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中国、密航取締りを強化
呉綜之
密航とは、国の出入国管理法規に違反し、出入国審査を逃れて不法出入国する行為を指すものである。密航は世界的な不法移民現象であり、国際的集団犯罪の特殊な形態でもあり、ゆゆしい集団犯罪として国連から17類の国際的集団犯罪の一つと見なされている。
昨年以来、中国人の密航事件と隣国からの密入国事件が多発し、国境地帯では銃器密売や麻薬密売などの不法犯罪が際立っているため、中国公安部は昨年10月から５カ月間にわたって国境地帯での不法犯罪取締と密航取締特別行動を行った。各地の公安機関は陸路や海上および空路などによる密入国の取締り強化に乗り出し、かなりの密出入国事件を摘発した。
公安部の３月下旬の発表によると、密航取締特別行動により、全国の公安機関は密航者5286人を逮捕したほか、10人以上の集団密航事件42件を摘発し、密航全般を取り仕切るブローカー39グループをたたきつぶし、密航斡旋者や運搬者444人を逮捕した。
公安部国境警備局の陳偉明局長は記者会見で次の四件の典型的な事件を明らかにした。
2003年10月15日、吉林省公安国境警備総隊は、米国ニューヨークの4教会と韓国浦項市の石屏教会が画策した隣国国民の韓国への密入国事件、および外国人不法入境者による中国国境地帯の住民を対象とした特大爆破殺人事件を摘発し、広東省の広州、吉林省の長春、延吉、図門などの都市で事件にかかわりのある容疑者99人を逮捕した。
2003年12月15日、黒竜江省公安国境警備本隊は吉林省公安国境警備本隊の協力の下で、韓国籍の「スネークヘッド（蛇頭）」が画策した中国人の韓国への密入国事件を摘発し、密航者19人、密航斡旋者5人を逮捕し、パスポート34冊を押収した。その後さらに密航者11人、密航斡旋者8人を逮捕した。
2004年１月、浙江省公安機関はクロアチア観光ツアーの3陣30数人の中国人を中国からロシア、クロアチア、スロベニア経由でイタリアなど西ヨーロッパーの国々へ密入国させる事件を摘発し、その密航斡旋者２人をそれぞれ刑事拘束するか逮捕した。
2004年２月、吉林省公安機関は海南省と広西チワン族自治区の公安機関の協力の下で、内外の不法分子が結託してサッカー試合参加の名義で吉林省の15人の農民を韓国へ密入国させようとした事件を摘発し、密航斡旋の犯罪容疑者4人を逮捕した。
各地公安機関はここ数年来、密航斡旋者と輸送者を全面的に取り調べたうえでインターネットによる指名手配や布告発表、懸賞付きでの検挙、説得教育などの措置をとって犯罪者追究の強化に力を入れている。
５カ月間に及ぶ特別行動の中で、福建省公安機関は逃亡中の「スネークヘッド」81人を逮捕し、遼寧省公安機関が公安部から指名手配された「スネークヘッド」8人を逮捕した。かつて相前後して215人を日本に密入国させ、8年間も逃亡中の中国籍の「スネークヘッド」や、労務輸出取扱を名目に観光ビザを詐取して140余人をアラブ首長国連邦に密入国させた中国籍の「スネークヘッド」２人とマレーシア籍の「スネークヘッド」１人、結託して92人を日本に密入国させたアメリカ国籍の「スネークヘッド」など逃亡中の密航斡旋ブローカーが次々と逮捕された。
ここ数年来、公安機関の努力により中国公民の密出国事件は全般的には減少している。昨年、全国の公安機関が摘発した密航者は3999人で前年より24％減り、逮捕した密航斡旋者と輸送者は774人で前年より38％減った。
中国には公民の経済発達諸国への密入国問題が存在しているとともに、外国の公民の密入国問題もますます際立ってきている。ここ数年来、隣国の一部の密入国者の中には中国で不法就労や不法滞在をしているものもいれば、ひいては略奪や殺人などの行為を働いて中国の国境地帯と内陸部の治安と秩序をかき乱し、国境地帯の住民の生命と財産の安全に危害を及ぼしているものもいる。
こうした状況に対応するため、公安部は各地の公安機関が外国人の密入国取締りを強化し、「不法入国、不法滞在、不法就労」を目的とする外国人を集中的に送還するよう要求している。
今回の密入国取締特別行動の中で、各地の公安機関は公安部の要求に基づいて、管轄区域のホテルや貸家、国境地帯にある生産現場、宗教活動施設、娯楽施設などを捜索したうえで「不法入国、不法滞在、不法就労」をしている外国人１万6282人を送還した。
陳偉明局長は次の事件を明らかにした。
2003年９月から2004年１月にかけて、江蘇省公安機関はベトナム人女性を密入国させて中国の十数の省で結婚詐欺を働かせた案件を摘発し、容疑者21人を逮捕し、密入国したベトナム人女性百余人を摘発、事件とかかわりのある60余万元を押収した。
陳偉明局長は次のように指摘している。
不法移民と密出入国は現在国際社会が直面している問題であり、世界的な公害と見なされている。中国政府はこれまでずっと関連国際条約と各国の関連法律を守るとともに、正常な人的往来を行うことを提唱し、いかなる形の不法移民と密出入国にも反対するとともに、関連国と協力して不法移民と密出入国の取締りの強化に力を入れている。中国の公安機関はずっと不法移民と密出入国の取締りを非常に重要視し、さまざまな措置をとってそれを強化している。各国の経済の発展がアンバランスであるため、国際犯罪グループと「密航斡旋ブローカー」が暴利を貪るために画策した不法移民と密出入国をわずかな期間に抜本的に解決するのは不可能であり、不法移民と密出入国の取締りは依然として任重くして道遠しと言えよう。
資料：
中国の密出入国処罰に関する法律
一、密航斡旋業者に対する処罰
「刑法」第318条には次のように規定されている。
密航斡旋業者は2年以上7年以下の懲役に処せられ、罰金を併科される。下記の行為の一つがあった場合は、7年以上の懲役または無期懲役に処し、罰金を併科するかまたは財産を没収する。
①密航斡旋業者のボス
②何度も密航斡旋を働き、または多数の人を密入国させたもの
③密航者の重傷、死亡を招いたもの
④密航者の人身の自由を奪うか制限したもの
⑤暴力や脅しの手段で捜査に反抗したもの
⑥不法所得金額が多額に達するもの
⑦その他犯罪経緯がゆゆしいもの
上記の罪を犯し、密航者に対して殺害、傷害、強姦、誘拐などの犯罪行為を犯し、または入国審査官に対して殺害、傷害などの犯罪行為を犯したものは、二件以上の罪を併科するという規定に基づいて処罰される。
二、密航者の運搬者に対する処罰
「刑法」第321条には次のように規定されている。
密航者の運搬者は5年以下の懲役、拘留あるいは拘束に処せられ、罰金を併科される。下記の行為の一つがあった場合は5年以上10年以下の懲役に処し、罰金を併科する。
①何度も密航者の運搬を行い、または多数の人を運搬したもの
②船舶や車などの輸送手段に必要な安全条件を整えなかったため、ゆゆしい結果が生じやすいもの
③不法所得金額が多額に達するもの
④その他犯罪経緯がゆゆしいもの。
運搬過程で密航者の重傷、死亡を招き、または暴力や脅しの手段で入国審査官に反抗したものは7年以上の懲役に処せられ、罰金を併科される。
上記の2つの罪を犯し、密航者に対して殺害、傷害、強姦、誘拐などの犯罪行為を犯し、または係官に対して殺害、傷害などの犯罪行為を犯したものは、二件以上の罪を併科するという規定に基づいて処罰される。
三、出入国書類を不法に提出したものに対する処罰
「密航斡旋と運搬犯罪を厳罰することに関する全国人民代表大会常務委員会の追加規定」の第3項の規定には、「他人に偽造、変造のパスポートやビザなどの出入国書類を提供し、またはパスポートやビザなどの出入国書類を転売したものは5年以下の懲役に処せられ、罰金を併科される。犯罪経緯がゆゆしいものは5年以上の懲役に処せられ、罰金を併科される」とされている。
四、密航者に対する処罰
「刑法」第322条には次のように規定されている。
国境管理法規に違反して国境を越え、犯罪経緯がゆゆしいものは、1年以下の懲役、拘留、または拘束に処せられ、罰金を併科される。
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