2004 No.15
(0405 -0409)

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歴史認識の問題と中日関係

中日両国は両国の文化の違いを知る必要があり、相互理解を深め、誤解を減らすとともに、歴史の悲劇の再現を防ぎ、人類の将来に対し責任を負う次元から歴史問題を考え、近代社会にあまねく受け入れられている人権、民主、反戦などの価値観に基づいて歴史問題を適切に処理すべきである。こうしてこそはじめて、中日関係は健全な発展をとげることになるのである。

崔世広

(中国社会科学院日本研究所)

中日国交正常化以後の30余年間に、中日関係は政治、経済、人的交流などの面で飛躍的な発展をとげ、日中関係の主流は望ましいものである。それにもかかわらず、両国関係にはいくつかの問題と調和しない要素も存在しており、特にここ数年間に、両国関係の発展はしばしば歴史問題によって妨げられている。例えば、2002年には、日本政府は国内外の反対の声を無視して、歴史を歪曲し、日本の侵略戦争を美化する新しい歴史教科書の検定を通過させた。また、小泉首相は4年間続けて靖国神社を参拝した。これらは中国人民の感情を大きく傷つけ、中日関係の政治的基盤を損ない、中日関係の発展に暗い影を落とすものとなっている。

中国の内外で行われた世論調査によると、中国国民の対日感情はここ数年急激に悪化している。中日国交正常化30周年を迎えた2002年には、日本が嫌いという中国人は50%を上回っており、その主因となるものは歴史認識問題や教科書問題と小泉首相の靖国神社参拝問題などである。日本の『東京新聞』の調査によれば、中国人が日本に対し好感が持てない最大の原因(79%を占める)は「日本が対中侵略の歴史を反省していない」ということにある。『東京新聞』とほとんど同じごろに中国社会科学院日本研究所も中日世論調査を行い、「日本は今も近代に中国を侵略した歴史をよく反省していない」を対日好感が持てない最大の理由としている人は63.8%を占めることがわかった。侵略の歴史に対する日本の姿勢は中日関係発展の最大の障害となっている。

ちなみに、一部の日本人にも対中感情の悪化が見られる。これらの人は、日本は何度も中国に対し謝罪したにもかかわらず、中国は依然として執着している。そのため、多くの日本人が反感を抱き、ひいては嫌悪感さえ生じていると見ている。ある人はまた小泉首相の靖国参拝のために弁解し、それは日本の伝統と信仰に基づくものであり、戦争に対する反省の立場は変わっていないと見ており、中国と韓国は理解してくれるべきであると言っている。要するに、中国が意識的に歴史問題を蒸し返すねらいは、対日外交の面で心理的優位にたち、日本の経済援助を引き出すためであるというのである。

いったい歴史認識の問題の責任はどちら側にあるのか。結論は明らかである。中日国交正常化以降の10年間に、歴史認識の問題は両国関係にとって特別に重要な問題となったわけでなく、ただ1982年に「歴史教科書問題」が起きた上に、日本の首相の靖国参拝とか、閣僚の「失言」とかの問題も相次いで出てきたため、歴史問題はますます厳しいものとなっているのである。歴史認識の問題がここ数年中日関係におけるホットな問題となったわけは、歴史を歪曲し、侵略を美化する日本の新しい歴史教科書の検定が通過し、小泉首相が何回も靖国神社を参拝したからである。歴史認識をめぐっての中日両国の論争は、中国の方から意識的に仕掛けたことは一度もない。中国は先に歴史問題で日本を非難したことがなく、そのようにするつもりは少しもない。歴史問題で時々手練手管を弄しているのはほかでもなく、日本なのである。したがって、日本人の対中感情の悪化は中国側が絶えず歴史問題を持ち出してくるからだとの言い方は成り立ちえない。

そのほか、中日両国は歴史観と死生観に大きな違いがあることも確かである。この違いは靖国神社などの歴史問題における両国の認識の不一致をもたらす要因の一つにすぎない。中国の歴史観は、歴史を尊重し、それを鑑とし、歴史の考察を通して知恵と教訓を汲み取ろうとするものであるが、日本人は現実をより重視し、過去の一切を帳消しにすると主張しているようである。死生観については、中国人は死んだ人に対してもその善悪を分け、人間の真価を死後において定め、良い人の名は後世にまで残すようにし、悪人の悪名も末永く伝えていくという考え方をしているが、日本人は死んだ人は例外なく神仏に変身することができ、神仏である以上善悪の違いはないため、悪人の誤りに対してもとがめだてしてはならないという姿勢をとっているようである。

しかし、靖国神社参拝の問題は絶対にただの文化伝統の問題ではない。靖国神社には東条英機などのA級戦犯が合祀されているため、それは特別な宗教施設である。日本はサンフランシスコ講和条約において極東国際軍事法廷の判決の結果を認めることをかつては明らかにしたため、小泉首相の靖国神社参拝が国際信義に背いていることは明らかである。そして、戦後の日本文化が大きな変化を生み出したわけでなく、過去の戦争に対する日本国民の認識も侵略戦争としての性格を認める方向に変わっている。現在、日本国民の多くは日本の対中戦争の侵略としての性格を認め、当時の軍国主義に対し反省を行い、戦争の再発を防ぐことを主張している。靖国神社参拝については、1985年に中曽根元首相が靖国神社を参拝したことが批判を浴びてそれ以後やめることになった。橋本元首相も1996年の靖国参拝が批判を浴びて参拝をやめざるを得なかった。したがって、日本の文化的伝統で小泉首相の靖国参拝を続けることを解釈するには無理がある。

実際には、歴史問題の背景はここ数年の日本の社会状況と社会思潮に大きな変化が起こったことを反映するものである。長期的な経済の不況と政治の混乱によって、現状に失望し、将来に不安を抱く人が増えている。こういうことで、「輝かしい」歴史から民族の自信や精神的慰めと支持を求める人たちは、狭隘なナショナリズムの立場から出発し、日本の侵略の歴史を否定し、美化し、現行の歴史教育と歴史教科書を激しく非難する逆流を巻き起こした。歴史教科書の問題および小泉首相の4年続けての靖国神社参拝などはいずれもこのナショナリズムの思潮の大きな影響を反映するものだと言える。

中国政府と人民の歴史に対する基本的な姿勢は「歴史を鑑とし、未来に目を向ける」というものである。これは歴史に一途にこだわり、旧い恨みを晴らそうとすることを意味することでなく、基本的な歴史の事実を尊重し、その中から有益な教訓を汲み取るとともに、前向きの姿勢で両国関係を発展させようとするものである。経済大国と政治大国としての日本の歴史に対する姿勢は、日本の国際的イメージと大国としての役割を果たすことに直接かかわるものである。歴史認識の問題で、中日両国は両国の文化の違いを知る必要があり、相互理解を深め、誤解を減らすとともに、過去の悲劇の再現を防ぎ、人類の将来に対し責任を負うという次元から歴史問題を考え、近代社会においてあまねく受け入れられている人権、民主、反戦などの価値観に基づいて歴史問題を適切に処理すべきである。そうしてこそはじめて、中日関係は健全な発展をとげることになるのである。