2004 No.21
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より多くのエイズ患者を無料治療

――エイズは既に感染の危険度の高い層から一般市民へと拡大する“臨界点”を迎えており、現在、蔓延を防止する重要な時期にある。政府は政策や行動、国際協力などの面から全国の重点地区でエイズ防止を強化していく方針だ。

凡 仁

エイズ発生率が高い地区は主に貧しく立ち遅れた農村部に集中している。患者の多くは非合法的な売血で不幸にもエイズウイルス(HIV)に感染した人たちだ。国が経済能力のない患者に対し無料治療を行うには限界があるため、適時にかつ有効な治療を受けられる患者はごく少数に過ぎなかった。だが現在、こうした状況は好転する可能性がある。

政府は4月13日に行政法規を公布し、エイズの無料治療を適用する範囲について詳細な規定を設けた。政府はこの法規に基づき今後、農民と都市部の経済的に困難な状態にあるエイズ患者に対し無料で抗HIV治療を実施する◆エイズが流行している重点地区で無料、匿名で血液検査を実施する◆父母がエイズで死亡した孤児を無料で就学させる◆31の特定地区(大半がエイズ高発生地区)の妊婦に対し無料でエイズ相談や検査、抗HIV治療を実施する。また、適用外や生活が困難なエイズ患者に対しても一定の救済を施すことにしている。

エイズ防止事業が強化されるに伴い、政府が投入する財政資金も大幅に増加した。衛生部によると、エイズ防止専用資金は2001年以降、従来の1500万元から年を追うごとに年平均100%に近い1億元ずつ増え、2003年に3億9000万元に達した。

国務院は2月26日、エイズ防止に取り組む専門組織である「エイズ防止工作委員会」を発足させた。同委員会のメンバーは中央政府の高官のほか、エイズ高発生地区を含む地方政府の幹部などで構成され、エイズ防止事業の協力体制は一段と強化された。

国務院は4月6日に「全国エイズ防止工作会議」を開催し、重要な政策・措置について最終的な審議を行うと共に今後の作業の進め方に関しても協議した。前述した無料治療適用範囲の拡大は、この会議で決定されたもの。更に注目すべきは、世界保健機関(WHO)や国連エイズ計画(UNAIDS)など多くの国際機関がこの会議に招待されたことだ。国務院がこうしたハイレベルな作業部会を開催したのは初めて。

“豪腕女性”とうたわれる副総理を兼任する衛生部の呉儀部長は「現在、エイズは感染の危険度の高い層から一般市民へと拡大する“臨界点”を迎えており、蔓延を防止する重要な時期にある。この重要な時期を逃すことなく、有効な措置を講じて着実に防止事業を強化すれば、エイズの蔓延と流行は完全に食い止められる。仮に防止対策が不十分で蔓延が拡大し、逃してはならない機会を失うことにでもなれば、かなり深刻な結果がもたらされる」と指摘。更に呉儀部長は「エイズ防止事業の遂行に当たっては、HIV感染者と患者を最大限度発見した後、事実に基づきかつ時宜を逸することなく適正な報告を行うと共にその状況を公表しなければならない。虚偽の報告、報告漏れや遅滞に対してはその責任を厳しく追究する」と強調した。

「工作会議を通じて政府のエイズを防止するという確約と決意のほどが理解できた」。WHO駐中国事務所のヘンク・ベイクダム代表は更に続けて「中国のエイズ政策がより深まり変化していること、また政府がエイズを今まで以上に重視していることが理解できた」と話す。UNAIDS駐中国事務所のジョエル・レンストローム代表も同様の見解を示した。

エイズ患者拒否に罰則

エイズ患者の抗HIV治療を効果的に展開して、エイズの蔓延と流行を抑制するため、衛生部は4月中旬、県クラス(最も基層的な行政区画の1クラス上)以上の衛生行政機関はエイズ治療専門家グループ(以前はエイズ治療の出来る病院は数少なく、主に一部の大中都市に集中)を組織し、グループは臨床(中国医学)と看護、検査などの専門家で構成しなければならないと規定。更にエイズ治療を担う医療機関は厳格な抗HIV薬品の受給・支給登録制度を設けると共に、適正化されたエイズ患者治療カルテを作成する一方、疾病予防制御機関は健全な作業メカニズムを確立し、無料による薬品の適時かつ十分な供給に責任を負わなければならないと規定した。

衛生部は特に、エイズ治療を担う医療機関や医療関係者がエイズ患者への医療サービスを拒否したり診療規範などに違反したりした場合には即刻、改めるよう求めると共に関係者の責任を厳しく追究すると強調している。

エイズ検査作業を適正化し、HIV感染者と患者を最大限度発見するため、政府は4月中旬に打ち出した別の行政法規の中で、(1)今後、エイズ検査を望む国民についてはいずれも無料で実施する(2)検査作業は省、市、県クラスの疾病予防盛業機構と各クラスの疾病予防制御機構が認定した医療機関が担う(3)秘密を保持し、関係者以外に抗体検査で陽性反応の出た人に関するいかなるデータも漏洩してはならない――との規定を設けた。

基本薬品の国産化

国家食品薬品監督管理局の責任者によると、現時点で国の生産認可を取得したエイズ治療薬は5種類にのぼる。いずれも国際的に公認された4種類の「カクテル療法」としてエイズ治療出来る薬品だ。

同責任者は「これはエイズ治療に用いる基本的な薬品の全てが国産化されたことを示している。エイズ治療薬の国産化により、患者の治療費を大幅に低下させることが可能だ」と話している。

これについて、同監督管理局の鄭筱萸局長は「抗HIV薬品については、品質の鑑定や審査、認可を第一義に置いており、認可手続きを簡便にして迅速化を図ることで、HIV治療薬品の国産化プロセスはずいぶんと加速された」と説明する。

『人民日報』によると、国内企業が自主開発したエイズ症状を改善する中医生薬「唐草片」の臨床使用が先ごろ、国家食品薬品監督管理局から認可された。症状改善の生薬として認可されたのは、「唐草片」が国内で初めて。

治療で中米協力プロジェクト

中米は4月13日、北京でエイズ予防治療協力プロジェクトを開始した。監視の強化と健全な予防システムの確立を通じてエイズの北京での蔓延を抑制するのが目的。このほか既に同プロジェクトを開始、または年内に開始する予定の省・自治区・直轄市は9に及ぶ。

中米間の同プロジェクトは米国疾病予防制御センターが全世界で展開しているプロジェクトの一環。現在、25カ国で実施しており、期間は5年、投入資金は1500万ドル。エイズ感染の防止やエイズ患者治療の改善、環境への配慮や監視能力の強化などを主体に協力を展開している。

北京市疾病予防制御センターの劉澤軍主任は「プロジェクトが起動したことで、北京市のエイズに対する衛生システム能力はより向上し、同時に業務面で力がありかつ経験豊富な治療チームは作業のレベルを更に高めることが出来る」と強調する。

更に劉主任は「プロジェクトの実施によって、北京の監視拠点はより代表的なものとなり、現在の4カ所から22カ所に増加し、エイズ感染危険度の高い層や一般人に対する監視が重点的に拡大されるだろう。同時に、政府のエイズ治療により科学的なデータを提供することもできる」と指摘する。

北京市では15の区・県すべてでHIV感染者または患者が発見されており、その数は年を追うごとに増加している。統計によれば、2003年末時点で感染者・患者数は約1600人と、全国でも上位にある。

劉主任は「プロジェクトにより医療関係者や、感染危険度の高い層と常に接触する公安関係者への訓練なども強化される」と話している。