を大学に入らせるのはとても難しい。要求はさほど高くはないが、一日1元5角余計もらえるなら結構だ」と語った。

中国のGDPは過去の25年に高度成長をとげたが、経済と社会の発展がアンバランスの問題も日ましに際立っている。中国の収入格差は、住民全体の収入がレベルアップする基礎の上に現れたものであり、相対的なものであって、絶対的なものではない。しかし、収入格差のたえまない拡大に伴って、人々はそれが社会の安定に影響する問題にならないだろうかと憂慮し始めた。

中央党学校経済学部副主任の趙振華氏はこう語る。

当面の中国の収入格差は主に次の四つの方面に現れている。

個人の収入格差が大きくなっている。一方では、改革・開放以来、一部の地区と一部の人が裕福の道を歩み始め、1億人以上の貧しい人が貧困から脱却したが、他方では、2002年末になっても、依然として2820万人の農村の貧しい人が貧困から脱却しておらず、都市にも各種の救済に頼って生活を維持する人が2000余万人いる。

都市部住民と農村住民間の収入格差が拡大のすう勢を示している。2002年の都市部住民の一人あたり可処分所得は7703元、農村住民の一人あたり純収入は2476元で、前者は後者の3.11倍である。もし都市部住民が享受する各種の補助と福祉を加えるなら、都市部住民と農村住民間の実際の収入格差はさらに大きくなる。

区域間と区域内部の住民の収入格差が拡大のすう勢を見せている。改革・開放以来、中国各地区の住民の収入はともにかなり大幅に増加したが、東部地区住民の収入の増加が最も速く、中部地区がこれに次ぎ、西部地区が最も遅い。同時に、区域内部の収入格差も大きくなっている。

業種間の収入格差が拡大のすう勢を見せている。1978年、賃金が最高の業種の賃金は最低業種の1.38倍であった。2002年、中国の細分化した業種の従業員の平均賃金は、最高が最低の6倍以上である。高収入業種はたいがい独占性があり、しかもこの種の独占は行政手段で形成されたものである。

これらの格差の中で、最も顕著なのは都市と農村間の格差である。農民の収入増加が遅い問題はすでに全社会の関心と注目を集めている。

中国社会科学院経済研究所収入分配課題グループは数年追跡したあと、このほど都市と農村間の収入格差問題の調査レポートを作成した。同レポートは、近年、中国の都市と農村間の収入格差がたえず大きくなっており、一人当たり収入比率は1995年の2.8から2002年の3.1に上昇した。しかし、調査要員はこれが都市と農村間の実際収入の格差を真実に表すことができないと見ている。というのは、都市部住民の可処分所得に都市部住民の享有する各種実物補助が含まれていないからである。たとえば、都市部住民の多くが公費医療を享受しているのに、農村の住民にはこの種の待遇がないとか、都市部の小中学校が国から多額の財政補助を獲得できるのに、農村の学校の得る補助がとても少なく、農民は金を集めて学校を運営しなければならないとか、都市部の住民が養老金保障、失業保険、最低生活救済を享受しているが、農村の住民はいくら望んでも得られないなどが、そのいくつかの例である。研究要員は、これらの要素を考慮に入れると、都市と農村間の収入格差は4ないし6倍に達し、世界最高になると見ている。

同課題グループ責任者の一人である岳希明氏は、政府が措置を講じて農民の収入を増やし、都市と農村間の格差を小さくすべきだと見る。氏の提案は主に次の三つある。

一、体制面から労働力市場の分割問題を解決し、農民により多くの就職のチャンスを提供する。「現在の戸籍による制限は、市場経済を実行する国の基本的経済原則に背いている」。

二、 村から徴収する税金を大幅に減免する。すでに数年にわたって実行した農村の税金・費用徴収改革は収入格差の縮小に役立つが、力の入れ方が足りない。「もし農家のすべての税金と費用を減免するなら、彼らの一人あたり収入は5.4%増加する、つまり彼らと都市部住民間の収入格差は13ポイント縮小する」。

三、国は税収政策と財政政策面で農村により多くの支持を与え、農民の医療と教育事業、農民の社会保障への投入を増加する。「たとえば一部の立ち遅れた地区、貧困地区では、政府は毎年65歳以上の老人に一定額の養老金を支給することを考慮すべきである」。

都市と農村間の収入格差はすでに中央政府の高度の警戒心を引き起こした。今年2月、「農民の収入増加促進の若干の政策に関する中国共産党中央と国務院の意見」は中央一号文書として正式に公表された。これは新中国成立55年来中国共産党中央の文書として発表された農民の収入増加に関する最初の文書である。

国家発展と改革委員会主任の馬凱氏は、今年は「多く与え、少なく取り、活性化させる」方針を堅持し、農民の収入を増やすように努め、できるだけ農民の一人あたり年間純収入を5%増やすようにするが、昨年の報告の予期指標は4%であったと語った。

専門家はこう見る。市場経済の効率追求は、かなりの程度において異なる人の間における富の分配のアンバランスを大きくする。これは市場経済体制にもとからある欠陥である。しかし、収入格差の拡大を制止することは、政府の担うべき責任である。政府の有形の手で市場という無形の手の欠陥をカバーすることは、科学的な発展観の必然的な要求である。

低所得階層にとって、最近閉幕した第10期全人代第2回会議で審査、可決された温家宝総理の「政府活動報告」は彼らに大きな利益をもたらすものである。農民の増収、農業の増産、5年内の農業税の取り消し、衛生システムの確立と健全化、農民労働者の未払い賃金の償還、東北地区振興、義務教育とくに農村教育の強化から都市部の失業者の就職とリストラ従業員の再就職促進にいたるまで政府活動報告の中で打ち出した明確な政策は、今期の政府の次段階の活動をできるだけバランスを保ち、公平となるようにすることをはっきり体現している。

カステラをつくるなら大きなカステラをつくらなければならず、またそれをちゃんと分けなければならない。このため、全国政治協商会議委員、経済学者の蕭灼基氏はこのほど閉幕した全国政治協商会議第2回会議で、四つの提案を行った。@社会保障の範囲を拡大し、その基準を高くする。A低収入家庭の住宅条件を改善し、農民の貧困扶助基準を高め、その範囲を適当に拡大する。B都市部の最低生活保障基準を高め、その対象を拡大する。C特殊な低収入の人たちを大事にし、特殊消費税を徴収して、最低生活保障と貧困扶助資金などを充実させる。

胡鞍鋼氏は『21世紀』誌記者のインタビューに応じた際、「現実の条件から見ると、中国に発達地区と未発達地区がある。これは中国の発展のアンバランス性の特徴を示している。各地区が短期間に共に裕福になるのを要求するのは現実的ではないが、共に裕福になることを長期の目標としてたゆまずに追求すべきであり、この目標に達するには、共に分ち合うチャンスをつくり、そのメカニズムを確立しなければならないと語った。