2004 No.18
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>> 経済

 

中国、自己資本比率に応じて
差別預金準備率を実施

譚 偉

中国人民銀行はさる3月24日、国務院の認可を経て4月25日から、差別預金準備率(中央銀行の貸出変動金利)制度を実施することを決定した。つまり、自己資本比率が一定水準より低い金融機関の預金準備率を0.5ポイント引き上げて7.5%を適用するが、その他の金融機関には依然として現行の7%の預金準備率を適用されるという新制度である。各種類の金融機関の改革の進め方が違うことを考慮して、株式制改革がまだ行われていない国有独資(政府全額出資)の商業銀行と都市信用協同組合、農村信用協同組合に対しては差別預金準備率制度の適用が一時猶予されることになっている。

新制度では、金融機関に適用する預金準備率を自己資本比率や資本の質などの指標とリンクさせる。自己資本比率が低く、不良債権率が高ければ、適用される預金準備率は高くなる。逆に自己資本比率が高く、不良債権率が低ければ、適用される預金準備率は低くなる。

中国人民銀行の責任者によれば、今回の調整は中国銀行業監督管理委員会の2003年金融監督管理集計データに基づいて行われたものであり、今後も監督管理規則の変化などの状況に基づいて、同行は毎年定期的に金融機関の経営状況の分類基準を調整することになる。差別預金準備率の実施は、自己資本率が不足し、不良債権が多い金融機関の貸出増加を規制することにはなるが、企業や一般の人びとの経済活動にひびくことはない。

200億元の資金が凍結される

預金準備金とは金融機関が顧客の預金払戻しおよび資金決済のために用意する資金であり、預金準備金率とは金融機関が規定に基づいて中央銀行に預ける預金総額に占める預金準備金の割合である。中央銀行は預金準備金率の調整を通じて、金融機関の貸出増加の能力に影響を及ぼし、通貨供給量を間接的にコントロールできるようになる。

今回の差別預金準備金率の実施は1984年に中国が預金準備金制度を実施して以来七回目の預金準備金率の調整である。

中央銀行の公表した関連データによると、今年2月末現在、金融機関全体の人民幣と外貨の各種預金残高は22兆6700万元となった。そのうちの株式制商業銀行、都市商業銀行及び農村商業銀行の預金残高は約2割しか占めておらず、しかもその中には自己資本比率が昨年末8%に達した金融機関もかなりある。

広東発展銀行資金部の関係責任者は、新制度が実施される4月24日から、金融機関では預金残高が増えることになり、200億元の資金が凍結されるが、300億元を上回ることはないと分析している。

すでに上場している株式制商業銀行の一つである招商銀行の預金準備金率は昨年末から8%を上回っていた。同行の蘭奇理事長秘書は次のように述べている。

全般的に見てみると、中国人民銀行が今回打ち出した措置は優れたものをサポートするという措置であり、招商銀行にとってプラスとなるものである。現在までのところ、招商銀行は調整についての知らせをまだ受け取っていない。たとえ調整がなされたとしても、0.5%の変動しかなく、招商銀行の預金規模からすると約15億元程度に過ぎない。最近、招商銀行の株主総会は65億元の転換社債と35億元の劣後債の発行を決めたことを発表し、これは招商銀行の自己資本比率の確保にとって非常に重要な役割を果たすものである。そのほか、招商銀行には追加貸付がなく、再割引業務も少ない。

それと同時に、経営状況が思わしくないとされた後、より多くの準備金を預け、資金が逼迫したため金融引締めを行わざるを得なくなった銀行も一部にはある。浦東発展銀行理事長秘書の沈思氏の見方では、今回の差別預金準備金制度の実施は地方の商業銀行にとって、自己資本比率と資産の質が株式制商業銀行と比べれば比較的悪いため、その影響も比較的大きい。

中国人民銀行は、今回の差別預金準備率制度の実施は過大な貸出増加を規制するためであり、自己資本比率が8%以下の金融機関はこの制度の実施により数百億元の資金が凍結されることを明らかにしたが、専門家の見方では、資金供給の主力である四大国有商業銀行では新制度の適用が一時猶予され、しかも自己資本比率がわりと高い金融機関も調整の対象に入れられないため、短期間に金融引き締めをもたらすことはないだろう、ということである。

貸付を規制する警戒シグナル

今回の新制度が打ち出される前に、貸付の急速な増加、インフレのプレッシャーの増大などから、市場予測では預金準備金は少なくとも8%まで引き上げられるものと見込まれている。

統計データによると、昨年8月までの消費者物価は前年同期比では上昇傾向にあったが、9月から急激な上昇となり、12月には3.2%に達した。中央銀行の統計データによれば、企業の商品価格は13カ月連続で上昇ぶりを示していた。そのため、中国人民銀行副行長(副頭取)の劉廷煥氏はインフレのプレッシャーがすでに現われていると指摘した。

全国銀行間同業者センターの最新の統計データによると、2月のインターバンク市場の利率が持続的に下落し、資金面でかなり緩和の傾向が続いている。

しかし、今回の差別預金準備金率の実施は7.5%に引き上げられるだけで、しかもわずかなレンジでのことであるため、新制度が金融を引き締める度合いは市場予測をはるかに下回ることとなる。中信証券有限公司の楊青麗研究員はこう見ている。現在すでに上場している銀行と株式制商業銀行の自己資本比率と資産の質はいずれも高いレベルにあるが、地方の商業銀行の状況はまちまちで、その資産総額が銀行資産総額の5.68%しか占めていないため、これはマイルドな政策だと言うべきである。その目的は投資を規制すると同時に、金融引き締めというシグナルを伝え、経済の過熱に対する中国人民銀行の懸念を表わすものである。

中央銀行からすると、この制度の創出の意義は、制度全体の枠組みと「優れたものをサポートし、劣るものを制限する」というインセンチブ・システムは、金融企業の改革のために明確な方向と操作可能な基準を確立し、これによって金融機関、特に比較的高水準の預金準備金率を実行している金融機関がこの制度の制約を受けながらも絶えることのない改善の原動力を維持することにある。

昨年以来、金融機関の貸付が増大し、一部の銀行の貸出増加の傾向が明らかになっている。貸出増加が速い一部の銀行では、自己資本比率と資産の質などの指標がいくらか下がっているところもある。そのため、国際慣行を参考にして、金融機関に差別預金準備率制度を実施させ、自己資本率が比較的低くい、しかも資産の質が比較的悪い金融機関の過大な貸出増加を規制し、金融のマクロコントロールに「画一的な処理」が現われることを防ぐことが、中央銀行がこの制度を創出した初志である。

中国人民大学金融・証券研究所の呉暁求所長はこう見ている。今回の差別預金準備率制度の実施は中央銀行が預金準備金率の分類取扱と分類管理のためのよりどころとなり、株式制商業銀行の資産の構造と質の改善を促進し、資産の規模を拡大するうえで役に立つものである。

今後より厳しい金融引締め政策が打ち出されるかどうかについては、中国社会科学院金融研究所の易憲容研究員は次のように述べている。

たとえ貸付の規模を引き締めたとしても、商業銀行の不良資産率は減らすことはありえず、逆にその利潤率は下がる可能性が出てくる。特に不動産など支柱産業への貸付が引き締められれば、ある地域のGDPの伸び、ひいては国全体のGDPの伸びに影響を及ぼすことになる。こうした結果は商業銀行や不動産業が望んでいないだけではなく、国の産業発展政策にも合致しないだろう。