2004 No.15
(0405 -0409)

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 重要文章

 

新世代の民間人使者

―――留学や仕事で中国に来る日本の若者たちは、中国や中日関係について自分なりに理解し、また判断している。

丁 盈

西村穂香さんにとって、今年の3月26日は格別の日となった。この日は彼女の23回目の誕生日。北京で知り合えた中国の友人たちと一緒に誕生日を祝ったという。

中日両国政府間の往来は今、時には晴れ、時に曇りがちになりがちだが、中国の政治や経済、社会が急速に発展してきたことで、日本では中国に目を向ける若者が増え続けている。日本で中国語を学んだのち、留学あるいは仕事で中国に。穂香さんもその1人だ。

甘いマスクの彼女。今、北京外国語大学で中国語を学んでいる。昨年3月末に中国を訪れたが、SARS(新型肺炎・重症急性呼吸器症候群)のまん延ですぐに帰国。その年の9月、留学のため再び北京にやって来た。

「自分のこの目で見たり、自分自身が体験したりしていなかったなら、一生、中国がこんなに広くて、こんなに面白いところだなんて、本当に分からなかったでしょう」。中国の印象を語り始ると、彼女は称賛しきり。

中国に関する知識といえば、教科書程度のものしかなかった。来る前は、中国がどんな国なのか、まったく雲をつかむような感じだったという。東京や大阪といった大都市なら、中国の書籍やテレビドラマ、VCD、アニメーションは簡単に手に入り、中国映画を上映するシアターもあるが、地方都市ではままならない。

「そうですね、中国をもっと理解できるようになれば、この古い歴史のある国の文化や、人々の生活をもっと好きになれるはずです。中国の友人にしたって、同じだと思うわ」

彼女は「日本と中国が交流するルートがもっと広がって、もっと透明になったなら、すごく素晴らしいのに」とため息をついた。「そうなれば、日本と中国の人たちは相手のことが直接分かるようになるし、そうした時代が来たなら、相手の国に行って苦労しながら勉強する必要もなくなるわ」

原誠士さんは今年33歳。中国に対する理解や思いは、穂香さんとは異なるようだ。1999年に北京大学に入学し、2002年の冬まで在籍。今は北京外国語大学で日本語を教える専門家。

原さんは「父も中国にすごく興味を持っています。でも父は、本にちょっと書かれている部分を見て、中国をイメージしているだけなのです。そこが僕と違いますね。僕はここで3年近く生活してきました。でも父の影響もあって、大学では先秦時代の哲学を専門科目に選んで、荀子の哲学思想の研究に没頭しました」と話す。

さらに彼は言う。「哲学は、すごく面白いですよ。哲学的発想に立てば、1つの国家、または社会的行為はいずれも、その国の伝統的な哲学的概念の影響を受け、同時にそれらは政治や経済、文化、社会生活といった様々な面に反映されるものです。中国について言えば、中国の哲学思想、とくに儒家思想は、平和や均衡、実用と言う点により重きが置かれた思想と言えるでしょう。中国人自身に、その思想がよく具現化されています」

中日両国の間では、民間人の往来はより強化されて活発になるだろう、と原さん。その理由をこう説明した。「政治というのは難しくまた複雑なものです。政府間では往々にして国の利益を考慮することが多々あるため、交流は制限されてしまう。でも、あなたの友人があなたに、その友人が別の国に対してその国の印象がすごく良かったと言ったなら、あなたはその目でその国を見たいと思うでしょう、そんなものですよ」

彼は上海や南京、蘇州、広州、済南など多くの都市にも足を伸ばしている。「いろんな都市に行って、中国が普通ではないスピードで成長しているのを、この目で確認しました。それはもちろん、いいことです。でも、中国は、経済の急激な発展がもたらす悪い結果にも注意を払う必要がありますね。日本がそのいい例です。急激に発展したことで環境や資源が破壊されただけでなく、社会道徳の育成がそれに追いつかなかったために、人々の考え方や道徳に悪い影響がもたされてしまった。中国は決して同じ轍を踏んではならない」

両国間に存在する歴史問題に及ぶと、多くは語りたがらないようだった。歴史問題が「解決の最も難しい」問題であるのは確かだ。それでも彼は、政治や文化、社会面での意識や原則の違いから少なからぬ誤解が生じていると、語った。「いずれにしても」と、言葉を続けた。「日中間には2千年余りにおよぶ友好往来の素晴らしい伝統があります。新しい世紀に入って、僕たち2人の隣人が共に手を携え、共に肩を並べて前進することこそが、一番重要だ」と強調。

穂香さんに原さん。2人は10歳の年齢差はあるものの、共通する部分もある。中国の食べ物が好き、中国の文化や芸術が好き、北京の胡同(路地・横丁)を散策するのが好き、中国映画を観るのが好き・・・・・・。

穂香さんはじき日本に帰国するが、すでに次の訪中計画が念頭に。「必要なお金が貯まったら、今年の9月にまた来るかも知れません。そのときは、日本語を教えたいですね」

縁や運命といったものを信じる原さん。「中国に来たのは縁があったからです。中国に長く住みたいと思っているし、でなければ、その縁でまた中国に来られたらいいですね」