2004 No.19
(0503 -0507)

アドレス 
中国北京市
百万荘大街24号
北京週報日本語部
電 話 
(8610) 68326018 
(8610) 68886238

>> 重要文章

 

中国経済をいかに見るか

国家統計局が4月15日に今年第1・四半期の国民経済運営の主要指標を発表したことは、内外の注目を浴びている。中国にはインフレが起きているのかどうか、経済の過熱が発生しているのかどうかなどは、人々の議論の焦点となっている。中国の経済状況はいったいどうなっているのか。

経済状況は、全般的に望ましい

国家統計局の責任者はさいきん中国の第1・四半期の経済状況について記者のインタービューに応じて、次のように語った。今年第1・四半期の国民経済は高成長の勢いが保たれ、改革開放が引き続き進み、社会諸事業が全面的な発展をとげ、経済状況は全般的には望ましいものである。それは主として次の7つの面に現れている。

一、経済は引き続き急速に成長をとげ、経済に内在する活力がさらに顕在化することになった。国内総生産は9.7%伸び、さまざまな経済主体は活発であり、民間資本はいっそう活性化し、消費者と企業家の信頼感指数は着実に上昇している。

二、経済運営の効果は望ましく、住民の収入は急速に増えた。かなりの規模をもつ工業企業の利潤達成額は前年比44.2%増、歳入は同33.4%増、都市部住民の1人当たり可処分所得は同12.1%増、農村住民の1人当たり現金収入は13.2%増となった。

三、消費需要は安定増加を示し、商品供給は充分である。社会の消費財小売総額は前年比10.7%増え、住宅、自動車、通信製品など花形商品の売上げは引き続き急速に増え、重要な商品600種の供給が充分である。

四、貿易は大幅に増え、外資利用額は高いレベルを保っている。輸出入は38.2%増え、そのうち、輸出は34.1%増で、予期したものより望ましいものとなり、輸入は42.3%増えた。貿易赤字が84億ドルとなったが、充分な外貨支払い能力があるため、国内建設に必要な物資を多く輸入すれば、国内の需給関係を改善できるわけである。そして、中国の加工貿易の割合が高いため、貿易赤字が長期間続くことは不可能である。外国業者は依然として中国のことを楽観視しており、第1・四半期の契約ベース外国直接投資額と実質外資利用額はそれぞれ前年比49.2%と7.5%増えた。

五、消費者物価の上昇はわりに穏やかで規制可能な範囲にある。消費者物価のトータルなレベルは前年同期比2.8%上がり、1997年とほぼ同じレベルとなった。

六、農民の生産意欲が高まり、農業生産に明るい兆が見られるようになった。農業への投入が増え、食糧の作付け面積が増え、工芸作物の栽培面積が拡大し、牧畜業、水産業も安定成長を保ち、農業生産にはここ数年あまり見かけられなかった好況が現れている。

七、資本市場は活発化しつつあり、人民元切上げのプレッシャーはいくらか減った。今年は株価指数が目に見えて回復し、出来高も増えた。最近は米ドルも安定を保ちながらやや切上げの動きが見られるようになったため、中国の貿易に赤字が現れ、物価もいくらか上昇した。これで、人民元の切上げプレッシャーが軽減されることになった。

以上の7つの面から見れば、当面の中国経済全般、つまり中国経済の発展の主流と基本的な方面は確かに望ましいものだという理由が十分ある。

経済発展の成果を十分に肯定すると同時に、決して矛盾を回避してはならない、と国家統計局の責任者は指摘している。長期にわたって経済面に存在してきた「三農」(農業、農村、農民)問題や就職問題のほか、新たに現れた問題にも注意を払うべきである。そのうち、最も際立っているものには、固定資産投資の増加が速すぎ、投資規模が大きすぎ、個別の業種と地域の無計画な投資と低いレベルの建設の重複が深刻であり、貸付供与にもいくつかの問題があるなどが挙げられる。これによって、重要な原材料やエネルギー、交通輸送などの「ボトルネック」の制約もひどくなり、重要な生産手段の値上がりも深刻化するようになっている。

インフレのプレッシャーに直面

姚景源・国家統計局総経済師、スポークスマンによれば、インフレの判定は消費者物価指数 (CPI)によるものである。CPIがプラスの場合はインフレであり、プラス1桁の場合は穏やかなインフレであり、プラス2桁の場合はハイパー・インフレであり、マイナスの場合はデフレであるとされている。

中国のCPIのマイナス増は2001年11月から2002年末まで14カ月間も続いた。しかし2003年には、CPIはマイナスからプラスに転じた。昨年第4・四半期のCPIは第1、2、3・四半期の平均値の0.7%増から急速に上昇し、10月には1.8%伸び、11月にはさらに3.0%急増し、12月には3.2%も上昇した。「今年はインフレが起きるのではないかという懸念もこれによるものである」と姚景源氏は述べている。

国家統計局のデータによると、2004年第1・四半期のCPIは前年同期比2.8%伸び、伸び幅は前年同期より2.3ポイント高いものとなり、昨年の第4・四半期以来の上昇傾向が続いている。

JPモーガン・グレーター・チャイナ区域の鄭杏娟首席エコノミスは、2004年第3・四半期のCPIがピーク値の5%〜6%に達することになると推測し、各界も今年のインフレ率の推測に大わらわである。

国家統計局の責任者は、第1・四半期の物価は上昇の傾向を示しており、物価の変動から見れば、現在はまだ穏やかな上昇段階にあるが、確かにインフレのプレッシャーに直面していると見ている。

国家情報センターの専門家は、CPIが2〜3%上がっても穏やかなインフレにすぎないと見ている。

「CPIが2%上昇したことは、実質的にはインフレだと国際的に見なされているが、中国ではベースとなる数字が低いため、まだ受容できる度合いである」と中国工商銀行金融研究所の・向陽所長は語っている。ところが、中国はインフレのプレッシャーに直面していることは疑いない。

しかし、「現在、国際市場で人民元が堅調に推移しているため、インフレに耐える力が備わっている」と・向陽氏は見ている。「インフレ率が5%以下に抑えられることができさえすれば、経済に影響を及ぼすことはありえない」と数多くの専門家も認めている。

国家発展改革委員会マクロ経済研究院の陳東h副院長は、「物価の値上がりは注意しなければならないが、現在すでに典型的なインフレが起きたとは言えない」と語っている。

姚景源氏はこう見ている――中国でインフレが起こりうるかどうかは、主に次の2つの方面を見るべきである。@消費者物価が引き続き上昇するかどうか。昨年の消費者物価の上昇は主に食糧価格の値上がりによって引き起こされたものである。しかし、食糧価格が引き続き値上がりする可能性は大きくなく、値上がりの傾向が強くなることもない。しかも、その他の消費財の値段が下がっており、サービスの価格が政府によってコントロールされているため、石炭や電気などの価格は安定を保つことになる。A原材料価格の値上がりは生活手段にスムーズに影響を及ぼすことになるかどうか。現在の状況から見れば、その影響はそれほどスムーズに生産手段に及ぶことはないだろう。自動車を例としよう。鋼材の価格が急騰したのに、自動車企業は鋼材に支払ったコストを自動車販売を通じて消費者に転嫁することができず、これは自動車市場は買い手市場だからである。現在、鋼材の価格が下落するようになっており、インフレになる推進力はなくなっている。

姚氏の予測では、CPIは今年上半期に3%前後に上昇し、下半期には下落することになり、年間を通じて3%に保たれるが、5%に達することはない。

中国経済は全般的には過熱していない

中国人民銀行の呉暁霊副行長は、中国経済全般の「熱の度数」を判断するにはただ数字だけを見てはならず、国内資源の受容能力を見なければならないと表している。

CPIの増加と経済の過熱化を結びつける人も多いが、呉暁霊氏は、中央銀行がマクロ規制措置を策定するときCPIを最も主要な指標とはしないと、次のように語った。

経済の過熱化が起きたかどうかを判断するには、CPIだけを見てはならず、国内資源の受容能力をも考慮しなければならない。投資のみについて言えば、国が現在保有している資源が当面の経済発展の速度を保障することができれば、「過熱」とは言えない。しかし、もしこの発展速度が資源の制約を受けるようになれば、「過熱」ということになる。

アジア開発銀行(ADB)中国代表事務所の首席エコノミスの湯敏氏は新華通信社のインタビューに応じて、次のように語った。中国は投資、インフレなどの面で警戒すべき兆しが出ているが、現在はまだ中国経済は全般的には過熱していると言えない。

また、2003年の中国経済の成長率は9.1%であり、前年の8%を上回っているが、過去20年の平均レベルにある。さまざまな兆しが示しているように、中国で新たなインフレが起こる可能性は非常に小さい。それにもかかわらず、いくつかの分野に現れている過熱の兆は警戒しなければならない。

中国は今年穏健な貨幣政策を引き続き実施し、一部業種と地域の過度な投資を効果的に抑えれば、年間を通じてのインフレ率を2%から3%までの間に抑え、マクロ経済に大きな影響を及ぼさないようにすることも可能である。

中国経済をめぐって内外でとかく取りざたされてはいる。これに対し、国家統計局の責任者は、われわれは過熱かどうかのみで当面の中国経済のトータルなパフォーマンスを判断してはならず、具体的な問題に対し具体的な分析を行い、それを解決するよう主張している、と述べている。

また、中国は体制転換と経済の高成長の時期にあり、経済の発展は特殊性と複雑性があるものである。そのため、西側の経済理論と発展のパターンで中国経済の発展を評価し、判断するのは適切でない。現在、中国経済の成長は速いとはいえ、農業とサービス業の成長はまだ遅く、財政支出も基本的に合理的なものであり、資本市場は基本的に穏やかな状態にあり、消費の増加と物価の上昇もまだ正常な範囲にある。もちろん、一部の地域と業種では投資の増加が確かに速すぎ、重要な生産手段の値上がりが多すぎ、一部の重工業業種の増加が速すぎる問題も存在している。

中国経済は重要な時期に差しかかっており、経済の安定した高成長は非常に大きなチャレンジに直面している。温家宝総理は、中央政府は必ずマクロ規制を引き続き強化し、投資の増加が速すぎることを抑え、インフレを防ぎ、経済の大幅な起伏を防ぐことを当面の経済活動における非常に重要で、差し迫った任務としなければならず、これは科学的な発展を実現するために不可欠な措置でもある、と強調している。

重点はマクロ規制

マクロ規制の成敗は経済盛衰の全局と直接かかわりがある。中国経済の主体、所有制構造、収入の配分などの多元化のすう勢が加速され、対外開放が日ましに拡大する情勢のもとで、マクロ規制が直面している情勢は複雑化し、コントロールがますます難しくなっている。

国家統計局の責任者によると、当面のマクロ規制政策の基本的方向は次のように要約することができる。発展を必要とするが、科学的な発展をもっと必要とするものである。科学的な発展観を確立し、実行に移してこそはじめて、スムーズに発展することができる。諸方面の発展を加速する積極性を上手に保護し、上手に導き、首尾よく役割を果たし、改革の深化、構造の最適化、効率の向上に力を入れ、投資が速すぎるすう勢を効果的に抑え、経済が着実に速く発展することを保つことは当面の重要な課題である。

同責任者によると、中国経済の運営の慣性は非常に大きなものであるが、急ブレーキをかければ、経済が大きく起伏することになり、きわめて大きな損失をもたらす。中国経済は国際産業分業の枠組みに組み入れられており、中国経済の良し悪しは中国自身のことだけではなく、世界経済にもかなりの影響を及ぼすことになる。そのため、今年は積極的な財政政策と穏当な通貨政策を引き続き実行し、マクロ規制の連続性、安定性、権威性を維持するだけでなく、経済生活に現れた際立った問題に対して、適時に、適度に有力かつ効果的な規制措置を講じ、重点をとらえ、区別して対処し、急ブレーキをかけることはせず、無差別に処分することはしない。現在、主に都市建設規模と一部の地域の不動産投資プロジェクトおよびいくつかの投資が多過ぎる業種の建設を規制している。このようなマクロ規制政策を実施すれば、小さな問題が大きな問題へ、局部の問題が全局的な問題に変わるのを避けることができる。そのため、中国経済には「ハードランディング」を避ける条件が備わっている。

経済生活に現れた問題に対し、中央政府は昨年の下半期から、農業と食糧の生産へのバックアップ、開発区の整頓、土地管理の強化、成長の速すぎる信用貸付の抑制、鉄鋼、電解アルミニウム、セメントなどの業種の盲目的な投資についての一連の政策と措置を相次いで公布し、一応効果を収めている。

今年の経済発展の見通しについて、中央の諸措置の実施につれて、下半期の経済運行が穏やかになり、投資行為がより理性化することになると見ている。

隣国への影響

世界銀行は4月20日、中国の経済過熱の整頓はそのアジア貿易パートナーに影響を及ぼす可能性があると注意を促した。

世銀は4月20日に東アジア地域経済半年レポートと中国経済半年レポートを公表し、GDPの伸び率が10%に近づく状況のもとで、中国が行動をとって経済のソフトランディングを実現する意義は国境を超えるものとなっている。今後融資の伸びの効率と持続可能性を確保し、中国が講じた一連の制限措置が生産能力の総需要の伸びを上回り、とくに投資需要の成長の伸びを上回っている。しかし、経済のマクロ規制の手段および経済管理責任の分散などのため、チャレンジは厳しいものであると見ている。

世銀中国事務所の首席エコノミストのディーパック氏によると、「経済の過熱を整頓するため、中国の輸入の成長が減速する可能性があり、その他のアジア諸国が国内需要に頼って成長を保つ必要があると語った。

経済半年レポートによると、なが年来、中国はこれまでずっと東アジア地域の経済成長の駆動力であり、2003年に輸入額が40%激増し、2004年の第1四半期、輸出工業品の原材料生産の需要に刺激される中で、このような成長のすう勢が依然として持続し、大部分の原材料は周辺諸国から輸入される。これまでの3年間に、域内貿易は東アジアの発展における経済体の輸出の伸び率の約70%を占めるものとなり、中国に対する輸出の伸びはいくつかの東アジア国の輸出の伸びの50%以上を占めている。しかし、中国が現在の高度成長のすう勢は必然的に減速することになる。中国政府は経済成長のスピードを管理しやすいレベルに抑えるよう努めている。これを実現するには、引き続き就業の需要をつくり、経済改革を展開し、経済の安定維持と速すぎる投資の抑制の間のバランスをとらなければならない。中国の経済の成長の減速は隣国にどんな影響をあたえるかはまだ判断できない。

世界銀行東アジア太平洋地区の首席エコノミストのカラス氏は、「中国の経済減速が域内のその他の経済体にマイナス影響を与えることになろうが、われわれはこの影響は大きくないと見ている。中国の輸入の伸びを10%減らすとすれば、韓国や台湾地区のGDPの伸びに1%の損失しかもたらさない。タイのような国のGDPへの影響は0.5%以下となろう。2004年に減速すれば、日本の域内における輸入伸び率の増大とグローバルな貿易の伸びが相殺することになろう」と語った。

講じた措置に鑑み、世銀は、中国は2004年に7.7%の伸び率を保つ可能性があり、対外貿易が小幅な利潤をあげ、インフレ率は2〜3%となり、輸出の増加、低利率および中国、ベトナム、タイの高投資率の刺激のもとで、東アジア経済の伸び率は2004年の予測を6%上回り、2000年の初めに、グローバル経済が減速して以来最も力強い成長が現れている。