2004 No.14
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ロシアはどこへ向うのか

――力を集中して国の経済発展に取り組むことがプーチン大統領の二期目の主要課題

陳玉栄

(中国国際問題研究所ヨーロッパ・アジア室主任)

もともとそれほど知られていなかったプーチン氏はロシア大統領に就任してから一躍世界の政治舞台において光り輝くスターとなった。ロシアにとって「数百年来の最も困難な時期」に大統領となったプーチン氏は就任するや経済の振興と大国としての国威の再現を責務とし、1期目の4年間に、強靱な意志と柔と剛を兼ね合わせたスタイルで、混乱したロシア社会を安定した社会に変え、新しい外交局面を切り開き、プーチンの時代の幕を開いた。プーチン大統領の政治的業績はロシア社会でも肯定されており、支持率は70%を上回っている。それゆえに、プーチン大統領は3月14日に行われた大統領選で圧勝することができた。再任後のプーチン大統領はどんな新しい政策をとるのか、その新しい政策はプーチン時代を顕彰することができるのか、プーチン大統領はロシアを指導して新たな輝かしい成果をあげることができるのか。

経済改革を加速し、経済建設を中心として内外政策を制定し、力を集中して国の経済発展に取り組むことがプーチン大統領にとっての主要課題となるのはさまざまな兆によって明らかになっている。経済の発展や国力の増強、国民生活のレベルアップはプーチン大統領がロシアの大国としての国際地位を回復し、経済強国の夢を実現する必然的な選択であり、有権者が大統領に寄せている最大の期待でもある。プーチン大統領が再任の期間にとろうとする新しい政策に次の特徴があると見ている。

経済の急速な発展をはかる プーチン大統領は昨年5月に大統領年次教書の演説を行った際、ロシアの国内総生産(GDP)を2010年に現在の2倍に引き上げるという経済目標を打ち出した。ロシアの経済学者の予測では、この目標を達成するためには、ロシア経済は7.2%の高い年率で伸びるようにしなければならない。経済の急成長を実現しなくては、世界の2、3流の国に転落することは避けられないとプーチン大統領は見ているからである。にもかかわらず、カシヤノフ・ロシア前首相はずっと経済の安定成長と低速成長を主張していた。大統領選を間近に控えて、プーチン大統領はカシヤノフ政府を解散し、フラトコフ氏を新任の首相に指名し、これによって再度経済発展を速める決意を明らかにした。

プーチン大統領が1回目の任期に収めた経済成果は今後の経済発展の物的基盤を打ち固めた。ロシアのGDPは1999年から2003年までの期間に年平均6.2%で伸び、工業生産高と固定資産投資の増加が顕著で、外貨準備高は778億ドルに達した。プーチン大統領は年次教書で「予見できる将来に、ロシアは世界の本当の意味での強大な、経済が発達した、影響力のある国々の間でその地位を確立すべきである」、「これは新たな課題であり、国は新しい段階に入らなければならない」。

各分野における改革を深化 プーチン大統領は今回の任期内に次の改革措置をとることになろう。 

1、中央集権をいっそう増強し、地方に対する中央の行政管理と監督を強化し、チェチェン問題というロシア社会の最大の悩みの解決に力を入れ、国の統一を守り、地方に対する中央の管理権を確保する。

2、行政体制の改革を速め、機構を簡素化し、行政効率を高め、歳出を減らす。行政機構の改革を速めることはプーチン大統領が新政をスムーズに推し進める前提と保障である。プーチン大統領が3月9日に署名した「連邦執行権力機関の体制と構造」に関する大統領令にもとづいて、新政府は首相1人と副首相1人を設け、政府所属の部・委員会は30から17に簡素化し、政府機能もそれに応じて調整されることになっている。国の歳出の減少、プーチン大統領が経済の倍増という目標を達成するためにとった重要な措置である。ロシアが8%の経済成長率を続けようとするならば、国の歳出をGDPの20〜22%に相当するレベルに保つ必要があるとロシアの経済専門家は見ている。

3、腐敗の取り締まりを続け、投資環境を改善する。ロシアの腐敗現象は公務員陣を腐食するとともに、投資環境の改善をも妨げる深刻な問題となっており、プーチン大統領の新政実施の障害となっている。ロシア公務員の収賄金額は年間300億ドルにも達していることがデータで明らかにされた。プーチン氏は大統領選の間に、一連の行動をとって収賄行為を取り締まることを明らかにした。

4、国のマクロコントロールを強化し、寡頭経済を抑止し、石油・天然ガスなどのエネルギー資源に対する国の管理を強化する。石油・天然ガスの輸出による収入はロシアの重要な収入源であり、プーチン大統領が経済の急成長計画を達成する重要な支柱でもある。昨年、ユコス社の石油王ミハイル・ホドルコフスキーが拘留されたことを端緒に、プーチン大統領のエネルギー産業を整頓、規制する序幕が切って落とされた。

5、貧困を一掃し、住宅、教育、医療衛生などの国民の社会保障事業への取り組みを加速する。現在、ロシア人口の4分の1が貧困状態にあり、国民の住宅や教育、衛生の条件もかなり立ち後れている。大統領再任の期間、プーチン大統領はとくに社会保障について目標を設定している。それはすべての公民がその収入レベルに相応する教育と医療のサービスを享受できるようにすることである。再任が決まってから、プーチン大統領は、新政府が新任期において公民の福祉の向上、貧困問題の解決を優先的な課題とすると再三公約した。

6、国防の現代化を加速し、強大な国防で国の経済建設に必要な環境の安全を確保する。武装力の装備の近代化と組織構造の充実化をはかり、2007年に海軍、陸軍、空軍の職業化改革をなしとげる計画である。プーチン大統領は国防の現代化を非常に重視しており、「ロシアは先進的な兵器装備を持つ機動的戦力のある強国とならなければならない。これはわれわれの戦略目標である」と述べている。国防・安全・警察などの部門の最も重要な課題はロシア社会の安定を確保するということである。

新任期における改革目標の実現には困難がたくさんある。それにもかかわらず、改革実現の基礎と可能性もある。政治の面では、これまでの4年間に、プーチン大統領はすでに一連の強力な改革を通じて今後の改革のための前提条件を作り出した。改革にとって有利な条件として次のものが挙げられる。@改革加速に必要な内部環境が改善された――チェチェン問題の解決に光を見えるようになった。A大統領の権限が極めて大きく拡充された――7大連邦区の設立や連邦委員会の改組、下院選挙などの措置をとったことで、中央と地方の関係、議会と政府の関係を合理的なものにした。B寡頭勢力への打撃と政府改組を通じて、情勢をコントロールする能力が増強された――昨年末にプーチン大統領を全力支持する「統一ロシア」党は下院選挙で圧勝を収め、最大の与党となっており、反対派の勢力は大いに弱まり、プーチン政権の基礎と地位が打ち固められた。プーチン大統領は選挙を前にして突然カシヤノフ政府を解散したとはいえ、ロシア社会になんの騒ぎも起こらなかったことは、プーチン政権の安定性を裏付けるものでもある。

強国外交と実務外交はプーチン大統領の新任期における対外政策の核となる。プーチン氏はロシア大統領になった際、強国戦略を打ち出し、しかも「経済利益と国益」を主旨とする対外政策を明確にした。4年来、国益を至上とする前提の下で、プーチン大統領は実務に励み、融通を利かせ、硬軟相い補う外交策略で、ロシア外交の新たな局面を切り開き、経済の改革と建設のためにかなり望ましい外部環境をつくり出した。例えば、アメリカとの関係で「互いに敵と見なさず」というブレークスルーが見られ、北大西洋条約機構(NATO)と「NATO20体制」を発足させ、欧州連合(EU)との関係を密接にし、G8のメンバーとなったなどがそれである。

また、プーチン大統領は新任期において強国外交と実務外交の展開に力を入れ、西側と東側の両方に配慮した全方位外交戦略を実施し、諸大国との関係を引き続き発展させ、ロ米関係を推し進め、世界各国とともに世界の平和を守り、共同で国際テロや大量破壊兵器、国際地域紛争などの脅威に対処することになろう。

このほか、独立国家共同体(CIS)との関係を大いに推し進めることは依然としてロシア外交の優先的な志向である。プーチン大統領は昨年の年次教書の中で、CISが「重要な戦略利益の範囲」であることを強調した。ロシアはCIS諸国との関係を引き続き改善することになろう。この数年間に、プーチン大統領はずっとCIS内部の軍事協力と経済一体化の推進に取り組んでおり、自らCISの集団安全保障条約共同協議機構の設立およびロシア・ベラルーシ・ウクライナ・カザフスタンの4カ国共同経済圏協定の調印を推し進めた。

ヨーロッパの大国、とりわけEUとの良好な関係を結び、「ヨーロッパと幅広く接近し、ヨーロッパに確実に溶け込む」ことはロシアが求める長期的な戦略目標である。経済を振興し、ヨーロッパに溶け込むため、プーチン大統領はドイツやフランス、イギリスとの関係をさらに密接にし、強国戦略を実現する道でEUとの関係を全面的に強化することになろう。EUの東欧への拡大につれて、ロシアとEUとの関係にはかつてない緊密な状態が見られるようになり、EUに対する経済的依存もますます多くなっている。

さらには、ロシアと中国、インドなどのアジア諸国との関係もロシア外交の重点の一つである。強国戦略の実現と多極化の世界秩序の推進のために、ロシアは中国、インドとの経済関係をいっそう強化し、他国間との戦略協力をも強化することになろう。

とはいうものの、プーチン大統領が再任してからのロシア外交はイバラの道にさしかかっている。そのうち、ロ米関係には解決が待たれる問題がまだたくさんある。今日のロシアとアメリカは敵ではないが、盟友でもない。アメリカはロシアの強国戦略と核大国の地位に対し、ロシアの再興を防ぐためにCISの分化を狙うというロシアを弱める政策をとっている。ロ米関係で起こった摩擦が多くなったため、アメリカはプーチン大統領のいわゆる民主を疑問視し始めている。アメリカは中央アジアに駐在させている軍隊を通じてグルジア共和国の国政とNATOの新ラウンドの東ヨーロッパへの拡大に介入し、ロシアに対し戦略的な締め出しを行おうとしている。全世界はこれらの挑戦の中にあるプーチン大統領が複雑な国際環境の中でいかに強国外交と実務外交を堅持し、外交の手腕を振るって、ロシアを導いて大国としての国威をいまいちど奮い起こさせるかを見守っている。