2004 No.17
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現在の所得配分問題を分析する

中国社会科学院経済研究所研究員  王 誠

中国の現在の所得配分タイプは “とんがり帽子型”に属しており、それは絶えず拡大し、経済発展と安定に影響を及ぼす巨大な潜在的危険を孕んでいる。とんがり帽子型所得配分の拡大の勢いを抑制すると共に、“オリーブ型”所得配分モデルへと徐々に転換していくには、多方面にわたる政策的調整が必要だ。

マクロ的に言えば、1つの国の個人所得配分はその状況から3種類のタイプに見られる。第1に“円盤型”、第2にとんがり帽子型、第3はオリーブ型である。

円盤型所得配分の特徴は、最高所得層と最低所得層との間の格差が小さいことだ。このような配分タイプでは、人と人との間で平等の度合が高く、所得レベルではたいして比較する余地のないのがプラス点であり、各人の経済的貢献を表すことが出来ないのがマイナス点となっている。

とんがり帽子型所得配分の特徴は、社会のごく少数の所得レベルは平均レベルをはるかに上回り、別の少数は平均レベル前後にあるが、大多数は平均レベルを下回っており、かろうじて貧困ラインや衣食足りたレベルの間に置かれていることだ。とんがり帽子型所得配分では、短期間に平均主義的配分という状況を打破し、成果や競争を奨励することで、一部の者を先に豊かにすることが出来るのが長所となっている。貧富の分化、または所得配分の2極分化を形成し、大多数が経済成長に伴って生活が改善されないという陥穽にはまり、社会は不安定となり、経済は持続的な発展が出来なくなり、マクロ経済の分析で使用する1人平均所得指標はこの配分タイプでは大多数の所得の状況を反映していない、というのが欠点となっている。

オリーブ型所得配分の特徴は、最富裕層と最貧困層の人口は少なく、社会の大多数の所得が中等レベルにあることだ。

では中国の現在の所得配分はその状況から見て、どのタイプなのか。

中国の1人平均所得は中等所得国の800ドルの最低ライン、社会全体は総体的にほぼいくらかゆとりのあるレベルにまで達してはいるものの、所得の配分ではいまだとんがり帽子型所得配分の段階にある。

一連のデータがこうした点を立証している。先ず、中国人民銀行が公表したデータによると、預金においては、その預金量の80%を最富裕層が占めている。別の調査によれば、100万元を超す財産保有者と年間所得10万元超の人口は全体の1%を占める。約35%、つまり4億5000万人の1人平均可処分所得は7703元である。農村部の低所得層や都市部の少数の貧困層など総人口の64%、つまり約8億3000万人の農民の1人平均現金収入は僅か2476元であり、都市部の貧困層は約2400元に過ぎない。温家宝総理が昨年の全国人民代表大会(全人代)開催期間中に行った記者会見で明らかにしたデータによると、1人平均収入625元を貧困ラインの基準に設定した場合、農村部の貧困人口は3000万人余りに達するが、825元を基準とすれば、9000万人まで増加する。これを考えれば、所得配分において“とんがり帽子の縁にいる階層”が約64%の低所得層であることは疑いの余地がない。

そればかりか、中国の発展に眼を向ければ、所得配分は以前にもまして重大な問題となっている。とんがり帽子型が依然進んでいることだ。統計によると、100万人といわれる最富裕層の財産が年間約15%のスピードで増大しているのに対し、中間層では10%前後、低所得層では僅か4〜5%に過ぎない。

現在の所得配分モデルは、とんがり帽子型からオリーブ型への転換が迫られている。こうしてこそ、中国経済の持続的かつ急速、安定した成長は確保される。だが、所得配分モデルの転換を実現するには、少なくとも以下の点を円滑に進めていく肝要だ。

(1)マクロ経済調整目標システムを見直して、システムに「所得配分の調和」という目標を加えること。目標値については早い時期に、とんがり帽子型所得配分の上層と中間層の格差を10倍の範囲内(現在は12.5倍)、中間層と下層の格差は2倍(現在は3倍)、下層と上層の格差は20倍以内(現在は33倍)に抑えるよう考慮する。全国の住民所得格差の調整目標では、ジニ係数を0.4の範囲内にするよう考慮する(国連の規定では、ジニ係数が0.2以下は絶対的平均、0.2〜0.3は比較的平均、0.3〜0.4は総体的に合理的、0.4〜0.5は格差が割合大きい、0.6以上は格差が大きいことを示している。国際慣例によれば通常、0.4が所得配分による貧富格差の“警戒ライン”である)。

(2)「上・下層に配慮し、中間層を促進する」所得配分政策を実行すること。高所得層については、法に基づく監督と税徴収を実施した後に法に基づく保護を大々的に奨励する必要がある。貧困ライン以下の層や低所得層に対しては、積極的な支援政策を通じてより多くの優遇が得られるようにし、特に起業する場合には知識や情報、技術、市場参入、信用融資、税金・費用などの面から支援し、早急に所得向上能力を高められるようにする。中間層については、世界市場の競争に積極的に進出しまた徐々に熟知し、絶えず自らの専門技能や現代的市場経済社会に関する知識を更新して競争力を高め、経済発展や所得の増大、社会の安定の中で常に中堅的存在であるようにしていく必要がある。 

(3)起業による就業の促進を目指した新たなタイプの教育、社会メカニズムを確立すること。

(4)医療や養老、失業、障害者などの社会保障を含む適切な社会保障システムを構築すること。

(5)経済・社会の都市化のテンポを加速して、基本的な都市化を早急に実現すること。現在の都市化率は約32%と、政府の当初目標である80%とは大きな開きがある。速やかに農業世帯と非農業世帯間の差別を撤廃すると共に、農村労働力の流動の推進、農業の産業化の実現、土地の株式化、都市の建設や住民移転による定着といった一連の措置を講じて都市化を大々的に進展させ、そう遠くない時期に基本的な都市化を実現して現在の所得配分状況を改善していく必要がある。