2004 No.20
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3大業界への投資過熱を厳格に規制

―――鉄鋼とセメント、電解アルミニウム、この3大業界への投資は依然驚くべきスピードで増大しており、国家マクロ調整機関は再度、投資を停止するよう緊急通達を出した。

李 子

河北省・唐山地区を走る国道205号。鉄粉や完成品を満載したトラックが1台、また1台と朝から夜までひっきりなしに通り過ぎていく。平坦で光沢のあった道路はその重みで既にでこぼこだ。

唐山では、全ての人が鉄鋼と密接な関係があり、多くの企業家が鉄鋼でにわか成り金になった。「唐山に投資すれば、学歴なんかなくとも同じように金儲けが出来る。鉄鉱の開発を請け負った友人は、アッという間に巨富を築いた」。地元のある人はこう話す。

唐山鋼鉄公司で26年間運転手をしてきた侯さんによると、唐山に工場を建てる人は益々増えており、全国各地から出稼ぎに来る農民は年に1万人超。2億から3億元投資しても、1、2年で資金は回収できるという。

利益に引かれて今、唐山の鉄鉱は空前の活気を呈している。20年ほど前には唐山鉄鋼所と零細企業が数社しかなかったが、2002年時点で民間鉄鋼企業は300社を超えた。

唐山のみならず、全国各地でも鉄鋼やセメント、電解アルミ、この3大業界への投資は急増し続けている。3大業界への投資の過熱は中央政府も重視しており、これまで何度も停止を呼びかけた。新政権は科学的な発展観を強調しており、構造のバランスを欠いた投資過熱に対する調整の強化に再び乗り出した。

過熱がもたらすリスク

関係機関の統計によると、昨年の投資増は前年比で2倍近くとなり、さらに今年1月から2月までに、鉄鋼への投資は前年比172.6%まで増加し、セメントでは現在実施中のプロジェクト計画投資額は786億元で、前年比133%の増、電解アルミでは現在増強中の生産能力は310万トンにのぼる。

国家発展改革委員会(発改委)の馬凱主任は「現在実施中の鉄鋼プロジェクトが全て完成すれば、2005年までに生産能力は全国で少なくとも3億3000万トンに達する。一方、鉄鋼の需要量が3億3000万トンに達するのは2010年と見られており、投資は既に5年先行している。電解アルミでは、2005年の生産能力は1000万トンを超えると予想され、市場予測の需要より2倍近く多い」と指摘。

更に馬凱主任は「鉄鋼とセメント、電解アルミ業界への投資は過度に増大しており、現在実施中の規模は大きすぎる、構造的矛盾が突出している、粗放型の経営が深刻している。最近の市場需要は旺盛で、現時点での収益は良好だが、全体的、また長期的に見れば、潜在的リスクは大きい」と強調した上で、以下の3点を指摘した。

(1)石炭・電力・石油・輸送間の需給関係が一段とひっ迫するだろう。鉄鋼と電解アルミ、セメントなど高エネルギー消耗業界への過剰な投資が工業、特に重工業の高成長を牽引しており、そのため既にひっ迫状態にある石炭・電力・石油・輸送の需給が一段と厳しさを増している。石炭は供給不足の状態だ。発電量は15%以上の高スピードを維持し続けてはいるが、多くの省が電力使用制限を実施中。輸送能力不足も深刻で、鉄道輸送では需要の僅か40%しか満たせていない。

(2)経済構造調整の最適化に影響が出るだろう。投資と消費の比率から見れば、投資は消費を44ポイントも上回っている。両者の比率のアンバランスは深刻だ。産業別比率から見ると、第1次産業への投資は25%減少し、第2産業では78.6%の増加しており、この傾向が今後も続けば、産業構造の歪みがエスカレートするのは避けられない。鉄鋼と電解アルミ、セメントなど高エネルギー消耗業界が過度に拡大していけば、産業構造はより不合理なものとなる。

(3)インフレ圧力が加速するだろう。投資の急増により昨年、流通の各段階で生産材価格は8.1%上昇し、1月と2月にはさらに昨年に比べ15.1%上昇した。

(4)経済運営に潜むリスクが増大するだろう。固定資産投資の過度の大規模化、過度の増大、過多な信用融資が相互に連動し、それぞれが因果関係をなしている。融資の急増により一定程度、投資の増大がもたらされるが、その一方で、投資の急増により融資規模は拡大していく。こうした状態が続けば、一旦、市場の需要に変化が生じた場合、企業が経営困難に陥るのは必至であり、銀行の不良債権も増える。金融リスクの拡大によって一時帰休者が増えて経済運営、社会の安定に悪影響が及ぼされることになる。

こう指摘した上で馬凱主任は「過去の経験を注視すべきだ。中国ではいずれの経済的変動であれ過剰な固定資産投資と無縁ではない。今年の中国経済は発展に向けて重要な岐路に立たされている。経済の安定した急成長を実現し、変動を回避する上でカギとなるのは、固定資産投資の行き過ぎた増大傾向をあくまでも抑制することだ」と強調する。

投資停止を通達するのは?

専門家は、一部の業界で高投資が続いていることについて、業界の利益が上昇し続けているのが主因だと分析。鉄鋼業界は1月と2月に石油、自動車業界を上回る162億2000万元の利益を計上し、昨年の第3位から第1位へと躍進した。

発改委の経済運営発展研究室の王小広主任は「その要因となったのが、不動産業界だ。この業界は6年連続して30%の高成長を遂げており、それに伴い鉄鋼の総需要も50%以上増大した」と指摘する。

専門家は「これら業界への投資が過熱しているのは、資本が高利益を求めているという特性のほか、地方政府の干渉も大きな原因だ」と指摘。統計によると、1月〜2月の中央政府による投資の伸び率は前年同期比12.1%だが、地方では64.9%も増大している。

発改委の馬凱主任は「一部の地方では経済発展観でいまだ、成長率を盲目的かつ単一的に追求する考え方から全く脱け出していない。地域間を比較すると、投資の増加を成長率推進のための主要な手段にしている」と指摘。

業界関係者は、全国的な電解アルミへの投資過熱について、一部の地方政府が積極的にプロジェクトを支援しているからだと分析する。推算によると、1億元投資した場合、操業後、年間生産高は2億5000万元、増加値は同7000万元となり、税収は大幅に増加することになる。

まさにこの巨額の利益が、多くの企業の投資を誘引している。発改委工業司冶金処によると、過去6年の間に電解アルミ企業は70社から130社に急増。この数字は世界の企業総数を上回るという。

だが、年産10万トン以上のプロジェクトは中央政府の認可が必要であり、前国家経済貿易委員会が公布した「14号令」は、各地方政府は年産10万トン以下の新規プロジェクトは認可しないと規定している。この2項目の規定により、地方政府による電解アルミプロジェクトの認可権限は実質的に取り消されたことになった。にもかかわらず、利益追求から、一部の地方と企業は中央政府による認可や産業政策上の規制をかわすため、10万トンを超えるプロジェクトだと称しながら、実際的には期間に分けてプロジェクトを実施しているのが実情だ。国の関連機関や非鉄金属協会の調査によると、1997年から2001年にかけて電解アルミの生産能力は新たに210万トン増加。うち国が認可したのは山西・雲南・河南省などの企業で合計45万トンに過ぎず、残りの165万トンは地方政府が認可したもの。新規プロジェクトについては、一部は地方政府が権限を逸脱して認可、一部は認可を得ずに進めているものだと言える。

中央政府のマクロ調整強化

4月9日、温家宝総理が招集した国務院常務会議は、第1四半期の経済運営と動向を分析すると共に、経済面で突出している問題を解決するために講ずべき対処的な措置について協議した。同会議では、科学的な発展観を樹立して着実に実行する、改革の進展を重視する、構造を合理化する、効率を向上させることが強調された。そのために実効性ある措置をさらに講じ、過剰な投資傾向を規制することで、経済の安定かつ急速な発展を維持していく方針を示した。

曽焙炎副総理は「中央政府はマクロ調整を強化し、国民経済の安定かつ急速な発展を維持するため、鉄鋼や電解アルミ、セメント業界への過剰な投資を規制する措置を講じた」と強調した。

国務院は一部の業界で投資が過剰であることを公式に認めると共に、厳格に抑制し見直し作業を始めるための具体的な措置を打ち出した。

発改委によると先ず、科学的な発展観を樹立して定着させ、仕事の力点を確実に経済成長の質と効率へと転換させると共に、成長率を単純に追究し相互比較する姿勢を完全に改める◆信用融資の審査と監督・管理を強化する。融資規模を適度に抑制し、融資構造を最適化すると共に、市場参入条件に合致しない新規・拡張プロジェクトについては、金融機関は融資しない◆土地使用の管理を強化する。開発区設立の見直し作業を継続すると共に、土地市場を適正化していくほか、国の産業政策や業界の参入基準に合致しない建設プロジェクトについては一律、土地使用を認可しない◆一部業界の盲目的な投資、低レベルで重複した建設を完全に抑制する◆政府による投資への管理を着実に強化する。

中央政府は先ごろ10の監察チームを全国約20の省・自治区・直轄市に派遣して検査と監督・指導を実施し、今後は一部業界の過剰な投資規模に対して必要な措置を講じることにしている。

プロジェクトの見直し作業は、実施済み、実施中、実施計画の鉄鋼、電解アルミ、セメント業界が対象となる。対策としては、国の産業政策に合致しない、認可を得ない、規定違反または権限逸脱により認可されたプロジェクトについては、各地方の土地行政主管機関は土地使用(各地の開発区が既に収用した土地も含む)を認可してはならない◆環境保護行政主管機関は環境影響報告書を認可してはならない◆税関は輸入機器に係わる税金は免除しない◆工商管理機関は登記手続きを行わない◆品質検査機関は生産許可証を発行してはならない◆証券業等監督管理委員会は関連企業の上場、増資を認可してはならない◆電力機関は給電してはならないなどの措置を講じる方針だ。

曽焙炎副総理は「3大業界への投資は厳格にする」との考えを強調している。

例を挙げれば、鉄鋼業では原則、連合企業の新規設立は認可されない。確実に必要だと認められる場合は、国の投資機関が規定された許可基準に基づき十分な論証を行い、バランスを総合的に検討した上で国務院に認可を求めることになっている。外資による新規・拡張プロジェクトについても、発改委に認可申請を行い、環境要件に合致しない場合は建設・生産を停止しなければならない。

曽焙炎副総理は「市場が機能する資源配分という基礎的役割を十二分に発揮させて、マクロ調整を強化、改善していかなければならない。マクロ調整方式を改善させるために、主として経済的、法律的手段を採用するが、これを補う形で必要となる行政手段も講じていく。また調整の重点を正確に把握し、状況の違いを明らかにする必要があり、一刀切りであってはならない。改革と発展及び安定との関係を円滑に処理し、各方面の積極性を問題なく保護し、誘導し、発揮させて、過剰な投資を抑制するという作業を着実に、かつ秩序を保ちながら進めていかなければならない」と強調した。