2004 No.14
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政治情勢の試練さらされている中米軍事関係

中国軍事科学院世界軍事部  封長虹(博士)

さる2月、これまで各回の台湾海峡危機の際に四回も台湾海峡を出入りしたことのあるアメリカ第七艦隊のブルーリッジ号が中国を訪問した。この台湾の総選挙を前にしたいわゆる敏感な時期にとられた行動は人々に言わずとも知れた示唆を与え、中米関係の価値がどこにあるかを表わすものであった。

ブルーリッジ号の中国訪問は、アメリカがいまのところ台湾海峡の現状をぶちこわそうとするいかなる一方的な行動をも支持せず、台湾問題がゆえに中国政府との関係の発展にひびくことを望んでいないことを示している。また、中米関係は望ましい発展の方向にあり、しかも米台関係より高いものであり、アメリカは台湾独立勢力がこの時期に騒ぎを起こすことを支持しないことをも裏づけている。これはブルーリッジ号が1996年に台湾海峡出入りしたことと鮮やかなコントラスをなすものであり、前者の意義とはまったく異なったものである。ここから見てもわかるように、中米両国が必要な軍事交流を展開できるかどうかは、両国関係の基本的な状態を評価、判断するバロメーターであろう。

中米両国の軍隊間の関係は中米関係の重要な構成部分である。中米両国は国交樹立以来、軍事分野で多くの交流と協力を推し進め、中米関係の発展に対し積極的な役割を果たしてきた。中米両国の軍事交流は両国関係の発展の推移を示すものであり、中米両国の共通の利益と要求を具現するとともに、両国間の構造的対立をも反映するものである。

中米両国の軍事交流は国交樹立以来、何回かの起伏を経験してきた。これらは軍事交流そのものによってもたらされたのではなく、中米関係の実情の影響によるものである。中米関係の発展状況は中米軍事関係の発展状況を決定づけるものであり、その良し悪しは両国の軍事交流の状況からはっきりと見て取ることができる。2001年の「米同時多発テロ」以来、中米両国の軍事関係と軍事交流は相互理解と相互の必要という時期に入り、中国政府はアメリカの反テロ戦略に理解を示し、それを支持すると同時に、アメリカが台湾問題で台湾独立勢力に圧力をかけることをも必要としている。こうした相互理解と相互の必要が中米軍用機衝突事件によって中断されていた中米間の軍事交流の回復の契機となり、双方は軍人の交換留学と相互訪問の制度のほか、非常事態の下での直接衝突回避の制度をも確立した。両国の軍事交流によって中米関係には新たな局面が現われることになった。

中米両国の軍事交流は双方がそれぞれの国益を慎重に考慮したうえに行ったものである。中国側から見れば、まず、アメリカとの関係を全面的に発展させることは、中国の国益と現代化のプロセスに極めて大きな影響を与えることになり、アメリカとの無意味な対抗は中国の発展のテンポに悪影響を及ぼし、中国の国益にも合致しないことは明らかである。そのため、アメリカとの正常な関係を維持し、必要でない二国間の摩擦を解消するには、両国の軍事交流を強化する必要がある。次に、両国の軍事交流はアジア太平洋安全戦略や対中国大陸政策、対台湾政策を含めたアメリカの国家安全戦略に影響を及ぼすことにもなる。中国は両国軍隊の関係発展を通じて中米関係に対する大きな推進力を形成し、アメリカが台湾海峡問題を適切に処理し、対中軍事輸出制限の徹底的な解除を促すことを望んでいる。

アメリカ側から見れば、まず、その対中軍事交流は主に対中戦略の必要という考慮から出たものである。アメリカは中国側が米国国家安全戦略の実施の過程でより多くの協力を与えてくれることによって、反テロ戦略目標をスムーズに達成できることを望んでいる。次に、アメリカは中米関係の基本的性格によって中米関係が「封じ込め」と「反封じ込め」の論理から抜け出しにくいため、軍事交流の手段を通じてアメリカの対中政策と対中関係の中で「時計の振り子の効果」を果たすことが要求されていることを十分に承知している。アメリカのこれらの考え方と手段は戦略的ではなく戦術的であり、その所期の目的が達成されるならばアメリカの対中軍事交流に対する姿勢には大きな変化が起こるだろう。

中米両国の関係と双方の軍事交流の歴史から、両国の軍事交流に影響を及ぼすいくつかの明らかな特徴がうかがい知ることができる。

まず、中米間の軍事交流は中米全体の政治関係と具体的な戦略環境に大きく左右されている。次に、中米両国関係の中では、両国の軍事関係は敏感でぜい弱であるため、容易にぶちこわされやすい一面となっている。さらには、両国の軍事交流の歴史から見れば、その発展の法則は間欠的なものであり、明らかな段階的な特徴を持っている。最後に、両国の軍事関係はひとたびぶちこわされるとその回復はきわめて困難なものである。たとえ両国の政治関係が正常に回復されたとしても、両国の軍事関係にはタイムラグがある。これらの特徴に基づいた分析によれば、中米両国の軍事関係の発展が中米関係の主流になることはありえないため、双方の軍事交流の将来性を高く評価すべきではないと考えられる。

当面から見れば、中米軍事関係の発展を制約する要素は主に二つの面にかかっている。一、アメリカはどのように中国との関係を評価しているか、中米両国は敵か味方か、アメリカはいかにして急成長をとげている中国と付き合っていくかということである。最近の一部の評価レポートから、アメリカは依然として中国に懸念や敵対的な姿勢をとっており、対中牽制策は依然としてアメリカの対中戦略の基礎であり、しかも短期内には変わらないことを読み取ることができる。いまひとつは中米両国の反テロ問題での協力と米国の対台湾問題の立場と姿勢にかかっていることである。近々から見れば、この二つの方面の現状は両国間の軍事交流のためにはなるが、アメリカのユニラテラリズム政策とプラグマチズムの思想はいつでもこのような現状を変える可能性がある。なかでも、米台関係は中米軍事関係の発展にとって最大の試練になるだろう。

中米両国の軍隊交流のイニシアチブはアメリカ側が握っていると言えよう。中米両国の関係は戦略的安定期にあろうとも、悪化期にあろうとも、軍事交流再開提案のほとんどはアメリカ側が行ったものである。この角度から見れば、中米軍隊交流の性格は今後の一時期内において「接触的で、予防的な安全協力」であり、「同盟」的な協力ではないと言える。その主な内容としては軍事共同行動を強化するのではなく、軍事透明度を強化するといった措置である。その目的は主に不必要な危機や衝突を避けるためである。長年このかた、アメリカは8つのグレードで外国軍隊との関係発展を推し進めている。つまり、高級将官の相互訪問、参謀と情報の交換、軍隊間のセミナーとシンポジウムの開催、外国人の将校・士官のアメリカへの訓練派遣およびオブザーバーの相互派遣、プロジェクトと医療面の共同演習、小規模軍事訓練、実戦を想定した合同軍事演習、多国籍軍隊の共同軍事演習などである。

現在、中米間の軍事交流は初級段階にあり、より高い段階への発展にはかなりの難度がある。中米間の軍事交流は今後主に、外交のフェーズの交流としての軍隊の上層部の相互訪問、学術交流としての軍事学院と大学の相互訪問、儀礼的交流としての双方の艦船の相互訪問という三つの面に限られる。そのうちの艦船の相互訪問が強化されることになろう。アメリカの軍隊側は、軍艦の訪問は毎年に行われているルートの一部分であり、防衛分野の会談の一部分でもあると見ている。現在、アメリカ側は2004年度中米軍隊交流計画の作成を行っており、中国軍隊との関係をいちだんと強化することになっている。アメリカの軍隊の側は中国と建設的な協力関係を発展させ、両国軍隊の往来を再開するという自国政府の方策を支持し、中国側との防衛分野の協議を続け、両国軍隊の往来が双方に相互理解の機会をもたらすことを望んでいる。

中国は中米両国軍隊の関係発展に積極的な態度をとっており、「相互尊重、互恵、相互理解増進、両国関係に服従し奉仕する」という対外軍事交流の原則に従ってアメリカの軍隊との交流を行うことになっている。中国側はアメリカ側とともに両国軍隊の関係発展の中のさまざまな妨害と障害を取り除き、両国軍隊の関係改善と発展を推進し、両国の建設的な協力関係のさらなる深化のために努めることを望んでいる。

しかし、念願と現実はいつも矛盾に満ちている。具体的に言えば、アメリカでは大統領選挙を控えており、選挙の結果が今後の現実に及ぼす影響は極めて大きいに違いない。共和党が引き続き政権を握るならば、中米両国の軍隊交流は台湾海峡の情勢によって決まることになろうが、民主党が政権をとれば、中米両国の関係は新たな調整に直面し、両国の軍事交流も新たな試練に直面することになろう。

要するに、客観的で理性的に中米両国の軍事関係と軍事交流を認識する必要があり、ある時期、ある事柄を目にして気の向くままに楽観的な判断をしてはならない。最近、アメリカの対中戦略の必要の増大によって中米両国の軍事交流にはよい勢いが現われてはいるが、この勢いには充実させる内容がまだ不足している。中米軍事関係が本当に紆余曲折を繰り返す状態から抜け出すまでにはまだかなり時間がかかりそうである。